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更新日:令和4(2022)年7月21日

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サトイモ疫病の防除対策

1.はじめに

千葉県のサトイモ生産は令和2年産で栽培面積1,060ヘクタール、出荷量12,100トンであり、都道府県別出荷量で2位(農林水産省 令和2年産野菜生産出荷統計)となる重要品目です。しかし、平成26年頃から九州四国地域のサトイモ産地でサトイモ疫病の被害が多発し、千葉県においても平成28年に一部地域で発生が確認されて以来、主要産地に拡大して経済的被害が問題となっています。

病原菌は卵菌類の一種フィトフトラ・コロカシエです。感染すると、はじめは葉や葉柄に暗褐色の円形病斑を生じ(写真1)、その後の病斑の拡大や葉柄の折損(写真2)によって葉が失われます。多湿条件では病気の進展が早く、発病開始から1週間程度で圃場全体に拡大することもあります。早期に蔓延すると収量への影響も大きくなります。

葉の病斑(JPG:289.2KB)

写真1.葉の病斑

葉柄の折損(JPG:342.7KB)

写真2.葉柄の折損

多発圃場(JPG:465.1KB)

写真3.多発圃場

※画像をクリックすると、大きい画像が表示されます。

2.発生源

発生源は種芋や圃場周辺の残さと考えられています。農林総合研究センター内の発病圃場から収穫した種芋を冬季に土中で保存して春の定植前に検査したところ、生きた疫病菌が検出されました。他県の報告では、水に浮く芋は疫病菌を保菌している割合が高いとされています(サトイモ産地を救う研究開発コンソーシアム(2020)、「サトイモ疫病対策マニュアル」)。また、圃場外へ廃棄した芋から生育した「野良生え」が本圃よりも先に発病している事例があったことから、これらも感染源になると考えられます。疫病菌は風雨で容易に感染を広げますので、圃場周辺の発生源にも注意が必要です。

3.初発時期と気象条件

農林総合研究センターでは、平成30年度から令和3年度にかけて、農協及び農業事務所と協力して主要産地(八街市、千葉市、香取市(香取市は令和元年度から))における発生状況の調査を行ってきました。その結果、各産地とも被害面積が急激に拡大していることが分かりました。また、初発生を確認した日は年により6月20日から7月22日と幅がありましたが、4か年を通して、日平均気温が25度を超え、まとまった雨または少量でも数日に渡る降雨の後に発生する点が共通していました。

4.防除対策

(1)発生源の除去

健全種芋の確保と耕うんによる残さの分解促進、廃棄芋の土壌深部埋設等による野良生え対策等により、発生源をできるだけ少なくします。種芋については、現在のところ疫病に登録のある種芋消毒剤はありませんので、定植前によく洗浄・選別して、保菌した種芋を圃場に持ち込まないようにすることが重要です。

(2)発病前から初期の薬剤散布

サトイモ疫病の散布薬剤としては、令和4年4月11日現在5つの薬剤が登録されています。このうち、「ペンコゼブ水和剤」と「ランマンフロアブル」、「ジーファイン水和剤」は発病前からの散布である程度の予防効果が確認されていますが、発病後の防除効果はあまり期待できません。平均気温が25度を超えたら少なくとも数日おきに圃場をよく観察し、疫病を確認したらできる限り発病葉を除去(土壌に埋設または圃場外へ持ち出し)して直ちに「ダイナモ顆粒水和剤」または「アミスター20フロアブル」を散布しましょう。これらの薬剤でも発生が拡大してからの防除は難しいため、ごく初期のうちに散布することが重要です。その際の薬液量は使用基準の範囲内で株全体にしっかりかかる量としましょう。万遍なく散布できるように薬散用の通路を確保しておくことも重要です。発生後は、降雨が多い場合や発生が拡大してしまった場合は7日から10日間隔、降雨が少ない場合でも2週間間隔で「ダイナモ顆粒水和剤」または「アミスター20フロアブル」を散布することが重要です(散布時期や回数等は使用基準を順守してください)。「石川早生」では収穫の3週間前まで、「土垂」では疫病の発生が収まる9月下旬頃まで蔓延を防ぐことで、収量の減少を抑えられます。サトイモの薬剤散布作業は重労働ですが、無人航空機で散布できる薬剤も増えつつあり、散布作業の省力化が期待されています。

 

初掲載:令和4年5月
農林総合研究センター
病理昆虫研究室
上席研究員 中田 菜々子
電話番号:043-291-9991

お問い合わせ

所属課室:農林水産部担い手支援課専門普及指導室

電話番号:043-223-2911

ファックス番号:043-201-2615

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