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更新日:令和3(2021)年6月8日

ページ番号:439796

生育『量』を診断して、「コシヒカリ」の穂肥・倒伏軽減剤の要・不要を判断しよう!!

水稲の穂肥・倒伏軽減剤を適期に適量施用するためには、以下のような生育診断を行います。

  • 生育『ステージ』診断:分げつを増やす期間なのか、穂を作る期間なのかを把握し、穂肥の施用適期を判断します。
  • 生育『量』診断:葉色や草丈などの状態を把握し、穂肥の施用量および倒伏軽減剤の要否を判断します。

 

本記事では、穂肥の施用量および倒伏軽減剤の要否の判断が難しい「コシヒカリ」の生育『量』診断について解説します。生育『ステージ』診断については、令和元年6月掲載の「生育診断による穂肥の実施」で解説しているので、参考にしてください。

1.生育『量』診断は幼穂形成期の時点の以下3つの要素から診断します。

(1)平方メートル当たり茎数

多いほど籾数が多くなり、場合によっては過剰になります。

調べ方:1株当たりの茎数を計測し、平方メートル当たり株数を乗じて算出します。

(2)葉色(SPAD値)

水稲が吸収した窒素成分の多少の目安です。窒素成分は光合成をする葉緑素を構成する物質であり、葉色が濃いほど生育がより旺盛になりますが、適正範囲を上回ると過繁茂や倒伏に繋がります。

調べ方:葉色カラースケールやSPAD計(葉緑素計)などを用いて計測します。


(3)草丈

高いほど倒伏しやすくなります。

調べ方:中庸な株の中で、丈が最も高い茎の地際からの高さを計測します。

倒伏して穂発芽している様子(拡大するには画像をクリック)

図. 倒伏して穂発芽している様子

2.3つの要素を下記表に当てはめて、施用量および倒伏軽減剤の要否を判断します。

判定

(1)平方メートル当たり茎数×(2)葉色(SPAD値)

(3)草丈

予測される生育・収量

穂肥(窒素量)の対応

倒伏軽減剤の対応

A

16,000以下

70センチメートル未満

・倒伏は避けられる。

・籾数が不足し、減収する。

・増量

・時期を早める

不要

B

16,000から20,000

70センチメートル未満

穂肥により、目標通りの生育が期待できる。

・標準

不要

C

16,000から20,000

70~80センチメートル

穂肥により、

・目標とする籾数確保を確保できる。

・稈長が伸び、倒伏が心配される。

・標準

D

20,000から27,000

75センチメートル未満

穂肥により、

・倒伏の心配はない。

・籾数が過剰になる。

・減量

・時期を遅くする

不要

E

20,000から27,000

75~82センチメートル

・穂肥により籾数過剰になる。

・穂肥を施用しなくても稈長が伸び、倒伏が心配される。

・施用しない

※ 「稲作標準技術体系」(千葉県・千葉県農林水産技術会議 平成26年3月)より引用

【例題1】

砂土:標準穂肥窒素10アール当たり3から4キログラム

平方メートル当たり株数:18株

株当たり茎数:35本

葉色カラースケールによる群落葉色値:3.5

草丈:68センチメートル

 

ステップ1:(1)平方メートル当たりの茎数を計算します。

平方メートル当たり18株×株あたり茎数35本=平方メートル当たりの茎数630本

ステップ2:(2)葉色(SPAD値)を葉色カラースケールによる群落葉色値から計算します。

SPAD値は、【葉色カラースケール値×7.8+1.6】(※)で算出することができます。

(※)「稲作標準技術体系」(千葉県・千葉県農林水産技術会議 平成26年3月)107ページ「葉色票と葉緑素計の関係」より引用

葉色カラースケール値3.5×7.8+1.6=SPAD値 28.9

ステップ3:(1)×(2)を計算します。

(1)×(2)=18,207

ステップ4:(1)×(2)および(3)を表に当てはめます。

(1)×(2):「16,000から20,000」に該当します。

(3)草丈:「70センチメートル以下」に該当します。

 

よって、判定は「B」となるので、穂肥を10アール当たり3から4キログラム施用し、倒伏軽減剤の施用は必要ありません。

 

【例題2】

壌土:標準穂肥窒素10アール当たり3キログラム

平方メートル当たり株数:18株

株当たり茎数:40本

葉色カラースケールによる群落葉色値:4

草丈:80センチメートル

 

ステップ1:(1)平方メートル当たりの茎数を計算します。 

平方メートル当たり18株×株あたり茎数40本=平方メートル当たりの茎数720本

ステップ2:(2)葉色(SPAD値)を葉色カラースケールによる群落葉色値から計算します。

葉色カラースケール値4×7.8+1.6=SPAD値 32.8

ステップ3:(1)×(2)を計算します。

(1)×(2)=23,616

ステップ4:(1)×(2)および(3)を表に当てはめます。

(1)×(2):「20,000から27,000」に該当します。

(3)草丈:「75から82センチメートル」に該当します。

 

よって、判定は「E」となるので、穂肥は施用せず、倒伏軽減剤を施用します。

 

以上のように、生育『ステージ』診断と併せて生育『量』診断を行い、適切に穂肥と倒伏軽減剤を施用しましょう。

 

初掲載:令和3年6月

山武農業事務所 改良普及課

普及指導員 山口佳太

電話:0475-54-0226

お問い合わせ

所属課室:農林水産部担い手支援課専門普及指導室

電話番号:043-223-2911

ファックス番号:043-201-2615

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