ここから本文です。
更新日:令和5(2023)年11月27日
ページ番号:18859
平成15年7月
この要約は、「調査報告書」の要点を抜粋したものです。従って、語句の不十分な部分や説明が簡略化しすぎていて内容が理解しずらく、また誤解を受けやすい面もあり得ます。
従って、この要約を理解するに当たっては、「調査報告書」そのものをご精読いただくようお願い致します。
千葉県企業庁から提示された「土地造成整備事業の長期事業収支の見通し」(以下「長期事業収支見通し」という)作成の前提とした事項に合理性があるかどうか。また土地造成整備事業の前倒し終了に伴い予測される問題点を整理すること。
調査の主たる対象は、千葉県企業庁から提示された第25回及び第26回の千葉県行政改革推進委員会への提出資料の内、平成15年度以降平成24年度までの収支見通しに関する部分である。
この調査は、将来予測を対象とし、かつレビューや質問及び分析等を主たる手法としており、一般に公正妥当と認められる監査基準に準拠したものではないため、調査の対象とした資料の適正性そのものを証明もしくは表明するものではない。
「長期事業収支見通し」の作成の前提とした事項の幹となる部分は下記のとおりである。
当調査に際しては、収支見通し策定の前提条件に関する合理性の有無・問題点の有無・判断の際の留意点・代替的手法の有無に焦点を当てて検討した。また、追加投資の合理性、事業終了までの期間が合理的に設定されているかどうか又は合理的に設定するための手法はどうあらねばならないか、という観点から検討した。
A「長期事業収支の見通し」作成の前提とした事項の合理性の有無について
(1)調査の重点
「長期事業収支見通し」の作成の前提とした事項に合理性があるかどうか、その結果同見通しの実現性が高いかどうかを判断するために、収入面が確保できるかをまず重点に調査を行い、特に分譲収入を中心に検討した。
また、支出については、今後計上される予定の収入に比較して合理的な額であるか、合理的な理由があるかという観点に絞って検討を行った。
(2)収入の調査結果
a)分譲単価の計算を時価相当額等で行っていることについて
貴庁は今後各種の拡販方策をとることにより、取引事例や公示価格等に基づく時価相当額(一部造成原価相当額)で分譲可能と考えた収入計画を策定している。時価相当額は、(1)客観性という意味合いでは最も無難な尺度と考えられること、(2)「千葉県企業庁造成土地等分譲基準」で分譲は時価相当額で行うこととなっていること、(3)売却見通しを立てるための他の適切なデータを企業庁内部に有していないこと等に鑑みれば、分譲価格の時価相当額を基にした算出には、後述するように実現可能かどうかの問題はあるものの、恣意性が入らず客観的な判断であり、また現在の企業庁が算出できる唯一の方法であるという意味で合理性はあるものと判断される。
しかし、土地の分譲(特に業務用地)は拡販努力をすればこうした時価相当額で売却可能と言えるほど単純なものではない。全国的に土地の大幅な供給超過が続いている現状では、特殊な例外を除き、時価相当額で分譲しようとしても十分な量の分譲は困難な場合が多い。
土地造成整備事業で造成した大量の土地の相当部分(保有している土地の1,668ヘクタール中、分譲予定421ヘクタール)を10年間程度で分譲できるかどうかは、地区ごとの個別の需要動向や土地を求める企業の個別の事情等により大きく変わってくる。このため、実現可能な分譲収入の計画を作成する場合には、こうした状況(需要動向や企業の個別事情)を十分に把握し計画に反映させる必要がある。従って今後はこうした需要動向を反映させ、実現可能性を十分検討したより合理的な「長期事業収支見通し」になるように見直しを行っていく必要がある。
もっとも、こうした状況把握は即興的にできるわけではなく、需要動向の十分な調査等には時間がかかる。また、現行の「千葉県企業庁造成土地等分譲基準」では土地の分譲は時価相当額で行うこととされているため、この基準を変更しなければ、実需を加味した分譲価格での分譲が困難な状況にある。こうした現状に鑑みれば、現行の「長期事業収支見通し」を実行していく過程でこうした調査を行い、適宜当該見通しの修正・見直しを行っていくことが現実的であろう。
b)適切な分譲収入の見積もり方法
土地造成整備事業の終結に伴う資金負担を最小にするためには、分譲による将来キャッシュフローの現在価値が最大となるような計画をたてる必要がある。
将来キャッシュフローの現在価値を最大にするためには、一般的には以下の算式が最大となるように各地区の分譲収入等を見積もる必要がある。(注)
上記の内、PVは将来キャッシュフローの現在価値、nは分譲代金回収年数、iは調達金利、rはリスク率、Rkは分譲予定価格と当該価格で分譲可能な面積の乗数として算出されるk年度の分譲収入、Ckは当該分譲を行うのに必要なk年度の追加支出(既存支出は含めない)を表す。
現状の「長期事業収支見通し」は、前述のように、相当量の土地を時価相当額で分譲することを前提としている。時価相当額で充分な需要があれば収入Rは分譲価格が時価相当額の時に最大となるため将来キャッシュフローの現在価値も最大になる。しかし、供給超過の場合には、時価相当額で分譲しようとすると需要が極端に減少してしまうため、毎年の分譲収入Rは極端に少なくなる。この結果、相当長期の年数をかければ(nが大きければ)完売できる可能性があったとしても、資金負担やリスク負担等に伴い、遠い将来の収入は大幅に割り引かれてしまうため将来キャッシュフローの現在価値は非常に少なくなってしまう。
このように、上記算式の適用に際しては、PVの値が最大となるようなR(分譲収入)とC(分譲収入を得るための追加支出)を求める必要があるがCはRによって変動するため、Rを決定する必要がある。Rは、分譲価格とその価格で分譲可能な面積の乗数であるから、地区別等でどの程度の分譲価格ならば、いつどれぐらいの面積の分譲ができるかを把握する必要があり、そのためには地区別等の土地需要動向調査が不可欠である。
上記の理由から、こうした調査は事業終結に伴う資金負担を最小にするためのシミュレーションに欠かせない。また、こうした調査を行うことにより「長期事業収支見通し」を見直し、実現可能性の高い計画にブラッシュアップしていくことができる。個別企業の需要動向を調査することは、一般企業とは異なり貴庁にとっては充分実施可能と考えられるため、こうした調査を行いそれに基づき判断していく必要があろう。
(注)算式の詳細については「調査報告書」を参照
c)分譲収入の実現可能性に関する地区別の検討
計画された分譲収入は、本来は各地区別に個別の需要動向等を調査し、その需要動向調査を地区別の収入見通しに十分に反映して初めて実現可能性があると判断されるものである。
しかし、現状ではこうした需要動向等の調査に基づく定量的な資料は存在しない。従って、今回の調査では現在貴庁で作成されている資料及び貴庁の担当者からの説明に基づき、当監査法人で各地区別に実現可能性について便宜的に5段階にランク分けしたものを示すにとどめる。但しこのランク分けは、概括的かつ便宜的なものであり、地区別の個別需要動向の調査や土地評価等に基づき算出したものではないことに留意されたい。
地区別収入見通しランク表(単位:百万円)(対象平成15年度~平成24年度)
分譲代金 | 代替地等 代金 |
賃貸収入 | 負担金 収入 |
左記の計 | 分譲見込等 (ランク) |
|
---|---|---|---|---|---|---|
浦安2期 | 59,218 | 0 | 148 | 0 | 59,366 | A |
京葉港 | 13,564 | 0 | 1,026 | 0 | 14,590 | B |
京葉港拡大 | 3,748 | 0 | 2,277 | 0 | 6,025 | B |
木更津南部 | 1,409 | 0 | 4 | 0 | 1,413 | C |
富津 | 2,668 | 0 | 1,187 | 0 | 3,855 | C |
関連事業 | 1,089 | 0 | 0 | 0 | 1,089 | |
臨海精算地区 | 1,983 | 0 | 1,062 | 0 | 3,045 | B~C |
検見川 | 9,460 | 0 | 645 | 0 | 10,105 | 交渉 |
幕張A | 56,556 | 0 | 14,152 | 462 | 71,170 | B |
幕張C | 22,843 | 0 | 1,113 | 18 | 23,974 | B |
横芝 | 1,371 | 0 | 0 | 0 | 1,371 | B |
空港南部 | 3,002 | 1 | 0 | 0 | 3,003 | A |
ひかり | 938 | 0 | 0 | 0 | 938 | B~C |
袖ヶ浦椎の森 | 5,902 | 0 | 0 | 0 | 5,902 | C |
成田NT | 2,223 | 0 | 138 | 0 | 2,361 | B~C |
レク夷隅 | 185 | 78 | 0 | 12 | 275 | A |
小規模新井田 | 42 | 0 | 0 | 0 | 42 | C |
成田物流 | 34,528 | 621 | 0 | 0 | 35,149 | 交渉 |
千葉北部 | 22,285 | 1,434 | 6,263 | 15,229 | 45,211 | 交渉 |
千葉北部関連 | 3,245 | 0 | 544 | 3,418 | 7,207 | 交渉 |
柏 | 13,635 | 169 | 470 | 0 | 14,274 | A |
流山 | 3,952 | 516 | 502 | 26 | 4,996 | A |
松崎 | 6,272 | 0 | 0 | 0 | 6,272 | C |
関宿はやま | 5,382 | 0 | 0 | 0 | 5,382 | C |
合計 | 275,501 | 2,819 | 29,531 | 19,165 | 327,015 |
上記の表の内、ランクB~C、ランクCについては、現状の時価相当額で計画通りの分譲が進む可能性は低い。
ランクBのものも、立地に優位性はあるが、特に業務用地や工業用地については企業の需要動向の変動により実際の分譲収入は大きく変動する可能性がある。
また、ランク「交渉」のものは、分譲予定先や共同造成先等との交渉に結果が大きく左右されることから、実現可能性についてコメントできないものである。特に千葉北部及び千葉北部関連については、懸念要因が多いことから分譲収入は計画値から大きくぶれる可能性が高いものである。
各ランクに分けた分類の根拠等については、「調査報告書」及び下記のランクごとの内容を参照されたい。
以下にランクごとの内容を記載する。
これらについては、分譲を合理的に見積もる以前に、交渉の良否により「長期事業収支見通し」が大きく変わってくるものであり、収入見通しが合理的に算定されているかどうかについては(交渉次第の部分が大きいため)コメントが困難なものである。
(注)「長期事業収支見通し」の中では、賃貸収入の内2,037百万円は便宜的に「その他の地区」に一括計上されていたが、この表では浦安2期地区他9地区に分けて記載した。
(3)支出の調査結果
支出面では、「長期事業収支見通し」では余裕を持たせて多めの支出を計上しているとのことである。「長期事業収支見通し」による収入を所与のものとして判断するならば、支出が収入を上回っており、支出総額の抑制に充分な注意を払わねばならないものは富津地区が目立つにすぎない。
しかし、前述したように支出は本来収入枠の中で考えられるべきものであるため、収入見込みがCランクやB~Cランクのもの、また「交渉」ランクのもので交渉次第では収入見込み等に大きな変動が予想されるもの(これは交渉次第のため、貴庁内部でしか把握し得ない)については、今後の収入見込みの見直しに伴い支出面の見直しの要否についても充分な検討が必要であろう。
(4)その他の前提について
(1)終結時期に関する論点の対象範囲
事業終結時期の前倒しに関する論点の対象は、同事業終結が千葉県に与える財政的な影響の側面とする。
(2)短期的視点からの考察
事業を終結させた時点での千葉県の一般会計等に与える影響についての論点は下記のとおり
(3)長期的視点からの考察
現時点から土地の処分が完了する期間までの千葉県の一般会計等に与える影響((2)の影響を除く)についての論点は下記のとおり
(4)財政的負担や一時的資金負担を軽減するための考察
下記の理由から、一般的には、事業の終結期間を特定の年数により一律に定めるのではなく、とりあえずは各地区ごとの個別の事業を完全終結するまでのスケジュールとその手法(結果的に分譲できなかった部分の引継ぎ方法も含む)を地区ごとに明確にする必要がある。事業そのものの終結時期は、こうした各地区ごとの個別の事業を完全に終結させた場合の財政的影響を明確にし、また(2)や(3)の留意点を充分に検討した上で論じる必要がある。こうした点が充分に検討されていれば、事業そのものをいつ終結させるかも明確になってくるためである。
(理由)
現行の「長期事業収支見通し」では、造成の中止等が決定された地区についても、その地区の事業で最終的な土地の処理も含めた完全終結(土地を残すのではなく、処分すべきものはたとえ無償でも処分し、千葉県が必要とするものは千葉県に渡してしまう必要がある)と、それに至る手法が明示されていない。分譲可能な土地から分譲収入をあげることが優先し、分譲困難なものの後処理まで手が回らないという状況は理解できるが、地区ごとに事業を完全終結させていかなければ、負の資産が大量に残り、管理コストや処理コストも削減できないため、将来の財政負担を重くしかねない。これは、事業そのものの終結を5年後又は10年後に行ったとしても同様である。
逆に、全ての地区の事業が完全終結するまで土地造成整備事業の組織がそのまま残ったとしても、個別の事業の完全終結を確実に行えば、確実かつ効率的に、また財政的負担が少ない形で事業を終結できるものと思われる。
そのためには、地区別の個別事業をいつまでにどのような方法で終結させるかを検討し、個別の事業終結や業務範囲縮小に伴い生ずる余剰人員の縮小計画をたて積極的な固定費削減を行っていく必要がある。
また、実際に地区別に事業の完全終結を行っていく場合にも、地区ごとの需要動向を定量的に把握し、当該地区の将来キャッシュフローを最大にするような分譲政策(価格の決定や、場合によっては無償での提供が最良である場合もある)のシミュレーションが不可欠である。実際に実施する場合にはこのための定量的データの蓄積が急がれる。
貴庁の作成した「長期事業収支見通し」の見積もりについては、前述したように実現可能性の面での懸念はあるものの、一般的客観性や現行の貴庁の体制に鑑みれば合理性があるものと判断される。
しかし、収益の実現可能性の面での懸念(特に前述した「Cランク」「B~Cランク」)があり、交渉次第で大きく変動しかねないもの等がある。また、今後計画と実績の乖離が生じた場合は、その影響を検討し「長期事業収支見通し」に反映させる必要もある。こうした点に鑑みると、今後この「長期事業収支見通し」の実施過程で、常にこの見通しを修正し実現可能性の高いものにブラッシュアップしていく必要があろう。
お問い合わせ
より良いウェブサイトにするためにみなさまのご意見をお聞かせください