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診療科・部門紹介

核医学診療部

診療部の紹介

核医学診療部では、ラジオアイソトープという微量の放射線を出す薬を目印として用い、主としてがんの診断を行っています。放射線というと被曝を心配される方も多いと思いますが、核医学の検査で患者さんが受ける被曝量は約2mSv(ミリシーベルト)ほどで、これは日本人が1年間に自然界から受ける放射線の量とほぼ同じですので、検査を受けたことが原因で、将来がんや白血病になる危険はまったくありません。むしろ、核医学検査は患者さんにとって、とても安全で正確な検査法です。

現在、核医学診療部で最も多く行われている検査は骨シンチグラフィという検査で、年間約1800件行われています。乳がんや前立腺がんの骨転移を検出するにはこの方法が一番鋭敏で確実です。次にFDG-PET/CTという検査が年間約1600件行われています。がんの転移や再発部位の診断、最近ではがんの治療後の効果判定にも有用であることが分かり悪性リンパ腫、頭頚部腫瘍や食道がんの放射線治療や化学療法の後に頻繁に行われています。

また、通常の核医学画像に加え、SPECT(スペクト)と呼ばれる断層画像撮像法を用いて、CTやMRIなどと同じような断層画像を撮像し、診断精度を向上させています。SPECTは通常局所しか撮れないのですが、当診療部ではがん患者さんの全身検査に全身SPECTを応用しています。この方法は大変有用であり、体のどの部分に異常があるかを一回の検査で知ることができます。

診断だけでなく、ラジオアイソトープによる治療もおこなっています。現在は主に甲状腺がんの術後に、放射性ヨウ素による内用療法を行っています。甲状腺がんの微小な肺転移には内用療法がとても有効です。放射性ヨウ素の内用療法はバセドウ病でもきわめて安全な治療法と考えられていますので、甲状腺がんだけではなく、バセドウ病に対してもヨウ素内用療法を行っています。また2016年12月より骨転移を有する去勢抵抗性前立腺がんの新しい治療も導入しました。

核医学診療部受診について

核医学検査は、担当医からの依頼によって行います。骨シンチグラフィなどの検査のご予約は、核医学診療部受付で行います。

検査結果は、検査終了後ただちに専門医が読影し当日中に電子カルテ上に報告されます。患者さんへの結果の説明は、後日担当医が行います。

PET/CT検査の予約は地域医療連携室で行っています。

PET/CTについての説明はこちらからご覧になれます。

※現在は個人の方からの受け付けは行っておりません。医療機関からの紹介が必要となりますので、主治医にご相談ください。

他院よりの検査依頼について

他院の患者さんの検査も受け付けています。検査を希望される場合は、主治医が検査をお申込みください。

核医学検査受付電話:043-264-5431(内線3501)

この検査を受けるには、紹介状が必要です。必ず紹介状をご準備いただき当日ご持参ください。始めて当センターで検査される方は、1階カウンターで初診の受付を済ませてから核医学診療部外来(2階)にお越しください。

詳しくは「核医学検査のご予約」をご覧ください。

検査予約をされた患者さんへ

核医学検査では、特殊な薬を使って検査を行いますが、この検査薬は検査を予約された患者さんのために注文し、保存が効きません。無断で検査をキャンセルされますと高価な薬が無駄になってしまいます。ご予約は必ず守ってください。やむを得ぬ事情でキャンセルされる場合は、できるだけ早くご連絡ください。また核医学検査は、検査薬を注射してから一定の時間をおいた後、撮影しますので時間がかかります。予約の時間に遅れますと次の患者さんに迷惑がかかりますので時間に遅れないよう余裕を持って来院してください。

骨転移を有する去勢抵抗性前立腺がんの新しい治療について

前立腺がんは近年男性において増加している“がん”です。前立腺がんは骨に転移しやすい“がん”であり、核医学診療部では、ほとんどの前立腺がん患者に対し骨転移の早期検出のために定期的に骨シンチグラフィ検査を行っています。検査で骨転移が検出された場合には、骨転移に対し、これまで主にホルモン治療が行われていました。すなわち、前立腺がんは男性ホルモンに依存し発育増殖するため、睾丸摘出などの外科的去勢やLHRHアゴニスト、抗アンドロゲン剤などの薬剤による去勢で治療効果を得て来ました。

しかし、これらのホルモン治療は一時的には効果があっても、多くの症例では5年以内にがんの勢いが増してきて去勢に対して抵抗性となる状態に移行していきます。

2016年6月から、これらの骨転移を有する去勢抵抗性前立腺がんに対して、有効な治療薬が発売され新しい治療が可能になりました。

塩化ラジウム223という薬剤で、体内ではカルシウムと同じように骨代謝が盛んな部位に取り込まれ、アルファ線という放射線を病巣から放出します。

アルファ線は、これまでのガンマ線、ベータ線に比べ質量が重く、抗腫瘍効果が高いのが特徴です。当センターでは、骨転移を有する日本人の去勢抵抗性前立腺癌患者を対象とした治験で第II相試験に参加し、開発の段階から塩化ラジウム223の治療に関わってきました。19カ国、136施設で3年間行われた国際共同第III相臨床治験では、対照群に比べ病的骨折などの骨有害事象の発生を7ヶ月遅らせること、予後が3ヶ月延長されるなど、この薬剤が去勢抵抗性の骨転移に対して有効であることが分かりました。

千葉県がんセンターでは、この塩化ラジウム223を用いた去勢抵抗性前立腺がんの治療を行っています。泌尿器科の担当医が、骨転移を有する去勢抵抗性前立腺がんの治療に塩化ラジウム223が望ましいと判断された場合には核医学診療部を受診していただき、治療の適応があるかどうか決定します。原則として毎月1回薬剤の投与を6ヶ月継続して行います(下図)。外来での治療が可能ですが、放射性同位元素を用いているので、汚染を拡大させないよう治療にともなう日常生活の注意点を守っていただく必要があります。

この“塩化ラジウムによる前立腺がん治療”に関するご質問は、泌尿器科担当医または核医学診療部へお問い合わせください。

投与回数

2016年度診療実績

項目別件数

項目 件数
シンチグラム(部分・静態)件数 240
シンチグラム(部分・動態)件数 3
シンチグラム(全身)件数 1884
PET/CT件数 1588
アイソトープによる内用療法治療件数 38

医師のご紹介

核医学診療部 部長

久山 順平くやま じゅんぺい 千葉大学医学部卒
【指導医、専門医、認定医など】
  • 日本核医学会 専門医
  • 日本放射線学会 専門医
  • PET核医学認定医
【専門分野/得意分野】
  • 専門は核医学診断

医長

小川 和行おがわ かずゆき 金沢大学医学部卒
【指導医、専門医、認定医など】
  • 日本核医学会 専門医
  • 日本放射線学会 専門医
  • PET核医学認定医
【専門分野/得意分野】
  • 専門は腫瘍の画像診断