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千葉県議会 > 本会議・委員会 > 常任委員会 > 県内調査報告/県外調査報告 > 令和元年度文教常任委員会県外調査報告書

更新日:令和5(2023)年3月9日

ページ番号:354482

令和元年度文教常任委員会県外調査報告書

令和2年1月17日

千葉県議会議長阿井伸也

文教常任委員長小路正和

本委員会が県外調査を実施したところ、その概要は下記のとおりでした。

  1. 用務:文教常任委員会県外調査
  2. 調査先
    (1)史跡座喜味城跡(沖縄県中頭郡読谷村)
    (2)沖縄県教育委員会(沖縄県那覇市)
    (3)那覇市立寄宮中学校(沖縄県那覇市)
    (4)琉球大学教育学部(沖縄県中頭郡西原町)
    (5)宜野湾市立嘉数中学校(沖縄県宜野湾市)
    (6)沖縄県立博物館・美術館(沖縄県那覇市)
  3. 期間:令和2年1月14日(火曜日)~16日(木曜日)
  4. 概要:別添のとおり

調査の概要について

1史跡座喜味城跡(沖縄県中頭郡読谷村)

(1)日時:令和2年1月14日(火曜日)14時30分~16時30分

(2)調査項目:遺跡・文化財の利活用について

(3)経過

初めに、小路委員長からの調査協力に対するお礼のあいさつの後、沖縄県読谷村教育委員会教育長から歓迎のあいさつがあった。
あいさつの後、読谷村教育委員会文化振興課長から世界遺産座喜味城跡とユンタンザミュージアムの概要について説明があった。
その後、同文化振興課長からの説明、質疑応答を行いながら、館内施設及び座喜味城跡の見学を行った。

(4)概要説明

読谷村は、沖縄本島の中部西海岸に面した半島に位置し、面積は約35平方キロメートルで、約36%が軍用地である。人口は約41,000人で、平成26年には日本一人口の多い村に認定されている。村内には、5つの小学校と2つの中学校がある。12月から3月にかけては、プロ野球をはじめサッカーJリーグ、ラグビーなど多くのチームがキャンプを行っており、子どもたちがプロスポーツに触れる機会となっている。また、本土復帰前には米軍の不発弾処理場だった地が、人間国宝である金城次郎氏を中心に19の工房(村内には72の工房)が集まる、やちむん(陶器)の里となっており、年3回、やちむん市が開かれている。
歴史的には、7,000年前の縄文時代から人々の営みが確認され(土器が発見されている)、2,200年前に北部九州の弥生文化を携えた人々が読谷村で集落を形成した。長く魚や貝など海の恵みで生活してきたが、平安時代末期に鉄器が入ってきてからは稲作が始まり、海岸に住んでいた人々が内陸に住むようになってから、グスクの時代が始まった。
1609年に薩摩軍が琉球を侵攻するために上陸した地も、また、1945年にアメリカ軍が上陸した地も読谷村であった。その後、南北2つに分かれて沖縄戦が展開されたが、1946年当時は、村民が住む場所が村内に5%しかなかった。米軍基地を建設するために移動させられたため、戦後、元の住んでいた場所に戻れない集落が6(22の集落のうち)あり、いまだに戻れない人たちは多い。このため、読谷村の歴史を知ることで沖縄の歴史の大部分を知ることが出来る。また、戦後の琉球政府の初代主席と最後の主席(初代知事)が読谷村出身者でもある。
座喜味城跡は、2000(平成12)年に「琉球王国のグスク及び関連遺産群」として首里城跡等とともに世界遺産の一つとして選定されている。城郭面積約7千平方メートルのうち約45%である約3千平方メートルが城壁面積となっている。座喜味城の基盤層が土であるために、城壁を自立させるための厚みが必要であり、また、安定性を確保するために城壁を湾曲(アーチ状)させている。15世紀初期に護佐丸によって築城されたが、使用された期間は20年ほどと言われている。
戦前は、旧日本陸軍が、読谷村役場の場所に建設した北飛行場の防衛のために高射砲陣地を建設し、また戦後は、アメリカ軍がミサイルレーダー基地を建設したために城壁が大きく破壊されたが、日本国への復帰後の1973年には、県内の史跡の中でいち早く復元事業が開始され、1985年に現在の姿に整備された。
ユンタンザミュージアムは、1975年に開館した歴史民俗資料館と1990年に開館した美術館が統合され、2018(平成30)年6月に資料館と美術館が一体となった県内市町村立博物館施設で最も規模の大きなミュージアムとして生まれ変わったものである。
「ユンタンザ」という名は、1946年12月に改称する前の村名である読谷山(ユンタンザ)村からとっている。
館内では、読谷村の概略、世界遺産座喜味城跡、読谷村の伝統工芸品であるやちむんや読谷山花織、金城次郎氏の作品、ガマ(鍾乳洞)の出来事や集団自決のジオラマ等を紹介している。

(5)主な質疑応答

問:世界遺産座喜味城跡の来訪者数はどれくらいか。
答:座喜味城跡は、入場料をとっていないため、来訪者数は不明である。
問:座喜味城の建物はどのようなものであったか。
答:どのような城であったかは不明であるが、瓦等が出土しないことから、屋根は板葺きか茅葺きであったと思われる。また、土器がほとんど出ていないことや水の痕跡がないことから、普段は下の集落で生活し、戦が始まったときの逃げ城として使用していたと思われる。
問:ミュージアムをリニューアルするにあたり、国からの補助金はあったのか。
答:沖縄振興一括交付金(沖縄振興特別推進市町村交付金。8割補助)を活用している。
問:昔の沖縄の家の屋根(茅葺き)は台風等で壊れなかったのか。
答:屋敷のまわりを石垣で囲っており、屋根の高さが石垣の高さを超えないようにすることで、風が屋根の上を抜けるようにしていた。また、床を高くすることで、床下を抜ける風をクーラー代わりとしていた。

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2沖縄県教育委員会(沖縄県那覇市)

(1)日時:令和2年1月15日(水曜日)9時~10時10分

(2)調査項目:特色ある学校教育活動について

(3)経過

初めに、小路委員長からの調査協力に対するお礼のあいさつの後、沖縄県教育庁義務教育課長から歓迎のあいさつがあった。
あいさつの後、義務教育課学力向上推進室主任指導主事から沖縄県の学力向上の取り組みについて説明があり、その後、質疑応答を行った。

(4)概要説明

沖縄県で学力向上対策を始めて34年ほどになる。当時から、沖縄県の失業率や所得などは全国と比較して厳しい位置にあり、子どもたちの学力も同様であった。平成19年の全国学力状況調査で、本県における学力が、全国と比べて非常にかけ離れた位置にあることが分かり、子どもたちの学力を保障することが課題となってきた。
平成29年度から、3年間、本県の児童生徒の学力を全国水準に高め、維持することを目標に、学力向上に特化した「学力向上推進プロジェクト」に取り組んでいる。指標として、「小学校全科目における全国平均正答率以上の維持と中学校全科目における全国水準までの向上」、「平均正答率30%未満の児童生徒の割合と無解答率の減少」、「児童生徒質問紙における学習意欲に関連する項目の向上」、「学校質問紙の授業における基本事項等に関連する事項の数値の向上」の結果を基に検証している。
現在、小学校の正答率は、国語、算数ともに全国平均を上回ってきており、中学校の正答率も全国平均は下回るものの、10ポイント以内にきており、ほぼ全国水準にある。また、平均正答率30%未満の児童生徒の割合と無解答率は減少してきており、全国平均値とほぼ並んでいる。平成19年度の数値と比べて、どの教科、領域についても改善してきている。
主体的・対話的で深い学びの視点からの授業改善に関する取組状況については、まだまだ授業改善をしていく必要があるということがデータとして出ている。学校運営に関する取組状況についても、さほど大きく改善していない。児童生徒の自己肯定感に関する状況については、良くはなってきているが、全国と比較すると弱い状況である。
本県の学力向上や子どもたちの学びの質は、学力の数値的な部分は上がってきているが、子どもたちが主体的に学んでいく部分、自分に良いところがあると感じる部分は、まだ全国との比較においては課題がある。
3年間のプロジェクトの中で取り組んできたことは、社会に開かれた教育課程の中で、生きる力を育むため、集団づくり・自主性を高める取り組みの充実、学習を支える力の育成や教材研究の充実など、他者と関わりながら、課題に向かい「問い」が生まれる授業像を共有し、日常的に授業改善を進めることを、学力向上マネジメントの推進という位置づけで、行政が支えてきた。
本プロジェクトは、学校長がマネジメントしながら、組織的に、学校職員全体で同じ考え方で進めている学校で成果が上がっていることから、今年度は、学校組織のマネジメントに力を注いでいる。
学校組織マネジメントの向上のために、県義務教育課学力向上推進室(平成25年度から設置)が、本県小中学校約400校のうち年間200校を学校支援訪問ということで訪問し、指導助言を行っている。また、今年度から、退職した校長経験者を学校運営アドバイザーとして各6地区に配置し、各学校を年間3回訪問して指導助言している。
また、県Webシステムを活用して、学力調査での自校採点をすぐに入力することで、即時に全県の平均、課題等の数値的な部分を把握できるようにしている。全国学力・学習状況調査も含めて全県的な学力調査を年3回実施し、弱み・強みなどを分析し、授業改善のポイントについて、各地区に資料提供及び説明をして、指導計画の見直しなどを行っている。
さらに、マネジメントを支援するため、学校の状況がどういったレベルにあるか、ということについて、学校改善ルーブリック(例示)を作成し、学力向上マネジメント機能を高めるために活用している。
次期計画では、不登校児童生徒が増えている中で、数値だけではなく、市町村や学校の自主性を高めながら、学びの質を高めていく取り組みをしていきたいと考えている。

(5)主な質疑応答

問:他校の良い取り組みを学校間で情報共有する機会はあるのか。
答:年1回開催されている校長先生が集まる連絡協議会で、情報を共有している。
問:年間200校を訪問するための人員の配置はどうしたのか。
答:学力向上推進室が設置された平成25年に指導主事を2名増員して、学校訪問に対応している。1日最大3グループ(1グループ3名程度)で、午前・午後で日程調整をして訪問している。
問:県と市町村の連携はどうしているのか。
答:30数年間にわたる学力向上の取り組みが各市町村に共有されてきているので、学力向上の施策の浸透度は高くなっている。学力向上の取り組みを県から市町村に伝えるだけではなく、学力向上推進室の学校訪問で直接学校と意思疎通していくことで、より深く連携が図られている。
問:子どもの貧困、健康や児童虐待などを扱う福祉関係部局との連携はどうか。
答:義務教育課の中の生徒指導を扱う指導班に福祉部と兼務している職員がおり、福祉部と連携しながら、子どもの貧困に対するアプローチもしている。
問:「問い」が生まれる授業の浸透度は調査しているのか。
答:学力調査と合わせて、調査をしている。
問:自己肯定感を育むなどの学校の取り組みは、地域や家庭でも取り組む必要があると思うが、どうか。
答:3年間授業改善、学力向上に特化した取り組みを進めてきたことから、地域との連携を所管する他の課との連携が弱くなっていた。次期プロジェクトでは、学校との連携や地域との連携を含めた施策も進めていくことになっている。

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3那覇市立寄宮中学校(沖縄県那覇市)

(1)日時:令和2年1月15日(水曜日)10時40分~11時30分

(2)調査項目:特色ある学校教育活動について

(3)経過

初めに、小路委員長からの調査協力に対するお礼のあいさつの後、那覇市立寄宮中学校長から歓迎のあいさつがあった。
あいさつの後、授業改善アドバイザーである教諭からアドバイザー制度を導入した成果と課題について説明があり、その後、質疑応答を行った。

(4)概要説明

授業改善アドバイザーは、本市では、国語、数学、英語、理科について、2校兼務で配置されている。週5日間を2日と3日に分け、それぞれの学校に通っている。加配で配置されており、学校の校務分掌や指導も行っているが、授業改善アドバイザーがいて、成果が出る学校と成果が出ない学校があるようである。授業改善アドバイザーの仕組みだけでなく、学校がこの仕組みを受け入れるスタイルをどう作るかが大きいと感じている。
本校の授業改善アドバイザーは、英語科で、本校及び近隣の小禄中学校に兼務で配置されており、本校に籍を置きながら、本校には月、水、金の週3日間、小禄中学校には火、木の週2日間通っている。
指導案(ティーチングプラン)を作成し、T2(サポート役)ではなく、T1(授業実施主体)として授業を行うこともあるが、授業改善アドバイザーのみで授業に入ることはない。また、成績付けも行わない。若い教師や経験の浅い教師、復帰したばかりの教師に対して、生徒への聞き方、指示の仕方や、スピーキングをより多く行うとよい、などのアドバイスを行っている。また、チーム・ティーチングをした時には、必ず気付いたこと等について書面で記録を残すようにしている。

(5)主な質疑応答

問:どのようなことを意識して、学校運営を行っているのか。
答:沖縄の子どもは、郷土に対する思いが強く、沖縄への定着率が高いため、その多くが沖縄で生きていくことになることから、子どもの自立を高めることが大事になる。郷土の芸能であるエイサーは、全員が覚えている。英語は、観光客が1千万人を超えており、外国人に日頃から話しかけられ、英語を日常的に使う機会がある。そういった沖縄ならではの学力を考えながら、学校経営を行っている。
問:ALTの先生もいるのか。
答:本校には、コロンビア(スペイン語が母語)とネパールのALTがいる。那覇市では、9、10カ国からALTが来ており、多種多様な英語に触れる機会がある。彼らは母国語を別にもっているので、国が違い、言語が違う場合、コミュニケーションをとるには英語しかないということを、生徒は自然と理解していくようである。
問:授業改善アドバイザーになるプロセスはどのようなものか。
答:沖縄県から秋田県に派遣していた教員が帰ってきたときに、授業改善アドバイザーという形で位置づけたのが始まりであり、その後、教科を広げていっている。本校の授業改善アドバイザーは、一昨年つくばにブリティッシュ・カウンシルの研修に行った後、授業改善アドバイザーになっている。他のアドバイザーとは、定期的に集まって情報交換しているが、手探りの状況でやっている。
問:那覇市内の教員の配置状況はどうか。
答:沖縄県の教員採用試験の倍率は6倍くらいあり、優秀な人材を確保できていると思う。精神的な問題で休む教員のため代替教員が必要となるが、代替教員として学校に入ると忙しく、採用試験のための準備が出来ないことから、代替教員のなり手がなく、代わりの先生を探すのが大変である。
問:授業改善アドバイザーの成果の出ている学校と出ていない学校があるようだが、アドバイザーの位置づけはどうなっているのか。
答:先生方へのアドバイスや一緒に実践研究していくほかは、位置づけは特に決まってはおらず、学校長の裁量がかなりある。本校の場合、アドバイザーが学力向上推進担当もして、教科会などに常に参加しており、学力向上全般に関わっている。成果の出る、出ないは、勤務日数の問題ではなく、職員の体制や活用しようとする意識の問題だと思われる。そのため、お客様的に扱うのではなく、学校長がアドバイザーの位置づけをしっかり示していくことが重要である。
問:授業改善アドバイザーの児童生徒との関わり方はどうか。
答:本校は3年目なので、生徒のことはよく分かるが、小禄中学校では、授業に入っていないクラスの生徒のことはわからない。学校行事については両校とも同じ時期にあるので、小禄中学校の行事には関わっておらず、関与するのは授業のみとなる。
問:校長から見て、子どもが変わったと実感することはあるのか。
答:赴任して1年目なので、本校については不明であるが、沖縄県の全体的な話で言うと、かつての沖縄の成人式は荒れていて有名だったが、成人式を中学校単位で行うようになって落ち着いてきている。成人式などの行事に教員が多く関わるようになっているが、そもそも学校の仕事か、という問題もある。教員も、授業だけやっていれば、達成感があるかというと、生徒指導や保護者、地域と関わって上手くいった時にやりがいを感じるところはあるので、簡単に切ることが出来ない。
沖縄の子どもの変化については、個人的な見解ではあるが、主体的・対話的な学びが沖縄には合っていると思う。近年各界で沖縄県出身者が活躍する場面が多くなっており、小中学校の義務教育段階での個に寄り添った教育の成果だと思われる。
問:部活動の状況はどうか。
答:来年度から各校1名の部活動指導者を配置することになっている。中学校では、部活動は超過勤務の主な原因になっているが、学校として部活動をするときに、競技力の向上だけでなく、子どもを育てるという面で誰が行うのが良いのか、難しい問題だと認識している。

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4琉球大学教育学部(沖縄県中頭郡西原町)

(1)日時:令和2年1月15日(水曜日)13時20分~15時20分

(2)調査項目:特色ある特別支援教育活動について

(3)経過

初めに、小路委員長からの調査協力に対するお礼のあいさつの後、琉球大学教育学部教授から歓迎のあいさつがあった。
あいさつの後、同教授から、IN-Childプロジェクトの概要について説明があり、その後、質疑応答を行った。

(4)概要説明

医療・看護・福祉・教育の分野で、発達障害が疑われる児童・生徒は、「気になる子」、「気がかりな子」、「グレーゾーンの子」と呼ばれているが、あくまで主観的なもので、科学的な根拠はなく、共通認識ができる方法や支援方法に関する手立て(ツール)がなかった。そこで生じる問題点として、職種間において必要な情報の交換にズレがある、判断には教師個人の主観が大きく影響している、教師の主観的な視点による判断は差別的な意味を含む可能性があることが研究者たちから指摘されている。
そこで、IN-Child(インチャイルド:InclusiveNeedsChild)という言葉を造り、「発達の遅れ、知的な遅れ又はそれらによらない身体面、情緒面のニーズ、家庭環境などを要因として、専門家を含めたチームによる包括的教育を必要とする子」と定義した。IN-Childは、原因を問わず、包括的教育ニーズが特に高い子どもを指し、家庭環境等により一時的に支援を必要とする子どもも含まれている。日本に移住している外国人で、学校に通っていない子どもが2万人いると言われており、また、現在は家庭環境も様々で、発達障害だけではない、様々な教育的ニーズのある子どもが増えているが、82項目の尺度を使った、IN-ChildRecordを作成しており、子どものニーズを科学的に把握することが可能である。
これまで日本は、学習指導要領の改訂など、教育内容としては変化させてきたが、教育システムは、19世紀より続く工場型教育のシステム(1人の先生対多数の子どもで、成果はテストのみで判断)を引き継いだものであった。しかし、家族構成の変化やAIの登場、平均寿命の増加など、子どもを取り巻く社会の変化により、時代に合わせた教育システムの変化が求められている。今のように全体を公平、平等にやろうとすると、レベルを下げることになり、中途半端になる。個別ニーズに応える教育に変えていかないと、人材が育たない時代になっている。
フランスでは、教育法典で、国は、障害のある子どもが通常の場において就学するために必要な予算と人的な措置を行い、障害のある子どもは、居住地に最も近い通常学校に学籍を登録された後、教育を受ける形態を選択することとなる。日本では、特別支援学校に入学するか、もしくは小学校にするかを保護者が選択し、決定するため、個人に責任を負わせている。
また、フィンランドでは、教育文化省が教育政策に関わり、政策指針の施行も10年ごとに更新されるが、地方自治体が教育カリキュラム、人材確保などの決定権をもち、さらに各校、校長に決定権を委ねている。また、特別支援教育が通常教育の中で行われるべきものと考えられており、リーダーになる人が、子どものときに障害児、問題児など社会的弱者と一緒にいる経験をすることが、非常に重要である。
イタリアは、公立の特殊教育学校及び通常の学校内に特殊学級が存在しない国であり、完全インクルーシブ(99.6%)を実現している先進的な国である。小学校は、通常25名定員で、障害児が在籍すると20名定員となる。また、障害児が在籍する場合、重度の場合は障害者1名に対し特別支援教員1名、軽度の場合は2名から4名に対し特別支援教員が1名加配されている。特別支援教員になるためには、大学卒業後2年間のコースの修了が必須であり、専門性が高い。インクルーシブ教育は、障害児のために行うのではなく、世の中の多様性を感じる優秀な人材を育てるため、すべての子どもたちのために行うものである。
これまで、IN-Childプロジェクトでは、2016年以降、宜野湾市、沖縄市、山口県下関市、千葉県大網白里市、酒々井町でモデル校、協力校があり、個別対応を含めて2,000件以上のデータを収集し、400件以上の個別教育プランを作成している。また、IN-ChildRecordの分析には多くの時間がかかるため、人材育成のために、研修会や資格研修会も行っている。これまであったツールは独立して単体であったが、IN-ChildRecordは構造化されており、関係性など細かい分析ができるようになった。そのため、専門性が必要になり、半年間ほど研修を受けないと資格が取れない。人材が必要なのは企業であることから、民間のお金を入れて研究を進めている。
本プロジェクトでは、IN-Childプロジェクトだけではなく、乳幼児から社会人まで継続した支援が出来るように、乳幼児向けがCRAYONプロジェクト(クレヨンプロジェクト)、小中学生向けがIN-Childプロジェクト、高校生以上向け、キャリア形成のためのScaleC3(スケールシーキューブ:ScaleforCoordinateContiguousCareer)も開発している。また、システムの構築も行っている。
CRAYONRecordは、保育士等が子どもの様子を観察しながらチェックしていくツールで、子どもの概念形成を計るものである。アメリカやイギリスでは、3歳から5歳の乳幼児期の教育が一生を左右するという研究結果が出ている。中学で数学が0点の生徒は、幼児期に形成される数概念ができていないことがわかっている。また、文章問題が理解できないのも、言語概念が形成されていないためである。現在は、昔と子育て環境が変わってきており、概念形成のバランスが悪くなってきている。
高校生以上向けのScaleC3は、パーソナリティとキャリアの関係性を総合的に分析して、その人にふさわしいプランを作るものである。高校生になると数学の能力や英語の能力より大事なものは、社会に出て仕事をする能力である。生徒自身が評価することもできるようになっており、生徒の自己評価と教師の他者評価では、「心と体の健康」、「情報表出」、「こだわり」の項目で、大きな差が出ている。生徒が思っている自分と先生がみている生徒の様子の差がわかるため、学校全体で、どこを直せばいいかがわかってくる。
乳幼児期から成人まで科学的なツールでデータをつなげていき、自然に問題を把握し、解決しながら、子どもの成長を助けていくのが、日本では有効である。

(5)主な質疑応答

問:イタリアでは、特別支援専門の教師に加え、介助員が付くこともあるのか。
答:重度の障害のある子どもでは、寝たきりの場合もあるので、ヘルパー(介助員)が付くこともある。
問:イタリアの学校はすべてバリアフリーになっているのか。
答:予算との兼ね合いがあり、すべてがバリアフリーになっているわけではないが、イタリアでは、人的配置、専門家の養成、我々の子どもの人権を我々が守る、という意識があり、そのことが重要である。
問:イタリアのインクルーシブ率99.6%の残り0.4%はどういったことか。
答:そもそもこの学校は特徴があって、障害児を受け入れないという学校が0.4%ある、ということである。
問:乳幼児教育の数概念、言語概念とはどのようなものか。
答:数概念は、5歳で5個をぱっと見でわかるかどうか、優秀な子は7,8個をぱっと見でわかるようである。また、りんごについて、「赤い」、「甘くておいしい」、「木になっている」という子と、「甘くておいしい」とだけしか概念がない子では、思考や読解力にかなり差が出てくる。概念が総合的に出来ている子は、「りんご」がどの文章に表れても、豊富に文章を理解できる。一つしか概念がない子は、文章の含みのある内容が理解できない。読解力が落ちているというのは、概念形成がしっかりできていないということである。
最近流行している遺伝子検査と違うのは、教育と環境によって形成されるその人そのものを計っているところである。
昔は、子どもの数が多かったので、出来ていない子も、出来ている子に引っ張られていたが、子どもの数が少なくなって、引っ張る集団が作れなくなっており、出来ていない子が目立つようになった。また、昔はそういった人でもやれる労働があったが、今は一人の人に要求される労働のレベルが高くなってきたため、様々な概念形成が出来ていないとこなせなくなっている。
そのため、概念形成が造られる幼児期が大事であり、保育園の専門性をあげる必要があると感じている。
問:幼児期に概念形成を教えている塾があるが、どうか。
答:昔は村社会で、平均して概念形成が出来ていたが、今は、子ども一人一人は全く違う状態になっている。現在、概念形成を造る方法論は、多く存在するが、科学的に計ることができていなかった。概念形成ができている部分とできていない部分を計っていないので、足りないところを補うことができていない。長けている概念は伸ばしていくようにしないといけないのに、一斉に同じレベルで教えているため、効果のないものとなっている。

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5宜野湾市立嘉数中学校(沖縄県宜野湾市)

(1)日時:令和2年1月15日(水曜日)15時40分~16時40分

(2)調査項目:特色ある特別支援教育活動について

(3)経過

初めに、小路委員長からの調査協力に対するお礼のあいさつの後、宜野湾市立嘉数中学校長から歓迎のあいさつがあった。
あいさつの後、担当教諭から主体的に学習に取り組む生徒の育成を目指したインクルーシブ教育の推進について説明があり、その後、質疑応答を行った。
続いて、校内施設の見学を行った。

(4)概要説明

宜野湾市立嘉数中学校は、生徒数733名、教職員数65名の大規模校で、生徒会及び部活動に力を入れている。5年前までは、正門に生徒がたむろし、授業中に徘徊するような、授業規律の整わない学校だった。現在は、日々の「あいさつ」と「掃除」を徹底し、8割の生徒を巻き込む、ぶれない強い集団をつくる取り組みをしている。
一昨年からは、琉球大学の韓教授とインクルーシブ教育の共同研究をしている。発達障害の可能性があり、特別な支援を要する児童生徒は、各クラスに6.5%いると言われており、これまでその実態把握や支援方法は教員の主観・経験に依存していたことから、支援内容が不確かなことが多かった。このため、発達障害への理解と適切な支援が不十分なことに起因するトラブルが多く、生徒指導上の重要課題の一つであった。教員は無力感や疲弊感を感じ、学校の雰囲気も悪化、学習不振や学力の二極化という負の連鎖を招いていた。学び残しの多い生徒には、学習の無力感からストレスを抱えることが多く、授業の妨害や、校内を徘徊する生徒もいた。そのため、生徒が何に対してどう困っているのかを的確に把握し、教員の共通理解を図り、組織的な支援が必要であると考え、この研究を始めた。そして、生徒指導困難校という意識から、学び直しの多い生徒が困っている学校・学習不振校と、実態を捉え直した。
2017年度にインクルーシブ教育の取り組みを始めたが、まず、生徒の個を理解するよう研修を進めた。2018年度には琉球大学の作成したインチャイルドレコード(IN-ChildRecord:ICR)を活用して学年単位で組織的な支援ができるように進めてきた。2019年度にはケース会議を定時勤務時間内に確保して組織的支援につなげることや授業研究を実施してきた。
インチャイルド(IN-Child)とは、発達の遅れ、知的な遅れ又はそれらによらない身体面、情緒面のニーズ、家庭環境などを要因として、専門家を含めたチームによる包括的教育を必要とする子のことである。また、ICRとは、教育的な支援ニーズを把握するための診断・評価ツールで、身体面、情緒面、生活面、学習面の4つの側面(14領域、82項目)から総合的に子どもの実態を把握するための科学的ツールである。
韓教授をはじめ琉球大学の先生を招いて校内研修を開催するなど、ケース会議では該当生徒のICRの点数化、意見交換、支援方法の決定などを行ってきた。授業中に座ることが出来ずおしゃべりしてしまう、ある生徒の例では、不注意で多動性・衝動性があり、ADHDの傾向が見られたが、座席を最前列の先生の近くにする、プリント配付係として動き回れる時間をつくる、合唱コンクールのパートリーダーとして責任感を持たせる、などの手立てを行った結果、半年後、授業中に集中できるようになり、席次が上昇、気になる行動が減少していった。また、クラス全体が落ち着くようになるなど、相乗効果があった。これまでの実践で見えてきた、支援の手立てである座席の工夫、声かけの工夫、友達の協力、個別の学習支援を組み合わせることで効果があることが実感できた。
昨年度は、時間外である火曜日18時からケース会議を実施していたため、全員が参加できない、雰囲気、内容等を全員で共有できないなどの問題点があった。今年度は、第2・第4木曜日を早日課とし勤務時間内に定例化し、教員の負担の軽減を図っている。また、インクルーシブ教育を軸とした授業研究を実施している。
今後の校内研修では、インクルーシブ教育に関する理論研修、チーム支援を進めるためのケース会議、これらに連動した「授業研究」を実施していきたいと考えている。

(5)主な質疑応答

問:この取り組みを進めていく時、教員にかなり負担になったと思うが、どうか。
答:今年度、ケース会議の開催日は、通常8時55分始業のところを8時35分始業の早日課とし、帰りの時間と合わせて1時間の時間を捻出してケース会議を開催するようにし、教員の負担にならないようにしている。
問:この取り組みを始めた時、支援が必要な生徒はどのくらいいたのか。
答:1クラス7人から8人いた。全員のケース会議は出来ないので、10人程度について、ケース会議を2、3度行った。その中で多くのヒントが得られ、効果のあった手立てを類似傾向のある生徒に行うと、生徒が変わってくるなどした。1、2年前は大変だったが、現在は楽になっていき、教職員一人ではなく、教職員みんなでやっていくことで、ストレスもさらに軽減してきている。

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6沖縄県立博物館・美術館(沖縄県那覇市)

(1)日時:令和2年1月16日(木曜日)9時~11時

(2)調査項目:博物館・美術館の管理運営について

(3)経過

初めに、小路委員長からの調査協力に対するお礼のあいさつの後、沖縄県立博物館・美術館副館長から歓迎のあいさつがあった。
あいさつの後、同副館長から沖縄県立博物館・美術館の運営・特色等について説明があり、その後、質疑応答を行った。
続いて、館内施設の見学を行った。

(4)概要説明

沖縄県立博物館・美術館は、2007年(平成19年)に那覇市おもろまちに開館した。おもろまちは、かつてアメリカ軍の将校の住宅地だった場所で、第2の新都心として開発されたまちである。なお、旧沖縄県立博物館は、1966年(昭和41年)、首里城近くの首里大中町の尚家が実際に住んでいた場所にあった。
当館は、地下1階、地上4階の博物館と美術館の2つの機能を有する施設で、敷地面積31,287平方メートル、延べ床面積23,721平方メートルとなっている。建設費は、約215億円で、その約40%の87億円が用地購入費となっており、旧館に比べると施設規模は約4倍となっている。収蔵庫があるが、博物館関係で10万件、美術館関係で5千件収蔵しており、計画よりかなり速いペースで狭くなってきている。外観は、グスクの石垣をイメージしたものであり、2008年度グッドデザイン賞を受賞している。外壁は、琉球石灰岩、海砂、白セメントを混ぜたものを使用している。琉球石灰岩は確保しやすく、また、石灰岩があるおかげで土壌がアルカリ性となり、人骨が多く出土していることから、人類のルーツに迫る意味で、最近注目されている。エントランスは吹き抜けとなっており、クバの木(ビロウ)を模したデザインとなっている。博物館の展示室は、二重の回廊をもった複合構造になっている。また、美術館の展示室は、沖縄県に関係する写真家や版画家の作品を展示している。
事業としては、調査研究、資料収集・保存、常設展示、企画展・特別展、教育普及事業などのほか貸館も行っている。調査研究等の学芸部門等は県が行い、施設管理・運営等は指定管理者である一般財団法人美ら島財団が行っている。なお、美ら島財団は首里城や美ら海水族館の指定管理者にもなっており、3箇所を周遊する企画もしている。また、昨年の首里城焼失後は、首里城見学を予定していた修学旅行生などの受け入れ協力を当館でも行っている。人員は、県職員24名を含む県直営部分が33名で、指定管理部分が21名となっている。来館者目標は開館時に50万人としたが、近年はほぼ50万人を超えており、今年度も達成する見込みである。

(5)主な質疑応答

問:収蔵庫に収蔵する基準はどうか。
答:沖縄に関係するもので時代的に価値のあるものを収蔵している。各分野の学芸員が精査して判断しており、収蔵を断るものもある。
問:開館当初から指定管理であるのは、経費削減のためだと思うが、常設展・企画展だけではなく、今あるもの、過去のものを後世に残す役割も重要だと思う。資料収集のための予算は潤沢にあるのか。
答:資料収集については、県が行っている。どういったものを収集するかについては、県にある委員会が決めたものを、基金を活用して購入しており、予算が潤沢にあるわけではない。
問:指定管理者が行う企画展はどのようにしているのか。
答:企画展の年間計画をたてるが、まず、県の企画展を入れて、空いている期間に指定管理者の自主企画を入れている。企画展のために、大型で状態が悪いものを収蔵庫から出すときには、保険をかけているが、通常の館内の移動の場合は保険はかけていない。
問:指定管理の運営状況はどうか。
答:指定管理者は、県からの委託料(指定管理料)と入場料収入で運営しているが、予想以上に光熱水費などがかかっていて運営は厳しいようである。おきみゅーメンバーズ(年間パスポート)やワンデーパスポートなど指定管理者の発案での取り組みもしている。
問:各年の入館者にばらつきがあるが、どうしてか。
答:指定管理者が集客力のある企画展示が出来なかったときに来館者が減っている。近年外国人など沖縄への観光客は増えているが、来館者はそこまで増えていない。外国人向けでは、英語、中国語、韓国語、スペイン語等に対応した音声ガイドを備えたり、2年前からキャッシュレス決済、昨年は各言語対応のチケット販売機を導入しているが、展示の表記についてはまだ足りないと感じている。
問:貸館スペースの利用率はどうか。
答:例えば、3つある県民ギャラリーは、一日1万円程度で借りられる。200名が入る講堂や講座室などもあり、博物館と美術館に関係のない就職説明会にも使われている。交通の便の割に安いことから、稼働率は高い。

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参加者名簿

《委員》

職名 氏名 会派
委員長

小路正和

自民党

副委員長

川名康介

自民党

委員

吉本

自民党

委員

石橋清孝

自民党

委員

自民党

委員

鈴木ひろ子

自民党

委員

伊藤寛

自民党

委員

平田悦子

千葉民主の会

委員

赤間正明

公明党
委員 水野友貴 千翔会

《随行》

所属・職名 氏名 備考
教育長

澤川和宏

 

教育庁財務課長

榊田善啓

 

教育庁財務課副課長

宇井野哲男

議事課主幹(併任)

議会事務局総務課班長

福嶋

 

議会事務局政務調査課主事

田中ゆり

 

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日程表

月日

場所

備考

1月14日

羽田空港

 

8時50分

JAL907便

那覇空港

11時50分

 

 

史跡座喜味城跡

14時30分

16時30分

調査

宿舎

 

 

 

1月15日

宿舎

 

 

 

沖縄県教育委員会

9時00分

10時10分

調査

那覇市立寄宮中学校 10時40分 11時30分 調査

琉球大学教育学部

13時20分

15時20分

調査

宜野湾市立嘉数中学校 15時40分 16時40分 調査

宿舎

 

 

 

1月16日

宿舎

 

 

 

沖縄県立博物館・美術館

9時00分

11時00分

調査

那覇空港

 

14時35分

JAL910便

羽田空港

16時50分

 

 

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お問い合わせ

所属課室:議会事務局議事課委員会班

電話番号:043-223-2518

ファックス番号:043-222-4073

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