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更新日:令和5(2023)年9月7日
ページ番号:7012
平成28年8月30日に開催された農業農村工学会大会において、両総用水が、学会賞(上野賞)を受賞しました。
上野賞は、昭和45年に創設されたもので、農業農村に関する事業の新しい分野の発展に寄与すると認められる業績を上げた会員の属する組織・団体に授与されるものです。受賞は、農林水産省関東農政局農村振興部、千葉県農林水産部、両総土地改良区、の3者が共同で受賞しました。
受賞業績は、「国営両総農業水利事業における用水配分の適正化と予防保全対策」で、将来の受益農家の負担軽減を見据えた施設の予防保全対策を講じた取組が評価されました。
昭和40年に完了した国営両総用水事業は、利根川右岸の佐原地域を排水不良から救い、慢性的な水不足に苦しめられてきた九十九里平野を潤してきた。しかし、両総用水は年々施設の老朽化が進み維持管理に関する経費が増嵩すると共に、農業経営の変化に対応した新しい施設の建設が求められるようになった。このため、国営事業により現況施設に機能維持・回復を図るとともに、用水管理にかかる労力・費用の軽減等、維持管理の合理化を図ることとし、広大かつ平坦な九十九里平野の受益地において、用水配分の適正化、用水到達時間の短縮、送水効率の向上を図るため、幹線用水路をパイプライン化及び2路線化にするとともに、集中的な水管理システムを導入した。
両総土地改良区は、本事業の東部幹線新設等による改変を機に、今まで108通りの賦課基準を見直し、公平な賦課の実現にむけて検討を重ね、全受益の賦課基準の一本化を達成した。
国営の栗山川統合機場及び調整池の建設では、県営経営体育成基盤整備事業「篠本新井地区」と連携し、創設換地により事業用地の確保、掘削土を有効活用したほ場の嵩上げ等を行った。これにより、両事業のコストや建設残土の縮減が図られた。県営事業で地下水制御システム「FOEAS」の積極的な導入等もあり、集落営農が飛躍的に発展し、高品質・高収量の作物栽培が可能となった。なお、国営事業では既設開水路内に管を敷設し、エアモルタルの基礎材、バンドのアンカーによる浮上防止対策を施す「浅埋設工法」等を採用したコスト縮減も図っている。
「篠本新井地区」
九十九里平野は、天然ガスとヨウ素の埋蔵量が豊富であるため、この産出を要因とした地盤沈下が収束しておらず、年平均約1cmの沈下が続いている全国でもまれな地域である。また、東日本大震災で千葉県の地殻は太平洋側へ50cm程度移動したほか、東部幹線が埋設された九十九里平野は主に砂質土壌であり、「液状化しやすい地域」となってい。(H24千葉県公開資料)。以上のことから、施工済みの東部幹線に地盤沈下と地震の影響が及んでいないか確認するため、管内調査(φ800mm以上の区間L=25kmのおける継目間隔とたわみ率)を実施した。
調査の結果、変位はみられるものの現状においては必要な機能は確保されていることがわかった。ただ、今後の変位の進行に対する追従性を高める観点から、図で示す設置基準に照らして、計58カ所(全継目の約1.3%)に内面バンドによる予防保全策を講じた。
本稿は、平成28年度農業農村工学会大会講演会概要集を抜粋編集したものである。
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