ここから本文です。
ホーム > 教育・文化・スポーツ > 歴史・文化 > 文化・文化財 > 文化財 > 市町村別の国・県指定および国登録文化財 > 安房エリアの市町 > 館山市の国・県指定および国登録文化財 > 蓮華形柄香炉
更新日:令和6(2024)年11月1日
ページ番号:315468
(れんげがたえごうろ)
県指定有形文化財(工芸品)
令和6年3月29日
館山市出野尾859(小網寺)
蓮華形柄香炉は鎌倉時代に盛行した柄香炉の形式で、金属製では高野山龍光院、愛媛県今治市真光寺、東京国立博物館などにあり、木製彩色では唐招提寺の作例が知られる。
本作は総長35.3センチメートル、火炉径9.1センチメートル、総高10.1センチメートルの銅鋳造で、火炉、敷茄子、蓮葉、蓮台、台座、長柄から構成される。火炉内底に饅頭形の鋲を、敷茄子、蓮葉、蓮台、台座へ貫ね台座底に円形の座金を付けかしめ留める。火炉側面を八葉蓮弁形に作り、各弁に三面宝珠文を薄肉に鋳出する。蓮弁内側は円形にして立ち上がり、筋弁と蕊を線刻する。敷茄子は4区に分け、宝珠を薄肉に表す。蓮葉は抑揚があり、葉先に小刻みを入れる。蓮台は腰が低く上面に8個の蓮子を線刻する。台座は八葉複弁、弁先に強くむくりを付ける。柄は蓮茎を象り、一本の共造りの蓮枝がある。柄元を太く作り、裏底の中心に1個、外周に8個の孔を開けて蓮子を表す。柄の三分の一ほどまで、葉脈を薄肉に鋳出する、その先には孔があり、現在は欠損しているが、もう1本蓮枝を挿していたとみられる。柄の先は火炉の内部を貫いて対向する外側でかしめ留めている。柄の先端の曲がり金は柄と一鋳で、縦の帯状となって先端は火炉の底に至り、そこから鋲を火炉へ挿し、火炉底で割鋲により固定する。菊花文を透かした銅鍛造の蓋が付属するが、材質、技法とも柄香炉本体とは異なり、蓋の径も合わないため後補と見られる。なお、審海刻銘のある密教法具と一群をなして小網寺に伝わったものとされる。密教法具も鎌倉時代後期の作で、年代からみても審海に関連する作品である可能性は高い。
柄香炉は密教の法具ではなく、香供養用具として飛鳥時代以来、いずれの宗派でも用いられる。しかし三面宝珠は密教で使用されるもので、本作は密教寺院で使用されたことが考えられる。蓮華形柄香炉の火炉は本作以外では、火炉に筋弁を入れた蓮華としているが、本作は蓮華形を採るが各弁に台座に奉安した三面宝珠を表しており他に類品を見ない。
お問い合わせ
より良いウェブサイトにするためにみなさまのご意見をお聞かせください