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更新日:令和6(2024)年2月19日

ページ番号:5974

(大多喜町)浄宗寺の『呼びもどしの鐘』

内容

むかしむかし、三条(さんじょう)の村はずれに貧しいながらも仲のよい百姓一家が住んでいた。

息子(むすこ)は成人すると

「もうこんな貧しい暮らし、いやだ。金いっぺ稼(かせ)ぐから江戸に行かせてくれ」

と父母に言った。

はじめは「長男は家のあとを継(つ)ぐもんだ」と反対していた父母も、いつしか(せがれの人生だ。夢をかなえてやるか)と五年の約束で江戸行きを許した。

「体に気をつけて働けよ」

と桜の季節に息子を送り出した。

 

時が過ぎ、五回目の桜の季節を迎(むか)えようとしていた。

「江戸に行った息子がもうすぐ帰ってくる」

と父母はうれしさのあまり、隣近所に知らせて歩いた。

桜が散り、あじさいの季節が過ぎ、浄宗寺の境内(けいだい)に曼珠沙華(まんじゅしゃげ)が咲く季節を迎えた。しかし息子は帰ってこなかった。

「正月には帰ってくるだろう」

と待ったが期待(きたい)は裏切られた。また桜の季節を迎えたが息子は帰らなかった。(どうしたんだろう。病気でも・・・)と不安になった。

そこで浄宗寺の和尚(おしょう)さんに相談した。和尚さんはしばらく考えておられたが

「もしもの一念という仏様の教えがある。信心するものが懸命(けんめい)になれば願いがかなう。息子の帰郷(ききょう)を願い鐘をついてみてはどうだろう」

とおっしゃった。

 

年老いた父母は遠い江戸に届けとばかり、朝と夕に鐘をついた。

すると不思議なことに息子が帰って来た。

「ふるさとが恋しくなって帰ってきました。朝夕に鐘の音が帰ってこう、帰ってこうと耳奥で聞こえるのです」

「そうかそうか」

父母は顔を見合わせた。夜も遅かったが浄宗寺の和尚さんに礼に行った。わけを話すと

「よかった、よかった。仏様に願いが届いたか」

と、一緒に喜んでくださった。

「ありがとうございました。ありがとうございました」

何度も何度も頭を下げ、礼を述べた。

その後、この浄宗寺の鐘は『呼びもどしの鐘』とよばれ、大勢の信者が訪れたという

おしまい

 

出典・問い合わせ先

  • 出典:「広報おおたきNo.419」(「ふるさと民話さんぽ」斉藤弥四郎)
  • 問い合わせ先:大多喜町外部サイトへのリンク

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