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更新日:令和3(2021)年10月18日
ページ番号:316233
ここに掲載いたします記事は、平成18年7月21日に青葉の森芸術文化ホールにて開催されました、平成18年度「魚食普及を通じた食育の推進事業」、「千葉県学校栄養士会夏季研修会」における、鈴木たね子先生(国際学院埼玉短期大学客員教授)の講演内容の一部を掲載するものであります。
講習内容
日本人とアメリカ人との糖尿病頻度比較
日系二世(45歳以上)
アメリカ人(65-74歳)
アメリカ人(55-64歳)
アメリカ人(45-54歳)
日本人(40歳以上)
%目安
Fujimotoらによる
アメリカ的な食生活はどういうものかというと、魚はあまり食べないで、肉をたくさん食べて、主食というのは無くご飯はあまり食べない。
ご飯をあまり食べませんから脂っこいものをたくさん食べられます。
そして食後には、大きなショートケーキを食べるなど、甘いデザートを食べるというようなのがアメリカ流の食生活です。
今はアメリカでも学歴の高い人は少し変わってきましたけれども、そういうのが標準的な食生活です。
不思議なことに、アメリカに渡った日系二世がアメリカ流の食事をすると、図にみられるように糖尿病になってしまいます。
アメリカ人はあまり糖尿病にはならないが、日系二世の45才以上の人が糖尿病になる確率が高いです。日本人のDNAの中に、糖尿病になりやすいファクターがあるのではないかとも言われています。
糖尿病と糖尿病予備軍を合わせますと、日本には1,700万人いるというふうに新聞などでも言われています。
日本食が健康に良い証明
ストレス応答遺伝子の発現 |
C>B>A |
---|---|
脂質代謝 |
A>B>C |
肝臓の脂質過酸化 |
C>B>A |
実験動物 ラットを使用 手法DNAマイクロアレイ 試料A 伝統的な日本食の凍結乾燥粉末 試料B 現代日本食の凍結乾燥粉末 試料C 洋食の凍結乾燥粉末 東北大学農学研究科 宮澤陽夫 |
日本食が健康に良いということが言われていますが、実はこれを証明する方法を探してみました。それは東北大学農学部の宮沢先生がなさっている研究で、手法はDNAを調べるもので、まだ人間ではできないのでラットを使って実施しています。
飼料Aというのは非常に伝統的な昔ながらの日本の料理を全部凍結乾燥したもの。
飼料Bというのは、現代日本食を凍結乾燥させたもので、現代日本食というのは、カレーライスにサラダというような組み合わせ、また牛丼にみそ汁の組み合わせ。
Cは洋食で従来のアメリカ流・ヨーロッパ流の、肉を主体とした食事を凍結乾燥させて、それぞれラットに食べさせます。
そうしますと、ストレス応答遺伝子、ストレスになりやすいという遺伝子が出るのが、やはり洋食が一番で、真ん中がBの現代日本食で、伝統的な日本型食事が一番ストレス性はありません。
それから、脂質代謝、これがうまくいっているのが日本型で、洋食はあまりうまくいっていません。
肝臓の脂肪の過酸化というのをみると,肝臓脂肪が過酸化するのがCの洋食で、次がBの現代日本食、一番少ないのがAの伝統的な日本型食事です。
この他のファクターのものも、これから調査して発表なさるということです。。
このように、日本型の食生活が大変健康に良さそうだということが、ラットでは証明されています。
肉と魚肉の比較
区分 |
牛・豚・鶏肉 |
魚肉 |
---|---|---|
たんぱく質含有量平均 |
20% |
20% |
たんぱく質アミノ酸価 |
100 |
100 |
脂肪含有量 |
5%から12% |
3%から17% |
炭水化物含有量 |
0に近い |
0に近い |
脂肪含有量が同じでもその生理機能が大きく違う
これは皆さんに、釈迦に説法のような話をするようなことになるのですが、肉を食べるのと魚肉を食べるのとの成分の違いは、どこにあるのでしょうか。
肉は、牛肉・豚肉・鶏肉で、魚肉というと、日本人が食べている魚種というのは320種類くらいと言われています。
これを全部調べて平均することはできないので、わりとよく食べられている魚を平均して調べたところ、たんぱく質の含有量は、肉も魚肉も100g中20%くらいで、肉を食べようと魚を食べようとも、あまり変わりません。
たんぱく質の必須アミノ酸のバランスを測っても、肉も100、魚も100と変わりません。
脂肪の含有量はどうでしょうか、肉もばら肉には脂肪が多いし、ロースにも多いけれども、ヒレ肉にはあまりありません。
魚の場合も脂の多い魚と少ない魚といろいろありますが、ひっくるめて計算すると、脂肪含有量は肉が5~12%、魚の方も3~17%で、含有量からいうとあまり差がありません。
炭水化物の含有量も、両方ともほとんどゼロに近いです。
では、量的に変わらないからどちらでもいいのではないかといいますが、脂肪の含有量は同じでも、脂肪に含まれている脂肪酸の生理機能が、実は魚肉と肉では非常に違うということが言えます。
種々の食品のたんぱく質含有量
魚肉たんぱく質の機能性
血圧正常化作用
血糖値上昇抑制作用
抗酸化作用
血中コレステロール低下作用
癌細胞増殖抑制作用
魚肉たんぱく質が体内で消化されてできるペプチドの作用と考えられている。
今は、脂肪の話にとびましたけれど、たんぱく質の含有量も約20%です。
最近注目されているのが、魚肉たんぱく質自体に、色々な健康機能があるということが分かってまいりました。
どのような健康機能があるのかというと、肉たんぱく質には無いのですが、魚肉たんぱく質をネズミに食べさせますと、血圧の正常化作用があります。
また、血糖値上昇を抑制する作用があり、抗酸化作用、血中コレステロールを低下する作用があり、がん細胞の増殖を制御する作用も発見されています。
これはいったいなぜなのかというのが、今の研究の最先端で、みんなが手をつけようとしていることです。
それはどうも、魚肉たんぱく質そのものではなくて、たんぱく質を食べた時に消化管で消化されて、最後まで消化されるとアミノ酸になりますけど、アミノ酸の一つ前段階のペプチドではないかと言われています。
たくさんの種類のペプチドのどれかが吸収されて、それが色々な機能性を発揮するのではないかと思われております。また、カツオの内臓等からとったペプチドやイワシからとったペプチドは、何と何のアミノ酸がいくつ結合しているという構造まで明らかになりまして、それが血圧低下作用等と非常に密接な関係を持っていることがわかっております。
肉の脂肪 |
室温で固体、飽和脂肪酸が多い。 |
---|---|
魚肉の油 |
室温で液体、固体でもすぐ溶ける。 |
植物の油 |
室温で液体、不飽和脂肪酸が多い。(リノール酸) |
脂に戻りますが、肉の油・魚肉の脂・植物の油の違いですが、私たちが「油」と言っているのは、室温で液体のもので、室温で固体のものを「脂肪」と呼んでいます。化学的には同じ油脂としてくくられる物質です。
肉の脂肪は室温では固体です。魚肉の脂は室温では液体で、少し固体であってもすぐに崩れて溶けて液体になります。植物の油は、室温で液体になっております。
それは、油脂の中に含まれている脂肪酸の種類が違うからです。
肉の脂肪のように、飽和脂肪酸が多いと固体になり、魚肉の場合は、高度不飽和脂肪酸が非常に多いので液体です。例えば,高度不飽和脂肪酸には、EPAやDHAがあります。
植物の油は、これも高度不飽和脂肪酸が多く液体ですが、リノール酸が非常に多いという特徴があります。
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