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更新日:令和5(2023)年11月7日

ページ番号:9877

労働争議の調整(あっせん)事例

【事例1】給与減額措置に係る誠実な団体交渉の促進を求めた事例

概要

バス会社の嘱託社員(運転手)は合同労組に加入し、過去の減給措置の回復を求め使用者と団体交渉を行ってきた。しかし、いずれの交渉においても使用者は経営が厳しいの一点張りでゼロ回答に終始したことから、争議行為を構えつつ、誠実な団体交渉の実施を求めて、あっせんを申請した。

結果

減額措置が「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(労働大臣告示)の基準に照らし適正かどうか検討し、その結果を組合に誠実に説明すること、経営状況についても組合の理解が得られるようデータに基づき誠実に説明を行うことで合意し、解決した。

【事例2】会社の経営状況の説明を求めた事例

概要

組合は、夏期一時金の要求に先立ち、会社の経営状況を把握するため、決算資料等の提出を会社に求めた。その資料を組合が分析すると、売上が伸びていることが判明したが、夏期一時金の金額は、昨年より低い回答となった。組合は、売上が伸びているのに夏期一時金が低くなるのは納得いかないとして、団体交渉を行ったが、会社は赤字であるとの回答に終始した。そこで、組合は、自主解決は困難として、あっせんを申請した。

結果

使用者側に事情を聞くと、売上は確かに伸びているが、諸事情で経費が増加しているため、経営状況は昨年より悪化しているとの説明があった。あっせん員は、そのことを組合に適切に伝えることが必要ではないかと提案すると、使用者側も了解した。そこで、「会社は夏期一時金について、組合と早期に団体交渉を実施し、会社の経営状況、財務状況について明確な説明を行うこと」とのあっせん案を労使双方に示すと、双方ともこれを受諾し、解決した。

【事例3】使用者側から団交ルールについてあっせん申請した事例

概要

会社が3名で団体交渉に出席したところ、労使トラブルがあったことを背景に、組合は、20名を超える出席者となった。さらに、場外に組合員が数十名、待機している状況だった。この状況では、団体交渉は困難であると使用者側は主張したが、交渉は開始され、交渉事項とは無関係なやり取りが続いた。このような状況では、今後、正常な団体交渉は困難であるとして、使用者側が、団体交渉のルールを明確することを求め、あっせんを申請した。

結果

組合側に事情を聞くと、団体交渉で、会社が交渉を一方的に打ち切ろうとしたため、小競り合いにはなったが、短い時間に限られていたと主張した。そこで、あっせん員は、今後、平穏に団体交渉ができるよう、組合に、団体交渉の参加人数について、ルール化することを提案すると、組合も了承した。これを受け、労使のあっせん員が、参加人数、組合側の出席者、今後の団体交渉の開催日を調整し、労使双方が合意し、解決した。

【事例4】組合費のチェックオフの早期実施を求めた事例

概要

組合は、結成当初から会社に、組合費のチェックオフを求めていたが、会社では、組合員数が過半数となったら検討すると回答してきた。しばらくして、組合員数が過半数を超えたことから、組合は組合費のチェックオフを求める団体交渉を行った。この中で会社は組合員名簿の提出を求めた。その後も、再度、組合員名簿や組合の活動状況がわかる資料の提出を求める等、チェックオフはなかなか実施されなかった。そこで組合は、早期のチェックオフ実施を求め、あっせんを申請した。

結果

使用者側に事情を聞くと、この職場は、職員の入れ替わりが多く、当初、提出された名簿には、退職者が多く含まれていたことから、在籍状況の再確認を組合側に求めたとのことだった。また、チェックオフ実施について、使用者側は事務的な準備作業を進めていたことも判明し、双方のコミュニケーション不足が紛争の原因と考えられた。そこで、あっせん員は、チェックオフの実施時期を明確にすること、労使双方が良好な労使関係を構築すること、を内容とするあっせん案を労使双方に示すと、双方ともこれを受諾し、解決した。

【事例5】争議行為を予告後、団体交渉の早期実施を求めた事例

概要

会社は市役所の委託業務を主な業務としていた。しかし、市役所が委託業務を随意契約から一般競争入札に変更し、会社は入札に参加したが、従来の約半分の業務しか落札できず、従業員の雇用が守れない危機的状況に陥った。会社は従業員の雇用を守るため、新規事業と賃下げで対応することとしたが、これに納得できないとして一部の従業員が労働組合を立ち上げ、会社に団体交渉を申し入れた。しかし、会社は、当面、この状況の対応で忙しく、団体交渉には応じられないとしたことから、組合は早期の団体交渉実施を求め、あっせんを申請した。

結果

組合では、争議行為も予告していたことから、予告日の前にあっせんを実施した。使用者側に事情を聞くと、危機的状況を乗り切れば、団体交渉にも応じるが、それまでは従業員の雇用を守るため、団体交渉に応じる時間がないことを理解してほしいと主張した。一方、組合側は、なし崩しに賃下げするのではないか、との疑問をもっていた。そこで、あっせん員は、使用者側には団体交渉を実施するまで賃下げしないこと、組合側には団体交渉継続中は争議行為を行わないこと、を提示し、双方ともこれを受諾し、解決した。

【事例6】使用者側から外国人研修生との紛争についてあっせん申請した事例

概要

外国人研修生を受け入れた会社で、火災予防のため、寮内での自炊を禁止していた。しかし研修生が自炊をしたため、器具を没収したところ、反発した研修生は労働組合に加入した。組合では、さっそく研修生の労働条件等について要求を行ったが、会社では、組合の言動を強硬と受けとめていた。そこで、会社は、組合と平穏に話合うため、団体交渉のルール化を求め、あっせんを申請した。

結果

組合側に事情を聞くと、研修生らは、満足に食事も与えられないことから、禁止された自炊を行ったとのことだった。そのため、必要な労働条件の改善を申し入れたもので、強硬な言動などしていないと主張した。一方、使用者側に事情を聞くと、食事の問題は改善を検討しているとのことだった。そこで、あっせん員は、団体交渉の参加人数、時間等をルール化し、団体交渉は誠実かつ平穏に行うことを含めて労使双方に提示し、双方ともこれを受諾し、解決した。

【事例7】組合事務室の貸与についてあっせん申請を2回行った事例

概要

会社には、併存組合には、組合事務室の貸与を認めていたが、当該労働組合には貸与していなかった。そこで、組合は、事務室の貸与を求め、あっせん申請し、事務室を貸与する旨のあっせんが成立した。これを受け、会社では、倉庫の空きスペースを組合に貸与することとした。しかし、組合は、倉庫の空きスペースは事務室とは言えないと主張し、会社に、再度、事務室の貸与を求めた。しかし、会社では事務室には空きがないとの回答だったため、組合は再度、あっせんを申請した。

結果

使用者側に事情を聞くと、他にどうしても場所(部屋)がない旨、重ねて主張した。そこで、あっせん員は、問題となっている倉庫の空きスペースの仕切り方を工夫できないか、使用者側に協力を求め、組合が納得できる形を模索した。当初、組合は部屋としての事務室を強く求めていたが、ある程度、倉庫の空きスペースが独立した空間になったことで、これを受け入れ、解決した。

【事例8】無資格の労働者が不当に雇止めされ、ユニオンに駆け込み訴えをした事例

概要

労働者はパート社員として仕事をしていたが、業務に係る資格を持っていなかった。あるとき、所属長から「資格がないので、次の契約更新は行わない。」と通告された。募集広告には、「資格不問」との記述があり、契約期間については何ら書かれていなかったため、納得できないとして、労働者はユニオンに加入した。ユニオンでは、さっそく、団体交渉を申し入れたが、会社がこれに応じず、「このたびの雇止めには何の問題もないと考えているため、団体交渉は行わない。」と通告されたため、ユニオンでは自主解決は困難として、あっせんを申請した。

結果

使用者側に事情を聞くと、この労働者は、資格がないだけではなく、仕事が嫌いであることを周囲に広言する等の問題行動があり、仕事も不熱心であることから、雇止めを正式決定したもので、雇止めの撤回はあり得ないと主張した。一方、組合側は、当初、募集時は「資格不問」としながら、雇止めの理由を、資格がないとした使用者側の対応は不誠実であると主張した。使用者側に意向を聞くと、雇用の継続は非常に困難とのことなので、金銭補償による退職の方向で調整することとなった。労使の提示金額には大きな開きがあったが、あっせん員は、双方に、紛争を長期化させない本あっせんでの解決を勧めた。そこで、最終的に双方が金額的に歩み寄り、解決した。

【事例9】組合がユニオンショップ協定により、除名組合員の解雇を求めた事例

概要

ある組合員が、組合規約上の統制違反に該当したため、組合では、その組合員について、組合規約に基づき除名投票を実施し、除名を決定した。組合と会社は、ユニオンショップ協定を締結していたため、組合は会社に、当該組合員を除名した旨を通知し、解雇するよう求めた。しかし、会社はこの者を解雇しないことから、組合はこの者の解雇を求めて、あっせんを申請した。

結果

使用者側に事情を聞くと、ユニオンショップ協定を締結してはいるものの、この者には、組合を脱退したこと以外に解雇するだけの就業規則上の根拠がなく、使用者の解雇権の濫用となることを懸念していた。しばらく、推移を見守っていると、当該労働者が自主退職したため、組合からは取下書が提出され、自主解決した。

【事例10】長時間労働から、精神疾患を発症した労働者が不当に雇止めされ、ユニオンに加入した事例

概要

労働者は夜間・休日の電話対応の仕事をしていたが、この業務は拘束時間が非常に長いことから、精神疾患を発症した。その影響で、仕事ができない状態となり、会社からは雇止めを通告され、労働者はユニオンに加入した。ユニオンでは、労働者の職場復帰を求めて、団体交渉を何度か行ったが、労使の主張は平行線となった。そこで、ユニオンは、労働委員会のあっせんで、公正・中立な第三者の意見により解決することを会社に提案し、会社もこれを了承したことから、あっせんを申請した。

結果

使用者側に事情を聞くと、この業務は既に、別の会社に外注しており、労働者の職場復帰は、事実上不可能であることが判明した。そこで、金銭補償による退職の方向で調整することとなり、ユニオンもこれに同意した。しかし、病気によるとはいえ、労働者が長い期間、休暇を取り、会社としては大きい損害を受けたとして、使用者側は当初、金額の提示に難色を示した。そこで、あっせん員は、確かに会社として損害を受けたこともあるが、一方で、労働者の勤務期間が長かったことを考慮し、その功労に報いてはどうかとの提案を行った。使用者側もこれに応じ、最終的に、組合側も納得できる金額を使用者側が提示し、解決した。

【事例11】組合が脱退慫慂を止めるよう、会社に求めた事例

概要

ある会社で、それまでなかった労働組合が結成された。組合役員が組合結成通知書と団体交渉申入書を手交すると、社長は組合役員に「そんなに辞めたいか」と何度も言った。その翌日から、組合員に対し、社長を中心とした組織的な脱退慫慂が執拗に行われるようになり、脅しや恫喝まで行われた。また、ある組合役員に対して、口頭で理由も示さず一方的に懲戒処分を通告してきた。そこで、組合は、不当な脱退慫慂の停止、組合役員に対する懲戒処分の撤回を求め、あっせんを申請した。

結果

使用者側に事情を聞くと、会社としては、労働組合の設立を歓迎しており、組織的な脱退慫慂、脅しや恫喝など一切行っていないと主張した。一方、ある組合役員に対する懲戒処分については、業務上の懲戒事由があったもので、懲戒処分は就業規則どおりに取り扱っており、何ら問題はないとした。
双方の主張は大きくすれ違っていたが、労使双方に、今後は労働組合法を遵守し、良好な労使関係を築く意向があるか、あっせん員が確認すると、了承する意向が示された。
また、会社と組合は、互いの立場を尊重し、それぞれ良識を持った活動を行うことでも合意し、解決した。

【事例12】医療スタッフの集中配置の撤回を求めた事例

概要

ある病院で、それまで病棟ごとに配置されていた医療スタッフを、1か所に集中配置することが使用者側から示された。組合は、医療スタッフの負担が増えるとして、これに反対し、団体交渉を行った。しかし、使用者側では、協議が継続中のまま、一部の業務で集中配置を実施した。また、組合が団体交渉を申し入れても、多忙等を理由に応じない状態となった。そこで、組合は、誠意ある団体交渉の実施と、集中配置の撤回を求め、あっせんを申請した。

結果

使用者側に事情を聞くと、集中配置の実施のために、医療スタッフを増員しており、医療スタッフの労働強化になるとの組合の主張は受け入れがたいと主張した。また、団体交渉は諸事情で開催できていないが、組合との事務レベルでの協議は充分実施しているとした。そこで、あっせん員は、組合の求める団体交渉の実施について、使用者側に意向を確認すると、このあっせんの中で、団体交渉の日時を決めたいと前向きな回答を示した。そして、今後、団体交渉を通じ、集中配置の実施方法や業務分担について、充分な協議を行っていくことで、労使双方が合意し、解決した。

お問い合わせ

所属課室:労働委員会事務局審査調整課審査調整班

電話番号:043-223-3735

ファックス番号:043-201-0606

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