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更新日:令和7(2025)年5月30日

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インタビュー企画「海と人」vol.6 写真家 渡部 英二氏

千葉県の海に関わる様々な人を取材し千葉の海の魅力を語っていただきます。
今回は写真家である、渡部 英二氏にインタビューを行いました。

 

渡部さんの顔写真

 

「毎日写真を撮る理由は、この風景への愛なんだと思います。」

 

朝の訪れを捉える

「表情が違うんですよ。毎日、見るたびに。今日はどんな景色が見られるかなって、毎日ワクワクしながら海に出ますね。この歳になって、こんなに心が躍る体験をできていることは、本当に幸せなことだと思います」

 

月灯りに照らされて、白い息がようやく見え隠れするような朝5時の片貝海水浴場。そこに、三脚を担ぐ人の姿がありました。サラリーマンを定年退職されてから九十九里町に移住してきた、風景写真家の渡部英二さんです。

「おお…うわあ、きれいだ」

堤防を登って海岸線が見えた瞬間、渡部さんが思わず声を漏らしました。

 

海岸線

 

「僕ね、毎日撮っているのに、こうやって毎回リアクションしてしまうんですよ。例えばほら、今日は水平線に雲が少ないでしょう。そうすると、この後、日の出の時には綺麗なだるま朝日(※1)が見られると思うんですよ。たまんないですね」

 

しばらくすると、渡部さんが指を差した方向からは、確かに見事な朝日が昇り、九十九里の町全体が明るく照らされていきました。「今日はいいのが撮れた」と、朝日を背に満足気に撮影を引き上げる渡部さん。12年間、毎日のように早朝の海岸を訪れては写真を撮り続けているといいます。

※1 だるま朝日・・・海面と大気の温度差により、朝日がだるま型に見える現象

 

取材日のだるま朝日

▲取材日のだるま朝日(撮影:渡部英二)

九十九里の百面相に魅せられて

「写真歴は長いですよ。北海道を出て、東京で働いて、その間に毎日写真をブログにアップしていた時期が15年ぐらいありましたね。ただその頃はもっぱら山の写真でした。山登りやキャンプが大好きで。九十九里の海を撮り始めたのは、仕事を退職してからですね」

 

北海道の小さな漁村で生まれ育った渡部さんにとって、海の景色は特別珍しいものではなかったといいます。最初は「変わり映えのしない風景」に見えた九十九里の海でしたが、あることをきっかけに、その魅力に気づき始めたそう。

 

「昼間の波の穏やかな海は何度か訪れていたんですが、その日はカッパを着ていくような雨の日だったんです。荒れた海をカモメが飛んでいく写真を撮影して現像してみると、これがいい写真だったんです。そこでピンときました。これは、時間や状況が変われば多様な “表情” が撮れるはずだって」

 

それから、変化する九十九里の海の ”表情” を捉えることに夢中になっていった渡部さん。12年間で撮り溜めた写真は、約500万カットにものぼるといいます。過去に何度か開催した個展のタイトルはいつも「Facial expression(※2)」。地元の人でも「え、こんな景色が九十九里にあるの?」と驚くような、多様な姿を捉えた作品は、町役場や地元のホテルなど、様々な場所に展示され、愛されています。

※2 Facial expression・・・「表情」

▼渡部さんの作品の一部

空と海が鏡の様になっている様子

砂浜

砂浜で馬に乗る人

波しぶきがあがる様子

波

波と太陽と船

 

「素晴らしさ」をアーカイブする

「人生の大半を東京で過ごしていた中、休日にはいつも山に行きました。仲間と一緒に山の環境を整備する団体を作って、有給休暇も全部使って年間80泊キャンプしていましたからね。それが、今はこうして海にいる。九十九里にいる。不思議なもんですよね。でもね、今思うと全て、今の自分につながっていたんだなって思うんです」

 

そう語る渡部さんに、改めて「九十九里を撮る理由」を尋ねると、「愛だと思う」という答えが返ってきました。

 

「単純に、この風景を好きになったんだと思います。毎日表情が変わる、この素晴らしい海を写真に残している人が誰もいなかった。僕は残すことに意味があると思い、ここを撮り続けています」

 

「残すことに意味がある」ふいに渡部さんが口にしたこの言葉には、強い確信と信念が感じられました。出会った物事や景色の美しさ・素晴らしさを捉える力と、それを残そうとする執念。思えば、日常を毎日記録し続けたブログも、山の保全に努めた活動も、そしてこの九十九里町における写真活動も、渡部さんのエネルギーはいつも「残すこと」に注がれているようでした。

渡部さんを横から見た撮影風景

渡部さんを後ろから見た撮影風景

一期一会が広がる町

「九十九里町に引っ越してきてから、どうも人と繋がるんです。お寺の住職を通じて知り合った、同じように創作活動をする仲間たち。ビーチを散歩したりジョギングしたりしている"早起き仲間"の人たち。ここ九十九里で出会った人たちを通じてどんどんいろんな繋がりができていく。日本全国いろんな場所を旅しましたが”ああ、ここは人を受け入れる町だなあ”って感じます」

 

様々な人・物・事・場所と出会い、その度にそれぞれの魅力を感じ取ってきた渡部さんの人生。その中でたどり着いた、この九十九里という町には、不思議な「縁」の力があるといいます。

 

「九十九里には、ご自身の窯を持って陶芸をしている方がいたり、ジャズなどの音楽活動をしている方がいたり、何か "表現" を楽しんでいる人が多い印象です。前に、海辺でフラダンスを踊る女性を撮影したことがあったんです。長く伸びる九十九里の海岸線。水面に反射する光が不規則にぶつかり、その度に彼女の体が光るんです。それは喜びも悲しみも驚きも、全て伝わってくるような、そんなダンスでした。これまで僕はダンスの魅力に共感できていなかったのですが、その神々しい光景に気づくと鳥肌が立っていました。また一つ、九十九里の海が僕の価値観を変えてくれた瞬間でした」

 

多様な表情を見せる海辺の風景のように、ユニークな人々との出会いが、九十九里町での暮らしに、写真家としての人生に、刺激を与えているようでした。

 

九十九里町 どこまでも続く海岸線

海と人をのぞいてみると、

浮かんで、出会って、つながって

絶えず打ち寄せる波のように変化し続ける

たくさんの「表情」がありました。

 

 

Q.九十九里町でのライフスタイルを教えてください。

妙覚寺というお寺には、コンサートホールがあって、そこで定期的に仲間内で集まってコンサートをしています。ジャズ、沖縄民謡など、その時によって内容はさまざま。和尚さんが創作活動や表現活動を応援してくれて、一つのコミュニティのようになっているんです。

お話をする渡部さん

お問い合わせ

所属課室:環境生活部文化振興課文化企画室

電話番号:043-223-3945

ファックス番号:043-224-2851

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