ここから本文です。

更新日:令和6(2024)年2月19日

ページ番号:5998

(大多喜町)狒狒の田五郎

内容

ある、冬の夜だった。猟師(りょうし)の一団が養老川沿(ようろうがわぞ)いの「こうこめ」という所にさしかかった。

頭領(とうりょう)が立ち止まった。

「おい、川の向こう。あれは何だ。」

みな、向こう岸を見た。光る物が動いている。猟師(りょうし)たちが立ち止まると、対岸の光るものも止まった。猟師(りょうし)たちが歩きだすと、対岸の光も動きだす。

いったい何だろう、みな目を凝(こ)らして見た。

「おい、女だ。行燈(あんどん)をもっているぞ」

「こんな時間に、化けものか」

化けものということばに、みな背中がゾクゾクした。

「こんな時間に何してんだ」

頭領(とうりょう)が呼びかけても、返事がない。

行燈(あんどん)をもって、こちらをみているだけだ。

「おい、道に迷ったのか・・・どこへ行くんだ」

頭領(とうりょう)は大声で話しかけながら、歩いた。すると、対岸の女も歩きだす。猟師(りょうし)たちが歩くと女も歩き、止まると女も止まる。

「化けものか。一発ぶちかましてやるか」

弾(たま)をこめ、ズドーンと放った。すると女はケタケタケタケタ・・・笑いだした。

闇夜(やみよ)にこだまする不気味な笑い。みんな怖ろしくなってきた。女をねらって必死に撃(う)った。しかし、弾(たま)は一向に命中しない。女はケタケタケタケタ・・・笑いつづけるだけだ。腕におぼえのある猟師(りょうし)たちも顔面蒼白(がんめんそうはく)、恐怖(きょうふ)にふるえた。

 

頭領(とうりょう)は、死んだじいさんの言った(田五郎(たごろう)は、化けものだ。化けものは、体を撃(う)ってもだめだ。化けものの持っている物を撃(う)つことだ。持っている物だ)ということばを思い出した。そうして、じいさんの言葉通り、女の持っている行燈(あんどん)に的(まと)をしぼり、引き金を引いた。

ギャーと、いう悲鳴(ひめい)とともに女の持っていた灯りが消え、あたりはもとの闇夜(やみよ)になった。猟師(りょうし)たちはしばらくぼう然とたたずんだ。

 

翌日、正体を見ようと「こうこめ」に来てみると、百歳をこえるかと思うほどの年老いた白い長い毛の猿が、血を流して死んでいた。猿はあまり年をとると「狒狒(ひひ)」という化けものになるという。このあたりでは、この狒狒(ひひ)を田五郎(たごろう)と呼び恐れたという。

 

おしまい

出典・問い合わせ先

  • 出典:「広報おおたきNo.414」(「ふるさと民話さんぽ」斉藤弥四郎)
  • 問い合わせ先:大多喜町外部サイトへのリンク

ページの先頭へ戻る

お問い合わせ

所属課室:環境生活部文化振興課文化振興班

電話番号:043-223-2406

ファックス番号:043-224-2851

※内容については、お手数ですが「問い合わせ先」の各市町村へお問い合わせください。

より良いウェブサイトにするためにみなさまのご意見をお聞かせください

このページの情報は役に立ちましたか?

このページの情報は見つけやすかったですか?