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更新日:令和3(2021)年12月2日

ページ番号:7456

「さとのそら」の晩播栽培のポイントと転換畑における出穂期追肥による子実タンパク向上対策

小麦品種「さとのそら」の播種の適期は11月上旬ですが、大豆の後作や天候等の影響で播種作業が12月に持ち越される場合があります。「さとのそら」を12月に晩播すると、気温が低いため苗立率が悪くなり、その結果、収量や品質の低下を引き起こす危険性があります。このように12月に播種を行う晩播栽培(以下「晩播栽培」とする)で11月上旬播種の適期播種栽培(以下「適期播栽培」とする)と、同等の収量及び品質を得るためには晩播に適した栽培方法を行う必要があります。

また、転換畑では湿害で普通畑より子実たんぱく質含有率(以下「子実タンパク」とする)が低くなりやすい傾向にあります。排水対策と適正な追肥が欠かせません。

そこで、「さとのそら」の晩播栽培のポイントと転換畑における子実タンパク向上対策を紹介します。

1.晩播栽培のポイント

(1)基肥窒素量

晩播栽培で基肥窒素量を適期播栽培の基準の10アール当たり8キログラムから12キログラムに増やしても子実収量と外観品質の明らかな向上効果が見られません。基肥窒素量は、適期播栽培の基準と同様に10アール当たり8キログラムとします(図1)。

 

1基肥窒素の増量が及ぼす影響

図1「さとのそら」の晩播栽培における基肥窒素の増量が子実重及び子実の外観品質に及ぼす影響

注1)播種は平成26年12月15日、播種量は10アール当たり8キログラム

注2)追肥はいずれも窒素10アール当たり4キログラムを茎立期頃を目標に施用したが、茎立期が予想より遅れ、茎立期15日前となった

注3)子実重は粒厚2.2ミリメートル以上、外観品質は1(良)から5(不良)で評価、3が農産物検査における1等相当、5が2等相当(図2から5も同様)

(2)播種量

晩播栽培では播種量を適期播栽培の10アール当たり8キログラムの約1.5倍の10アール当たり10.5から12キログラムとすることで、適期播栽培と同程度の収量及び農産物検査における1等相当の品質となります(図2)。

 

2播種量の増量が及ぼす影響

図2「さとのそら」の晩播栽培における播種量の増量が子実重及び子実の外観品質に及ぼす影響

注1)10アール当たりの播種量は、晩播・標準及び適期播・標準は8キログラム、晩播・厚播は平成26年が12キログラム、平成27年が10.5キログラム

注2)基肥窒素量は10アール当たり8キログラム

注3)播種は晩播が平成26年12月15日及び平成27年12月1日、適期播が平成26年11月14日及び平成27年11月13日

注4)追肥は窒素10アール当たり4キログラムを茎立期頃を目標に施用したが、平成26年は茎立期が予想より遅れ、茎立期15日前となった

(3)追肥時期

晩播栽培では播種量を10アール当たり10.5から12キログラムとし、追肥を適期播栽培と同様に茎立期頃(茎立期10日前から茎立期)に窒素10アール当たり4キログラム施用することで、適期播栽培と同程度の子実重及び農産物検査における1等相当の品質となります(図3)。

 

3追肥時期の違いが及ぼす影響

図3「さとのそら」の晩播栽培における追肥時期の違いが子実重及び子実の外観品質に及ぼす影響

注1)10アール当たりの播種量は晩播・厚播で平成27年が10.5キログラム、平成28年が11.5キログラム、適期播・標準でいずれも標準の8キログラム

注2)10アール当たりの施肥窒素量は基肥8キログラム、追肥4キログラム

注3)播種は晩播が平成27年12月1日及び平成28年12月6日、適期播が平成27年11月13日及び平成28年11月17日

注4)茎立期は適期播が平成27年、28年ともに3月10日、晩播が平成27年3月20日及び平成28年3月24日

(4)「さとのそら」の晩播栽培における栽培基準

以上のことから、「さとのそら」の晩播栽培における播種量及び施肥量は以下のとおりです。

  • 播種量:10アール当たり10.5から12キログラム(適期播栽培の約1.5倍)
  • 基肥:窒素、リン酸、加里=10アール当たり8、15、12キログラム(適期播栽培と同様)
  • 追肥:茎立期10日前から茎立期に窒素成分で10アール当たり4キログラム(適期播栽培と同様)

※その他圃場の排水対策や病害虫対策等の管理は、適期播栽培と同様に行います。

2.転換畑における子実タンパク向上対策

小麦の直接支払交付金の単価は、子実の外観品質で評価される農産物検査における等級と子実タンパク等の商品価値の品質で評価されるランクで決まります。農産物検査における1等評価を得ることが最も重要ですが、ランクを決める評価項目の中の子実タンパクについても、栽培管理で向上させることが可能です。

「さとのそら」が区分される日本めん用小麦に求められる子実タンパクの基準値は、9.7パーセント以上、11.3パーセント以下、許容値は8.5パーセント以上、12.5パーセント以下とされています。「さとのそら」に限らず、小麦は湿害に弱い作物です。特に転換畑では地下水位が高く湿害が発生しやすくなります。湿害を起こすと生育量が少なくなり、収量とともに子実タンパクも低下します。子実タンパク向上のためには、まずはほ場の排水対策が重要です。

また、転換畑では排水対策を行っても普通畑に比べ子実タンパクが低くなる傾向にあります。葉色が淡く、子実タンパクが低くなることが懸念されるほ場において、子実タンパクを向上させるには、出穂期の追肥が効果的です。追肥が茎立期の窒素10アール当たり4キログラムのみでは子実タンパクが基準値に達していない場合でも、さらに出穂期に窒素を10アール当たりに適期播栽培においては4キログラム、晩播栽培においては1から2キログラム追肥することによって、子実タンパクを基準値の範囲に向上させることができます。また、外観品質は茎立期に窒素10アール当たり4キログラムの追肥のみの場合と同程度の農産物検査における1等相当に維持できます(図4、図5)。

 

4出穂期追肥が及ぼす影響

図4「さとのそら」の適期播栽培における出穂期追肥が子実重、子実の外観品質及び子実タンパク質含有率に及ぼす影響(平成25年播種)

注1)10アール当たりの施肥窒素量は基肥8キログラム、茎立期追肥4キログラム、適期播・茎立期・茎立期+出穂期N4区のみさらに出穂期追肥4キログラム

注2)播種は平成25年11月11日、播種量は10アール当たり8キログラム

注3)子実タンパク質含有率は水分13.5パーセントの現物換算で図中に表示(図5も同様)

 

 

5晩播栽培における出穂期追肥の影響

図5「さとのそら」の晩播栽培における出穂期追肥が子実重及び子実の外観品質に及ぼす影響(平成28年播種)

注1)10アール当たりの播種量は晩播・厚播が11.5キログラム、適期播・標準が8キログラム

注2)施肥窒素量は基肥8キログラム

注3)10アール当たりの追肥は茎立期に窒素4キログラム、さらに出穂期に晩播・厚播・茎立期+出穂期N1は1キログラム、晩播・厚播・茎立期+出穂期N2は2キログラムを施用

注4)播種は晩播・厚播が平成28年12月6日、適期播・標準が平成28年11月17日

 

初掲載:平成30年10月

農業総合研究センター水稲・畑地園芸研究所

水田利用研究室

上席研究員

宇賀神七夕子

電話:0478-16-0002

 

お問い合わせ

所属課室:農林水産部担い手支援課専門普及指導室

電話番号:043-223-2911

ファックス番号:043-201-2615

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