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診療科・部門紹介

ハイパーサーミア(温熱療法)外来

2020年10月28日より、千葉県がんセンター新病院にて治療が始まりました。

千葉県では、当センターが唯一の導入施設です。

ハイパーサーミアの写真

ハイパーサーミアとは

ガイドライン

腫瘍を電磁波で体外から加温する治療です。

体の表面から二極の電極盤ではさみ、その間に8MHzの高周波(ラジオ波)を通すことで、がんの局所の温度を上昇させます。体の表面の温度が先に上昇すると、痛みや低温やけどの原因となりますので、体表を冷やすために体に接する電極またはオーバーレイボーラスに5℃の冷却水を流し、体の中心部分の温度をより高める工夫がされています。

2023年4月に「ハイパーサーミア診療ガイドライン2023年度版」が金原出版株式会社より発行されました。これには、(1)頭頚部癌(2)乳癌(3)食道癌(4)非小細胞肺癌(5)膵癌(6)直腸癌(7)膀胱癌(8)子宮頸癌(9)悪性黒色腫(10)軟部肉腫(11)腹膜播種に対するCQ;clinical questionが記載されています。

ハイパーサーミアの特徴

人間の細胞は42.5度以上に温度が上がると死滅します。表在性腫瘍に対しては、この熱の効果で腫瘍を死滅させることが可能で腫瘍縮小効果が期待できます。

深在性腫瘍に対しては、40℃前後の温度上昇であっても、1回の治療が43℃で1分間に匹敵するような十分な温度上昇と加温時間が得られた場合、がん薬物療法(化学療法/抗がん剤治療/分子標的薬/免疫チェックポイント阻害剤)・放射線治療の増感効果を得ることができます。

1990年4月より保険適用となっており、30年以上の期間で保険診療が行われてきています。当センター導入の機器は第5世代目であり、加温調節機能の向上と冷却性能が改善されています。日本ハイパーサーミア学会から推奨を受けています。

ハイパーサーミアにより、熱ショックタンパク質(Heat Shock Protein;HSP)を介した免疫賦活作用や腫瘍微小環境(Tumor microenvironment;TME)における低酸素環境の改善、酸性環境の改善、ミトコンドリアの機能を改善しエネルギー代謝を解糖系からTCA回路へシフトする代謝適応の誘導、アブスコパル効果などが報告されています。

対象疾患

浅在性悪性腫瘍;頭頚部癌・乳癌・悪性黒色腫・肛門管癌・骨転移・軟部肉腫など

深在性悪性腫瘍;食道癌、胃癌、結腸癌、直腸癌、膵癌、胆管癌、肝癌、腎癌、前立腺癌、膀胱癌、肺癌、子宮癌、卵巣癌など

脳・眼球・血液疾患は対象外になります。

高齢、手術直後や病気の進行、胸水・腹水の貯留などにより体力が低下されている方、パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)が2以下への低下が認められる方は治療を行えないことがあります。

パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)とは

全身状態の指標の一つで患者さんの日常生活の制限の程度を示します。

Score 定義

0:  全く問題なく活動できる。
発症前と同じ日常生活が制限なく行える。

1:  肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる。
例:軽い家事、事務作業

2:  歩行可能で、自分の身のまわりのことはすべて可能だが、作業はできない。
日中の50%以上はベッド外で過ごす。

3:  限られた自分の身のまわりのことしかできない。日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす。

4:  全く動けない。
自分の身のまわりのことはまったくできない。
完全にベッドか椅子で過ごす。

これらのPerformance Status ScoreはECOG(米国の腫瘍学の団体の1つ)が定めた指標を日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)が日本語訳したものです。

出典 Common Toxicity Criteria, Version2.0 Publish Date April 30, 1999 及びJCOGホームページから引用

当センターでのハイパーサーミア

  • 加温する治療部位は、腹部・胸部・四肢・頭頸部で、深部および体表に治療を行っています。消化器悪性腫瘍、整形外科悪性腫瘍、乳がん、婦人科がん、頭頸部がん、泌尿器がん等の疾患を受け入れています。
  • 保険診療で治療を行います。
  • がん薬物療法(化学療法/抗がん剤治療/分子標的薬/免疫チェックポイント阻害剤)または放射線治療と併用して行います。だたし、現在は経口薬との併用は一時中止しています。ハイパーサーミア単独の治療は行いません。
  • 有効性に関しては、多施設共同無作為第III相試験などを含む非常に多数の論文や学会報告がありますが、現在のところガイドラインでの高い推奨や標準治療としては確立しておらず、オプション/治療の選択肢の一つとなります。患者さんからの治療の希望の申し出によりハイパーサーミアの説明を行います。
  • 化学療法と放射線療法の効果を増感しますので、両者を併用した化学放射線療法を行う際のハイパーサーミア併用により、がんが消失する割合(完全緩解率)の可能性が高くなると報告があります。
  • 抗がん剤との併用において、腫瘍縮小効果が高いのは、術前化学療法やファーストラインでの化学療法との併用になります。がん薬物療法を行っている期間が長くなるにつれて、腫瘍を大きくしないことが併用治療の目的となります。これは、抗がん剤のがんに対する感受性が高い時期、耐性が出現していない時期がより有効性が高いためです。
  • がん薬物療法とハイパーサーミアの併用のタイミングは、前日・当日・翌日のいずれかで、通院が可能な時間に合わせて行っています。
  • 2023年2月からの治療枠は、月曜日、火曜日、水曜日、金曜日の6件/日で行うことになりました。 1週間に24枠のみのため予約するのが難しい状況が続いており、ご迷惑をお掛けしています。
  • ハイパーサーミア治療前には、必ずハイパーサーミア外来を受診していただきます。最終的な治療の可否は、当院のハイパーサーミア・カンファレンスおよびキャンサー・ボードにて判断します。必ずしも治療を提供できない可能性がありますことをご了承ください。
  • 画像検査で治療の対象となる明らかな病変のある方を優先的に治療しています。治療部位を正確に判断するため、治療開始日より1か月以内の画像検査(CT検査・MRI検査・PET検査)を確認しています。
  • 骨転移のハイパーサーミアは、放射線治療の効果を高めるために併用を行っています。
  • リストテキスト

禁忌・禁止

  • ペースメーカー、埋め込み型除細動器、人工内耳等を装着または埋め込んでいる方
  • 加温域内に金属片(消化管ステント等)を留置している方又は金属粉を含む刺青等をしている方
  • 導電性のある金属を含む貼付材(痛み止めの麻薬貼付剤;フェントスタープ・モルヒネテープ等)を使用したままの方
  • 豊胸材(シリコン)等が埋め込まれている部分への加温は出来ません
  • 意思疎通が困難な方や施行により危険を生じる様な合併症を有する方
  • 妊娠中の方や出産直後の方
  • 小児(乳幼児)

*胆管内における金属ステントに関しては、日本ハイパーサーミア学会の指針に基づいて対応しています。ステントが挿入された患者さんの加温の際には、治療経過を観察しながら慎重に加温を行っています。参照;QA委員会報告「金属埋没患者の誘電型加温における安全加温についての指針」日本ハイパーサーミア学会誌26〔4〕:(平成22年)

ハイパーサーミア治療枠

  • 1週間に計27枠にて治療を行っています。月曜日から水曜日、金曜日は午前3枠、木曜日は午前3枠となります。
区分
午前 3枠 3枠 3枠 3枠 3枠
午後 3枠 3枠 3枠 3枠

*予約するのが難しい状況が続いており、ご迷惑をお掛けしています。

外来診察日

  • 月~水、金の9時~11時、木曜日は休診日です。

外来担当医師

  • 千葉 聡(食道胃腸外科・主任医長)

受診方法

当センターを受診中の方

主治医からの院内予約になります。当センターにて治療されている患者さんは、各診療科の主治医とご相談ください。初めに、ハイパーサーミア外来を受診して頂き、十分に説明の上、治療の予定を組みます。

当センター以外の病院に通院中の方

当センター以外の施設にてがん治療中の患者さんは、地域連携室にてハイパーサーミア外来を予約してください。他院ですでに治療が開始されている乳がん・婦人科がん(子宮がん、卵巣がん)の方で、当院での化学療法や放射線療法を希望される方の受け入れは行っておりませんのでご了承下さい。

実際の治療について

  • 1回の治療時間はおよそ40-60分間です。他に、治療前後の準備や着替えなどの時間も掛かります。
  • 治療の頻度は、週1回から月1回です。併用するがん薬物療法・放射線治療によって異なります。治療期間は、開始から2か月後にCT検査による効果判定を行い治療の継続の判断を行います。
  • 副作用は低頻度ですが、皮膚や筋肉の疼痛や水泡形成などの熱傷・脂肪硬結、発汗に伴う脱水症などがあります、また、腸閉塞を増悪させる報告がなされています、肥満などの体格や年齢、性別により個人差もありますが、副作用のほとんどは軽微であり、がん治療の中心となる化学療法や放射線治療の継続を妨げないように調節しながら治療しています。治療中に、加温に伴う熱さ・痛みがある場合にはスタッフにお伝えいただき、その都度微調節させて頂きます。

2023年11月までに当センターで治療した疾患とその症例数

2023年11月までに当センターで治療した疾患とその症例数です。

疾患と症例数

内訳は膵がん91例、大腸がん24例、乳がん17例、婦人科がん17例、胆道がん13例、軟部肉腫9例、胃がん6例、食道がん5例、肝がん5例、泌尿器がん3例、肺がん3例となっています。

参考資料:日本ハイパーサーミア学会ニュースより引用、2021年10月18日

日本ハイパーサーミア学会ニュースNo.101【お知らせ】健保検討委員会よりお知らせ 日本ハイパーサーミア学会健保検討委員会

「保医発第0305号 別添 557~558頁(添付ファイル)M003 電磁波温熱療法(一連につき)(4)「一連」とは、治療の対象となる疾患に対して所期の目的を達するまでに行う一連の治療過程をいう。数ヶ月間の一連の治療過程に複数回の電磁波温熱療法を行う場合は、1回のみ所定点数を算定し、その他数回の療法の費用は所定点数に含まれ、別に算定できない。なお、医学的な必要性から、一連の治療過程後に再度、当該療法を行う場合は、2か月に1回、2回を限度として算定する。」

※上記赤文字の部分の解釈についてですが、追加の回数は2回までで、計3回(最初の1回を足して)というのが厚労省の解釈です。例えば1月に一連の治療を行い、再度行う場合は3月、5月の3回は請求が出来る、というものです。

医師のご紹介

食道・胃腸外科・主任医長

千葉 聡ちば さとし 平成4年福島県立医科大学卒業
【指導医、専門医、認定医など】
  • 日本外科学会 専門医
  • 日本内視鏡外科学会 技術認定医(大腸)
  • 日本ハイパーサーミア学会 認定医
【専門分野/得意分野】
  • 専門は消化器がん、特に大腸がん
  • 腹腔鏡下手術
  • ハイパーサーミア(温熱療法)

>主任医長

栁𣘺 浩男やなぎばし ひろお 平成18年 浜松医科大学医学部卒
【指導医、専門医、認定医など】
  • 日本外科学会 専門医
  • 日本消化器外科学会 専門医・指導医・消化器がん外科治療認定医
  • 日本胆道学会 認定指導医
  • 日本膵臓学会 認定指導医
  • 日本がん治療認定医機構 がん治療認定医
  • 日本肝胆膵外科学会 評議員
【専門分野/得意分野】
  • 専門は肝胆膵外科 とくに膵臓外科