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更新日:令和5(2023)年12月8日
ページ番号:625350
小学生区分
千葉県知事最優秀賞
習志野市立谷津南小学校5年
上林 ゆず葉(かみばやし ゆずは)
「あっ危ないっ」
とっさに声をかけた。しゃがんでいた男の子にボールが当たりそうになったからだ。でもその子は、びくともしなかった。
私は、テレビドラマをよく見る。そして影響される。手術をしているシーンを見るとパソコンなどで医療用語などを調べることもあった。
そんな私は、耳が聞こえない人と接していくというドラマを見た。私はこのドラマにとても引き込まれた。まばたきもせず息をのんでみていた。私の脳がこのドラマにとても反応しているのだ。
『音のない世界』どんな感じだろうか。私は想像していた。想像していると、目をつぶっている自分に気がついた。音のない世界を作るのは、とてもむずかしい。目をつぶることで自然と集中しようとするのだが、周りに人がいなくても、小さな物音やせんぷうきの風の音が聞こえてくるのだ。私は、生まれてから当たり前のように様々な音のある世界で生きてきたが、そうでない人がいるのだな、と思った。ドラマの中の人の手話を見て、真似をし、もっと覚えたいと思った。図書館で本を借り、少しづつ覚えた。
そして、今年の夏、祖母の家に行ったときのことだ。近くの公園で、ボールで遊んでいるとき、男の子にそのボールが当たりそうになったのだ。
「あっあぶない」
と言って私はかけ寄った。ボールは当たらなかったが、びっくりしたかと思い
「大丈夫?」
と声をかけた。その子は、びくりともしなかったが、おどろいた顔で私を見た。私は少し動揺していると、近くにいたその子のお母さんが、
「ごめんね、この子、耳がきこえなくて、ありがとうね、大丈夫だよ。」
と言ってくれた。私は、
『大丈夫?』
と、とっさに、その子に手話をしていた。その子は、またおどろいた顔で、でも少し嬉しそうに
『大丈夫。』
と返してくれた。私は、急にドキドキして、『わたしのなまえは、ゆずは』
と自己紹介をした。その子も手話で自己紹介をしてくれた。その子のお母さんは
「手話できるんだね、ありがとう。」
と言ってくれ、私はその男の子に
『またね』
と手話で言うと
『またね』
と満面の笑みで返してくれた。その笑顔がとてもかわいかったのと、私の手話が通じたことの嬉しさで、むねがいっぱいになった。
私はもっと手話を勉強しておけば良かったと思った。本当は、もっと話がしたかった。でも、心と心が少しつながったような気がした。
『音のない世界』は、私にとっては違う世界で特別なことだと思っていた。でも、思いやりをもって、寄りそう気持ちがお互いにあれば、心と心はつながることができる、と知った。私は、この日のことをきっと忘れないだろう。
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