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更新日:令和2(2020)年7月1日

ページ番号:389601

温暖化が水稲に及ぼす影響

地球温暖化により、千葉県においても、水稲の生育期間に当たる3~8月の平均気温は、近年、上昇傾向にあり(図1)、平成27~30年の3~8月の平均気温は20.4℃と、平年値の19.0℃と比べ1.4℃高くなっています。そこで、千葉県において温暖化が水稲に及ぼす影響と、その対策について検討したのでご紹介します。

図1

図1.3~8月の平均気温の年次推移(昭和59年~平成30年)

注1)アメダス、千葉市
2)**は1パーセント以下の危険率で有意

1.出穂期が前進

生育期間中の気温上昇により、生育ステージが前進しており、出穂期については4年に1日のペースで前進する傾向が認められています(図2、図3)。このため、追肥や病害虫防除、収穫なども生育ステージに合わせて早める必要があります。

図2

図2.「コシヒカリ」における5~7月の平均気温と出穂期との関係(昭和59年~平成30年)

注1)出穂期は水稲温暖化対策研究室(千葉市)のデータ、各年、移植日は4月30日~5月2日
2)平均気温はメッシュ農業気象データ((国)農研機構)より算出
3)窒素施用量は10アール当たり基肥3キログラム、追肥3キログラム
4)**は1パーセント以下の危険率で有意

図3

図3.「コシヒカリ」における出穂期の年次推移

注1)水稲温暖化対策研究室(千葉市)のデータ、各年、移植日は4月30日~5月2日
2)窒素施用量は10アール当たり基肥3キログラム、追肥3キログラム
3)**は1パーセント以下の危険率で有意

2.前半の生育が過剰に

近年、幼穂形成期の生育(茎数×葉色)が過剰となる年が多くなっています(図4)。このことは、籾数の過剰等につながり、品質の低下を招く要因となります。幼穂形成期の生育が過剰となる一因として、移植後の気温が高くなり、生育前半の分げつが旺盛となることが考えられることから、茎数を制御し、幼穂形成期の生育量を適正な範囲内に収める中干し等の管理がより重要となっています。

図4

図4.「コシヒカリ」における幼穂形成期の茎数×葉色の年次推移

注1)水稲温暖化対策研究室(千葉市)のデータ、各年、移植日は4月30日~5月2日
2)窒素施用量は10アール当たり基肥3キログラム、追肥3キログラム
3)茎数は平方メートル当たり本、葉色はSPAD値
4)幼穂形成期の茎数×葉色の適正範囲は16,000~20,000

3.稈が伸長し、倒伏しやすい

出穂期前50~4日の日最低気温の平均が高いほど、稈が伸長する傾向が認められています(図5)。稈の伸長は倒伏を助長しますので、気温の高い年は倒伏しやすい環境といえます。このため、倒伏に弱い「コシヒカリ」などの品種では、前半の生育制御や幼穂形成期の生育に応じた適正な肥培管理等の重要性が増しています。また、移植後の気温が高い晩植栽培では更に倒伏のリスクが高まるので、5月中下旬に移植する「コシヒカリ」では基肥等の窒素量を少なくし、4月下旬移植よりも生育、目標収量を抑えた栽培をする必要があります。

図5

図5.出穂期前50~4日の日最低気温の平均と「コシヒカリ」の稈長との関係(平成15~30年度)

注1)水稲温暖化対策研究室(千葉市)のデータ、移植日は4月19日~5月1日
2)日最低気温はメッシュ農業気象データ((国)農研機構)より算出
3)窒素施用量は10アール当たり基肥3キログラム、追肥3キログラム

4.高温登熟障害が増加

登熟期間中の気温上昇により、基部未熟粒や背白粒などの白未熟粒が増加する高温登熟障害(写真1)が発生しやすくなっています。本障害は、近年、全国的な問題となっており、発生条件と対策は以下のとおりです。

写真1

写真1.高温登熟障害により発生した基部未熟粒と背白粒

(1)高温登熟障害の発生条件と品種間差

高温登熟障害に対する耐性には品種間差があり、「ふさおとめ」は「コシヒカリ」や「ふさこがね」と比べ耐性が強く、近年の気象条件でも対策は必要ないと考えられます。一方、「コシヒカリ」と「ふさこがね」については、出穂期後の気温が高い場合(具体的には出穂期後14日間の日最低気温の平均値が、「コシヒカリ」で25.0℃以上、「ふさこがね」で25.4℃以上となる場合)、高温登熟障害により外観品質が低下し、等級が低下するリスクが高まります(データ省略)。このため、「コシヒカリ」と「ふさこがね」では、出穂期後の気温が高いと予測される場合、以下の軽減対策が必要となります。

(2)高温登熟障害の軽減対策

高温登熟障害を軽減するためには、登熟期間中の葉色を維持することが有効です。このためには、前半の生育量を制御して適正に追肥を施用し、出穂期における生育量を好適な範囲内に収めることが重要となります。しかし、追肥までの管理が適正でも、近年、急激に葉色が低下するケースが認められます。このため、出穂期前7~5日(穂ばらみ期頃)で葉色が淡く、出穂期後14日間の最低気温の平均が高温に予測される場合は、窒素成分で10アール当たり1キログラムを上限(玄米タンパクの上昇による食味低下を防ぐため)に追肥を施用することで、高温登熟障害を軽減します(図6)。障害が予測され、軽減対策が必要となる出穂期後の気温や追肥施用時の葉色の目安は表1のとおりです。

図6

図6.出穂期7日前の追肥が高温登熟障害の発生程度に及ぼす影響(平成30年度)

注1)水稲温暖化対策研究室(千葉市)のデータ、品種は「コシヒカリ」、追肥は窒素成分で10aあたり1キログラム施用
2)出穂期前7日における葉色(SPAD値)は追肥有区で27.9、追肥無区で27.5
3)基部未熟、背白、基白粒は穀粒判別機RGQI20A(サタケ社製)で測定

 

表1.高温登熟障害の軽減対策が必要となる目安表1

 

初掲載:令和2年7月

農林総合研究センター

水稲温暖化対策研究室

上席研究員望月篤

電話:043-292-0016

 

お問い合わせ

所属課室:農林水産部担い手支援課専門普及指導室

電話番号:043-223-2911

ファックス番号:043-201-2615

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