ここから本文です。

更新日:令和6(2024)年4月11日

ページ番号:649082

施設花き生産における暑熱対策について

1.はじめに

近年の夏は猛暑日が連続することも多く、年々その厳しさが増しています。秋から冬に生育・出荷を目指す施設での花き生産では、夏のハウス内での高温により、苗などの植物体の生育不良や生育遅れ、更にはその後の生育への悪影響による品質の低下などが懸念されています。
今回は、ハウス内の暑熱対策と効果を高めるためのポイントについて整理しました。
既に対策を実施している方は、今一度チェックして、次の夏に備えましょう!

2.暑熱対策と活用のポイント

何もしないと、日中のハウス内の気温は外気よりも高くなります。高温の原因である太陽光を遮る遮光、高温になってしまった空気を外部に排出する換気、温度そのものを下げる冷却、これらの技術を組み合わせて、暑熱対策を行いましょう。

(1) 被覆資材による遮光

厳しい夏の太陽光を遮光ネットなどで遮るもので、最も導入されている暑熱対策の一つです。各メーカーから、様々な遮光率や遮熱の効果等もある商品が販売されています。ネット資材が一般的ですが、ハウスの屋根に塗る塗布資材もあります。
遮光率が高いと光の透過率が低くなり、気温は抑えられますが、ハウス内の照度が低く(暗く)なります。照度が低すぎると、徒長や生育不良の原因になるので注意してください。最近では照度確保も考慮した商品が出ていますので、栽培する品目に合わせて選択しましょう。

また、遮光ネットにはハウスの屋根に張る「外部遮光」、内部に張る「内部遮光」の二通りの使い方があります。外部遮光は効果が高いですが、ハウスの屋根に設置する作業が大変なことや強風による破損、風雨にさらされるため資材の劣化が早くなること等がデメリットとなります。
内部遮光は多くのハウスで導入されていますが、図1のように遮光資材が反射した光や熱がハウス内に残ってしまいます。ハウスの天窓からの換気や妻換気(写真1)などをして、排出することが大切です。

外部遮光と内部遮光の図

図1外部遮光と内部遮光の太陽光と輻射熱の違い

ハウスの妻換気の写真 
写真1妻換気の例

(2) 自然換気及び換気扇等による強制換気

ハウス内の風通しを良くし、換気することは、暑熱対策の基本です。サイドや天窓、谷や妻面からの換気を行ってください。特に天窓のないハウスでは、妻面に換気用窓(写真1)や換気ダクトを設置すると、ハウス上部の暖気を排出することができます。
循環扇や工業用扇風機等は、ハウス内に空気の流れを作り、空気の循環を行うことができます。また、強制的にハウス内の空気を排出して外気を入れれば、外気温の方が低いのでハウス内気温は下がります。排気ダクトや循環扇を上手く設置して空気の流れを一方向にして、排出できるようにすると効果的です。

(3) 気化熱を利用した冷却

ミスト(細霧冷房)やパッドアンドファン、ヒートポンプは水が蒸発するときに熱を奪う気化熱の原理を利用して、気温を下げるものです。気化熱は、乾燥した空気で気温を下げる効果が大きく、湿度が高くて気温の高い日は効果が小さくなります。また、湿度が上がるため好湿性病害が発生しやくなるので、注意が必要です。
設備の導入コストやランニングコスト等、経費がかかるため、表1にあるそれぞれの特徴を理解して導入を検討する必要があります。

表1気化熱を利用した冷却方法の特徴

  ミスト(細霧冷房) パッドアンドファン ヒートポンプ
長所 設置は比較的容易 妻面全体に設置するため冷却能力は比較的高い 冷房だけでなく、多用途に活用できる
短所 水質の良い水が必要
径が小さいノズルは詰まりやすい
ノズルと作物の距離を確保するために高軒高が必要
大がかりな設置工事が必要 設置工事及びランニングコストがかかる
備考 ミネラルを豊富に含む水質では、ノズルが詰まりやすい 水質によってはパッドが汚れやすい 暖房では温風暖房機との併用で燃油使用量の削減効果が期待される

特に、千葉県内では地下水の水質がミスト等に向いていない場合が多く、水道水を利用するケースもあります。
農業試験場で開発した簡易ミスト装置については、以前のフィールドノートで紹介していますので、参考にしてください。

フィールドノート『シクラメン栽培における夏季の低コスト高温対策技術』はこちら                                     

3.おわりに

どの暑熱対策技術を導入するかは、生産する品目、所有するハウスの形状、導入コストなどを考慮して選択してください。特に、コストのかかる対策の場合は経営全体を見たうえで、導入が妥当かどうか判断しましょう。
また、実際にハウス内の気温や湿度が外気と比べてどうなったか、どのように変化しているかを把握し、ハウス内環境を計測しておくことは、異常高温や気象変動が懸念される今、とても重要になっています。特に新しい技術等を導入したり改善を行ったときは、その効果が有効であったのかどうかを判断するために、客観的なデータを取得することは必須です。
環境を計測してデータを蓄積、グラフ化等によりハウス内環境を見える化するモニタリング機器には、比較的安価に導入できるものもありますので、ぜひご検討ください。

初掲載:令和6年4月
担い手支援課
専門普及指導室
主席普及指導員 藤澤 由美子
電話番号:043-223-2911

お問い合わせ

所属課室:農林水産部担い手支援課専門普及指導室

電話番号:043-223-2911

ファックス番号:043-201-2615

より良いウェブサイトにするためにみなさまのご意見をお聞かせください

このページの情報は役に立ちましたか?

このページの情報は見つけやすかったですか?