ここから本文です。

更新日:令和3(2021)年10月18日

ページ番号:316234

教えてちばの恵み 外部サイトへのリンク

鈴木たね子先生 講演3

さかなで元気

ここに掲載いたします記事は、平成18年7月21日に青葉の森芸術文化ホールにて開催されました、平成18年度「魚食普及を通じた食育の推進事業」、「千葉県学校栄養士会夏季研修会」における、鈴木たね子先生(国際学院埼玉短期大学客員教授)の講演内容の一部を掲載するものであります。

テーマ「健康へのアプローチ~魚を食べて~」(3)

講習内容

1.各種脂肪酸の機能

脂肪酸の種類と機能

種類

含有物

機能

飽和脂肪酸と一価不飽和脂肪酸

肉、牛乳、卵 主にエネルギー
(炭水化物、たんぱく質から体内で合成)

 

リノール酸系(n-6多価不飽和脂肪酸)

バター、肉、植物油(コーン油、ごま油、なたね油など)

コレステロール低下作用
血液凝固のホルモンの原料
過剰摂取は炎症を起こすプロスタグランヂンをつくる

リノレン酸系(n-3多価不飽和脂肪酸)

魚介類(EPA・DHA)
葉菜、根菜、海藻(リノレン酸は体内でEPA・DHAになる)

血液凝固を阻害するホルモンの原料
過剰摂取は臨床上の問題の報告はない

この脂肪酸の種類によりまして、油脂の生理機能が全部違っております。

肉・牛乳・卵に含まれている飽和脂肪酸は、主にエネルギーになります。

これを食べなくても、もし私たちがご飯をいっぱい食べ、また、甘いデザートやクッキーをいっぱい食べますと、エネルギーになる残りの余分なものは、全部飽和脂肪酸として、固体の脂としておなかの周りなどにつきます。これは食べなくても、炭水化物やたんぱく質から合成することができます。

リノール酸は、n-6系多価不飽和脂肪酸を代表するものですが、植物の油、コーン油、ごま油、菜種油などに含まれています。また、オリーブ油にも入っています。

n-3系多価不飽和脂肪酸は、EPAやDHAなど魚介類に入っています。その他のN-3系多価脂肪酸はリノレン酸で、根菜、海藻、菜っ葉などに入っています。

皆さんはお分かりになるように、いくら野菜や海藻の中に油が入っているといっても、油が入っているという感じはないですから、油自体が非常に少ないです。野菜に入っているリノレン酸というのは非常にわずかで、それが体の中に入ってEPA・DHAになるのですが、DHAをとろうと思ってリノレン酸を食べても、非常にわずかしかDHAを摂取できないことになります。

n-6系多価不飽和脂肪酸、いわゆるリノール酸の機能は何かというと、コレステロール低下作用があります。リノール酸がコレステロールを下げるということで、リノール酸が多量に入っている菜種油とか紅花オイルとか、そういうものは非常に珍重されました。

リノール酸は体内で合成できない、必須脂肪酸です。これは、血液を凝固するホルモンの原料になります。

私たちの血液というのは、怪我をしたら、凝固してくれなければ困ります。

もう一方では、非常に細い毛細血管の中を、スムーズに循環してくれないと困ります。

よくテレビでやっている「血液サラサラ」・「血液ドロドロ」という表現で言われていますが、リノール酸の方は、いわゆる「血液ドロドロ」にする作用があります。

また、リノール酸が過剰になりますと、アトピーなど炎症を起こすということもあります。

n-3系多価不飽和脂肪酸のEPA・DHA・リノレン酸は、逆に「血液サラサラ」の作用があり、過剰摂取した場合、怪我をした時に血が止まらないのではないかと心配されますが、今のところはっきりした臨床例はありません。

私たちの食生活を見ますと、n-6系多価不飽和脂肪酸は非常に過剰です。

マヨネーズ、今、お刺身にも若い人たちはマヨネーズをかける人がいますが、サラダにマヨネーズ・ドレッシングをかける、お肉を食べる、油で揚げたものを食べる、子どものスナック菓子など揚げたものやポテトチップスなどあります。表示を見ますと植物油と書いてあり、お母さんたちは植物油と書いてあるから、これは健康にいいと思っています。カッコして「パーム油」と書いてあり、「油やし」の実の油ですけど、これは非常にリノール酸が多く含まれています。

子どもの生活を見ていると、スナックをたくさん食べるので、リノール酸過剰な生活をしています。

そのわりに、n-3系多価不飽和脂肪酸は非常に少ないです。魚を食べませんからEPA・DHAがあまりとれないし、リノレン酸は、野菜を一生懸命食べても、少ししか油が入っていないからN-3系多価不飽和脂肪酸は、あまりとれないというような状況です。

2.魚介にだけ含まれる油脂の成分

魚介類の油

EPA(エイコサペンタエン酸)
DHA(ドコサヘキサエン酸)

牛・豚肉・卵の油脂

EPA・DHAはゼロに近い

植物の油

EPA・DHAはゼロ

魚介にだけ含まれている油脂の成分で、他の油脂にはまったくゼロであるが、EPA、エイコサペンタエン酸。「エイコサ」というのは大変語呂がいい。純粋に化学をやってらっしゃる方は、「イコサペンタエン酸」と言っています。栄養学や食品学の私たちは、「エイコサ」を使っています。

DHAは、ドコサヘキサエン酸。これはなかなか学生さんに講義しても、覚えてくれないですよね。テストで、なんとなく、当たらずとも遠からずというような言葉を書いています。「えい子さん、どこさ行った」と覚えれば、割と簡単に覚えられるのではないの、とよく言うのですけれども。

EPA、DHAこの2つは、牛肉・豚肉・卵の油脂、植物の油にはゼロです。ですから,魚介類を食べないと、どうしても「血液ドロドロ」の方にいく傾向があります。

3.EPA・DHAの生理機能

EPAの生理機能

EPAは血液の凝集を阻害する組織ホルモンの原料
EPAは血栓症の疾患、心筋梗塞・脳梗塞を予防する
血液中のコレステロール低下作用があり、動脈硬化を予防する

DHAの生理機能

DHAは脳の活性化機能がある
学習能力、判断力の向上(実験動物)
認知症やアルツハイマー病の症状改善
敵意性の減少・情緒の安定
血中コレステロールの減少

EPAは、血液の凝固を阻害する組織ホルモンの原料、従って、EPAをとりますと、血栓性の病気を予防する働きがあります。

ご自分の知り合いやご家族に、脳梗塞・心筋梗塞・くも膜下出血という病気の方を聞いたことがある、あるいは脳梗塞をやったという例をよく聞くと思いますが、EPAをとりますと血液の凝固を阻害しますから、心筋梗塞の原因(心臓の血管の中に血液が固まって入ってしまう)を予防します。

また、脳の毛細血管の中に血液が詰まってしまって脳梗塞を起こします。現在EPAは血栓を防ぐ医薬品にも使われています。

この他に、コレステロール低下作用とか動脈硬化を予防することが言われています。

EPAよりも、さらに後で有名になったのが、このドコサヘキサエン酸なのですが、これはイギリスのマイクロ・クロフォード氏という動物の脳を研究している先生がいらっしゃり、40種類くらいの動物の脳を調べて,脳の脂肪の中には、EPAは無いのですがDHAが多いことを発見しました。DHAは一体どういう役目をしているかというと、私たちが昔は脅かされていましたね。20歳くらいで脳の細胞が一番多くて、その後は毎年何万個だかの脳細胞が死んでいきますよと言われていました。私くらいまで生きていると、細胞がなくなって、脳が空っぽになってしまうのではということが言われて大変怖かったのですが、それはそんなことはなかったのです。

脳細胞が突起を伸ばして、シナプスというその突起どうしが絡まっていれば、脳細胞が少なくても、突起さえ出していれば脳は大丈夫だということで、その突起を出すためにDHAが必要なのだということを、マイクロ・クロフォード氏が発表して、一躍DHAが有名になりました。

今はおさかなソングというのができまして、「さかな/さかな/さかな/さかなを食べると/頭がよくなる」というノリの良い歌をスーパーで流しています。最近はあんまり聞こえてきませんけれども。

学習能力・判断力の向上、それから認知症・アルツハイマーの予防にDHAが有効です。高齢者になって認知症のほとんどが動脈硬化プラス、アルツハイマーなのですね。そういう人たちのアルツハイマー病の症状をDHAが改善することができます。

この他にですね、学習能力が問題なのですが、PTAのお母さんたちが自分の子どもが頭が良くなるように、一生懸命DHAのサプリメントを飲ませたりしていますが、実は学習能力を向上させると言うのは、ネズミで実験をやると、ネズミの学習能力、判断力が向上することに基づいています。人間ではできないのですね。後でお話しするようにIQテストではっきりしたデータとして認められませんでした。でも乳児の脳の発達や視力向上に役立つとされていて、粉ミルクにDHAが配合されています。

その他に、最近非常に有名になってきたのが、情緒の安定にDHAが役立つことです。

富山医科薬科大学の浜崎先生が、大学生を2つのグループに分けまして、1つのグループには、リノール酸を入れた食事を食べさせる、もう1つのグループには、DHAを入れた食事を食べさせる。3ヶ月ぐらいです。そして、最初と最後に敵意があるかないかというテストがあるのですが、IQテストも、もちろん実施したのですが、IQテストで頭がよくなるということは、はっきりしたデータとしては認められませんでした。敵意があるかないかというテストでは、50問くらいの設問を出して書かせるのですが、DHAの食事をした方のグループは、敵意性がなくなっていて、非常に穏やかな性格になっていました。DHAではなくて、リノール酸の方は変わりません。浜崎先生が、DHAは敵意性を減らして、情緒を安定させる機能があるということを発表していらっしゃいます。

浜崎先生は非常に冗談の好きな方で、魚をまったく食べない、そういう方のそばに近寄るなと、大変凶暴ですよとか、また結婚する時には、あなたは魚を食べますかと聞いて、全く食べないという人とは結婚するなと、なぜかというとドメスティックバイオレンスになるということです。実際に、今の若者は大変切れやすいというのは、どうも魚を食べなくなったということも一つの原因ではなかろうかと思います。今後、大いに研究を進め,子どもたちにDHAを飲ませた者と飲ませない者の比較をやってみようと計画しておられます。そろそろデータが出ている頃かと思います。

  • 「教えてちばの恵み」facebookページ

お問い合わせ

所属課室:農林水産部水産課流通加工班

電話番号:043-223-3045

ファックス番号:043-221-3425

より良いウェブサイトにするためにみなさまのご意見をお聞かせください

このページの情報は役に立ちましたか?

このページの情報は見つけやすかったですか?