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更新日:令和元(2019)年5月28日

呼吸器外科

診療科の紹介

呼吸器外科集合

当院では胸部腫瘍に対しては「呼吸器科」として診療を行ってきましたが、平成29年度より組織として「呼吸器外科」「呼吸器内科」を分離しました。平成30年度よりホームページも別の診療科として紹介させていただきます。ただし、呼吸器外科と呼吸器内科はこれまで通り大変良好に連携して診療を行っており、毎日の回診も一緒に行っておりますし、合同の(必要に応じ放射線治療部、臨床病理部、薬剤部等も同席) 呼吸器キャンサーボードを毎日開催して集学的に治療方針を検討しています。「紹介元の医療機関で肺癌などの胸部腫瘍を疑われたけれども、内科/外科のどちらで治療を受けるのがいい状態なのかはわからない」、という方は、呼吸器内科/外科いずれの外来を受診していただいても結構です。いずれにしても検査を行い、両科で相談して御病状・体力に応じた適切な治療方針を選択いたします。

呼吸器外科では、手術療法を中心に治療を行っています。対象となる疾患は、肺がん・転移性肺腫瘍などの肺腫瘍、胸腺関連腫瘍などの縦隔腫瘍、胸膜中皮腫などの胸膜腫瘍、軟部肉腫などの胸壁腫瘍など、胸部の悪性腫瘍が主たるものとなります。

手術による切除が難しい場合は、呼吸器内科や放射線治療部と連携し、化学療法(抗がん剤)や放射線治療を検討します。場合によっては、まず呼吸器内科で化学療法(+放射線)治療を行って腫瘍を小さくした後、呼吸器外科で手術を行う、といった治療方針になることもあります。手術後に化学療法を追加する場合もあります。このような集学的な治療を行うことで、より高い治療効果を追求しています。このために他科との連携体制をしっかりととり、呼吸器内科や放射線科、転移性腫瘍であれば原発がんの診療科などと協力しあいながら治療を行っております。

当院は最新式の放射線治療装置や緩和病棟を完備しておりますので、手術や抗がん剤の適応がない/希望されない患者さんに対しても、できる限りの治療を提供致します。患者さん、ご家族にも充分な説明を行い、納得のいく治療を受けていただくことをモットーとしております。

治療方針

正確な術前診断

肺がんをはじめとする呼吸器領域の悪性腫瘍に対しては、術前の正確な病期診断(進行程度の評価)を行うようにしています。特に肺がんの治療方針や予後に大きな影響を与える縦隔・肺門リンパ節転移の評価には、CTやPET/CTなどの画像検査だけでなく、呼吸器内科の協力の下、超音波気管支鏡(EBUS)により縦隔・肺門リンパ節から採取した細胞・組織による診断を行い、より正しい臨床病期診断をもとに治療方針の決定を行っています。超音波気管支鏡の詳細については呼吸器内科の頁を参照してください。

確実な治療効果と安全性・低侵襲性の両方を追求した手術選択

手術に関しては、安全を第一とした、患者さんに適した優しい治療(外科治療)を提供するように努めております。

具体的な方針としては、以下のような点を重視して治療に臨んでおります。

内視鏡を活用した手術(胸腔鏡手術video assisted thoracoscopic surgery:VATS)により手術創部を縮小し、術後疼痛の緩和・呼吸筋の温存に努めています。

胸腔鏡を用いた手術では、傷の大きさが従来の開胸手術よりはるかに小さく、手術後の痛みも抑えられるため、身体の回復を早めることができます。胸腔鏡手術の安全性を心配される方もおられますが、当院では安全性を第一とし、主に胸腔鏡と肉眼視を併用するハイブリッド式の手術を導入しております。また楔状切除を主とする縮小手術など、安全性が十分満たされると判断される場合には胸腔鏡のみの手術(完全胸腔鏡下手術)も行います。

術後の除痛目的に開胸創の閉鎖には独自の方法を用い、効果を得ております。

また、平成30年度より保険適応となったロボット支援下の胸腔鏡手術を当院でも開始しており、さらなる低侵襲手術の標準化を目指しています。

胸壁や心膜・横隔膜・大血管などの合併切除も積極的に実施して根治性を追求する一方で、気管支および血管の形成も駆使して肺の切除範囲を可能な限り小さく抑えて呼吸機能を温存するような術式を選択するようにしています。

手術による悪性腫瘍の治療は、腫瘍を残らず切除することが原則となります。そのためには、肺腫瘍であっても胸壁(肋骨や筋肉)、心膜(心臓の周りの膜)、血管や横隔膜などに腫瘍が入り込んでいる場合には、これらの組織を一緒に切除しなければ腫瘍が取りきれません。このような腫瘍の場合、切除可能な組織であれば積極的にこれらの組織の合併切除を行って、腫瘍を取り切るように努めています。これらの合併切除を行う場合には、人工材料による胸壁や心膜、血管の再建が必要となることもあります。

がんに対する根治性を求める一方で、術後のQOL(生活の質)が保たれるように、正常な肺の機能を最大限残せるような手術の方法を選択しています。肺の手術では腫瘍と一緒に周囲の正常肺組織も切除する必要があるため、呼吸機能はどうしても術前より低下してしまいます。(術前の呼吸機能検査の値から術後の予測呼吸機能を算出し、手術の可否を判定します。)呼吸機能をできるだけ温存するためには、切除範囲を必要最小限に抑える必要があります。例えば肺の根元にあるがんを切除するためには片肺を全て切除せざるを得ない場合がありますが、我々は気管支形成や血管形成(気管支や血管のうち、がんのある部分に近い部分のみを合併切除し、残した部分を修復したり、一旦切り離して腫瘍のない部分同士でつなぎ直すような手法)を伴う手術を行うことで、できるだけ肺の一部を残すようにしています。また早期肺がんに対しては縮小切除術(従来の標準手術である肺葉切除よりも小さな範囲の切除を選択すること:後述)を積極的に取り入れています。

寧な手術の実施により、早期離床・術後合併症の減少・早期退院・術後のQOL(生活の質)向上を実現できるように心掛けています。

手術の大きさによりますが、標準的な手術の場合、術後2日間程度はしっかり24時間体制でお体の状態をモニタリングできる環境で管理させていただき、合併症が生じてもすぐに見つけて対処できるような体制をとっています。一方で、術翌日には食事を再開し、可能な範囲で歩行を始めていただくなど、早期離床を図っています。

 

丁寧な術後フォロー、再発の監視

手術治療後は当科外来で定期的に経過観察を行います。最初の数ヶ月は手術後の傷の経過や肺の状態の変化を確認します。その後も癌の転移・再発がないかを定期的に確認し、最低でも術後5年間は外来で検査フォローをさせていただきます。

体力が十分おありの患者さんの場合、病期に応じて追加の化学療法を行う場合もありますが、この場合も呼吸器外科の外来、もしくはその都度入院で行います。

再発、転移を認めた方には転移した場所に応じていろいろな科と協力し治療を進めてまいります。

 

症例数

当科におけるこの10年ほどの手術例の推移を示しています。

年間約200~250件の手術を行っており、2016年以後、増加傾向にあります。

肺がん手術は全手術例の約6~7割を占めています。

主な対象疾患と治療

肺がん

肺がんは平成29年1月に国際分類が改訂され(TNM8版)、病期分類が潜伏がん、0、IA1~3、IB、IIA、IIB、IIIA、IIIB、IIIC、IVA、IVBと細かくなりました。

肺がんには小細胞肺がんと非小細胞肺がんがあります。

小細胞肺がんはI期の場合には外科切除を行った上で化学療法を追加する治療を行いますが、全体として化学療法や化学放射線療法を行う場合が多いがんです。

非小細胞肺がん(腺がん、扁平上皮がん、大細胞がん等の総称)ではI、II期では手術が原則です。IIIA期以上の場合には状態によって手術を行う場合がありますが、切除可能と考えられる場合でも化学療法や化学放射線療法を組み合わせた集学的治療を行います。また、手術を行ったIB期、II期の非小細胞肺がん、IA期の一部でも、可能であれば術後に化学療法を追加することで予後が改善できると期待されています。(ここに書いたとおりに行うかどうかは、それぞれの患者さんの全身状態および御希望によります)

肺は右3つ、左2つの肺葉という単位に分かれていますが、肺がんの標準手術はがんができた肺葉単位の切除 + 転移経路となるリンパ組織の切除(リンパ節郭清と呼びます)となります。腫瘍の位置が肺葉内に収まらないときは二葉切除や片肺全摘、周囲臓器の合併切除が必要となることがあります(上記の通り、大きな範囲の肺切除をできるだけ回避するように工夫しています)。

呼吸機能・体力的に制約がある方や、最近CT検診などで見つかることが多くなった比較的早期の小型肺がんの方の場合には、呼吸機能の温存を優先して、縮小手術(肺葉を構成する、もう一段階小さな単位である区域での切除:区域切除や、腫瘍周囲のみの切除:楔状部分切除)を選択する場合もあります。

実際の手術術式の選択については、それぞれの方の御病状に応じて個別に説明・御相談いたします。

治療成績

肺がん手術症例の5年間の生存曲線です。手術日を0日とし、その後の時間経過に従い、どのくらいの率で生存されているかを示しています。摘出標本で診断した病理病期(TNM分類7版)で分けました。(亡くなられた方には肺がん以外の理由の方も含まれています)

化学療法や放射線化学療法の術前導入療法を行ったり、IB期以上の症例において術後化学療法を行っており、治療成績は向上しつつあります。

年齢分布

最近10年の間に当院で肺がんの手術を受けられた方の年齢層を示しました。2009-13年と2014-18年を比較すると、65歳以上の高齢者の方の比率は70.0%から78.1%まで増加しています。75歳以上の後期高齢者の方に関しては25.7%から27.9%に増えており、肺がん手術において高齢者は特別な範疇ではないことが示されています。

肺機能や体力によりますが、御高齢の方でも手術の適応となる場合がありますので、肺がんになっても手術はできないと決めつけずにご相談ください。

転移性肺腫瘍

肺は、他の臓器のがんからの転移がとても起こりやすい臓器です。肺転移に対し手術を行うことで期待される効果は元のがん(原発がん)の種類によって異なりますが、大腸がんや腎がんなど、少数の転移で取り切ることができる場合には手術を行うことで予後の改善が期待されているがんは多くあります。

当科では転移性腫瘍に対しては原発腫瘍の診療科と連携し、予後の向上を目的として積極的な切除を行っております。大腸がん、腎がん、頭頸部がん、骨軟部悪性腫瘍などあらゆる他臓器がんからの転移性肺腫瘍に対して手術を行っています。手術方法は病巣の部位によりますが、可能ならばできるだけ肺を温存できるように楔状部分切除などの小さい範囲の肺切除で取り除くようにします。これも可能であれば、胸腔鏡下の切除を行うことを原則として実施しています。

転移性肺腫瘍の治療適応については、それぞれの原発腫瘍・全体の病状によって異なります。原発腫瘍を治療していただいている先生とよくご相談の上で受診してください。

転移性腫瘍

2007年~2017年に当科で手術した転移性肺腫瘍を原発部位別に分けて示したグラフです。

同じ方で複数回手術を受けられた方を含む延べ人数で示しています。

縦隔腫瘍

縦隔というのは、胸の中で左右の肺の間に挟まれた領域の事をいいます。具体的には心臓、大血管、気管・気管支、食道、リンパ組織、神経組織、胸腺組織など様々な組織が集まって構成されています。これらそれぞれの組織から、良性/悪性の様々な腫瘍ができてくることがありますが、総称して縦隔腫瘍と呼んでいます。一番頻度が高いのは胸腺という組織由来の腫瘍で、胸腺嚢胞(良性)・胸腺腫(悪性)・胸腺がん(悪性)等があります。

血液検査や内視鏡検査などで診断ができる場合もありますが、詳細な診断はわからない場合も多く、また良性の腫瘍であっても大きくなれば周囲の臓器を圧迫するなどで症状が出ることもあるため、診断と治療をかねて手術を行う場合があります。

予測される疾患の種類により、手術適応や治療方針が変わります。例えば縦隔悪性胚細胞腫瘍という腫瘍に対してはまず化学療法を行い、その後に手術を行います。

神経原性腫瘍、奇形種、気管支嚢腫などの良性腫瘍が疑われる場合のほか、腫瘍径の小さな胸腺腫などの場合、原則として、胸腔鏡下手術での摘出を行っています。

周囲組織(大血管・肺・心膜など)に浸潤する悪性縦隔腫瘍(主に胸腺腫・胸腺がん)には腫瘍と胸腺全てに加え、腫瘍が浸潤した臓器・組織の一部を合併して切除する拡大切除術を積極的に行っています。病変の部位により、側方から肋骨を分けて肺の手術と同様の開胸手術をする場合と、胸の前面中央を縦に切り、胸骨を切開して手術を行う場合とがあります。

胸壁腫瘍

胸壁というのは肋骨、胸骨、筋肉などで構成される胸部の骨軟部組織のことをいいます。脊椎(背骨)以外の部位については、呼吸器外科で手術を行う場合があります。

良性/悪性の神経原性腫瘍や悪性の骨軟部肉腫などがあります。疾患によっては整形外科と連携し、協力しての手術や化学療法を含めた集学的治療を行います。

胸膜腫瘍

肺と胸壁、肺と縦隔の間にある膜状の組織を胸膜といいますが、胸膜に生じた腫瘍も手術の対象となる場合があります。孤立性線維性腫瘍という良性/低悪性の腫瘍や胸腺腫などの播種病変を切除することもありますが、最も有名なのは悪性胸膜中皮腫という、胸膜由来の悪性腫瘍です。

悪性胸膜中皮腫はアスベストが主たる原因として生じる予後不良な腫瘍ですが、切除可能なものに対しては手術を行います。

手術には心膜・横隔膜・片肺全てを合併して片側の胸膜組織を全て切除する術式である胸膜肺全摘術と、肺を温存して胸膜組織のみを切除する胸膜切除・肺剥皮術があります。いずれも術前化学療法の後に手術を行い、術後はそれぞれ放射線照射、化学療法を実施することになります。

免疫療法

千葉県がんセンターで行われていた肺がん術後の免疫療法の臨床試験の登録は終了いたしました。

今後の展望

遺伝子解析の診療への活用

今後は、当センター研究局との共同研究により、遺伝子解析による術後予測とそれに沿った治療方針を確立し、診療に活かしたいと考えています。

ロボット支援手術

平成30年より、我が国の健康保険制度で呼吸器外科の手術(肺悪性腫瘍切除、縦隔悪性腫瘍切除)にもロボット支援手術が行えるようになりました。

当院呼吸器外科でも、平成31年2月からロボット支援胸腔鏡下肺悪性腫瘍手術を開始いたしました。保険のルール上、一定数の手術を行うまでは同手術の保険上の施設認定がおりないため、費用の点などで御相談が必要です。また、認可されている術式が限られていること、ロボット使用可能日の制限などがあり、全ての患者さんにロボット手術を受けていただける状況ではありませんが、手術予定の方で関心がおありの方は、お気軽にお尋ね下さい

医師のご紹介

呼吸器外科部長

 

 

岩田 剛和(いわた たけかず)

指導医、専門医、認定医など:

  • 日本外科学会 指導医・外科専門医
  • 日本呼吸器内視鏡学会 気管支鏡指導医・専門医
  • 呼吸器外科専門医
  • 日本がん治療認定医機構 がん治療認定医
  • 日本移植学会 移植認定医
  • ダヴィンチコンソールサージョン

専門分野/得意分野:

専門は肺癌、転移性肺腫瘍、縦隔腫瘍の外科治療

 

医療局長

 

飯笹 俊彦(いいざさ としひこ)

指導医、専門医、認定医など:

  • 日本外科学会 指導医・外科専門医
  • 日本胸部外科学会 指導医
  • 日本呼吸器外科学会 指導医
  • 日本呼吸器学会 指導医・呼吸器専門医
  • 日本呼吸器内視鏡学会 気管支鏡指導医・専門医
  • 呼吸器外科専門医
  • 日本医師会認定産業医

専門分野/得意分野:

  • 専門は肺癌、転移性肺腫瘍、縦隔腫瘍の外科治療

主任医長

 

松井 由紀子(まつい ゆきこ)

指導医、専門医、認定医など:

  • 日本外科学会 外科専門医
  • 呼吸器外科専門医
  • 日本呼吸器内視鏡学会 気管支鏡指導医・専門医
  • 日本がん治療認定医機構 がん治療認定医

専門分野/得意分野:

  • 専門は肺癌、転移性肺腫瘍、縦隔腫瘍の外科治療

主任医長

 

 

 

芳野 充(よしの みつる)

指導医、専門医、認定医など:

  • 日本外科学会 指導医・外科専門医
  • 日本呼吸器内視鏡学会 気管支鏡指導医・専門医
  • 呼吸器外科専門医
  • 日本がん治療認定医機構 がん治療認定医

専門分野/得意分野:

  専門は肺癌、転移性肺腫瘍、縦隔腫瘍の外科治療

医員

 

 

西井 開(にしい かい)

指導医、専門医、認定医など:

 

専門分野/得意分野:

専門は肺癌、転移性肺腫瘍、縦隔腫瘍の外科治療