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更新日:令和4(2022)年12月23日

ページ番号:555043

障がいの有無に関わらず暮らしやすい社会へ(令和4年度心の輪を広げる体験作文入賞作品)

障がいの有無に関わらず暮らしやすい社会へ

高校生区分

千葉県知事優秀賞

筑波大学附属聴覚特別支援学校 高等部1年
蓑輪 麟(みのわ りん)

 

これは、母と聴覚障がいのある私が、あるテーマパークに行った時に起きた出来事だ。障がいがあることを事前にスタッフに伝えると、並ばずに時間になったらアトラクション乗り場まで案内してもらう事ができるサービスがある。聴覚障がいのある私がそのサービスを利用しようとスタッフの所へ行こうとした時の話だ。私の目線の先には聴覚障がいのあるカップルが、スタッフと長いこと話している。声を発さないカップルはスタッフと筆談でやり取りをしていた。障がい者のために用意されたであろう説明書を手に持っているのにも関わらず、それを筆談で写して説明しているスタッフを先程から眺めている。スタッフはまた何かを書き始めた。するとなにやらカップルが手話で話し始めた。女性の方が、申し訳ないから他のアトラクションに行こうと言い始めた。男性の方は大丈夫だよと言っている。そのやり取りを繰り返していた。不意に母にどうしたのと聞かれた。状況を説明すると、あの紙を見せればいいのにと同じことを思ったようだ。

もし私がそのカップルの立場だとしたら、女性の方と同じことを言っていたかもしれない。説明だけでどのくらいの時間をかけさせてしまっているのか、後ろのお客さんに迷惑がかかってしまうのではないかと色々想像し、結果として、自分達が乗らない方が全て丸く済むと思うからだ。そのカップルはどうするのだろうと気になっていたが他のスタッフに呼ばれ、私たちの順番がまわってきたようだ。カップルがその後どうなったかはわからない。女性の方が言っていたように乗るのをやめたのか、男性の方に言われるがまま最後まで待ち乗ったのか。

その反面、私たちのスタッフは面白かった。声も大きいし聞き取りやすい。途中で母が手話で私に何か話しかけてきた。見かねたスタッフは簡単な手話だけど……、と言いつつ、とても上手な手話で話してくれた。手話サークルで勉強中だそうだ。始めたばかりと言っていたがとても上手だった。その後もサービス精神旺盛であった。

もしあのカップルの担当が私たちのスタッフだとしたらと考えた。女性の方は申し訳ないという事を思わなかっただろう。想像以上に楽しませてくれるスタッフだったからだ。反対に私達が、カップルの方のスタッフだったとしても、聞こえる母がいたから何も問題はなかっただろう。その後は気になって仕方がなく、常に周りを見ていたように思う。その後、帰るまでそのカップルを見かけることはなかった。

聞こえる人の中でも障がいのある人と触れ合っているかいないかだけでも、大きく対応の仕方は変わるのだなと感じた一日だった。しかしそれはどちらが悪い訳でもないと感じた。普段から接している人ではないと聴覚障がいのある人がどのように対応して欲しいかがわからない。自分から説明しないと自分が望んでいるような対応をしてくれるとは限らないし、私達は知らず知らずのうちに自分と違う人を違う目で見ているのかもしれない。そういう人とどのように接したらいいのか、わからなくなるのはよくあることだ。例えば、昔は手話を学校の中で使用することは少なく、先生の言っている事がわからず理解できなかった人がいるかもしれない。しかし、今は手話も認知され、障がいの有無に関わらず、学校に通い、勉強をし、そして社会で生きていく時代になった。アトラクション説明の紙を見ても理解できたと思うのは、聴覚障がいがあっても学校で勉強できるから言える事だ。昔のイメージが今も強ければ、世間の聴覚障がいに対する見方はまだ変わっていないのかもしれない。近い将来、手話も一つの言語として認められていく社会になると思う。認められれば少しでも聴覚障がいに対する考え方が変わると感じる。日本は先進国の一つだと言われているが、障がいに対する考え方は海外の方が進んでいると思う。例えば、法律で手話に関することを認めている国や、テレビなどでのリアルタイム字幕の整備、補聴器と繋げられるループの設置などだ。日本人口に対し障がい者である割合は、2018年の時点で厚生労働省が公表しているデータによると7.4%だそうだ。今、自分の身近に障がいを持っている人がいなくてもいつか出会う可能性は十分にあるということだ。

私は障がいの有無だけでも世界は真反対になると感じる。もし私に障がいがなかったら、家族内に聴覚障がいがある人は他にいないから、関わることのない世界だったかもしれない。今の友人たちと巡り会えていなかったかもしれない。そう考えると障がいがあって生まれてきたということは、一種の奇跡なのではないでしょうか。

私にとって障がいは自分の一部であり、それが当たり前だと考えている。障がいを苦に思うことなく、自分の中に取り込みこれからも生きていきたいと感じている。

障がいは障がいという捉え方ではなく、その人の一つの個性だと捉えて見てみると、障がいに対する考え方が少しでも変わると思う。障がいと言ってしまうからこそ、壁や自分とは違うと感じてしまうと思う。そのため、障がいという漢字も悪い意味の「害」という漢字を入れずにひらがなで表記されることが多くなった。だからこそ、障がいを障がいとして捉えるのではなく、その人の一つの個性だと捉えてみませんか。それだけでも障がいのある全ての人が、壁を感じる事なく更に暮らしやすい社会になると思う。

いつ日か、障がいの有無に関わらず生きやすい社会でありますように。

 

 

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所属課室:健康福祉部障害者福祉推進課共生社会推進室

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