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更新日:令和3(2021)年12月13日

ページ番号:481018

コミュニケーションの重要性を感じて(令和3年度心の輪を広げる体験作文入賞作品)

コミュニケーションの重要性を感じて

高校生区分

千葉県身体障害者福祉協会理事長賞

筑波大学附属聴覚特別支援学校 高等部2年
越智 菜々美(おち ななみ)

 

私は生まれつき重度の聴覚障害があります。補聴器をつけても、大きな太鼓の音が微かに聞こえる程度で、母音の「あいうえお」の聴き取りも難しいほどでした。幼少期の他の人とのコミュニケーション手段は手話のみで、学校以外の場所に行く時には、手話通訳としていつも母がそばにいてくれました。父と弟は手話や指文字を覚えようとしてくれましたが、私の手話が読み取れず、直接コミュニケーションを取るのが難しく、深い話や細かい話はほとんどしたことがありませんでした。母が病気でしばらく入院した時には、父の言っていることがわからず、家族と通じない以上に不安で寂しいものだと感じました。

十一歳の時から人工内耳を装用するようになりました。人工内耳は音を電気信号に変える機械で、これまで聞こえなかった小さな音まで聞こえるようになりました。今も騒がしい場所や、初めて話す人とは声だけで話をするのは難しいのですが、発音や聴き取りの練習の結果、身近な家族や友人とは発音の特徴に慣れて、音声だけでも話ができるようになりました。医学の力に驚愕するとともに、様々な音を聞くことができ、私の世界は広がっていきました。時々相手の言っていることが聞き取れず、わからない時もありますが、その時は指文字や筆談で対応してもらっています。

人工内耳を装用したことで小さな音まで聞こえるようになったり、私の発音が良くなったりしたため、お互いの伝えたいことが伝わりやすくなり、私は家族とたくさんコミュニケーションを取ることができるようになりました。家族と楽しく会話をするという当たり前のことができるようになったのです。例えば、父は私が勉強などで頑張った時に「すごいね」と様々な場面で声をかけてくれたり、私が宿題をやり忘れて母に叱られた時も、母に対して「今からやればいいんだからそんなに怒らなくていいよ」と私をフォローしてくれたりするようになりました。弟も父と同様、私のことを考えてくれていて、母に「お姉ちゃんは頑張っているから今日はお姉ちゃんの好きなものを作ってあげて」とか、「お姉ちゃんが大好きだからずっと一緒にいたい」と言ってくれるようになりました。家族が私のことを想ってくれていること、助けてくれていること、私が知らないことをたくさん教えてくれる存在であることがわかってきました。そして、家族の大切さや他者とのコミュニケーションの重要性を実感することができました。さらに、様々な人とコミュニケーションをすることで、自分に自信が持てるようになり、周りの人からも「菜々美さん、笑顔が増えて明るくなったね」と言われるようになりました。

私は人工内耳を装用するまでは、手話だけでは友達や家族に通じないことが多くあり、諦めや失望でがっかりしたり、暗い気持ちになったりすることもありました。しかし今では、家族とも笑顔で話せ、互いに助け合うことができるようになりました。また、高校生になり聴覚障害のある子共達が通う放課後デイサービスで勉強を教えるサポートをしたり、寄宿舎で役員をしたりするほど積極的な自分に変わることができました。

この世界には様々な人たちが共に生活し、様々な考え方や価値観があり、多様性を尊重することが大切です。私には聴覚障害がありますが、音声や手話や指文字や筆談など、コミュニケーションを工夫することで障害のない人と障害のある人が、関わっていけると信じています。そして私が、家族や様々な人たちとのコミュニケーションを通して色々な喜びや心の平穏を感じられたように、もっと様々な人にもコミュニケーションの重要性を知ってもらえたら嬉しいと思っています。

 

 

お問い合わせ

所属課室:健康福祉部障害者福祉推進課共生社会推進室

電話番号:043-223-2338

ファックス番号:043-221-3977

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