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更新日:令和3(2021)年11月30日

ページ番号:2633

「信じれば笑顔が生まれる」(平成27年度心の輪を広げる体験作文入賞作品)

「信じれば笑顔が生まれる」

中学生部門

社会福祉法人千葉県身体障害者福祉協会理事長賞

筑波大学附属聴覚特別支援学校中学部3年
渡会 由貴(わたらい ゆき)

私は毎年、夏休みに楽しみにしていることがある。それは、年に二回通院している子ども病院に行くことである。ただ、行くことが楽しみなのではない。病院の帰りに母と二人で、ちょっと高級なお店で、イタリアンや懐石料理を食べることが楽しみなのだ。

今年はどこで何を食べるのか楽しみにしていた私だったが、今回はちょっと違っていた。

「ママの職場の隣に、安くて美味しいパン屋さんがあるの。買ってじいじんち行こ。」

私の母は今、社会福祉法人の事業場で、事務の仕事をしている。それを聞いた私は正直にいうとがっかりした。パンを買ってじいじんちか、声には出さなかったが、態度には出ていたはずだ。それなのに母は何も言わず、病院の近くにある施設の駐車場に入っていった。「ちゃんとご挨拶してよ。」という母に、明らかに不機嫌な私は、返事もせずについていった。

「いらっしゃいませ~!!」

という、元気な声が聞こえてきた。見ると、よく日に焼けたお兄さんや、おそろいのエプロンをつけたおばさんが、何度もお辞儀してくれていた。楽しそうに挨拶しながら入っていく母に遅れまいと小走りで入った店は、家のキッチンくらいしかない小さな小さなパン屋さんだった。レジにもやはり、おそろいのエプロンをつけたおばさんがいて、たくさんのパンをのせたトレーをレジに置くと、一つ一つ大きな声でパンの名前と金額を読み上げ、それをレジに打ち込み、パンを丁寧にビニールに入れてくれた。店を出るとまた元気な声で、

「ありがとうございました~。またお越しくださ~い!」

と、笑顔で挨拶をしてくれた。

車に乗ってしばらくして、パン屋さんで感じた疑問を聞いてみた。すぐに聞かなかったのは、なんだか口にしてはいけない事のような気がしたからだ。様子を見ながらそろそろと質問した私に、母は、彼らが精神障害を患っていること、パン屋さんでパンを焼いたり、作業所でクラフトを造ったりしていること、近所の病院などから依頼されて草刈りなどをしていることを説明してくれた。

私は生まれた時からの難聴で、聾学校に通っている。お母さん方や先生の中にも難聴の方がいらっしゃるので、大人になっても治らない障害だということは理解していた。同じように視覚障害や肢体不自由もそうだと知っていたが、精神障害については、よく分かっていなかった。

聾学校の幼稚部に入学する前、私は家の近くにある療育施設に通っていた。そこには心の発達に問題のある子たちも通っていて、クリスマス会などの大きな行事は一緒にやっていたので、身近に感じていた。しかしその後普段の生活の中で精神障害の方と接することは全くなくなっていたため、なんとなく子どもの病気だと思っていたのだ。

精神障害の中には、人目を浴びることに不安を感じるものもあるそうだ。それでも接客業をして職業訓練をするのには、そこに、社会復帰をしたいという確かな意志があり、信じているからで、また、精神障害の方をサポートする方や、あの小さなパン屋さんに足を運ぶお客さんも、その意志を受け止め、一緒に信じているということが分かった。

周りの人と一緒に信じることで、その場にも、思い描く将来の自分にも笑顔が生まれるということが分かった。

これから、不安という壁にぶつかることもあると思うが、周りの人と支え合い、乗り越えられることを信じ合い、その壁を乗り越えていこうと思う。

お問い合わせ

所属課室:健康福祉部障害者福祉推進課共生社会推進室

電話番号:043-223-2338

ファックス番号:043-221-3977

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