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更新日:令和4(2022)年10月13日

ページ番号:23610

答申第51号

答申第51号

平成17年3月22日

千葉県教育委員会委員長伊藤潔様

千葉県個人情報保護審議会

会長原田三朗

異議申立ての決定について(答申)

平成12年12月27日付け教指第1894号による下記の諮問について,別添のとおり答申します。

平成11年5月12日付けで異議申立人から提起された平成11年3月19日付け○○第373号の1で行った「平成11年度○○高校入学試験に係る解答用紙」の自己情報非開示決定に係る異議申立てに対する決定について


諮問第43号

答申第51号

審議会の結論審議会への諮問までの経緯申立人の主張要旨実施機関の主張要旨審議会の判断審議会の処理経過

1.審議会の結論

千葉県教育委員会(以下「実施機関」という。)が、平成11年3月19日付け○○第373号の1で非開示決定した異議申立人(以下「申立人」という。)の請求に係る「平成11年度千葉県公立高等学校入学者選抜に係る解答用紙」(以下「本件解答用紙」という。)について、千葉県個人情報保護審議会(以下「審議会」という。)は、次のとおり判断する。

(1)本件解答用紙のうち、記述式問題に対する解答への評価を記載した部分(欄外に記載した部分を含む。)以外の部分を開示すべきである。

(2)実施機関が行った記述式問題に対する解答への評価を記載した部分(欄外に記載した部分を含む。)を非開示とした決定は妥当である。

(3)なお、(1)及び(2)における「記述式問題」とは、次に掲げる教科ごとの問題番号を指す。

  • ア国語解答用紙における、一(1)から(5)まで、二(1)から(5)まで、三(2)、(3)及び(5)、四(1)、(5)及び(6)、五(2)、(4)、(5)及び(6)並びに六(1)、(3)及び(4)
  • イ社会解答用紙における、2(4)、4(1)(1)、6(3)、7(1)及び(2)(1)並びに9(2)
  • ウ数学解答用紙における、1(1)から(6)まで、2(1)、(2)、(3)、(5)及び(6)、3(1)及び(2)、4(1)及び(2)並びに5(1)及び(2)
  • エ理科解答用紙における、1(4)、2(1)、3(1)、(2)及び(4)、4(1)、(2)及び(4)、5(3)及び(4)、6(1)及び(3)、7(1)から(4)まで並びに8(1)、(2)及び(4)
  • オ英語解答用紙における、4(4)、6(1)から(4)まで及び7(3)

2.審議会への諮問までの経緯

申立人は、平成11年3月5日付けで実施機関に対し、千葉県個人情報保護条例(平成5年千葉県条例第1号。以下「条例」という。)第14条第2項の規定により、申立人の子の個人情報が記録された本件解答用紙の開示請求を行った。

この開示請求に対して実施機関は、本件解答用紙は条例第15条第4号に該当し、個人に対する評価及び判断を伴う試験の事務事業に関する個人情報であり、開示することにより、当該事務事業又は将来の同種の事務事業の適正な執行に著しい支障が生ずると認められるとして、本件非開示決定を行った。

これに対し、申立人は平成11年5月12日付けで実施機関に対して異議申立てを行い、実施機関は平成12年12月27日に審議会へ諮問したものである。

3.申立人の主張要旨

(1)異議申立ての趣旨

異議申立ての趣旨は、実施機関が平成11年3月19日付け○○第373号の1で行った本件解答用紙の非開示決定の取消しを求めるものである。

(2)異議申立ての理由

申立人が主張する異議申立ての理由は、概ね以下のとおりである。

  • ア自己採点と開示された採点に違いが生じているので確認を求めたい。
  • イ条例第15条第4号該当性について

自己の解答用紙を確認するのに事務事業に著しい支障が生ずる理由はなく、的に外れていて不当な処分である。

4.実施機関の主張要旨

(1)高等学校の入学者選抜について

平成11年度千葉県県立高等学校入学者選抜の学力検査等による入学者選抜(以下「本件入学者選抜」という。)は、実施機関が定めた「平成11年度千葉県公立高等学校入学者選抜実施要項」(以下「実施要項」という。)等に基づいて各県立高等学校(以下「各学校」という。)において実施されたものである。

各学校の校長は、この実施要項及び学校教育法施行規則(昭和22年文部省令第11号。以下「規則」という。)第59条第1項の規定により、中学校長から規則第54条の4(当時。現行規則では第54条の6)の規定により送付された調査書及び選抜のための学力検査の成績を資料とし、志願者の各学校の教育を受けるに足る能力、適性等を総合的に判定して、入学許可候補者の決定をその権限及び責任の下に厳正に行っている。

申立人の子が志願した千葉県立○○高等学校(以下「○○高校」という。)においても、平成11年2月25日及び26日に県下一斉に行われた学力検査後、校長、教頭及び教諭全員による入学許可候補者決定のための会議を行い、最終的には校長が総合的に判定して入学許可候補者を決定し、平成11年3月4日に発表している。

(2)条例第15条第4号該当性について

本件解答用紙に記録された個人情報は、個人の知識、思考・判断能力等を測定する入学者選抜の学力検査における申立人の子の解答の正誤並びに総得点であるため、「個人に対する評価又は判断を伴う事務事業に関する情報」と認められ、本号前段に該当する。

ア部分点を与える採点箇所について

学力検査問題は、中学校の学習指導要領に基づき、単に知識を問うものだけではなく、思考・判断能力や表現力等、様々な観点から受検者の資質能力を見るために作成されている。そのため、思考・判断や問題解決の過程を評価するために部分点を与える検査問題も出題される。そして、細かな採点基準については各学校の裁量により設定され、それに基づき採点業務が遂行される。

もし、本件解答用紙を開示すると、各学校による採点基準の違いから、申立人から採点に対する疑義が呈され、合否判定をめぐる誤解を生み、それが波及して、県民の入学者選抜に対する不信感を拡大しかねない。合格発表後はいろいろな入試事務がある繁忙期であり、かかる疑義に対して逐一納得いく説明をすることは非現実的である。また学校間の基準の相違は、各学校の序列化などの風評のもとになることが否定できない。これらのことを考慮すると、部分点を与える問題が出しにくくなり、全面的に多肢選択方式にせざるをえない。しかし、そもそも学力検査は、生徒の個性・能力を適正に測り、各学校で入学許可候補者を選抜するための選考資料の一つとなり得るものでなくてはならない。部分点を与える問題は、国語における作文、数学における作図や証明、理科におけるグラフの作成などを例に取ればわかるように、個々の生徒の思考の過程をはじめ、能力・適性を測る上で多肢選択方式では到底及ばない出題方式である。

以上のことから、本件解答用紙を開示すると、部分点を与える問題が出しにくくなり、総合的な判断を重視する入学者選抜に係る事務事業の適正な執行に著しい支障が生ずる可能性がある。

従って、本号後段に該当する。

イ部分点を与える採点箇所以外について

部分点を与える採点箇所以外の部分を開示すると、口頭による開示請求により総合得点を開示していること及び配点の記載もある正解表を公表していることから、この部分の得点を差し引くことにより、部分点を与える採点箇所の得点が判明することになり、本号後段に該当する。

ウ申立人の子が自ら筆記した部分である受検番号、氏名及び解答について

受検番号、氏名及び解答についてのみ開示したとしても、請求の趣旨を充足することはできないと判断した。

(3)条例第15条第8号該当性について

解答用紙を各学校で開示することとなれば、多くの者からの開示請求が見込まれる。しかしながら、各学校においては解答用紙の開示や、その採点基準等の説明に対する準備体制は整っておらず、年度末の繁忙期とも相俟って各学校の入学者選抜に係る事務事業の円滑な執行に著しい支障が生ずると認められ、本号に該当する。

5.審議会の判断

(1)対象文書について

本件解答用紙は、本件入学者選抜において、○○高校を志願し、受検した申立人の子の解答に関するものであり、申立人の子の個人情報が記載されている。

そして、本件解答用紙は、次のア、イの問題形式に対する申立人の子が解答した部分(未記入の部分を含む。)及びその評価を記載した部分(欄外に記載した部分を含む。)、受検番号欄、氏名欄、性別欄並びに総得点欄並びに教科名その他の印刷された部分で構成されている。

  • ア「多肢選択方式問題」:与えられた選択肢の中から選択し、それに付された単純な記号によって解答するもの。
  • イ「記述式問題」:多肢選択方式問題以外の問題。

なお、イ「記述式問題」については、(1)受検者の解答が正解に完全に一致しなくても、一致の程度に応じて部分点を与えることができるものと、(2)それ以外(正解に完全に一致しなければ点数を与えることができないもの)に分かれる。

(2)条例の趣旨について

条例は、第1条で県が保有する個人情報の開示等を請求する権利を明らかにし、第14条では何人に対しても実施機関が管理している自己の個人情報の開示を請求できる権利を認め、実施機関が開示請求者に開示することを原則とし、当該個人情報が第15条第1号から第8号までに該当しない限り開示しなければならないこととしている。このことは開示請求者が未成年者等の法定代理人であるときも同様である。

実施機関は、開示請求された本件解答用紙が条例第15条第4号(評価等情報)に該当するものとして非開示とした。

そこで、審議会は本件解答用紙に記録された個人情報が同号に該当するかどうか判断する。

(3)条例第15条第4号の該当性について

ア本号は、「指導、相談、選考、試験、診療その他の個人に対する評価又は判断を伴う事務事業に関する個人情報であり、開示することにより、当該事務事業又は将来の同種の事務事業の適正な執行に著しい支障が生ずると認められるとき。」と規定している。これは、指導、相談、選考、試験、診療その他の評価等の適切な執行を確保するための規定であり、これらの事務事業の性格に着目し、これらの事務事業に関する情報で、請求者に開示することにより、当該事務事業の適切な執行に著しい支障を生じるおそれのあるものは、開示しないことができると定めたものである。

イ本件解答用紙は、申立人の子の解答に対して○○高校が行った採点の結果という評価が記載されたものであるから、本号前段に該当する。

ウ次に、本号後段の条件である事務事業への支障について以下検討する。

(ア)記述式問題のうち、部分点を与えることができる問題に対する解答への評価を記載した部分(欄外に記載した部分を含む。)について

部分点を与える際の採点基準については、各学校ごとの裁量によって設定されるもので、各学校ごとで異なるものであり、このような裁量的要素が入り込む採点基準に基づく部分点を開示すると、学校側の解釈が恣意的だと主張し本人を納得させるのは非常に難しいと、実施機関は説明する。

各学校とは異なる評価を自ら行った受検者が、当該学校が行った評価に対して不平不満を主張することはあり得ると容易に想定できることであり、そのような不平不満に対して、逐一理解を得るような説明をすることは困難であるとする実施機関の主張を否定する根拠はない。その結果として、部分点を与える問題に対する解答への評価を記載した部分(欄外に記載した部分を含む。)を開示すると、各学校の評価を巡って各学校と開示請求者等との間に無用の混乱が生じるおそれを否定することはできない。

したがって、部分点を与える問題に対する解答への評価を記載した部分(欄外に記載した部分を含む。)を開示することになると、かかる混乱を避けるために、部分点を与えることができる問題を避け、全面的に多肢選択方式等による出題形式とせざるを得なくなるという実施機関の主張に理由があると認めることができる。その結果、入学者選抜の学力検査問題により、単に知識を問うだけではなく、思考・判断能力や表現力等、様々な観点から受検者の資質能力を見、適切に受検者の多様な学力を測定することが困難になるという実施機関の指摘は、否定できない。

よって、当該部分を開示すると、入学者選抜事務の適正な執行に著しい支障が生ずる可能性があると認められ、本号後段に該当する。

(イ)(ア)以外の記述式問題に対する解答への評価を記載した部分(欄外に記載した部分を含む。)について

部分点を与えることができる問題以外の記述式問題についても、不正確な文字で書いてあった場合、歴史上の人物名を漢字ではなく平仮名で書いてあった場合などに各学校の行う評価の裁量性を払拭することはできない。

よって、その裁量に基づいて採点基準を設定し、この採点基準に基づいて採点した結果に対して不平不満が主張され無用の混乱が生ずるおそれがあることは前述の(ア)と同様であり、(ア)以外の記述式問題に対する解答への評価を記載した部分(欄外の記載部分を含む。)を開示すると入学者選抜事務の適正な執行に著しい支障が生ずる可能性があると認められ、本号後段に該当する。

(ウ)多肢選択方式問題に対する解答への評価を記載した部分(欄外に記載した部分を含む。)について

多肢選択方式問題については採点に当たっての各学校ごとの裁量の余地はない。

よって、採点した結果に対する不平不満から生じる混乱は考えにくく、多肢選択方式問題に対する解答への評価を記載した部分(欄外に記載した部分を含む。)を開示しても入学者選抜事務の適正な執行に著しい支障が生ずるとは認められず、本号後段に該当しない。

なお、実施機関は当該部分を開示すると、口頭による開示請求により開示された総合得点から、当該部分の得点を差し引くことにより、記述式問題の採点箇所の得点が判明することになると主張するが、本件の場合、判明するのは記述式問題における解答の得点の総和であり、個々の記述式問題の得点が判明するわけではない。

(エ)上記以外の部分

受検番号、氏名、性別及び申立人の子が解答した部分(未記入の部分を含む。)については、申立人の子が自ら記述する箇所であり評価が加わっていない。実施機関は「受検番号、氏名及び解答についてのみ開示したとしても、請求の趣旨を充足することはできないと判断した」と主張するが、請求の趣旨を充足するかどうかの判断は請求者に委ねるべきであり、この主張を受入れることはできない。また、総得点についても口頭による開示請求の制度を用いてすでに申立人が知っているところである。教科名その他の印刷された部分(記述式問題に対する解答への評価を記載した部分から容易に分離できない部分は除く。)はもともと印刷した箇所であり評価が加わっていない。

よって、当該部分を開示しても入学者選抜事務の適正な執行に著しい支障が生ずるとは認められず、本号後段に該当しない。

エ従って、(ア)及び(イ)の部分は本号に該当し、(ウ)及び(エ)の部分は本号に該当しないものと判断する。

(4)条例第15条第8号の該当性について

実施機関は理由説明書において本号該当性を主張しているが、非開示決定において非開示理由として本号を記載しておらず、本件非開示決定の理由とした同条第4号との関連性も認められないので本件非開示の理由として判断しない。

(5)結論

以上のことから、「1審議会の結論」のとおり判断する。

なお、申立人及び実施機関双方のその他の主張は、本件解答用紙を開示すべきか否かの結論に、直接影響を及ぼすものではない。

6.審議会の処理経過

当審議会の処理経過は別紙のとおりである。


別紙

審議会の処理経過

年月日

処理内容

平成13年1月10日

諮問書の受理

平成14年4月17日

実施機関の理由説明書受理

平成15年8月26日

申立人の意見書受理

平成15年10月20日

審議(第108回審議会)

平成15年11月17日

審議(第109回審議会)・・実施機関の口頭理由説明

平成15年12月15日

審議(第110回審議会)・・申立人の口頭意見陳述

平成16年1月19日

審議(第111回審議会)

平成16年5月17日

審議(第116回審議会)

平成16年9月6日

審議(第124回審議会)

平成16年10月18日

審議(第125回審議会)

平成16年12月20日

審議(第126回審議会)

平成17年1月24日

審議(第127回審議会)

平成17年2月21日

審議(第128回審議会)

 

お問い合わせ

所属課室:総務部審査情報課個人情報保護班

電話番号:043-223-4628

ファックス番号:043-227-7559

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