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更新日:令和5(2023)年12月7日

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べたがけ被覆による冬どり露地ダイコンの寒害低減技術

1.はじめに

千葉県北東部に位置する東総地域の冬どりダイコンでは、トンネル栽培と露地栽培があり、近年はトンネル設置の労力及びコストがかからない露地栽培が増加しています。しかし、露地栽培では、寒害が発生し、品質の低下が問題となります。そこで、冬どりダイコンで省力的に寒害を低減できるべたがけ栽培について紹介します。

2.寒害を防ぐには

寒害は主に2月以降に発生し、症状には皮むけ(抽根部表皮の剥離)、黒変、首傷み(葉柄基部周辺の黒変)があります。寒害を減らすためにはまず品種選択が重要です。平成27~31年収穫の5年間で品種比較試験を実施したところ、「春宴」(雪印種苗株式会社)は抽根部の皮むけ及び首傷み(写真1、写真2)等の寒害が比較的少なく、2月収穫に適していました。また、首傷み及び表皮黒変は、寒さで葉が枯れると発生しやすいので、葉の生育を保持することが必要であり、べたがけ被覆によりこの効果が期待できます。

ダイコン写真1

写真1.皮むけ(抽根部の剥離)

 

ダイコン写真2-1

写真2-1.首傷み

 

ダイコン写真2-2

写真2-2.表皮黒変(傷んだ部分から雑菌が入る首傷みの進行した症状)

3.べたがけ被覆で寒害を防ぐ

(1)品種によって違うべたがけ被覆の効果

平成29年9月下旬播種、翌年3月収穫の冬どり栽培で、「春宴」と「冬侍」でベタロン及びバロン愛菜のべたがけ被覆による寒害低減効果を検討しました。この栽培では、台風による潮風害と冬の低温の影響で肥大が遅れました。結果として、「春宴」では、べたがけ被覆は、皮むけの発生を防ぎ、ダイコンの肥大が促進されることで上物収量が増加しました(表1、写真3)。一方、「冬侍」ではべたがけにより生育は促進したものの、皮むけはベタロン区及びバロン愛菜区においても多発し、寒害低減効果は認められませんでした。

表1.べたがけ被覆における葉重、根重、障害発生率及び上物収量(平成30年収穫)

ダイコン表1-1-1

注1)1区4.5m2(30株)の3反復とし、各区12株を調査した
2)平成29年9月27日に「春宴」は畝間60cm、株間20cm、「冬侍」は畝間60cm、株間18cmで播種した
3)べたがけはベタロンDT-650(ダイオ化成(株))及びバロン愛菜NEO(小泉製麻(株))を使用し、被覆期間は平成29年12月13日から収穫時までとした
4)規格は、L:1,100~1,400g、2L:1,400~1,800g
5)皮むけは抽根部表皮の剥離、首傷みは葉の付け根部分に1cm以上のひび割れがあるもの
6)上物収量は、障害発生の無いものの根重から算出した

ダイコン写真3

写真3.3月13日「春宴」の外観.無被覆区(左)とベタロン区(右)

(2)べたがけ被覆する時期は?

「春宴」のべたがけの被覆期間について、全期区、前半区、後半区、及び無被覆区を設けて検討しました(図1)。全期区は平成30年12月5日から収穫まで、前半区は12月5日から平成31年1月8日まで、後半区は1月8日から収穫まで、それぞれベタロンによるべたがけ被覆を行いました。この栽培では、秋の高温で生育が促進しました。

ダイコン図1-1-1

図1.試験概略図

 

寒害は、1月8日の調査では全ての試験区で見られませんでした。(表2上段)。
2月13日の調査では、全期区が葉重、根重ともに最も重く、皮むけや首傷みが最も少なくなりましたが、L・2L規格の上物収量は他区と顕著な差はありませんでした(表2中段)。2月26日の調査では、全期区の葉重は旺盛な生育が維持され、無被覆区と後半区では首傷みが進行し、表皮黒変が発生しました(表2下段)。10a当たりの上物収量では全期区が多かったものの、L・2L規格の上物収量では根重の抑制された前半区が多くなりました。1月8日時点で葉重の少なかった無被覆区と後半区で、2月26日調査時における寒害発生が顕著であり、前半区では1月8日にべたがけを除去しましたが、べたがけ被覆により葉の生育が維持され、寒害による葉枯れが遅れ、首部の傷みが軽減されたと考えられます。
以上のように、12月上旬からのべたがけ被覆により葉の生育が維持され、寒害を防ぐことができます。寒害による葉枯れが起きてからの被覆では効果がありません。また、本作のように秋が温暖で、べたがけにより生育が進み過ぎた時には、べたがけを早期に除去すると3L以上の大きな規格の発生を減らし、2月下旬まで出荷することができます。

表2.「春宴」のべたがけ被覆における上物収量と障害発生株率ダイコン表2-2-2

注1)1区11.5m2(48株)の3反復とし、各区12株を調査した
2)平成30年10月2日、畝間60cm、株間20cmで播種した
3)べたがけはベタロンDT-650(ダイオ化成(株))を使用し、被覆期間は、全期区が平成30年は12月5日から収穫まで、前半区が12月5日から1月8日、後半区が1月8日から収穫までとした
4)規格は、L:1,100~1,400g、2L:1,400~1,800g、3L:1,800g以上
5)皮むけは抽根部に発生した表皮の剥離、首傷みは葉の付け根部分に1cm以上のひび割れがあるもの、表皮黒変は表皮内部に雑菌が入り黒変したもの
6)上物収量は、障害発生の無いものの根重から算出した

4.おわりに

「春宴」を10月初旬に播種し、12月上中旬からベタロン等でべたがけ被覆することで、寒害を軽減し、上物収量が増加することが明らかとなりました。本技術を活用して、寒害の発生を低減し、安定生産の一助にしていただきたい。

初掲載:令和2年10月
農林総合研究センター
水稲・畑地園芸研究所
東総野菜研究室
上席研究員千吉良敦史
電話:0479-57-4150

お問い合わせ

所属課室:農林水産部担い手支援課専門普及指導室

電話番号:043-223-2911

ファックス番号:043-201-2615

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