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更新日:令和4(2022)年9月15日

ページ番号:523070

第2章 本県を取り巻く環境の変化と課題(基本構想編)

人口減少、災害の激甚化、新たな感染症の脅威、国際競争の激化など、本県を取り巻く環境は厳しさを増しています。

こうした中、令和10年度末には第3滑走路の供用開始等により、成田国際空港(以下「成田空港」という。)の更なる機能強化が図られる予定です。また、令和6年度には首都圏中央連絡自動車道(以下「圏央道」という。)の県内区間が全線開通予定であり、北千葉道路の整備も着実に進められるなど、成田空港を中心とした広域的な道路ネットワークにより、半島性を克服し、県内の活力をより一層向上させる好機を迎えています。

一方で、カーボンニュートラルの実現に向けた再生可能エネルギーの導入促進や、水素などの脱炭素燃料の活用、デジタル技術の更なる進展などにより、今後、社会・経済・環境など県民を取り巻く様々な分野で、急速にイノベーションが進むことが考えられます。

また、「誰一人取り残さない」ことを理念とするSDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)の達成に向けた取組も求められています。

これらの様々な環境の変化に対応しながら、20~30年後においても、本県の活力を維持・向上させ、日本や世界の成長・発展に貢献するとともに、全ての県民が安全に安心して健康に暮らし、個性と能力を十分に発揮できる千葉県を築いていくためには、本県を取り巻く状況を的確に捉え、対応していくことが必要です。

そこで、計画策定に当たって把握すべき環境の変化と課題を以下のとおり11項目に整理しました。

1 感染症・災害等リスクの増大への対応
2 くらしの安全・安心の確保
3 人口減少・少子高齢化への対応
4 社会経済情勢の変化への対応
5 半島性の克服と活用
6 医療・福祉ニーズの増加と健康志向の高まりへの対応
7 環境保全・持続可能な社会づくり
8 価値観・ライフスタイルの多様化への対応
9 デジタル社会の推進
10 SDGsの推進
11 行財政改革の推進

1 感染症・災害等リスクの増大への対応

(1)新型コロナウイルス感染症等の新たな感染症の脅威

○令和2年1月15日に国内で最初の新型コロナウイルス感染症の感染者が確認され、同月30日には本県においても最初の感染者が確認されました。その後、3月下旬から感染者数が急増し、4月7日には新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づき、初めて緊急事態宣言が発出され、その後も感染拡大と緊急事態宣言が繰り返される事態となりました。

○こうした中、ワクチン接種が始まるなど、対策も行われてきましたが、感染力がより強い変異株の広がりなどにより、病床のひっ迫や救急搬送の困難事例等が生じるなど、危機的状況が発生するとともに、緊急事態宣言などにより、県民のくらしや経済も大きな打撃を受けています。

○今後も、ワクチン接種や感染防止対策などを徹底するとともに、感染拡大によって疲弊した県内経済の回復なども必要です。

○また、新型コロナウイルス感染症の拡大により、医療提供体制のひっ迫や経済活動の停滞などが生じたことを踏まえ、これまでに経験したことのない、新たな感染症等に対応し得る体制を整える必要があります。

(2)大規模災害等に備えた危機管理対策の推進

○平成23年3月11日に発生した東日本大震災は、マグニチュード9.0という過去最大規模の地震であり、本県でも、津波や液状化などにより大きな被害が生じました。

○さらに、令和元年房総半島台風等の一連の災害により、広範囲で長期にわたる停電と通信遮断や断水などが発生し、県民生活や各産業にこれまでにない大きな被害が生じました。

○これらの経験を生かし、県・市町村・事業者等との連携体制の強化や強じんな防災基盤の整備などに取り組み、人々のくらしや企業活動の場として選択される災害に強い千葉県づくりを進める必要があります。

○本県は成田空港や千葉港など、諸外国との直接的な玄関口を擁しているほか、石油コンビナート地区は、一たび事故が発生すると、極めて大規模な災害に拡大するおそれがあります。また、近年ではICTの発達に伴い、サイバー攻撃などの発生も懸念されます。

○このため、空港・港湾における水際対策や、情報セキュリティの水準向上などを進めるとともに、関係機関との連携を密にし、テロなど人為災害に対する体制についても、強化することが必要です。

2 くらしの安全・安心の確保

(1)防犯対策の推進

○本県の刑法犯認知件数は減少していますが、依然として全国ワースト上位にあります。特に高齢者を狙った特殊詐欺による被害は高水準で推移しており、その犯行の手口は日々変化しています。

○こうした中、効果的に犯罪を抑止するためには、県民・事業者・市町村・県の連携により、犯罪が起こりにくいまちづくりを推進するとともに、多様化・巧妙化する犯罪を見逃さず、逮捕・検挙する必要があります。

○また、誰もが犯罪被害者になる可能性があることを踏まえ、相互扶助の精神に基づき、犯罪被害者やその御家族、御遺族(以下「犯罪被害者等」という。)への支援を行う必要があります。

○一方で、刑法犯検挙人員のうち、半数近くが再犯者であることから、犯罪をした人等が円滑に社会に復帰できるようにすることも重要であり、民間団体や国、市町村と連携して再犯防止に取り組むことが必要です。

(2)交通安全対策の推進

○本県の令和3年の交通事故死者数は、121人まで減少しました。しかしながら、全国的に見ると依然として交通死亡事故多発県となっており、特に、交通事故死者数に占める高齢者の割合や、交通事故全体に占める自転車が関係する事故の割合は、増加傾向にあります。

○また、県内で通学中の児童が死傷する事故の原因となった飲酒運転や、いわゆる「あおり運転」など、重大な交通事故の発生につながる危険運転等が後を絶たない状況です。

○このため、交通指導取締りの強化とともに、関係機関・団体等と連携し、県民一人ひとりの交通安全意識向上のため啓発活動を実施するほか、心身の発達段階や自転車、自動車などの通行の態様に応じた交通安全教育を行う必要があります。

○あわせて、交差点の改良や歩道の整備など、交通事故が起こりにくい環境を整備するとともに、運転者教育や免許証の返納等を推進する必要があります。

(3)消費者の安全・安心の確保

○近年、インターネットの普及による電子商取引の拡大や高齢化の一層の進行、成年年齢の引下げなど、消費生活を取り巻く状況が大きく変化する中、消費者問題はより多様化・複雑化しています。

○そのため、消費生活相談体制の充実に加え、消費者が正しい情報を見極める力、合理的に判断し考える力などを身に付ける消費者教育の推進、悪質事業者の取締りの強化などが求められています。

○また、食品の表示や添加物など、消費者の食の安全・安心に対する関心は依然として高い状況にあることから、食品に対する監視指導及び検査を徹底して行う必要があります。

3 人口減少・少子高齢化への対応

(1)将来人口推計

○我が国の将来人口は、国立社会保障・人口問題研究所(以下「社人研」という。)による人口推計によると、平成27年(2015年)から令和47年(2065年)までの50年間で7割程度まで減少する見込みです。

○本県の人口は、東日本大震災などの影響を受けた平成23年(2011年)から平成25年(2013年)の間を除き、国勢調査開始(大正9年(1920年))以来、増加を続けてきました。
しかしながら、平成23年(2011年)には、少子化の進行に伴い、死亡数が出生数を上回る自然減となり、令和3年(2021年)には社会増による人口増加を自然減による人口減少が上回る、総人口減少時代に入りました。

○令和3年度(2021年度)に県が行った将来人口推計(5年ごとの推計)では、令和2年(2020年)に628万4千人であった本県の人口は、年々減少していき、令和42年(2060年)には514万8千人まで減少することが予想されています。

(2)高齢化の進行

○ 本県の年齢別人口構成を見ると、昭和55年(1980年)には年少人口(0歳~14歳)が25.9%、生産年齢人口(15歳~64歳)が67.1%、高齢者人口(65歳以上)が7.0%と、ほぼピラミッド型を形成していましたが、令和2年(2020年)には、昭和55年(1980年)に比べて、年少人口が14.2ポイント減少し11.7%、高齢者人口が20.6ポイント増加し27.6%となり、いわゆるつぼ型の構成となりました。

○これに伴い、生産年齢人口も令和2年(2020年)には60.7%と6.4ポイント減少し、地域経済の縮小、様々な分野での担い手不足、都市・集落の機能低下、社会保障制度の持続可能性などの課題が生じています。

○また、団塊の世代が後期高齢者となる令和7年度(2025年度)には、約3.5人に1人が高齢者となる見込みであり、総人口が減少する中にあっても、高齢者人口は令和27年(2045年)頃まで増え続け、高齢化率はその後も上昇する見込みです。

○高齢化の進行に対応し、生涯現役社会の実現に向けた環境整備や健康づくりを進めることが必要です。

(3)未来を担う子どもの育成

○令和2年までの40年間で年少人口が14.2ポイント減少するなど、少子化が進行しており、これに伴う急激な人口減少を和らげていくため、誰もが希望どおり結婚・出産・子育てができる環境づくりが必要です。

○また、核家族化や共働き世帯・ひとり親世帯の増加、地域のつながりの希薄化のほか、人口減少・少子化の進行に伴う学校の小規模化や統廃合等により、子育て・教育環境の変化が生じています。

○こうした中でも、未来を担う子どもの健やかな成長のため、県内どこでも質の高い教育を行うことができるよう、学校の指導体制を充実するとともに、地域と学校が連携・協働して、地域全体で子どもの成長を支えていくことが必要です。

○また、人口減少により地域社会の担い手不足が見込まれる中、子どもたちが将来社会で活躍することができるよう、地域産業や未来の労働市場を見据えたキャリア教育を充実することが求められています。

○さらに、児童虐待への関心や認識の高まりにより、児童相談所における児童虐待に関する相談対応件数は増加し続けています。

○このため、虐待の発生予防、早期対応、自立支援までの各段階において切れ目なく支援を行うとともに、県、市町村及び関係機関がそれぞれの役割を適切に果たし、連携して対応していく必要があります。

(4)都市や集落の機能低下

○人口の減少や人口構成の変化により、地域によっては、空き家の増加や商店の閉鎖、交通、医療・福祉等のサービスの低下、担い手不足など、都市や集落の機能への影響が生じています。

○また、地域を支える若い世代が、進学や就職等を契機に地域から転出することも多くなっています。

○このため、若い世代が地域に住み・働き続けていけるよう、雇用の場を創出していくとともに、コミュニティの再生や生活インフラの維持・向上などにより、安心して暮らせる地域社会をつくることが必要です。

4 社会経済情勢の変化への対応

(1)商工業等をめぐる状況の変化

○我が国の経済は、少子高齢化に伴う人口減少や2050年のカーボンニュートラル実現に向けた動き、デジタル技術の普及やそれに伴う経済の高度化、国際競争の激化や世界的なサプライチェーンの複雑化等、様々な社会的変化に直面しています。

○こうした中、新技術の開発や活用による競争力強化などにより、県内企業が更なる発展を遂げるとともに、新たな産業用地の確保や企業誘致、起業・創業を促進し、雇用を生み出すなど、県内経済を活性化することが必要です。

○特に、本県経済をけん引する京葉臨海コンビナートは、国際競争力の強化に向けた設備投資をしやすい環境づくりや、事業者の負担軽減に資する取組が必要です。あわせて、洋上風力発電等の再生可能エネルギーの供給地に適した本県のポテンシャルを最大限活用していく必要があります。

○また、世界的に急速なデジタル化が進んでおり、企業においても、AIやIoTの導入等による生産性向上や高付加価値化が期待される一方、中小企業では、デジタル化が十分に進んでいないことから、競争力強化のため、導入を促す環境づくりをしていくことが必要です。

○さらに、観光業では、観光入込客数が平成25年以降、平成30年まで毎年過去最高を更新するなど増加傾向にありましたが、令和元年房総半島台風や、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け、国内外からの観光客が大幅に減少するなど、大きな打撃を受けています。

○感染収束後を見据え、誰もが訪れたくなる観光地づくりや新たな旅のスタイルであるワーケーションを推進し、観光客を今後も本県に呼び込んでいくことと併せて、成田空港や道路ネットワークの活用により、MICEを積極的に誘致するとともに、滞在性・周遊性を高めていくことで、より多くの経済効果を地域に波及させることが必要です。

(2)農林水産業をめぐる状況の変化

○本県は、温暖な気候と首都圏に位置する恵まれた立地条件の下、多種多様な農林水産物を生産する全国屈指の農林水産県ですが、担い手の減少や高齢化により生産力が低下し、農地の維持管理等への影響も拡大しています。

○さらに、令和元年房総半島台風等の災害や令和2年から3年にかけて頻発した高病原性鳥インフルエンザにより、本県の農林水産業は甚大な被害を受けました。

○また、ライフスタイルの変化などにより、食に対する消費者ニーズの多様化が進んでいます。

○こうした中、農林漁業者の所得向上と農山漁村の活性化を図るため、本県農林水産業を支える人材を育成・確保するとともに、スマート農林水産業の推進等による生産力の強化や、市場動向を捉えた販売力の強化が必要です。また、生産力の向上と合わせて、脱炭素化などの環境に配慮した持続可能な農林水産業を推進することも重要です。

○さらに、農作物等への被害が深刻化しているイノシシなどの有害鳥獣に対しては、地域が一体となって対策に取り組むとともに、感染力の高い家畜伝染病の発生に備えた防疫体制の強化を図る必要があります。

(3)雇用環境の変化

○少子高齢化を背景に、中長期的に労働力の減少が見込まれており、特に医療・介護等の分野では、需要の増加等により、人材が不足しています。

○一方で、職業能力を形成する機会に恵まれなかった若年者、中高年齢離職者、障害のある人などは、意欲があっても就労が難しい状況にあります。

○このため、県民一人ひとりの希望に沿った就労及び企業等の適切な人材確保が可能となるよう、多様な働き方の実現に向けた環境づくりや、企業等のニーズを踏まえた人材育成などに取り組む必要があります。

(4)成田空港の更なる機能強化

○東アジア有数の国際線基幹空港である成田空港は、我が国の国際競争力を確保し、千葉県や空港周辺の地域発展を図るための重要な核となっており、現在、年間発着枠50万回化に向け、令和10年度末までの第3滑走路供用開始等を目指し、整備が進められています。

○この更なる機能強化を着実に進めるに当たっては、空港周辺地域の環境対策・地域共生策を推進するとともに、空港周辺の地域振興を図っていく必要があります。

〇また、更なる機能強化の効果を本県経済の活性化につなげていくため、成田空港の強みを生かした企業誘致などの産業振興施策や交通アクセスの一層の強化を進めるとともに、本県の持つ様々な産業、豊かな自然、高度な医療などを組み合わせ、国内外からの人・モノ・財の流れを県全体に波及させていく必要があります。

(5)社会資本の老朽化

○道路、堤防や上下水道などの社会資本については、高度経済成長期に集中的に整備されたものであることから、今後、老朽化する施設の割合が急激に増加することが見込まれています。

○これらの社会資本について、損傷が現れてから大規模な修繕を行う事後保全的な維持管理を同時期に行った場合、多額の費用が集中的に必要となることが懸念されます。

○このため、長寿命化対策を実施するとともに、将来における維持更新費の抑制・平準化や施設総量の適正化などの資産マネジメントを行うことにより、安全性・信頼性を確保しつつ、維持管理コストの削減や環境負荷の低減を図りながら、必要な更新を計画的に行う必要があります。

5 半島性の克服と活用

(1)半島性の克服

○本県は太平洋と東京湾に三方を囲まれた半島となっており、南房総地域や東総地域など都心から離れた地域については、人やモノの流れに地理的な制約があるため、人口減少が進んでいます。

○このため、県内の各地域が、その個性や特性を生かして活性化を図るとともに、道路や公共交通等の交通ネットワークの充実により、人・モノ・財の流れを一層大きくすることで、各地域の活力が連動し、県全体の発展につながっていくことが必要です。

(2)半島性の活用

○本県は首都圏にありながら、半島ならではの特徴として、美しい海岸線や豊かな緑をはじめとした多様な自然が残されています。

○これらを生かしたスポーツやレジャー、屋外での芸術イベント等が実施されていますが、こうした魅力を更に高め、幅広い世代の人々が千葉県で過ごすことに魅力を感じることができるよう、活用していくことが必要です。

○さらに、本県で実現できる余暇の過ごし方やライフスタイルを積極的に発信していくことにより、地域の価値を向上させ、本県への誘客や移住・定住、企業誘致などにつなげていくことが必要です。

(3)道路や鉄道等交通ネットワークの充実

○本県においては、圏央道や東京外かく環状道路(以下「外環道」という。)、北千葉道路等、地域づくりの骨格となる広域的な幹線道路ネットワークの整備の着実な進展により、人やモノの流れが活発になり、沿線地域では観光客の増加や企業立地の進展など、経済に好循環をもたらすストック効果が表れてきています。

○このような効果を更に高めていくため、圏央道や北千葉道路等の広域的な幹線道路ネットワークの整備を進め、新たな湾岸道路や千葉北西連絡道路の計画の具体化を図るとともに、東京湾アクアライン(以下「アクアライン」という。)の料金引下げを継続していくことが重要です。

○また、交通ネットワークの整備による人やモノの流れの活性化が、地域の特性と連動することにより、新たな魅力が創出されるなど、更なる地域の活力向上につながることから、広域的な幹線道路ネットワークと各地域を結ぶ銚子連絡道路や長生グリーンラインなどのアクセス道路を整備することにより、ストック効果を県内全域に波及させ、半島性の克服につなげることが必要です。

○加えて、通勤・通学手段の確保や人々の交流の促進を図るため、効率的で利便性・安全性の高い公共交通ネットワークを維持・充実するとともに、ICTの活用等により、地域での移動手段を持たない移動困難者や観光客も含め、誰もが自由に移動できる交通環境の整備を図る必要があります。

(4)移住・定住の促進

○緑と海など豊かな自然に囲まれ、都心へのアクセスも良好な本県は、移住先として大きな魅力と可能性があります。また、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、テレワークが浸透しつつある中、二地域居住や地方への移住・定住に対する関心が高まっています。

○こうした動きを好機と捉え、豊かな緑と海に囲まれた環境での子育てやテレワークなど、千葉で実現できる様々なライフスタイルを積極的に発信し、本県への移住につなげていくことが必要です。

○また、県内外の交流を活性化することで、県内に住む人々にも地域の魅力を再発見してもらうとともに、人々が住み・働き続けていけるよう雇用の場を創出し、地域での定住につなげていくことも必要です。

6 医療・福祉ニーズの増加と健康志向の高まりへの対応

(1)医療・介護ニーズの増加

○出生数の減少や高齢化の進行、医療技術の進歩、県民の健康に対する意識の高まりなど、医療を取り巻く環境は大きく変化しています。また本県でも、後期高齢者人口の急増に伴う医療需要の増加が見込まれています。

○このため、疾病の予防から診断、治療、リハビリテーション、在宅療養に至るまで、多様なサービスを誰もが地域で安心して受けられるよう、医療提供体制の整備を進めるとともに、小児医療や周産期医療、救急医療等、地域により偏在が見られる医療の格差解消に取り組む必要があります。

○また、県民の多くが、介護が必要な状態になっても住み慣れた自宅や地域で最期を迎えることを望んでいることから、住み慣れた地域で自分らしいくらしを続けることができるような取組が必要です。

○さらに、本県では、医療・福祉人材の不足や偏在が生じていることに加え、高齢者の増加等に伴い、今後も医療・介護ニーズの増加が見込まれることから、医師・看護師等や介護福祉士等の人材の確保・育成が必要です。

(2)福祉ニーズの増加

○少子高齢化や核家族化の進行、地域のつながりの希薄化など、地域社会を取り巻く環境の変化により、支援を必要とする人が増えています。

○このため、一人暮らしの認知症高齢者、生活困窮者、ひきこもり、配偶者等からの暴力(DV)、児童虐待などに関する相談体制の充実や被害者の迅速な安全確保など、複雑化・多様化する福祉ニーズに対応していく必要があります。

○また、障害のある人が、地域で生活をしていくためには、社会や家族からの孤立など様々な課題があり、特定の個人や機関のみで支えていくのは困難であるため、福祉関係団体はもとより、地域住民、ボランティア、企業、学校など様々な主体が知恵を出し合い、力を結集し、障害のある人が地域でその人らしく暮らせる社会を構築していくことが必要です。

(3)健康づくりの推進

○本県の死因の第1位であるがんは、全体の約3割を占めており、これに循環器疾患(心疾患及び脳血管疾患)による死亡を加えると、5割を超える方が生活習慣病で亡くなっています。

○生活習慣病は、40歳代から増え始め、50歳代で急激に増える傾向にあり、今後の高齢化の進行に伴い、更なる患者の増加が見込まれます。

○このため、一人ひとりのライフステージに応じて心身機能を維持・向上させ、生活習慣病の予防と重症化を防止することが重要であり、そのためには、県、市町村、学校、医療・介護関係団体、保険者、企業などの連携・協力が必要です。 

7 環境保全・持続可能な社会づくり

(1)地球温暖化対策の推進

〇世界の平均気温は上昇し続けており、令和3年8月に公表された気候変動に関する政府間パネル(以下「IPCC」という。)の第6次評価報告書によると、人間の影響が大気、海洋及び陸域を温暖化させてきたことには疑う余地がなく、世界中の全ての地域で、多くの気象及び気候の極端現象に既に影響を及ぼしているとされています。

〇こうした地球温暖化問題に対し、「2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」ことが国会で表明され、国を挙げて脱炭素社会の実現に取り組んでいくことが示されました。

〇本県でも、令和3年に「2050年二酸化炭素排出実質ゼロ宣言」を行ったところであり、国全体のカーボンニュートラルの実現に向けて、現時点で適用可能な技術を最大限活用して対応することが求められており、再生可能エネルギーの活用や省エネルギー化の推進のみならず、脱炭素に資するまちづくりや交通環境の整備、二酸化炭素の吸収源である森林・緑地等の保全など、様々な分野における取組が必要となります。

○また、これらの取組を一層推進するためには、県民・事業者・行政等全ての主体が温暖化対策の必要性について理解を深め、自発的に行動するとともに、幅広く連携していくことが重要です。

(2)循環型社会の構築

○大量生産・大量消費・大量廃棄型の社会から循環型社会への転換に向けて、3Rの推進や個別リサイクル法の整備等の取組が進められています。

○本県における一般廃棄物の「ごみ」のリサイクル率は、令和元年度で21.3%と全国平均(19.6%)を上回っていますが、県民一人1日当たりの家庭系ごみの排出量は519グラムと、全国平均(510グラム)とほぼ同様の水準にとどまり、依然として多くの「ごみ」が排出されています。

○産業廃棄物は、事業者による排出抑制の取組が進められてきたことなどにより、排出量は減少傾向にあり、最終処分量も減量化や再利用により排出量の1.4%まで縮減されていますが、高度経済成長期に整備された建築物やインフラ等の老朽化が進んでおり、今後、施設更新による排出量の増加が懸念されます。また、再生可能エネルギー固定価格買取(FIT)制度の期間終了後、2030年頃から寿命を迎えた太陽光発電設備の排出増加も見込まれます。

○持続可能な循環型社会を構築するためには、廃棄物の発生を抑制するとともに、廃棄物になったものについては、できる限り再使用・再利用する取組を、県民・事業者・市町村などと協力し、より一層推進する必要があります。

(3)大気・水環境の保全

〇高度経済成長期には、大気汚染や水質汚濁が大きな社会問題となりましたが、県民・事業者の取組や首都圏の各都県と連携した取組などにより、現在は改善傾向にあります。

〇しかしながら、本県では、光化学スモッグ注意報の過去10年間の平均発令日数が10.0日と、全国でも多くなっています。また、大気中に浮遊する微小粒子状物質(PM2.5)は、呼吸器系の病気のリスクを高めるおそれがあります。

○このため、継続的に大気環境を監視し、大気汚染の情報を県民に迅速に知らせるとともに、大気汚染物質を排出する事業者に対する指導や電動車の普及を推進していく必要があります。

○水環境は、改善傾向にあるものの、令和2年度の水質の環境基準達成率(BOD、COD)は、72.9%と全国の88.8%を下回っています。特に、印旛沼、手賀沼、東京湾など水の流動や交換の少ない閉鎖性水域では、水質の改善が進んでいません。また、印旛沼及び手賀沼とその流域河川では、外来水生植物の繁茂拡大による水質・生態系への影響などが懸念されています。

○このため、工場・事業場の排水対策や、下水道の整備・合併処理浄化槽の設置促進などの生活排水対策を進め、水域に流入する汚濁物質の削減に取り組むとともに、印旛沼及び手賀沼とその流域河川では、外来水生植物の駆除を行う必要があります。

(4)産業廃棄物の不法投棄防止

○産業廃棄物の不法投棄は、周辺の自然環境や生活環境への支障を生じさせ、投棄された産業廃棄物の種類や性状によっては、深刻な影響を及ぼします。

○本県は、産業廃棄物が多量に排出される首都圏に位置し、交通の便が良いこと、比較的平坦な地形に丘陵地や谷津があり、遊休化した農地や山林などが多いことなど、産業廃棄物の不法投棄がされやすい条件が重なっています。

〇令和元年度の本県の産業廃棄物の不法投棄量は5,791トンと、ピーク時(平成11年度)と比べ約30分の1と大幅に減少していますが、依然、小規模でゲリラ的な不法投棄は後を絶たず、根絶には至っていません。

○このため、県民・事業者・市町村などとの連携を更に強め、きめ細かな監視・指導を行い、不法投棄根絶に取り組んでいく必要があります。

(5)豊かな自然環境の保全

〇本県は三方を海に囲まれ、九十九里浜をはじめとした美しい海岸線、東京湾に残された貴重な干潟、緑豊かな房総丘陵、様々な動植物が生息・生育する里山など、豊かで多様な自然に恵まれており、県民のみならず、本県を訪れる多くの人に潤いと安らぎを与えています。

○また、恵まれた自然環境を、移住・定住の促進、観光振興に活用するなど、様々な可能性があります。

○一方で、近年では手入れのされない里山の増加等により、身近に見られた生き物が減少するとともに、雨水を一時的に貯め込み地下に浸透させる洪水防止機能などの林地・農地の多面的機能が失われつつあります。また、九十九里浜では海岸線の侵食により、景観や水産資源の生育環境が悪化するなど、様々な自然環境が脅かされています。

○このため、県民・企業・行政など様々な主体の取組により、本県の豊かな自然環境を次世代に引き継いでいく取組を進める必要があります。

(6)野生生物の保護と管理

〇地球温暖化や土壌・水質の汚染などにより、野生生物の生息環境は悪化しており、千葉県レッドデータブックに掲載される絶滅生物や最重要保護生物は、リストを見直すたび、その数が増えています。

○一方、人間の手によって県内に持ち込まれたアカゲザル、キョン、カミツキガメなどの特定外来生物が、自然環境に適応して増加しており、生態系や生活環境に影響を与えています。

○また、捕獲の担い手の減少や荒廃農地の増加等により、イノシシ、ニホンジカ、ニホンザルなど有害鳥獣の生息数が増加するとともに、その生息域が拡大しているため、農作物等の被害が深刻化し、生活被害も発生しています。

○このため、特定外来生物を含む有害鳥獣の防除等に取り組み、野生生物の保護と適正な管理を推進し、人と野生生物とが適切に共存する環境づくりを推進する必要があります。

8 価値観・ライフスタイルの多様化への対応

(1)共生社会の実現

○年齢や性別、国籍、障害の有無、性的指向・性自認などにかかわらず、一人ひとりが違った個性や能力を持つ個人として、その人らしく生きていくことができる社会づくりが求められています。

○誰もが社会に参画し、多様な個性や能力を発揮できるよう取組を進め、社会全体の活力向上につなげていくことが重要です。

(2)多様な人材の活躍や多様な働き方の実現

○社会経済のグローバル化や情報化の進展、健康寿命の延伸などにより、人々の価値観やライフスタイルの多様化とともに、「新しい生活様式」への対応など、働き方に変化が生じています。

○こうした中、女性や高齢者の就業者数は年々増加しており、特定技能など在留資格の拡大等により、外国人労働者も引き続き増加することが予想されます。

○このため、若者や女性、高齢者など全ての県民が、自身のライフスタイルに合わせてそれぞれの意欲と能力を生かして働くことができる職場環境の整備を図る必要があります。

○また、優れた知識や技能を有する専門的な人材を県全体で確保するため、兼業・副業やフリーランスといった多様な働き方など、社会の変化に合わせた新しい働き方が注目されています。

○さらに、生涯にわたって社会に参画し活躍できるよう、必要とされる知識や技能を習得する機会が用意されている生涯学習社会を実現する必要があります。

(3)文化芸術の継承・創造とスポーツの振興

○文化芸術は、県民が真にゆとりと潤いを実感できる心豊かな生活を実現していく上で欠かせないものであるとともに、教育、地域づくり、産業など社会のあらゆる分野と関わり、地域社会の発展と県民の活力を高めていく貴重な財産です。

○本県には、特別史跡「加曽利貝塚」やユネスコ無形文化遺産「佐原の山車行事」などの後世に語り継ぐべき歴史や芸術、大漁旗・万祝などの海にまつわる文化や、各地域の伝統ある祭りや行事が数多く残されています。

○こうした多様な文化財や地域固有の伝統行事などを、県民の財産として次世代に継承するとともに、子どもや若者を含め、多くの県民が多様な文化芸術や歴史に触れる機会を増やすことが必要です。

○また、近年では、本県の恵まれた自然環境や都市機能を生かして、野外での音楽イベントや芸術祭、ダンスイベント等が県内各地で開催されています。

○こうした本県の特徴を生かした文化芸術を積極的に振興するとともに、多くの県民が触れ、また参加できるよう取組を進め、活力ある若々しい「ちば文化」を創造していくことも必要です。

○スポーツは、青少年の健全育成や地域社会の再生、心身の健康の保持増進等、多面にわたる役割を果たすものです。

○このため、誰もがスポーツに親しみ、スポーツの「楽しさ」「喜び」を分かち合うことができるよう、競技力の向上のみならず、年齢や障害の有無にかかわらず、体力向上や健康づくりに取り組むことができる環境の整備などが必要です。

○また、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会(以下「東京2020大会」という。)で新競技となったサーフィンやスケートボードなどが注目されるとともに、パラスポーツに対する興味・関心が芽生えたことなどを踏まえ、県民がこうした多様なスポーツを知り、親しむことができるよう取り組んでいくことが必要です。

○さらに、マリンスポーツやサイクリングなど豊かな自然や地域の特性を生かしたスポーツイベントの開催などを通して、参加者と地域の交流や魅力発信、スポーツを核とした地域の活性化を目指していくことも重要です。

9 デジタル社会の推進

○近年、インターネットを中心とするICTは著しく進化し、コミュニケーション基盤にとどまらず、産業や生活の基盤として欠かせない技術になっています。また、IoTによりあらゆるものがインターネットでつながり、それを通じて膨大なデータが収集・蓄積され、AIにより解析されるようになってきています。

○既にテレワークや遠隔医療、オンラインを活用した教育など、様々な分野でデジタル技術の活用が始まっていますが、社会全体で更なるデジタル化を進めることで、時間や場所等の制約の克服や、新しいサービスや価値の創造など、可能性を大きく広げることができます。

○こうした中、国では、仮想空間と現実空間を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会である「Society5.0」の実現を目指しています。

○そのため、県においても、民間などの多様な主体と連携しながら、デジタル技術やデータの活用と保有するデータのオープン化を積極的に進め、県民や事業者それぞれのニーズに合った行政サービスの提供を実現するとともに、あらゆる産業分野の生産性向上や、教育、医療、介護、交通などの生活に身近な分野での豊かなくらしにつながるよう、デジタル社会の推進を図ることが重要です。

○また、デジタル化の推進と併せ、ネット社会の信頼性確保とともに、県民がインターネットの情報等を正しく理解し、適切に判断・運用できる能力(インターネット・リテラシー)を向上させることが必要です。

10 SDGsの推進

○SDGsとは、平成27年9月の国連サミットで加盟国の全会一致で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載された、2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標です。

○SDGsは17のゴールと169のターゲットから構成され、世界全体の経済、社会及び環境の三側面を不可分のものとして調和させ、誰一人取り残すことなく、貧困・格差の撲滅等、持続可能な世界を実現するための統合的取組であり、先進国と開発途上国が共に取り組むべき国際社会全体の普遍的な目標です。

○SDGsの考え方は、県が目指すべき方向性と同じであることから、様々な主体とその考え方を共有し、広範な課題に対して連携・協働して取り組むことが重要です。

11 行財政改革の推進

(1)県の持続的発展を支える行政運営の推進

○人口減少・少子高齢化の進行やICTの発達、新型コロナウイルス感染症の拡大などの社会環境の変化に伴い、県民ニーズが変化しています。

○このような状況にあっても、新たな課題や県民ニーズに対して、スピード感を持って的確に対応し、質の高い行政サービスを持続的に提供していくために、機能的で持続可能な行政組織への変革が必要となります。

(2)厳しい財政状況

○長引く新型コロナウイルス感染症の影響により、県税収入や地方交付税などの歳入の大幅な伸びが期待できない一方、高齢化の進行による社会保障費の増加など、義務的経費は増加傾向が続く見込みです。

○加えて、県有施設の長寿命化や激甚化する自然災害に備えた防災・減災対策、本県の将来の発展のために必要な社会資本整備などにも取り組む必要があることから、本県の財政は厳しい状況が続くものと考えられます。

○このような財政状況にあっても、必要な施策を安定的に実施し、多様な県民ニーズに応えていくためには、あらゆる手段で必要な財源を確保し、持続可能な財政構造を確立していかなければなりません。

お問い合わせ

所属課室:総合企画部政策企画課政策室

電話番号:043-223-2483

ファックス番号:043-225-4467

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