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診療科・部門紹介

整形外科

1.診療科の紹介

整形外科集合

私たちは、通常の一般整形外科の患者さんの診療はほとんど行っておらず、【1】骨軟部腫瘍および【2】がんの骨転移に対する診療に特化し、豊富な経験と最新の知識を元に希少がんである肉腫に対する専門的な診断および治療を行っております。

【1】骨軟部腫瘍

骨組織や軟部組織(脂肪や筋肉など)といった運動器に発生する腫瘍を「骨軟部腫瘍」といい、特に悪性の骨軟部腫瘍を「肉腫」と呼び、発生率が低いため希少がんの代表ともいえます。骨軟部腫瘍の発生頻度は非常に少ないため、診療を行っている施設は限られております。当科は1972年の病院設立以来、千葉県内外の病院から紹介された骨軟部腫瘍の患者さんに対する診療を継続して行って参りました。

骨軟部腫瘍は、(1)原発性の骨腫瘍および(2)軟部腫瘍に分類されます。

(1)原発性の骨腫瘍

原発性の骨腫瘍には、<1>骨肉腫<2>軟骨肉腫<3>ユーイング肉腫<4>脊索腫などが含まれます。

<1>骨肉腫

小児から若年成人に多くみられ、悪性度の高い骨のがんです。原発性の骨のがんの中で最も多いのですが、我が国での発生数は年間150例程度ときわめて稀ながんです。四肢とくに膝周辺に発生し、治療によりほぼ全例で四肢の身体障害が残ります。切断が必要になる場合もあります。近年の集学的な治療により、5人中3人は治るようになりました。小児に多いがんなので、治療だけでなく治療以外のケアも重要となります。

<2>軟骨肉腫

中高年に多くみられる骨のがんです。悪性度は低いことが多いですが、悪性度の高いものもあります。骨軟骨腫から二次性に発生したものを二次性軟骨肉腫といい、骨軟骨腫の無いものを原発性軟骨肉腫といいます。我が国での発生数は年間100例程度です。抗がん剤治療や放射線治療は効果が無く、手術による完全切除が必要になります。

<3>ユーイング肉腫

小児から若年成人に多くみられ、極めて悪性度の高い骨のがんです。最近、特徴的な染色体転座を有することが明らかになりました。我が国での発生数は年間30例程度です。骨肉腫と同様に小児に多いがんなので、治療だけでなく治療以外のケアも重要となります。

<4>脊索腫

高齢者の仙尾骨に多く発生します。胎生期にみられる脊索の遺残が腫瘍化したものとされています。低悪性度の腫瘍で発育は緩慢ですが、最終的には死に至ることが多い骨のがんです。我が国での発生数は年間20例程度です。抗がん剤治療や通常の放射線治療は効果が無く、手術による完全切除または重粒子線治療が行なわれます。

(2)軟部腫瘍

軟部腫瘍のがん(=軟部肉腫)も骨のがんと同様に発生頻度が低いため、診断と治療には専門的な知識が必要であり、専門の病院で治療を受けることが重要です。近年の高齢化の影響により、高齢の患者さんが徐々に増加していますが若年者にもみられることがあります。また通常は“しこり“や”腫れ“といった症状だけで痛みはありません。そのため初めて病院を受診する時にはかなり大きな腫瘍となっていて、肺などに病気が転移していることもあり注意が必要です。

軟部腫瘍の治療は外科的治療が基本です。近年は積極的な化学療法を導入する場合も多く、治療成績も徐々に向上してきています。しかし、未だに治療法は不確実であるためインフォームド・コンセントを行い、患者さんの意志を尊重しています。また、軟部腫瘍の領域でもいくつかの新規抗がん剤や分子標的治療薬が保険適応となりました。切除不能な軟部肉腫に対する重粒子線治療も保険適応となりました。

軟部腫瘍には、<1>脂肪肉腫<2>平滑筋肉腫<3>(未分化)多形性肉腫などが含まれます。

<1>脂肪肉腫

脂肪肉腫は、良性の脂肪腫とは異なり悪性の性質を示す脂肪組織のがんです。様々なタイプに分かれており、円形細胞を多く含む高悪性度のものから異型脂肪腫様腫瘍といわれる良悪性中間型のものまで存在します。

<2>平滑筋肉腫

平滑筋肉腫は筋肉のがんの一種です。「平滑筋」とは、手足を動かす「骨格筋」と異なり、内臓や血管周囲に存在して体内の調節をする役割があります。同様に平滑筋肉腫は主に内臓付近や血管周囲に発生することが知られています。

<3>(未分化)多形性肉腫

以前は「MFH:悪性繊維製組織球腫」と呼ばれていた高悪性度の軟部肉腫です。高齢者に多く、主に大腿部に発生します。組織採取による確定診断が得られたのちに、腫瘍とその周囲の正常組織を一緒に取り除く「広範切除手術」を行います。

【2】がんの骨転移

骨に転移し易いがんには、肺がん、女性では乳がん、男性では前立腺がん、などがあります。がんの患者さんは増加傾向にあるため、がんが大腿骨や脊椎に転移し、骨折や脊髄麻痺といった症状を引き起こす方も増加しております。

骨転移が生じた場合は進行したがんと考えられ、対応は困難とされてきました。しかしながら近年のがんに対する治療の進歩は目覚ましく、骨転移が生じたとしても早期から適切な治療を行うことにより、生活の質をできるだけ維持することが充分に可能となってきています。

当科では院内における緊密な連携により、骨転移を生じた他科の患者さんに対する治療方針のアドバイスおよび治療介入を積極的に行っております。

実際に大腿骨に骨折を生じた患者さんに対しては髄内釘固定術や人工関節置換術を行い、また脊椎に転移を生じ歩行困難となった患者さんに対しては脊椎除圧固定術や経皮的椎体形成術(BKP治療)を行ったのち、手術直後からのリハビリにより早期退院を可能にしております。

2.当科における治療方針

患者さんの自己決定権を尊重し、患者さんが選択した医療を遂行する事が、患者さんのQOLの維持に最善の手段であると考え、日々チームで診療にあたっています。

骨肉腫やユーイング肉腫などの小児の患者さんに対してはトータルなケアを心がけています。仁戸名特別支援学校の協力を得て訪問教室を受けられるよう環境を整えています。ディズニーランド旅行などの課外活動も行なっており、患児の社会参加をサポートしています。

写真:あしたば教室

院内訪問教室

写真:あしたば野球観戦

プロ野球観戦

写真:さくらの木の下で

お花見

写真:あしたばスキー大会

3.主な疾患の治療について

以下に主な疾患の治療内容および治療期間について解説します。

(1)骨肉腫

治療は主に化学療法と手術です。術前化学療法約3ヶ月 → 手術 → 6~9ヶ月間術後化学療法という長期の治療となります。術後の化学療法は治療時のみ入院も可能となっています。手術法は切断・人工関節・回転形成術・関節固定などがありますが、患者家族へ利点欠点を十分に説明して選択してもらいます。

治療を要する期間:約1年間

(2)ユーイング肉腫

治療は主に化学療法・手術・放射線治療です。術前化学療法約4ヶ月 → 手術 → 約4ヶ月間術後化学療法となります。また、手術標本の結果により放射線治療を行ないます。

治療を要する期間:約1年間

(3)軟部肉腫

様々な組織型の腫瘍が含まれますが、治療法の原則は外科的切除です。補助療法として化学療法や放射線治療を行う場合もあります。患者さん・ご家族に十分説明し、選択してもらいます。

治療を要する期間:1ヶ月(化学療法を行う場合は6ヶ月程度)

これら以外にも沢山の種類の骨・軟部組織のがんがあります。しかし、未だに治療法については不確実なことが多く、症例ごとに治療法が異なります。また、転移性骨腫瘍ではQOLをできるだけ良い状態で長く続けられるようにすることが重要となり、やはり症例ごとに治療法が異なってきます。そこで、患者さん・ご家族に症例ごとの治療法を十分説明した上で、選択してもらうことを基本としています。

4.診療実績

表1:平成28年度手術内訳

良性疾患 骨腫瘍切除 17件
軟部腫瘍切除 75件
悪性疾患 骨悪性腫瘍広範切除 11件
軟部肉腫広範切除 56件
脊椎転移に対する手術 14件
病的骨折に対する手術 19件
その他(生検など) 40件

図1:新患患者数

※毎月70人以上の骨軟部腫瘍の新患の患者さんを診療しています。

新患患者数のグラフ 年間900名前後の新患を受け入れています。平成28年度は、860名でした。

図2:手術件数

※99%以上が骨軟部腫瘍の患者さんの手術です。

手術件数のグラフ 年間200名程度の手術を行っています。平成28年度は、232名でした。

図3-1:骨肉腫治療<1>

当院にて2006年~2015年に治療を行った

骨肉腫症例54例(初診時転移を含む)

◎5年生存率61%

骨肉腫治療<1>のグラフ 2006年~2015年に治療を行った骨肉腫症例54例(初診時転移を含む)5年生存率61%

図3-2:骨肉腫治療<2>

四肢発生で当院にて手術施行した

骨肉腫44症例

◎5年生存率

30歳未満24例76.0%

30歳以上20例46.8%

骨肉腫治療<2>のグラフ 四肢発生で手術施行した骨肉腫44症例5年生存率(30歳未満24例76%、30歳以上20例46.8%)

図4:悪性軟部腫瘍(軟部肉腫)

2006年以降の当院治療例

292症例

◎5年生存率68%

悪性軟部腫瘍(軟部肉腫)のグラフ 2006年以降治療例292症例(5年生存率68%)

図5:骨転移症例相談件数

2017年1月~12月に当科で相談を受けた症例は263例でした。

乳がん、肺がん、前立腺がんの患者さんに関する相談が多くなっています。

骨転移症例相談件数のグラフ 2017年1月~12月に相談受けた症例263例。乳がん、肺がん、前立せんがんの患者さんに関する相談が多くなっています。(肺がん82例、乳がん78例)

医師のご紹介

整形外科部長・サルコーマセンター部長

米本 司よねもと つかさ 昭和62年千葉大学医学部卒
【指導医、専門医、認定医など】
  • 日本専門医機構 整形外科専門医
  • 日本がん治療認定医機構 がん治療認定医
  • 日本整形外科学会認定 骨・軟部腫瘍医
  • 日本小児血液・がん学会 評議員
  • 日本サルコーマ治療研究学会 評議員
【専門分野/得意分野】
  • 骨・軟部腫瘍、癌の骨転移

主任医長

鴨田 博人かもだ ひろと 平成10年千葉大学医学部卒
【指導医、専門医、認定医など】
  • 日本整形外科学会専門医
  • 日本がん治療認定医機構 がん治療認定医
  • 日本整形外科学会認定 骨・軟部腫瘍医
  • 日本整形外科学会脊椎脊髄病医
【専門分野/得意分野】
  • 骨・軟部腫瘍、癌の骨転移、脊椎・脊髄外科

リハビリテーション科部長

萩原 洋子はぎわら ようこ 平成12年東京女子医科大学卒
【指導医、専門医、認定医など】
  • 日本整形外科学会 専門医
  • 日本がん治療認定医機構 がん治療認定医
  • 日本整形外科学会認定 骨・軟部腫瘍医
  • 義肢装具等適合判定医
【専門分野/得意分野】
  • 骨・軟部腫瘍、癌の骨転移

医長

木下 英幸きのした ひでゆき 平成24年千葉大学医学部卒
【指導医、専門医、認定医など】
  • 日本整形外科学会 専門医
  • 日本がん治療認定医機構 がん治療認定医
  • 日本整形外科学会脊椎脊髄病医
  • 日本整形外科学会認定 骨・軟部腫瘍医
【専門分野/得意分野】
  • 骨・軟部腫瘍、癌の骨転移、脊椎・脊髄外科

医員

武田 昂典たけだ こうすけ 平成30年東邦大学医学部卒
【指導医、専門医、認定医など】
【専門分野/得意分野】
  • 一般整形外科・外傷外科

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