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更新日:令和3(2021)年10月12日
乳腺外科では、「正確な診断・適切な手術、EBM(科学的根拠)に基づいた全身治療、新規抗がん剤の導入、臨床試験への積極的な参加」をモットーとし、より質の高い医療を提供できるよう日々努力しています。より効果が期待でき、QOLを損なわない新しい治療(抗がん剤や手術法など)を開発するために、患者さんのご協力を得て積極的に臨床試験(治験)を行っています。
初めて受診された患者さんは、診察前に乳房のレントゲンを撮って頂き、診察室で医師が乳房の超音波検査を行いますのでその場で直ぐに検査結果の説明が受けられます。必要な場合には細胞診検査(しこりに細い注射針を刺して細胞を採取し、顕微鏡で細胞の良悪性の判定を行う)を行い、一週間以内に結果を説明致します。細胞診でも診断が困難な場合は、MRI検査や針生検を行い、極力患者さんに負担のかからない方法で正確な診断を行います。
診断がついてから手術日まで概ね1ヶ月以内です。手術を受ける患者さんは、クリティカルパス(入院治療計画)に基づき1週間前後の入院となります。手術前に化学療法を行う場合は、外来化学療法室で点滴治療を行いますので、基本的に入院は必要ありません。期間は約6ヶ月です。
早期乳がん(しこりが2cm以下・リンパ節転移なし)の患者さんに対しては、積極的に乳房温存療法を行っています。乳房温存療法は、乳房の部分切除と術後の温存乳房に対する放射線治療から成り立っている治療法で放射線治療部と協力して行っています。しこりの大きな患者さんに対して、手術前に抗がん剤を投与してしこりを小さくしてから乳房温存療法を行う場合もあります。
また、手術中にセンチネルリンパ節生検を行い、リンパ節の切除を必要最小限にすることでリンパ浮腫など、手術後の合併症の予防にも努めています。
乳がんの薬物療法には、抗がん剤による化学療法、ホルモン製剤による内分泌療法および分子標的治療があります。腫瘍の縮小や、再発予防、再発がんの治療に効果をあげています。それぞれの患者さんの病状に応じて科学的に再発予防効果が証明されている化学内分泌療法を行うことによって一人でも多くの患者さんが完治されることを目指しています。術後補助化学療法は、腫瘍・血液内科が担当し、患者さんは外来に通院しながら外来化学療法室で日帰りで治療を受けていただきます。
患者さんの病状に適した治療法を提案し、患者さんやご家族と相談の上選択できるよう密に関わっています。
当科は日本の乳癌診療ガイドラインに準拠した治療方針を採用しています。しかし、一部に海外のガイドラインに準拠した治療を当科の標準治療としている治療もあります。
例えば、日本のガイドラインでは乳癌のリンパ節転移があり術前化学療法を受けた場合、全員に腋窩リンパ節郭清術を施行することを推奨しています。海外のガイドラインではリンパ節の治療効果を認めた場合はセンチネルリンパ節生検を考慮しています。当科では、臨床試験に参加された約50人に対して術前化学療法の後に施行されるセンチネルリンパ節生検の妥当性を確認してきました。その経験から海外のガイドラインと同様にリンパ浮腫を回避するため、術前化学療法により治療効果を強く認めた場合に限り、センチネルリンパ節生検を採用しております(2021年9月より)。
乳房部分切除+センチネルリンパ節生検 |
入院 |
5~7日 |
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乳房全摘+腋窩リンパ節郭清 |
入院 |
8~10日 |
山本 尚人(やまもと なおひと) 昭和60年三重大学医学部卒
中村 力也(なかむら りきや) 平成11年広島大学医学部卒
味八木 寿子(みやき としこ) 平成16年聖マリアンナ医大医学部卒
羽山 晶子(はやま しょうこ)平成20年 滋賀医大医学部卒
玉貫 圭甲(たまぬき たまき)平成25年 金沢医科大学医学部卒
藤井 康矢(ふじい こうや) 平成26年 千葉大学医学部卒