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搬送困難を防ぐ。ホットライン開通の覚悟

形成外科 医長 金井雅彦

 

県内救急医療の最後の砦としての役割を果たす千葉県総合救急災害医療センターでは、緊急度の高い重症患者を多く受け入れています。コロナ禍で医療機関や救急隊にも負担が激増する中で、形成外科専用のホットラインを設置し活路を開いた経緯についてお聞きしました。

 

ハードな現場だからこそ形成外科のスキルが磨かれる

--金井先生のキャリアについて教えてください。

千葉大学附属病院で形成外科医としてキャリアをスタートし、多くの症例を学ぶために一般形成外科の手術が豊富な成田赤十字病院に1年間出向しました。一度大学に戻ったあと、急性期の外傷に関わりたいという思いがあった中で、この病院への赴任が決まりました。

--形成外科の魅力とやりがいは、どのように感じていますか?

形成外科の治療の成否は、見た目に現れます。とくに救急では、機能をなるべく正常に近づける必要があり、自分のスキル・専門性が発揮できます。また、形成外科は体の表面全てを取り扱う科です。外傷、熱傷、がん切除後などの再建、小児の先天異常や皮膚腫瘍など多岐に渡ります。体表面のすべてが領域であることも形成外科ならではのやりがいだと感じています。

--この病院のよさについて教えてください。

救急や重症患者に対する医療のクオリティが非常に高いことと、医療スタッフ一人ひとりのスキルが高いことが挙げられます。正直入職した直後は、診療科の数も少なく、当直医もごく限られた人数で救急対応することに驚きました。しかし、一人ひとりのスキルが上がるし、垣根が低いのでコミュニケーションが取りやすく働きやすいですね。

救急病院はシフト制なのでオンオフがはっきりしている点や、夜間手当もあるので収入の面からも魅力に感じられるのではないでしょうか。シフトを調整することで学会にも参加しやすいです。

専用ホットラインを開通して外傷患者の症例を増やす

--形成外科だけのホットラインを設置した背景を聞かせていただけますか?

ご存じの通りコロナ禍の影響で搬送困難な症例が急増したんです。通常より受入れ先の病院選定に時間がかかるのはもちろん、都内に搬送する場合は治療可能な医療機関かを救急隊が確認する必要があったり、救急隊に相当の負荷がかかっていました。

そこで県内の救急隊と、形成外科の直通のホットラインを作ったのです。搬送先が決まらない緊急の外傷であれば、救急隊から直接電話が入ります。それらをできる限り迅速に、1件でも多くの手術を実施する体制を構築して、搬送困難事例を減らすよう努めました。

この病院では四肢の切断や広範囲熱傷など特殊な外傷症例が多いため、県内で同様に扱える病院は限られます。よって緊急かつ専門性の高い外傷にも迅速に対応できれば、助かる患者さんも増えますし、救急隊の負担も減りますよね。さらに県内の外傷症例を集約することで、私たちのスキルアップにつながります。

また、高度救急救命センターの設立要件として四肢の外傷などの症例の集約化があるため、症例数が増えれば病院の実績にもなるので、Win-Winのモデルを作れると考えました。

--ホットラインの成果はいかがでしょうか?

ホットライン開通後は予想していた以上に症例数が増加しました。仕事量も増えハードになりましたが、周りのスタッフもよくやってくれています。開通当初の医師は2人体制でしたが、人員を増やして3人体制になったのでうまく運用できるようになりました。スキルの向上も果たせていると感じます。

特殊性は高いが研鑽を積める場所

--今後はどのようなスタッフに加わってほしいとお考えですか?

ハードな業務を楽しめる人、緊急時においてマルチタスクをこなせる人が向いています。症例の割合として、やはり緊急の外傷が多く、急患が到着すると迅速に手術を行うことが多くなるためです。

形成外科は体表すべての部位を取り扱い、外傷はどの病院に勤務していても必ず関わるので、若いうちにこうした勤務環境を体験しておくことは多くの形成外科医にとって有意義だと思います。

--入職を考えている方へのメッセージがあればお願いします。

自分のベストを尽くしても、残念ながら外傷では患者さんに何かしら後遺症が残ってしまうことが多くあります。だからこそ研鑽に励んで常にスキルを高める必要があると思っています。外傷に関しては県内の病院と比べて症例が多いですし、私たち先輩医師のサポートも充実しているので、どんどん手術にも挑戦できる環境です。ともに成長を目指せる方にはぜひ来てほしいですね。