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更新日:平成30(2018)年6月6日

食道・胃腸外科

近年の消化器外科診療の高度専門化に伴い、当院では2016年4月より、消化器外科を「食道・胃腸外科」と「肝胆膵外科」に分ける組織変更を行いました。食道・胃腸外科では食道がん、胃がん、大腸がん(結腸がん、直腸がん)といった消化管がんが主な診療の対象となります。しかし、両方の診療科での治療を必要とする患者さんもいらっしゃいますし、お互いに密に連携して、さらに消化器内科の先生とも協力して、丁寧に診療させていただきますので、ご安心ください。

当科では、日本外科学会・日本消化器外科学会の指導医・専門医に加えて、食道・胃・大腸のがん診療の専門家が中堅・若手医師と共に診療に当たらせていただきます。手術日は月曜から金曜まで毎日で、出来るだけ早く診断と治療方針を決定して手術を受けていただけるよう努力しています。最近では、各臓器でがんの診療ガイドラインが発表されており、推奨されている標準治療を当科でも原則として提案しています。しかし、実際に個々の患者さんに最適な治療は全身状態や希望によっても変わります。特に最近では、高齢あるいはがん以外の併存疾患を有する患者さんが多く、標準治療が高リスクな場合や限界もあります。従って、標準治療をベースとして、個々の患者さんに最適な個別化治療を提案できるように、経験を積んだ臓器ごとの専門医を中心として治療法を検討しています。そのために、消化器内科・画像診断部・放射線治療部・臨床病理などのスタッフと共に毎週カンファレンスを行い、患者さんならびにご家族と十分に相談した上で治療方針を決定します。また、外科だけで手術カンファレンスを週2回、朝のミニカンファレンスを月曜から金曜まで毎日行って、スタッフ間で治療方針や経過の確認など患者さんの情報共有を行っています。

食道・胃腸外科にご紹介いただいても、まず非手術治療が適応と判断された患者さんや症状緩和が目標になるような患者さんは、当院や他院の内科・緩和医療科などで治療を受けていただくことがあります。また、早期がんの治療後や進行がん術後でも時間が経過して病態の落ち着いている患者さんは、ご紹介いただいた医療施設などに経過観察を依頼しております。特に結腸癌では地域連携クリティカルパスを2009年10月より導入し、StageⅠ・Ⅱの結腸癌術後経過観察において地域医療連携を積極的に行っています。

医師のご紹介

診療の特徴

1.術前術後療法を加えた集学的治療

進行がんは、外科手術だけでは治癒が望めないこともあります。そこで、食道がん・胃がん・大腸がんに対して、適応を決めて術前または術後の化学療法・放射線療法を積極的に行い、予後向上・機能温存・切除の適応拡大などを目指しています。こうした集学的治療の中には、まだ必ずしも効果が確立されてはいないものの今後効果が期待される方法もあり、倫理的に問題のない多施設共同研究や治験に参加する形で、消化器内科と協力して、患者さんに提案する場合もあります。特に、わが国の主要ながん診療施設が参加している日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)の多施設共同研究に積極的に参加しており、進行がんに対しても治療成績向上を日夜目指しております。

2.内視鏡(補助)下手術の適切な遂行

内視鏡画像を見ながら小さい創で行う内視鏡(腹腔鏡・胸腔鏡)補助下の手術は、近年広く普及してきました。当院でも腹腔鏡補助下の手術が2000年から導入され、日本内視鏡外科学会の技術認定医を中心に早期の大腸がんや胃がんを中心に行っています。しかし、その適応決定には、病気の進行度とともに患者さんの年齢・体型や全身状態なども関係します。がんのできた臓器や周囲のリンパ節を切除することは通常の開腹手術でも腹腔鏡補助下手術でも同じですので、術後の在院日数は通常の開腹手術と余り変わらないこともあります。一方で、創が小さいことのメリットも大きいので、手術リスクも考慮の上で個々の患者さんと十分に相談して適応を決定するようにしています。手術手技や医療機器の進歩で、内視鏡(腹腔鏡)補助下の手術から内視鏡下で行うさらに創の小さい手術も術式によっては可能になってきています。適応については、そのメリットとデメリットを患者さんと十分に相談して決めるようにしております。

3.術前経口補水療法や栄養サポートチーム(NST)の支援など「術後早期回復」のための最新の周術期管理の導入:わが国の指導的立場にあり、日本静脈経腸栄養学会のNST稼働認定施設・NST実地修練認定教育施設です。

経口補水療法は元々は開発途上国におけるコレラ罹患患者の下痢・脱水症に対して行われ、「経静脈的な輸液を用いずに経口的に脱水症を改善できる」ことで脚光を浴びた治療法です。これが近年、外科手術患者の周術期とくに術前の水分電解質補給と絶飲食時間の短縮目的に急速に普及しました。日本麻酔科学会のガイドラインに準じて当科でも2013年より、糖尿病などの合併症がなく適応可能な患者さんには、手術2時間前まで吸収の比較的早い水分の飲用を許可しています。今後、麻酔の安全性を担保した上で少しずつ術前経口補水療法の適応拡大を考え、点滴を減らして術前の緊張緩和になればと願っています。

経口補水療法以外にも消化器外科手術の周術期管理は近年大きく変わりました。出来るだけ腸を使った栄養管理で術前後の絶飲食期間を長くせず早期に離床するなど最新の「術後早期回復プログラム」を積極的にとりいれています。消化管がん術前後の食事栄養管理を支援する栄養サポートチーム(NST)も日本静脈経腸栄養学会の指導医を中心に院内で積極的に活動しており、当センターは、NST稼働認定施設かつNST実地修練認定教育施設です。術後の食の悩みに対しては、入院中から外来でも栄養指導を積極的に行っています。消化管がん患者さん特に外科手術前後の食事栄養サポートでは、当科はわが国の指導的立場にあります。

治療方針

食道がん

個々の患者さんに適した治療法,自己選択による治療をご提供できるようにしております。
縫合不全の少ない確実な手術を心掛けています。

手術前後の食事摂取障害への対策や栄養管理に習熟しており、わが国の指導的立場にあります。

食道がんの約8割は男性の愛飲家・愛煙家ですが、喫煙、飲酒の習慣が全くない女性にも発生することがあります。日本の食道がんは本来の食道の粘膜から発生する扁平上皮がんがほとんどです。近年では遺伝の関与も解明されつつあり、アルコールの代謝産物であるアセトアルデヒドの代謝酵素活性が低いひとがアルコール飲料を常飲すると、食道扁平上皮がんのリスクが高くなることが解ってきました。一方、最近の食生活の欧米化、肥満の傾向から、欧米に多い逆流性食道炎やバレット上皮という特殊な変化を原因とする腺がんも増えてきました。

食道がんは、以前は治療成績が悪く、極めて予後の悪い病気でしたが、最近では早期発見と治療方法の向上により、完全治癒のケースが格段に増えています。食道がんに対する治療としては、「外科手術や内視鏡による切除・化学療法(抗がん剤治療)・放射線治療」の3つの方法を単独あるいは組み合わせて行いますが、これらの治療を患者さんがいかにきちんと完遂出来るかがカギになります。そのために、この柱を支える支持療法といわれる治療の成否も極めて重要です。中でも、食道がん患者さんは食事を摂ることが困難で低栄養の方が多いため、治療前後の適切な栄養管理が必須です。

当センターでの治療方針を以下に示しますが、原則として日本食道学会の「食道癌診療ガイドライン」に従っています。しかし、患者さんごとに病態や全身状態も異なり、前述の通り手術をしない(内科・放射線科が中心となる)治療も重要な選択肢になります。

  • 1.浅い小さな早期がんの場合はまず内視鏡による切除を検討します。この治療法は侵襲(身体に対する負担)が小さいため、全身状態の悪い患者さんにも可能な場合が多く(全ての方が可能とは限りません)、食道が温存されるため治療前とほとんど同じ生活が送れます。
  • 2.浅くても広い場合、または、あちこちにたくさんある(多発がん)場合は、内視鏡治療では取り残してしまう恐れがありますが、転移のある可能性は低いので、標準的な郭清を伴う手術より侵襲の小さい手術や、(化学)放射線療法を検討します。
  • 3.ある程度以上の深さ(粘膜下層より深い)の食道がんと診断された場合は、右側の胸を開いて食道切除を行います。現状では、右の胸とおなかを小さく開き、食道と胃の一部ならびにリンパ節を切除して、胃を管状にして食道に吻合する方法を基本とする食道切除再建術(食道胃管吻合術)が、最も確実性が高い治療法です。また、食道がんはリンパ節転移が頸部にもしばしば起きますので、転移が疑われる患者さんには、胸・腹部に加えて頸部のリンパ節も郭清する3領域郭清術を行います。最近の手術機器の進歩により、手術創もかなり小さくなり、胸部では内視鏡(胸腔鏡)補助下での手術を行っています(手術成績の一部は下記に再度記載します)。
  • 4.さらにがんが深く、厚みがある場合、またはリンパ節にすでに転移がある場合は、手術だけでは微細な病巣を取り残したり、手術操作によりがん細胞を散らす恐れがありますので、手術の前に化学療法(抗がん剤治療)を行って、それを防止し、その後に手術を行って再発を少なくしようと努めています。また、局所のがんが大きくて、大動脈や気管・気管支など隣の臓器に浸潤しているようなときには、抗がん剤とともに放射線療法を併用する化学放射線療法をまず行って、がんを小さくしてから手術を行うかどうか検討します。
  • 5.抗がん剤と放射線による化学放射線療法は、食道がんには極めて効果が高く、この治療だけで手術をしなくてもがんが完全に治ってしまうケースも多くなってきています。大きな手術を受けなくてすみますので、食生活もほぼ健康時に戻ることが期待できます。ただ、手術と比べると完全治癒の確実性はやや落ちること、治療前に治療の効果予測を立てることが不可能で、効く患者さんと効かない患者さんがいらっしゃいます。この治療を終わった後にがんが残ったり、再発した場合には次の治療(下記の救済手術が選択肢となります)が難しいことが問題としてあげられます。また、放射線による肺や心臓の問題が長く残る場合があります。
    しかし最近では、手術の安全性が高まったこともあり、最初に化学放射線療法を選択されたものの完全治癒に至らなかった患者さんに対しても、可能であれば何らかの外科手術(救済手術といいます)を行える場合もあります。
  • 6.全身状態が悪く手術が危険と考えられるか、または、手術ではがんが完全に切除しきれないと判断された場合には、手術をせずに、化学放射線療法、放射線療法、バイパス手術、内視鏡による食道内チューブ留置(食道ステント挿入)術など、個々の患者さんの状態やご希望に応じた治療法や対症療法を選択します。

つまり、進行性食道がんで完全治癒を目的とした治療には、手術と化学放射線療法があり、いずれかを選択できると思います。それぞれメリットとデメリットを考え、ご自分の生活スタイルなども検討して、患者さんご本人の考えで治療法を選択されて良いと考えます。取れるから手術しかない、ということはありません。そこで、当センターを受診して下さった食道がんの患者さんには、消化器外科医と消化器内科医がそれぞれ専門的に担当している食道癌治療についてご説明させていただき、外科医・内科医・放射線科医合同のカンファレンスにて客観的に治療方針を検討しています。その後、最終的に、全身状態やリスクを考慮して、個々の患者さんとよく相談して治療法を決定します。また、施設としてJCOG(日本臨床腫瘍研究グループ)食道がんグループに加入しており、限られた施設でしか受けられない臨床試験や先進的治療への参加が可能な場合はご提案しております。当センターを新たに受診して下さる食道がん患者さんは80~100人/年で、外科での食道切除再建術は20~30例/年です。

食道グラフ

当センターでは、日本食道学会により食道疾患の診療を担当する専門的能力を有すると認められた食道科認定医ならびに食道外科専門医がおり、非外科的治療は消化器内科・放射線科の連携のもとで行っています。食道がんの外科治療は高度な技術と知識と経験を必要とし、術後に重篤な肺炎や縫合不全などの大きな合併症がおこると、生命の危険や再発のリスクが高くなるといわれています。最近では食道がん術後の縫合不全は長期予後を不良にするとの報告があり、全国的には食道切除再建術後の縫合不全発生率は約13〜15%と高いことが知られています。しかし、当センター食道・胃腸外科での2009年以後の食道胃管吻合後の縫合不全発生率は4%で、2012〜18年3月ではわずか2例1.6%であり、2013年9月以後2018年3月までの約4年半の間は縫合不全を経験しておりません。完全な鏡視下(胸腔鏡)手術はまだ導入していませんが、わが国でもトップレベルの優れた成績です(鍋谷圭宏ほか.術後合併症ゼロを目指した食道癌集学的外科治療:安全な標準手術の確立を目指して.第79回日本臨床外科学会総会パネルディスカッション16-2、2017年11月発表)。もちろん、高リスクの患者さんもいらっしゃいますし、重篤な合併症を発生してしまうこともあり得ますが、常に安全性を第一に考えた手術を心がけています。当センターでは術後のフォローアップも入念に行っており、術後3年以上経過した胸部食道がん患者さんの(暫定)の5年生存率は62%で、全国平均(55%)以上です。適応があれば80歳以上の高齢の食道がん患者さんも手術を受けられていますが、元気に退院されています。

また、当センターでは、日本静脈経腸栄養学会指導医を含む栄養サポートチーム(NST)が食道がん患者さんの悩みである食事栄養管理を支援しています。特に外科手術前後に出来るだけ腸を使った栄養管理や術後食の工夫は豊富な経験があり、わが国の指導的立場として学会などで発信しています。術後、外来でも、経験豊富な管理栄養士が栄養指導でサポートしています。

胃がん

1)手術の安全性を確保するために、十分な治療計画と周術期管理を行い、過去5年間以上手術関連死亡はありません。

2)進行度に応じた治療選択肢を外科だけでなく、消化器内科・画像診断部・臨床病理などの医師も参加したカンファレンスで決定しています。

3)低侵襲手術として、進行度および希望により適応のある患者さんには、腹腔鏡による胃切除術を採用しております。日本内視鏡外科学会技術認定医資格を胃で取得した認定医は2人(技術認定医は食道・胃腸外科全体では5人)おり、腹腔鏡手術では技術認定医が手術に必ず参加します。

4)術後のQOL(生活の質)向上のため、切除範囲の縮小が可能と判断される患者さんでは、できる限り胃を温存するような手術や、逆流やダンピングなどの胃切除後障害を避けるような手術の工夫も心がけています。

5)専門病院だからこそできる臨床試験や治験への参加は、患者さんの治療オプションを増やします。JCOG胃がんグループに加入し、新しい標準治療の確立と進歩を目的とした多施設共同臨床試験に参加しています。消化器内科との治療連携もスムーズに行われています。

6)胃癌術後の食事指導に力をいれており、退院前のみならず退院後も、術後の時期や患者さんの状態・術式に応じた食事栄養指導を提供しており、わが国の指導的立場にあります。

  • 1)がん患者さんを支える食と栄養トータルケア「がん患者さんのためのレシピと工夫」:千葉県がんセンター食と栄養トータルケアプロジェクトチーム編集、メディカルスマイルウェブ(通販)にて販売.
  • 2)胃を切った人のおいしい回復レシピ300―組み合わせ自由自在(主婦の友実用No.1シリーズ)、鍋谷圭宏監修、主婦の友社、2015年発行.

がんセンターレシピ

1)千葉県がんセンター出版 レシピ集

2)主婦の友社出版レシピ集

2)内視鏡治療

リンパ節転移のない粘膜内癌で組織型が分化型の胃癌では、内視鏡的に粘膜および粘膜下層を切除することにより根治することができます(内視鏡的粘膜下層剥離術;ESD)。近年、手技の向上および機器の開発により、ESDは急速に増加しています。特に当院では、粘膜内癌と考えられる分化型腺癌に対して、腫瘍径によらず一括切除が可能と判断されれば適応としており、低侵襲治療として積極的に行っております(主に消化器内科にて施行)。さらに、臨床試験として低分化型腺癌に対するESDも行われるようになりました。これらの治療後には、内視鏡による切除が十分かどうかを病理検査で確認します。不十分な場合は原則として、胃を切除する手術が追加で必要になります。

3)腹腔鏡・内視鏡合同手術(LECS;Laparoscopy and Endoscopy Cooperative Surgery)

腹腔鏡と内視鏡(胃カメラ)を併用して胃や十二指腸を部分的に切除する術式で、主に胃の粘膜下腫瘍に対して行われます。消化管管腔内へ進展する腫瘍では、腹腔鏡手術では触診ができないため、管腔外から正確に部位を把握することが困難です。そのため過剰に胃壁を切除する必要が生じ、病変の部位によっては胃の変形をきたしたりします。そのような過剰な切除を避けるために考案された手術方法です。すなわち、内視鏡医によるESDと同様な手技と、外科医による腹腔鏡下胃局所手術のハイブリッド手術です。開腹手術同様、全身麻酔下で行います。外科医は腹腔鏡下胃切除術と同様に、腹部に小さい孔を数箇所開けて、専用のカメラや器具で手術を行います。同様に、内視鏡医によりESDと同様な手技で病変部位を切開し、胃壁の切除範囲を決定していきます。胃の内外から外科医と内科医の共同作業として胃局所切除を施行します。切除された病変は、ポートを利用して体外へ摘出します。

4)化学療法

再発や外科療法で切除しきれない場合の治療選択としては、抗癌剤による化学療法が基本となります。手術単独では切除できないような症例では術前に化学療法をすることにより切除率を向上させる可能性があります。一方で、手術によって肉眼的に癌がとり切れたときに、再発予防として抗癌剤を投与することを術後補助化学療法といいます。StageII,IIIの胃癌に対してはS-1(ティーエスワン®)を1年間内服投与する治療が術後補助化学療法として、標準治療となっています。

日常診療では主に、日本胃癌学会が公表した“胃癌治療ガイドライン”をベースに治療方針を決定していますが、癌専門病院として日常診療レベルの治療法のほか、臨床研究レベルの治療法も患者さんによっては取り入れ、縮小手術や腹腔鏡下胃切除術を積極的に導入しています。専門病院であるからこそできる臨床試験や治験への参加は、患者さんの治療オプションを増やすこととなります。

また、主に消化器内科にて、内視鏡によるESDも分化型の粘膜内癌で一括切除可能であれば適応を拡大しています。従って、最初に外科にご紹介いただいても、内視鏡治療の可能性がある患者さんもいらっしゃいます。また、切除部位に応じた再建の工夫をしており、胃切除後障害の発生の予防に努力しております。積極的に術前抗癌剤投与(術前補助化学療法)も導入しています。化学療法では、分子標的治療薬の飛躍的な進歩により個別化治療の時代に入ってきました。

新規分子標的治療薬や治験などによる新規抗癌剤の開発にも消化器内科と協力して参加しています。そのほかにも全国的な規模あるいは世界的な規模での多施設共同研究に参加し、標準的な日常臨床とともにエビデンス構築のための臨床研究にも携わっております。現在、行われている治験では、術後の補助化学療法として、ニボルマブという分子標的薬と抗癌剤の併用療法が行われています。また、臨床試験では、局所進行胃癌に対する周術期化学療法の有効性を検証する試験と80歳以上の高齢者の術後補助化学療法の有効性を比較する試験が行われています。治験や臨床試験は、患者さんにより多くの治療オプションを提供できることになりますが、条件もありますので、適応がある場合には担当医からご説明致します。

2017年胃切除症例数 113例

幽門側胃切除術(開腹;36例、腹腔鏡;36例)、胃全摘術(開腹;25例、腹腔鏡;2例)

噴門側胃切除術(開腹;7例、腹腔鏡;2例)、局所切除(腹腔鏡;5例)

手術関連死亡 0例、合併症:縫合不全4例 (3.5%)、膵瘻3例 (2.7%)、

腹腔内膿瘍2例 (1.8%)、イレウス 2例 (1.8%)、合併症による再手術 1例(0.9%)

 

胃グラフ

胃癌進行度別の予後曲線です。この曲線は、胃癌以外の死亡も含めて生存を示しています

大腸がん

腹腔鏡下手術や自然肛門温存術が増えています。

大腸がんは欧米においては最も多いがんです。最近、日本でも食生活が欧米化してきたこともあり、増加の傾向にあります。大腸がんの基本的な治療方針は切除(手術)です。当科での大腸がんの手術切除症例数は最近10年間、年間約200~150例前後です。従来の通常開腹術に比べ痛みの少ない腹腔鏡下大腸切除術も行っており、近年では年間手術の半数以上は腹腔鏡下手術となっています(図1)。現在は大腸がんの術式のほとんどが腹腔鏡下手術でも保険適応となっているため、腹腔鏡下、通常開腹、それぞれの違いや長点短点を説明させていただき、患者さんに判断、選択していただいています。腹腔鏡下大腸切除は年々手術数が増加し、技術的に難しいとされる直腸手術でも拡大された良好な視野の良点を生かし、適応を広げています。またこれまでの治療を見直し、安全性を確保した上で入院日数の削減、負担軽減に取り組んでおり、術前検査でも患者さんの負担が少なくなるよう下剤を服用しての検査を少しでも減らすため大腸内視鏡と同時にCTを駆使し、バーチャル内視鏡画像、3D画像を構築して診断しています。大腸は直腸と結腸とに大別されます。直腸がんと聞くと、人工肛門を連想される方が多いようですが、治療技術の向上と集学的治療により、肛門に近いがんの方でも自然肛門温存術式が多くなり、永久人工肛門となられる方は少なくなってきております(図2)。肛門にかなり近い部位にある直腸癌には術前放射線化学療法を行い、癌の縮小が図られた場合に肛門を温存する術式を行う集学的治療を行っています。術前放射線化学療法のため手術するまでの時間はかかりますが、術後局所吻合部再発の予防には大変有効であり、自然肛門温存できる適応が大きく広がりました。しかし、この場合には術後の肛門機能の低下が予想されるため、年齢や社会的要因(ご職業など)を考慮して必ずしも肛門温存を推奨しないこともあります。術後生活の質が低下しないよう多くの患者さんが安心して生活していただけるように取り組んでいます。

退院後のフォローアップでの定期検査は、紹介元であり患者さんの地元で開業されている医院、クリニックとの連携による地域連携パスを行える場合には積極的にお勧めし、地元での診療を受けていただき、患者さんの利便性を高めつつ診療の質を担保しています。また抗癌剤治療をお受けになられる方でも、外来での治療ができる様にスケジュールや投薬方法を工夫しております。

最先端の治療を行えるよう全国規模の臨床試験グループJCOGの大腸がんグループには2000年から参加しており、これまで多数の大腸がん治療に関する最新知見をもたらしてきました。臨床試験から得られた知見をもとに、患者さんへの治療においては最先端の技術、治療法を提示しています。また、高度進行がんでの消化器内科での最新化学療法による治療はもちろん、泌尿器科、婦人科、整形外科など他科との合同手術も連携良く行っております。当科での大腸がん術後5年生存率(非がん死例も含んで計算)はstage0; 95%、stage1; 94%、stage2; 88%、stage3a; 82%、stage3b: 63%、stage4; 16%(非切除例を含む)です。大腸がんは早期の段階で治療できれば、高い確率で治癒できるがんです。早期の段階で大腸がんを発見できるため、症状がなくても大腸がん検診を毎年受けられることを強くお勧めします。

図1大腸がん手術件数

大腸がん手術件数

図2 直腸癌肛門温存率の推移

肛門温存率

医師のご紹介

食道・胃腸外科部長

 

鍋谷圭宏(なべや よしひろ) 昭和60年千葉大学医学部卒

指導医、専門医、認定医など:

  • 日本外科学会 指導医・外科専門医
  • 日本消化器外科学会 指導医・専門医・消化器がん外科治療認定医・評議員
  • 日本消化器病学会 指導医・専門医・関東支部評議員
  • 日本消化管学会 胃腸科指導医・専門医・認定医・代議員
  • 日本食道学会 食道科認定医・食道外科専門医・評議員
  • 日本静脈経腸栄養学会・外科代謝栄養学会の指導医・理事・代議員・評議員
  • 日本臨床外科学会・胃癌学会・外科感染症学会・腹部救急医学会の評議員・代議員 ほか

専門分野/得意分野:

専門は消化器がん 特に食道・胃がん、外科栄養・栄養サポート、周術期管理、外科感染症

臨床検査部長

 

滝口伸浩(たきぐち のぶひろ) 昭和59年群馬大学医学部卒

指導医、専門医、認定医など: 

  •  日本外科学会指導医・外科専門医
  •  日本消化器外科学会指導医・専門医・消化器がん外科治療認定医・評議員
  •  日本大腸肛門病学会指導医・専門医・評議員
  •  日本内視鏡外科学会 技術認定医
  •  日本がん治療認定医機構がん治療認定医
  •  千葉大学臓器制御外科学講座 非常勤講師
  •  日本臨床外科学会・胃癌学会・大腸肛門病学会の評議員 ほか

専門分野/得意分野:

専門は消化器がん特に胃・大腸がんの機能温存手術・化学療法・集学的治療

主任医長

池田篤(いけだ あつし) 昭和60年旭川医科大学医学部卒

指導医、専門医、認定医など:

  • 日本外科学会指導医・外科専門医
  •  日本消化器外科学会指導医・専門医

専門分野/得意分野:

  • 専門は消化器がん 特に胃・大腸がん

主任医長

 

早田浩明(そうだ ひろあき) 昭和62年千葉大学医学部卒

指導医、専門医、認定医など:

  • 日本外科学会指導医・外科専門医
  • 日本大腸肛門病学会指導医・専門医・評議員
  • 日本消化器病学会専門医
  • 日本消化器外科学会 指導医・専門医・消化器がん外科治療認定医
  • 日本がん治療認定医機構がん治療認定医
  • 日本内視鏡外科学会 技術認定医

専門分野/得意分野:

  • 専門は消化器がん 特に大腸がん

主任医長

 

外岡亨(とのおか とおる) 平成9年千葉大学医学部卒

指導医、専門医、認定医など:

  • 日本外科学会 指導医・外科専門医
  • 日本消化器外科学会 指導医・専門医・消化器がん外科治療認定医
  • 日本大腸肛門病学会 指導医・専門医・評議員
  • 日本消化器内視鏡学会 指導医・専門医
  • 日本消化管学会 胃腸科指導医・専門医・認定医
  • 日本消化器病学会 消化器病専門医
  • 日本内視鏡外科学会 技術認定医ほか

専門分野/得意分野:

  • 専門は消化器がん 特に胃・大腸がん

主任医長

 

 

 

星野 敢(ほしの いさむ)平成11年筑波大学医学部卒

指導医、専門医、認定医など:

  • 日本外科学会 指導医・外科専門医
  • 日本消化器外科学会 指導医・専門医・消化器がん外科治療認定医
  • 日本消化管学会 胃腸科指導医・専門医・認定医
  • 日本消化器病学会 消化器病専門医
  • 日本食道学会 食道科認定医 ・評議員
  • 日本人類遺伝学会 臨床遺伝専門医
  • 日本内視鏡外科学会 技術認定医ほか

専門分野/得意分野:

  • 専門は消化器がん 特に食道・胃がん

 

 

 主任医長

 

郡司 久(ぐんじ ひさし)平成11年筑波大学医学部卒

指導医、専門医、認定医など:

  • 日本外科学会専門医
  • 日本消化器外科学会 指導医、専門医・消化器がん外科治療認定医
  • 日本消化管学会 胃腸科指導医・専門医
  • 日本内視鏡外科学会 技術認定医 ほか

専門分野/得意分野:

  • 専門は消化器がん 特に胃がん、鏡視下手術

 

 医員

 

 

 

 

吉住 有人(よしずみ ありひと)平成25年 千葉大学医学部卒 

 

 

 

 

専門分野/得意分野:

  • 消化器全般