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患者さん向け情報

脳卒中予防

脳卒中の発症予防

最近脳ドックや外来におけるスクリーニング検査(MRI/MRA、頸動脈超音波検査など)で無症候性病変が少なからず検出されています。無症候性病変は経過観察または内科的治療(高血圧、糖尿病、高脂血症の治療、抗血小板薬・抗凝固薬の予防的投与)が基本。

1.無症候性頸部頸動脈狭窄症

無症候性頸動脈狭窄は脳ドックや循環器疾患とくに狭心症・心筋梗塞の全身検索中に多く発見されます。欧米のデータ(米国:ACAS、欧州:ACST)では,60~70%狭窄例は内科的治療単独よりも内科的治療+外科的治療の方が脳卒中発症を予防する率が高いと報告されています。日本では厚生労働省班研究「頸動脈狭窄性病変の治療の現状分析及び診療ガイドライン作成:JapanCarotidAtherosclerosisStudy(JCAS)」が行われ、推奨事項として狭窄率80%以上、熟練した施設・術者、合併症率・死亡率3%以下が報告されています。

外科的治療には,頸動脈血栓内膜剥離術(CEA)と頸動脈ステント留置術(CAS)があります。外科的治療全体における術後合併症発生率は2%、術後死亡率は0%であります。

2.無症候性未破裂脳動脈瘤

未破裂脳動脈瘤はクモ膜下出血の原因として重要ですが、その出血率に関しては未だ議論の余地があります。年間出血率は、欧米のデータでは1%以下と低く報告されていますが、日本のデータでは1~3%と相対的に高く報告されていました。出血率には地域差,人種差があることが推定されており、また脳動脈瘤は遺伝性があるといわれております。最近厚生労働省班研究「日本未破裂脳動脈瘤悉皆調査:UnrupturedCerebralAneurysmStudy(UCAS)Japan」が行われ、2006年の分析では年間出血率0.9%、ただし大きさが5mm以上では1.5%と報告されています(中間報告)。当科のデータでは年間出血率は2.6%であります。

外科的治療には、開頭術・動脈瘤頸部クリッピング術(ラッピング術)と血管内治療・動脈瘤内コイル塞栓術の2つがありますが、それぞれ長所・短所があるのが現状であります。当センターでは動脈瘤の部位,大きさ,形状などを考慮して、脳神経外科専門医が最適な治療法を提供しております。外科的治療の危険性は、欧米のデータでは血管内治療の方が少ないとの報告もありますが、日本ではほぼ同等と考えられています。術後合併症発生率は4~17%(UCASでは3%)、術後死亡率は0~4%と報告されています。当科での診療実績を表2に呈示します。当科のデータでは術後永続的合併症の発生率は2.6%、術後死亡率は0.9%であります。

※無症候性頸動脈病変,無症候性未破裂脳動脈瘤は、いずれも治療するか否か大変迷うところですが、担当医師から十分な説明を受け理解した上で、治療方針を相談して決定することが重要と思われます(インフォームド・コンセント)。もし決められない場合は,他の施設の担当医師に相談することも必要かもしれません(セカンドオピニオン)。