千葉県ホームページへ

ここから本文です。

千葉県議会 > 本会議・委員会 > 常任委員会 > 県内調査報告/県外調査報告 > 令和6年度健康福祉常任委員会県外調査報告書

更新日:令和7(2025)年4月24日

ページ番号:752875

令和6年度健康福祉常任委員会県外調査報告書

令和6年10月21日

千葉県議会議長 瀧田 敏幸

健康福祉常任委員長 川名 康介

本委員会が県外調査を実施したところ、その概要は下記のとおりでした。

  1. 用務:健康福祉常任委員会県外調査
  2. 調査先
    (1)日本海総合病院(山形県酒田市)
    (2)荘内病院(山形県鶴岡市)
    (3)社会福祉法人月山福祉会(山形県鶴岡市)
    (4)仙台市役所(宮城県仙台市)
  3. 期間:令和6年10月16日(水曜日)から10月18日(金曜日)
  4. 概要:別添のとおり

調査の概要について

1 日本海総合病院(山形県酒田市)

(1)日時:令和6年10月16日(水曜日)14時から16時

(2)調査項目:地域医療連携の推進について

(3)経過
 初めに、川名康介委員長の挨拶の後、独立行政法人 山形県・酒田市病院機構理事長から歓迎の挨拶があった。次に、地域医療推進連携法人 日本海ヘルスケアネット推進室調整専門員から日本海ヘルスケアネットについて説明があり、説明員入れ替えの後、理事長から医療DXについての説明を受けた。その後、質疑応答及び施設内(医療MaaSの車両)の見学を行なった。

(4)概要説明

【地域医療推進連携法人日本海ヘルスケアネットについて】
 山形県には4医療圏があり、日本海総合病院がある庄内二次医療圏は鶴岡市と酒田市を中心とした2市3町で構成されており、面積は神奈川県とほぼ同じ。人口減少が続いており、過疎化と高齢化が急速に進む典型的な地方の状況で、医療介護人材の確保も中小の医療機関において介護施設のスタッフ確保については非常に厳しい状況となっている。
 設立にあたっては、病院機構が地方独立行政法人であるため、市議会と県議会において議決を要する事項があり設立までに2年ほどかかっているが、参加法人間での準備は比較的スムーズであった。
 日本海ヘルスケアネットは平成30年4月に酒田市内の9法人で設立され、現時点では酒田市を含む13法人となり、地域の主要な機関がひととおり加入している状況となっている。
 特に医師会、歯科医師会、薬剤師会の三師会が加入しているところが全国的にも珍しい構成となっているが、従来のように病院や介護施設が単独で経営を考え、自分のところが儲かっていればいいというような部分最適ではなく、地域全体の医療介護の将来にわたっての持続性というのをどうやって確保していくか、競争よりも協調していこうというというのが根底に流れるキーワードになっている。
 連携事業では、人事交流や透析患者の集約化、地域フォーミュラリや訪問看護ステーションの再編統合、連携推進法人内での病床調整や合同での求人説明会を行っている。
 地域フォーミュラリについては日本全国に広まりつつあるが、酒田が国内初であった。候補となる医薬品は、診療所の医師が処方する医薬品が主軸であり、さらに高血圧や糖尿などに処方される医薬品も対象としている。選定基準は、検討委員会で地区での調剤実績、シェア、安定共有を勘案しながら原薬の産地、薬価、調剤印字などを総合的に評価、点数化して選定している。導入による経済効果は北庄内の調剤薬局のデータで比較したところ、年間1億4,330万円の削減効果があり、院内処方を含めると年間2億円前後の削減効果と推測している。
 ヘルスケアネット立ち上げ後の変化として、参加法人のトップが直接顔を合わせて地域の未来像を共有し、連携や機能分担について本音で話し合う場ができ、各法人の様々な職種間で連携が進み業務の効率化に繋がっている点がある。
 今後の展望・課題は、開業医の高齢化によるクリニックの減少による地域かかりつけ医の継続性、財務整理、外来機能をどうするか等の調整作業が必要であること、参加法人の不採算部門などをどうするかという問題等がある。

【医療DXについて】
 山形県では、従来二次医療圏ごとに地域の情報連携ネットワークを構築してきたが、二次医療圏を越えて治療することがあるため、令和元年3月から山形県全体での広域連携をスタートさせ、県内に住んでいれば全て医療情報がわかるようになっている。更に隣接の秋田県からの外来患者があることから、令和2年4月に「秋田・山形つばさネット」をスタートさせた。
 また、日本にある様々なユニオンでID-Linkを使用しているところが多いため、令和6年10月から全国ID-Link EHRをスタートさせた。一方国が進める全国医療情報プラットフォームもあるが、診療録の開示や画像が入っていないため、組み合わせて使っていくのが良いのではないかと思っている。
 また、現在Teamというシステムを活用して様々な医療介護情報を地域で共有しており、今後は急性期から慢性期、さらに介護施設のベッドの調整などのためにコマンドセンターを導入し、在宅患者の状況をモニタリングするモニタリングセンターを日本海総合病院内に作り、在宅介護の経過観察をするなども考えている。
 医療介護の連携では、酒田市と組んでキャンピングカーを導入して医療MaaSを進めている。看護士が乗って患者の自宅まで行き、診察とオンライン診療をするということで、今までは医師が半日から1日かかったところが外来診療の合間に行うことができるようになった。現在、山形県では患者の自宅での実施が不可のためコミュニティーセンター等の駐車場などで受診するよう国と調整している。
 今後は酒田地区の薬剤師会会員薬局を「いろは蔵パーク」に開設し、日本海総合病院が酒田駅といろは蔵パークと病院の無料シャトルバスを運行させる構想がある。

(5)主な質疑応答

問:医師が不足した時に、医師をどうやって確保しているのか。大学病院との関わりなどはあるのか。
答:当院では、山形大学、東北大学、秋田大学と連携しており、人材の派遣もお願いしているが、大学自体が医師派遣の医師が減っており、派遣を要請しても通常なかなか派遣してもらえない状況のため、65歳の定年を延長して働いていただいている。場合によっては一般公募で採用することも考えている。
問:患者情報を連携できるようになるということで、セカンドオピニオンなどで医師同士のあつれき等はないのか。
答:悪い意見は出ていない。使い方として、日本海総合病院での診断記録をかかりつけ医で説明するような使い方や、かかりつけ医以外の医師がデータを見てアドバイスをすることもある。また、ケアマネージャーも在宅診療の際に利用したりもしている。

2 荘内病院(山形県鶴岡市)

(1)日時:令和6年10月17日(木曜日)10時から12時

(2)調査項目:医療DXの取組について

(3)経過
 初めに、鷲見副委員長の挨拶の後、鶴岡市議会副議長及び鶴岡市病院事業管理者から歓迎の挨拶があった。次に、荘内病院事務部長及び参加主任医長兼婦人科医長から遠隔アシスト手術について説明があり、説明員入れ替えの後、小児科医長兼集中医療センター副センター長から重症部門システムについての説明があり、説明員入れ替えの後、AIを活用した勤務表作成システムについて副院長兼看護部長と看護主幹から説明を受けた。
 その後、質疑応答及び施設内(手術室及び医療MaaS車両)の見学を行なった。

(4)概要説明
【遠隔アシスト手術について】
 遠隔アシスト手術導入の経緯は令和2年7月に国立がん研究センター東病院とがん医療に関する連携協定を締結したことにより、遠隔アシスト手術の実施へ展開することとなった。協定締結の背景は鶴岡市に慶應義塾大学先端生命科学研究所が設置されており、メタボローム解析技術を核としたバイオ関連産業の集積が進展し、平成28年の政府関係機関移転基本方針に国立がん研究センターのがんメタボローム研究分野の研究拠点の鶴岡市への設置が盛り込まれ、平成29年に山形県、鶴岡市、国立がん研究センター、慶應義塾の4者が協定を締結し、本格的に国がんプロジェクトを開始することとなり、第2期プロジェクトにおいて「遠隔医療体制の構築」が盛り込まれることとなった。
 荘内病院の体制について、婦人科で内視鏡の技術認定医は山形県では5、6名おり、うち2名が荘内病院に所属している。最初は外科での遠隔アシスト手術がメインに準備を進められていたが、産婦人科も参加するようになった。遠隔アシスト手術は2020年12月に外科の第1例目手術があり、現在は26件で内婦人科は8件となっている。
 遠隔アシストのメリットとしては、指導医が現地に来なくても手術指導支援を行うことができる、患者にとっても手術の安全性がより高まることや、移動がないので身体的、精神的、経済的な負担軽減が期待できること、また、若手外科医の教育機会も広がるため、医師確保にも良い影響があると考える。かつての手術教育では、指導医と研修を受ける医師が患者の周りにいて、全員が手術の内容を見られない場合もあったが、本手術であれば複数人で指導を受けている状況を共有し繰り返し見ることができるので、症例が少なくても何度も学ぶことができる。

【重症部門システムについて】
 重症部門システムは、集中治療している患者の診療録を生体情報モニターや医療機器から自動的に記録を盛り込むシステムであり、患者の安全性向上と医療スタッフの負担軽減に寄与するものとして提案から2年かけて導入し、現在では手術室、ICU,HCU,NICU,救急外来に導入している。
 システムを導入したことにより、リアルタイムの患者の情報や処置情報が医療スタッフ間で共有することができ、薬剤投与の指示の明確化により、投与もれの防止や、看護師のドクターに確認する待ち時間が軽減されるなど、かなりの効果が出ている。また、ベッドサイドの情報が自動的に電子カルテへ飛ぶので、手間とミスが減り、その分患者のケアの時間へ回すことができるようになった。
 ドクターとしては、システムを導入前は処置と並行して抗菌薬等の薬剤投与量の計算を自分でしなければならなかったが、システムを導入後は必要な情報を入力すると薬剤投与量を自動計算で手間が省けるのはとてもメリットが大きい。
 また、手術室にも導入しており、手術中の患者データも電子カルテに飛ぶようになっている。
 システムを導入したことにより、患者への安全面の向上や医師・看護師・コメディカルの時間節約や業務負担の軽減が図られた。

【AIを活用した勤務表作成システムについて】
 勤務表の作成に関しては、病院や病棟のルール、労働基準法、施設基準などたくさんの制約があり、作成者の手腕によって出来が違うことがある。
 今までも勤務表作成システムはあったが、機械的にはめ込んで作成するため作成不可能となったりすることがあり、結局のところは人が作成していた。
 そこで、今回AIを活用したシステムを導入することにより、勤務人数や組み合わせなどのいろいろな勤務条件を設定して、人が作成するものに近い質のものを短時間で出来るようになり、勤務表の作成時間が大幅に減少することができた。

(5)主な質疑応答
【遠隔アシスト手術】
問:遠隔ロボット手術をするにあたって、ある程度の経験がないと携わることをさせないのか。
答:何かあった時には現場で解決しなければならないことから、自施設で解決できる手術の難易度であることが必要と考えている。
問:説明内の動画でアシスト手術があることによって副産物的に医師不足が解消されたというような説明があったかと思うが、どのような取組をされているのか。
答:医師不足は全国的な問題であり、アシスト手術のシステムがあることが直接医師不足解消になるわけではないかと思うが、このシステムをきっかけに来てもらえればと思っている。
【重症部門システム】
問:システムに繋がっているシステムは専用PCか、またはモバイルでも対応しているのか。
答:院内かつシステムをインストールしたPCのみで接続可能である。
問:将来的にAIによる診断やアシスト導入を見越したシステム導入なのか。
答:現在、遠隔ICUが始まっているところがあるが、最終的にAIが投与薬剤を決定するようなことには、すぐにはならないと思っている。
【AIを活用した勤務表作成システム】
問:ある期間だけ時差出勤するような設定は出来るのか。
答:可能である。
問:シフトの入力は誰が行っているのか。
答:役付き職員が輪番制で担当しており、職員からのシフト希望を聞き取ってシステムに入力している。
 他社のシステムでは各職員が直接希望を入力できるようなものもあるが、完成度が高いシフトを作成できることに重点を置いているため、現在の方式を採用している。

3 社会福祉法人月山福祉会(山形県鶴岡市)

(1)日時:令和6年10月17日(木曜日)13時30分~15時

(2)調査項目:農福連携の取組について

(3)経過
 初めに、鷲見副委員長の挨拶の後、社会福祉法人月山福祉会理事長から歓迎の挨拶があった。次に、社会福祉法人月山福祉会理事長から農福連携に関する現状についての説明を受けた。説明終了後、質疑応答及び施設内(リサイクル工場、畜舎)の見学を行った。

(4)概要説明
【法人概要】
 昭和63年に「鶴岡地区失語症友の会」を設置主体に無認可の小規模作業所として開所した。平成15年に社会福祉法人認可を受け、平成16年には「作業所月山」を新施設で開所した。平成19年に障害福祉サービス事業「就労継続支援B型」開始、リサイクル工場を開設しペットボトルの完全フレーク化を実現。平成23年には「月山ドリームファーム」を立ち上げ、短角牛・食鶏の飼育を開始した。令和2年からは庄内町放牧場の指定管理者となり、44ヘクタールの放牧場で放牧を行っている。
 完全国産牧草牛として付加価値の高い牛を飼育・販売することで、利用者の工賃向上を目指している。

【農畜産事業について】
 農畜産事業については、冒険的にチャレンジしているというのが実態であり、まだ黒字には至っていないが、将来的には黒字になるという展望の下に行っている。
 黒字になっていない理由として、短角牛を一貫経営、繁殖牛に子どもを産ませ、雄であれば肥育牛、雌であれば繁殖牛というようにしているので、なかなか頭数が増えていかず、肥育牛の出荷頭数も伸びていない。今現在短角牛が55頭いるが、出荷頭数は年間8頭程度であり、これが年間15頭になれば黒字になる見込みである。
 そもそもは、当法人は自前給食で野菜を少し作っていたので、土と触れ合いながら畑をやろうというところから始まり、たまたま中古の牛舎が売りに出ていたので購入した。それで牛も買おうということになり、草だけで育つことと、東北岩手が発祥という2点から短角牛を購入した。ところが、岩手の生産農家に視察に行くと、短角牛は市場に出しても価格が安くて駄目だという話であった。なぜ駄目なのかというと、消費者はピンク色の肉に白い脂肪が入り、口に入れればとろけるようなイメージを持っているのに、短角牛は脂肪がなく、噛めば硬く色も赤黒く駄目だと。そのため、草だけでなく黒毛と同じように配合飼料を食べさせているという話だった。
 本場の岩手でもそのような状況であれば、当法人もそうするしかないかと配合飼料を食べさせたりもしていたが、あるとき、利用者の母親に有名な医師を紹介してもらい、その方に牛を見てもらったところ、脂肪が薄黄緑色になるのは草だけで育てた証拠なので、このまま草だけで育ててくださいと助言を受けた。さらに、北海道の八雲牧場で短角牛の飼育を研究している北里大学獣医学部を紹介してもらい、北里大学から短角牛の飼育に関する助言をいただいている。
 令和2年からは庄内町放牧場の指定管理者となり、44ヘクタールの牧場で、5月下旬から10月下旬まで放牧し、付加価値の高い完全国産牧草牛として飼育している。また、牧場の維持管理に必要なトラクター等はクラウドファンディングにより調達した。
 牛の販売先については、北里大学から紹介してもらった、肉の卸しの大手企業に、今ではA4ランクの価格帯で一頭買いしてもらえるようになった。そのため販売は安定したという状況である。
 畑についても自前と借地合わせ約3.5ヘクタールの土地で、ブルーベリー約400本、いちじく約50本を育てていて、収穫からジャム製造、瓶詰め出荷まで一貫して行い販売している。さらに、グミの木も約50本ほどあり、こちらもジャム化しようと研究している。

【リサイクル事業について】
 農畜産事業の赤字をカバーしているのがリサイクル事業である。鶴岡市のゴミステーションに出るペットボトルは年間約200トンで、その8割を購入し、リサイクル工場にて洗浄粉砕、キャップ、ラベルを除去したAフレークに加工し、ペットボトルの原料として出荷している。

(5)主な質疑応答

問:1町歩に1頭ぐらいなのか。
答:短角牛は1年間で約1ヘクタール分の草を食べる。そのため、年の半分を放牧させる場合、44ヘクタールではだいたい80頭程度である。44ヘクタールでは100頭から110頭が限界だと思う。
問:出荷までは何年かかるのか。
答:短角牛は3年で、600キロを目標としている。

4 仙台市役所(宮城県仙台市)

(1)日時:令和6年10月18日(金曜日)10時~12時

(2)調査項目:医療過疎地域における遠隔診療の取組について

(3)経過
 初めに、川名康介委員長の挨拶の後、仙台市議会事務局次長から歓迎の挨拶があった。次に、仙台医師会会長及び仙台市まちづくり政策局プロジェクト推進課長から医療過疎地域における遠隔診療の取組についての説明を受けた。その後、質疑応答及び施設内(テレプレゼンスシステム「窓」、診療カー)の見学を行った。

(4)概要説明
 仙台市は平成30年からオンライン診療に係る取組の検討を進めているが、前段として、平成27年に国家戦略特区の指定を受けており、この国家戦略特区の既存メニューである「オンライン服薬指導」をきっかけに、医療過疎が進む地域で、いかに持続的な医療体制を確保していくかという問題意識で、取組を進めてきた。
 仙台市においても高齢化の進行や、医師の働き方改革などの動きがある中、持続的な医療体制の確保が課題となっていたところから、受診する側、診療する側双方の負担軽減に向け、質の高いオンライン診療を目指した。
 仙台市の中でも、診療の基本は対面であり、対面だからこそ安心感を得られるという意見もあった中で、どういったところからオンライン診療を始めるかというところで、まず仙台市医師会・仙台市薬剤師会・仙台市の3者共同による実証を重ねてきたところである。
 この実証では、令和2年7月から令和3年3月末まで、医師8名、薬局8カ所に協力いただき、オンライン診療から服薬指導までの一気通貫のオンライン医療の課題の洗い出しと、どのような疾患がオンライン診療にマッチするのかといった検証を行った。
 検証の結果、慢性疾患の患者には一定程度有用であるとの結果が得られた、ほか、対面診療とは質的な差があるため、機器の導入や開発が必要であるといった検証結果も得られたところである。
 令和3年度は、新型コロナウイルスの影響で医師が多忙な状況であったが、令和4年度には、仙台市医師会長の呼びかけがあり、仙台市医師会・NTT東日本・東北大学・仙台市が集まり、オンライン診療の活用に係る定例会を行うようになった。この議論の中で、患者と医療側の双方が受け入れやすい形の検証が始まり、看護師が搭乗し医療機器を搭載した診療カーを用い、患者の状態をより正確に把握することができる質の高いオンライン診療の実現という、現在のスキームに繋がった。
 実証はNTT東日本が中心となり、軽トラックを改良した診療カーを構築・提供していただいた。実証場所としては、医師不足が懸念され、また通信環境が必ずしも良好ではない郊外のエリアを選定して、生体情報や画像がどの程度伝送可能かといった技術的な検証を行い、結果として実用に耐えうるという評価であった。
 しかし、この段階ではまだ実患者の診療というところには至っておらず、機器の面で、電子聴診器の音質や画像の解像度、滑らかさについて改善が必要であるところがあったため、東北大学の知見を借りながら、機器の更なる改良開発を進めていくという結論を得たところである。
 令和5年度には、令和4年度の実証を踏まえ、新車両の構築と実装を行った。こちらの車両は、国のデジタル田園都市国家交付金を活用し、仙台市の「防災環境“周遊“都市・仙台モデル」推進事業の一環として社会実装した。診療するには患者が横になれる大きさは必要ではないかということで、仙台市医師会長の意見も聞きながら、大型車両に切り替えた。
 なお、新車両の導入により、それまで使っていた車両は秋田県に行き、そちらでオンライン診療の取組が進められており、東北の中でも少しずつオンライン診療の取組が広がっているといった状況である。
 令和5年度は、医師不足が進む郊外エリアのほか、中心部エリアも含め、3つの医療機関で実施した。診療カーの出張場所は患者居宅とし、対象は慢性疾患の患者で、訪問看護サービスを利用している方から選定した。
 診療カーには、問診、バイタル、聴診器、超音波、心電図の診療に関わる機器を搭載しているが、特徴的な機器として、問診で使用するテレプレゼンスシステム「窓」がある。こちらは4Kの大型ディスプレイとなっており、高解像度であることはもちろん、通常のオンライン会議システムなどで発生する会話の遅延が起こらない、自然かつスムーズなコミュニケーションが実現できる画期的なシステムとなっている。「窓」を用いることで、まるでその場にいるような臨場感を感じることができるといった声もあった。また、患者の状態をより正確に把握するために、独自の電子聴診器の開発にも力を入れている。機器の開発は市内のスタートアップ企業に手掛けていただいており、まだ開発中であるが、既存の電子聴診器に比べて音が鮮明であったり、同社製のイヤホンを使うことで、複数の医師が同時に聴診することも可能である。
 令和5年度の実績は、出張回数は4回、利用した患者数は延べ5名である。結果として、今回構築したシステムによる大きなトラブルはなく、実患者においても十分に実用可能であり、診療カーでの診察のほか、医療機器を患者宅に持込み在宅診療にも活用可能であった。
 課題は、出張回数、患者数が少ないというところであり、診療カーの診療場所が患者宅の駐車場、またその看護師については、訪問看護サービスによる派遣という制限があり、対象となる患者が、「駐車場を有しており、かつ訪問看護サービスを利用している方」に限定されたためである。このほか、運用面においては、受診の受付予約からドライバーの手配といったところまで、事務局の手弁当で回しているところがあったので、こうした調整をシステム化するなど、効率的な運営といったところを検討していく必要があると感じている。
 令和6年度は、年度当初は新たな機器の選定であったり、地域の医療機関との調整、広報活動といったところに取り組んでいたため、9月から診療を再開しており、出張回数は35回、患者数は210名を目標としている。まだまだ課題の多い取組のため、なるべく多くの患者、医療機関の方々に利用いただき、より良い運用方法を追求していきたいと考えている。
 今年度の新たな取り組みとして、サービス付き高齢者住宅での診療を実施予定である。1回の稼働で複数名の患者を診療することが出来、より効率的にサービスを提供できると考えている。また、ウェアラブルカメラ、ポータブルディスプレイの活用も視野に入れており、診療カーにこだわらない形での在宅診療への応用というところも含めて進めている。
 これからも運用における様々な課題について、より簡便で、かつ質の高いオンライン診療を実現していくため、引き続き関係者と協議検証を重ねていきたいと考えている。
 また、制度面においても課題とされている診療報酬の部分などもあるので、そういったところも仙台市が特区指定を受けているといった利点を活用して、国に対する規制改革提案を積極的に取り組んでまいりたい。

(5)主な質疑応答

問:診療カーが患者宅の駐車場に行き、車内で診療されているということだが、昨日一昨日行った山形県では、車内では駄目で、患者宅内に訪問しないといけないという話があった。これは県によって考え方が違うのか。それとも特区だから許されているのか。
答:オンライン診療を実施できる場所の定義は、診療所もしくは居宅等という形で定義されているが、この「居宅等」の解釈を厚労省に確認しているが、自宅の敷地内であれば大丈夫、駐車場は「居宅等」の範囲内という回答を得ている。
問:医療保険での診療か。介護保険での診療か。
答:現状は医療保険の診療報酬の範疇である。
問:オンライン診療が在宅の分野でどんどん活躍していくべきだと思うが、先ほどビジネスにならない、儲からないという話があった。本当は、保険点数も下がり、オンライン化も進み、患者にとっても医師にとっても楽になれば日本にとってすごく良いことになると思うが、将来の展望としてどのように考えているか。
答:人口減少している地域にも訪問診療をメインにやっている医師がいるが、患者宅同士の距離がすごく離れているので、都会では午前中に5件回れるところが2件しか行けないとか、往復の移動にすごく時間がかかることが多くて、そうすると人口減少地域では訪問診療をメインにしていると成り立たなくなってくる。
 その分、訪問診療プラスオンライン診療で、月1回はオンラインで、月1回は訪問にすれば、ある程度の点数が取れるので、そうすると半分ぐらいの値段になるけれども、その分2倍行けるとか、そういったように訪問とオンライン診療を組み合わせたり、全く診れないところは都会の医師がオンラインで診るような形にすれば何とか成り立つのかなと感じている。
問:今後オンライン診療が進んでいくと、今までのやり方(訪問診療)をしている医師とオンライン診療をしている医師たちとの軋轢と言うかやりとりが発生してくるかと思うが、宮城県の医師会の方々はどのように意見統一というか意見交換をしているのか。
答:仙台市医師会の中でも、オンライン診療に対してはかなり反対意見もあり、特に最初のDtoP型のオンライン診療には、自分の稼ぎが脅かされるというよりは、診療そのものが怪しいのではないかと懸念されている医師がいた。最近はDtoPwithNで詳しく見えるし詳しく聴こえるということを紹介してからは、大分味方が増え、反対派はいなくなった。県医師会にも現在取組を紹介し始めているところである。
問:このプロジェクトは、特区の関係もあり、まちづくり政策局が進めているかと思うが、本来であれば健康福祉局がどこかで出てきて、やり方を変えていかなければならないタイミングがあるかと思うが、行政内での連携はどのような形で進んでいるのか。
答:健康福祉局にも医師会との話し合い等には参加してもらっているが、まだ特区ということでまちづくり政策局がウエートを持って進めている。
 ウェルネス分科会に健康福祉局に入ってもらえるようプラットフォームを作っているので、脱炭素であれば環境局が入るなど、我々が音頭は取っているが、これからサービス付き高齢者住宅とか入っていく段階では、うまく連携しないと進まないと考えている。

参加者名簿

《委員》

職名 氏名 会派
委員長

川名康介

自民党

副委員長

鷲見隆仁

自民党

委員

川名寛章

自民党

委員

石橋清孝

自民党

委員

伊藤 寛

自民党

委員

入江晶子

立憲民

委員

菊岡たづ子

立憲民

委員

鈴木和宏

公明党

委員

中西香澄

市民力

《随行》

所属・職名 氏名 備考
健康福祉部長 岡田慎太郎 -
病院局長

山崎晋一朗

-
健康福祉部健康福祉政策課副課長 田下健一郎 議事課主幹(併任)

議会事務局総務課主査

出口雄 一 -

議会事務局政務調査課副主査

足立浩規 -

日程表

10月16日

場所

備考

羽田空港

-

10時40分

 

庄内空港

11時40分

-

-

日本海総合病院

14時

16時

調査

宿舎

-

-

-

10月17日

場所

備考

宿舎

-

-

-

荘内病院

10時

12時

調査

社会福祉法人月山福祉会

13時30分

15時調査

宿舎

-

-

-

10月18日

場所

備考

宿舎

-

-

-

仙台市役所

10時

12時

調査

仙台駅

-

15時31分

-

東京駅

17時4分

-

-

お問い合わせ

所属課室:議会事務局議事課委員会班

電話番号:043-223-2518

ファックス番号:043-222-4073

・議員個人あてのメール、ご意見、ご質問はお受けできません。
・請願・陳情はこのフォームからはお受けできません。「ご案内・情報」から「請願・陳情」のページをご確認ください。

より良いウェブサイトにするためにみなさまのご意見をお聞かせください

このページの情報は役に立ちましたか?

このページの情報は見つけやすかったですか?

最近閲覧したページ 機能の説明