ここから本文です。

更新日:令和4(2022)年12月23日

ページ番号:555046

かわいそうの視線が生んだ隔たり(令和4年度心の輪を広げる体験作文入賞作品)

かわいそうの視線が生んだ隔たり ~思い込みの高い壁を壊す必要性~

高校生区分

千葉県身体障害者福祉協会理事長賞

学習院女子高等科1年
荒井 萌香(あらい ほのか)

 

「障害者」と聞いて最初に思い浮かぶのはどのような人だろうか。身体障害のある人、精神障害のある人、知的障害のある人など思い浮かべるのは人それぞれだろう。そのような障害者と呼ばれる人たちは世界ではマイノリティーであり、逆に私のような健常者はマジョリティーである。現代社会では障害者に限らずあらゆるマイノリティーへの風あたりが強くなっているように思う。

「風当たりが強い」と言っても、近年言葉やあからさまな行動でマイノリティーの人を攻撃すると、攻撃した人は社会からこれでもかという猛批判を浴びるため、目に見える形で攻撃する人はごく僅かになっている。ではなぜ私はそれでも「風当たりが強くなっている」というのか。それはこれまでに社会に植え付けられた見当違いな常識がしっかりと根付いてしまっているからである。

それに初めて気が付いたのは小学校三年生の時。私は転校して今までと違う小学校に通うようになって初めて障害のある子に出会った。それまで田舎の小さいコミュニティーの中で過ごしてきた私には、それが初めてだった。他の子と普通に遊び、話し、学ぶ彼女の姿を今でも鮮明に覚えている。大変驚かされたのだ。

彼女に出会うまで私は「障害者には特別扱いをするのが当たり前」という考えだった。ドラマや小説を読んで学んだ私の常識だった。私の中にそんな見当違いな常識ができかけていた中で見たその光景は私を大きく変えた。自分が良くない常識を持っていたとわかり、その時やっと障害者と健常者は全く違う存在なんかじゃないことに気が付いた。

そのため、今回私が書く「心のふれあい体験」はその時出会った一人の友達との思い出のようなものになってしまうが、私が一番彼女と心がふれあったと感じたのは二人でお祭りに出かけたときである。お祭りなので、もちろん人がたくさんいるのだが、私たちの通るところだけなぜか人が避けていき、周りでは少し前までの楽しそうな話し声とは違いひそひそとした私たちに聞こえないくらいでの会話でざわついていた。そのひそひそ声の中から「かわいそう」という声や「離れなさい」と小さな子供たちに言う母親の声などが何度か聞こえた。私はとても気になったが彼女は全く気にしていない様子でお祭りを終えた。

私は帰り道にそれとなく彼女に「今日何か嫌なことなかった?」と聞いてみた。すると彼女は「あれはいつもだから」と笑って言ってその話はすぐに終わった。その言葉は「気にしていない」のではなく「気にしないようにしている」のであるということを表していた。その時私は、彼女が常日頃から特別な目で見られていることの大変さや苦しさが自分のことのように分かったと同時に、その気持ちを共有できたことで彼女との心の距離が縮まり、彼女のことを深く知れたと感じた。

ここで分かった障害のある人の置かれている状況。いくら私が普通に友達だと思っていても、それだけで彼女の苦労がなくなるわけじゃないのだ。直接的に何か言われたわけでもないし、何かされたわけでもないが、普通に過ごしているだけで冷ややかな視線や「かわいそう」という同情の視線を送られる・ひそひそ噂されるなどということはとても苦しいことで、その何気ない多くの人の行為こそが障害のある人が生きにくい世の中を作っているのだ。

何がかわいそうなのか。自分たちと少し違う部分があるからか、自由に出来ることが自分たちより少ないからか。「かわいそう」と言葉にする以上責任を持たなくてはならない。私は「他の人と違うこと」がかわいそうとは決して思わない。人はそもそも全く同じ人なんて存在しないし、その違いは「個性」と表すことができる。社会もその個性によって発展してきたのだ。私たちのいけないところは、いつまでも大昔に植え付けられた障害者への偏見をどんどん広めて社会の常識にまでしてしまったことだろう。障害者=かわいそうという思い込みが積み上げられた高い壁が、未だに障害者と健常者の間に隔たりを作っている。その隔たりがあるうちは心が触れ合うことも不可能だろう。

思い込みや見当違いな常識がなくならないのは、私たちの圧倒的な知識不足が原因だ。他の人がこうしていたからなんとなくというようなことはやめ、自分で考えて、自分で調べて周りに流されず、人として正しいと思うことを行動に移せるようにしていかなければならない。周りに偏見を持つ人が多いと自分だけ違う行動をするのは勇気のいる事かもしれないが、その勇気のなさが障害のある人の日常を生きにくいものにしていることを忘れてはいけない。これから大人だけでなく、子供たちにもどんどん「障害」というものについて学ぶ機会を増やしていくことが壁を壊す近道だろう。思い込みの高い壁を壊した先には、心のふれあいどころでは収まらず、心が完璧に通じ合う未来が待っているのだから。

 

 

お問い合わせ

所属課室:健康福祉部障害者福祉推進課共生社会推進室

電話番号:043-223-2338

ファックス番号:043-221-3977

より良いウェブサイトにするためにみなさまのご意見をお聞かせください

このページの情報は役に立ちましたか?

このページの情報は見つけやすかったですか?