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更新日:令和3(2021)年11月19日
ページ番号:7342
安房地域の農業は、温暖な気候を生かし集約的な多目的園芸と、伝統ある酪農や観光農業など県内の中でもバラエティに富んでいることが特徴的です。また農業従事者の高齢化や後継者不足、更には耕作放棄地の増大が千葉県の中でも著しい地域でもあり、結果としてイノシシ・シカ・サル等の有害獣による被害が増え、離農者の増加に拍車をかけています。
そのような中で、畜産における放牧技術の情報交換を主に、安房地域の耕作放棄地解消に取り組む農業者団体「安房地域放牧研究会」の取組を紹介します。
写真1.安房地域放牧研究会の視察対応
安房地域の耕作放棄地を利用した放牧は、平成17年に南房総市の和牛繁殖農家の取り組みをきっかけにして、市・県・安房農林振興センター(現:安房農業事務所)・畜産総合研究センター嶺岡乳牛研究所・家畜診療所が連携して牧柵の設置や放牧馴致の方法・草地造成に関する技術指導を行いました。平成22年には、和牛繁殖農家6戸・酪農家6戸の計12戸が放牧に取り組むこととなり、10ヘクタールの耕作放棄地解消に繋がりました。しかし、平成23年3月の東日本大震災での原発事故の影響により、放牧は一時中断され、自粛解除となった後も(風評被害等を恐れ)すぐに再開することはできませんでした。
このような状況を打破し、放牧を推進するためには(1)既に放牧を行っている農家同士の情報交換の場(2)新規に放牧を行いたい農家と既に放牧を行っている農家の情報交換の場が必要であると考え、千葉県放牧研修会を安房地域で開催することで情報交換のきっかけを作りました。その後、安房農業事務所改良普及課が中心となって農家への呼びかけを行い、平成27年1月に放牧技術の情報交換を主とした「安房地域放牧研究会」が設立されました(平成27年7月現在で会員14名)。
写真2.安房地域放牧研究会設立の打ち合せ
安房地域では耕作放棄地が年々増加しているにも関わらず、地主に放牧への理解が得られないことで、耕作放棄地を借りることができない状態が続いており、放牧推進の阻害要因の1つとなっています。
このことから安房地域放牧研究会の今年度の目標として、安房地域の耕作放棄地を利用して黒毛和牛繁殖雌牛放牧の実証展示圃を設け、集落の人々に対して「耕作放棄地対策としての放牧」への周知を深めることとしました。8月下旬には現在取り組み始めている3か所の実証展示圃を公開する予定としています。
写真3.実証展示圃の黒毛和牛繁殖雌牛
写真4.実証展示圃現地での第3回安房地域放牧研究会
耕作放棄地を利用した放牧は畜産農家への直接的な利益には繋がりにくい部分はあります。しかし、耕作放棄地の増加により、衰退していく集落が増加している中、「耕作放棄地対策としての放牧」を推進していくことは、長期的な集落の維持に繋がると考えています。今後とも当研究会が行う放牧の推進により、地域の耕作放棄地が少しでも解消できるよう農業事務所も引き続き支援していきます。
初掲載:平成27年8月
安房農業事務所改良普及課
南房総・鋸南グループ
主任上席普及指導員
金子貴一
鴨川グループ
普及指導員
中原祐樹
電話:0470-22-8132
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