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更新日:令和5(2023)年7月24日

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千葉県の食用ナバナ根こぶ病に対するヘソディム

1.はじめに

食用ナバナは千葉県が出荷量全国一位を誇り、県南部の夷隅、安房及び君津地域を中心に栽培されていますが、近年生産量が減少しています。これは、生産者の高齢化、大型台風の襲来等の異常気象に加え、土壌伝染性難防除病害である根こぶ病(写真1)が原因と考えられます。同じアブラナ科のキャベツ等の根こぶ病には、「ヘソディム」と呼ばれる(国研)農研機構が中心となって開発した病害管理法が実用化されています。しかしながら、栽培品目が異なる千葉県の食用ナバナに適用することはできませんでした。そこで千葉県では、農林研究推進事業委託プロジェクト研究「人工知能未来農業創造研究 AIを活用した土壌病害診断技術の開発」に参画し、参画機関とAIアプリを共同開発するとともに、既存のヘソディムを改良して食用ナバナに適用できるヘソディムマニュアルを開発しましたので紹介します。

根こぶ病に罹病した食用ナバナ
写真1根こぶ病に罹病した食用ナバナ

2.ヘソディムとは

(1)ヘソディムの考え方
根こぶ病のような土壌病害は、栽培期間中の防除対策がないことから、生産現場では予防的に土壌消毒や殺菌剤の土壌処理等をしばしば行います。このことは、本来防除が不要であった小発圃場にもコストをかけて防除している可能性があることを意味します。
そこで、圃場ごとに、前作の発病状況や栽培環境等を指標として栽培開始前に土壌病害の発病リスクを診断・評価し、これに応じた適切な防除対策を講じる病害管理法が提唱されました。この管理法は、健康診断を活用した人の健康管理と同じ考え方であることから、「健康診断に基づく土壌病害管理(ヘソディム)」と名付けられました。これまでに全国各地で様々な作物と病害の組み合わせの診断法が開発され、マニュアルとして診断法が公開されています。

(2)「HeSo+」の開発
食用ナバナ圃場の土壌データや発病状況をAIに学習させ、AIアプリ「HeSo+」を開発しました(写真2)。「HeSo+」では、GoogleMapを用いて圃場を登録し、前作発病度、土壌中の根こぶ病菌密度、土壌を用いた生物検定であるセルトレイ検定結果、土壌pH、EC及びCEC、前作品種の抵抗性程度と近隣の自作圃場での発病状況の8項目を入力することで、発病リスクが評価され、対策が提示されます。令和2年に、現地及び所内の食用ナバナ栽培圃場58圃場で「HeSo+」の実証試験を行った結果、一致率82.8%と高い精度で診断できることがわかりました。

Heso+トップ場面
写真2「Heso+」トップ画面

(3)食用ナバナヘソディムマニュアルの作製
「HeSo+」の利用には申込が必要でかつ有償であることから、誰もが手軽に使える簡易ヘソディムマニュアルの開発を行いました。既存のアブラナ科野菜根こぶ病のものを参考に、前作発病度、土壌中の根こぶ病菌密度、セルトレイ検定結果、土壌pH及び圃場の排水性を診断項目とする仮マニュアルを作成し、その妥当性の検証と改良を5年間繰り返しました。その結果、一致率が77.6%と高い精度で診断が可能なマニュアルが完成しました。

図1食用ナバナ根こぶ病ヘソディムマニュアルを用いた診断例(PDF:82.8KB)

3.おわりに

今回紹介したアプリ「HeSo+」やマニュアルの活用により、発病リスクが低い圃場に過剰な防除コストをかけることや、高リスクの圃場に無防除で作付けして収穫量を減少させるなどの経営上のロスを減らすことができます。ヘソディムの考え方について理解を深めるにはヘソディムマニュアルを見ていただくだけでも可能ですが、「HeSo+」では圃場情報の蓄積や、データに基づく発病リスクの客観的な把握が可能であり、生産者と営農指導者がデータを共有して共通認識の基に土壌病害対策に取り組むことができます。「HeSo+」は、https://hesodim.or.jp/へアクセスして利用申込みできます。営農支援ツールとしてぜひご活用ください。

 

初掲載:令和5年6月
農林総合研究センター暖地園芸研究所
生産環境研究室
上席研究員
鐘ヶ江 良彦
電話番号:0470-22-2963

お問い合わせ

所属課室:農林水産部担い手支援課専門普及指導室

電話番号:043-223-2911

ファックス番号:043-201-2615

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