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更新日:令和5(2023)年4月1日

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大豆「里のほほえみ」は難裂莢性で青立ちが少ない早生品種です!

1.はじめに

千葉県における令和2年度の大豆作付面積は822ヘクタールで、そのうち74パーセントが水田における作付です。大豆は、麦と並び転作作物として本県水田農業に重要な品目であり、千葉県では、「千葉県主要農作物等種子条例」に基づき、大豆優良種子の安定供給を図っています。また、本県の気候や土壌条件及び需要動向などを考慮し、県内で普及すべき優良品種を奨励品種として位置づけており、令和4年4月現在、「フクユタカ」、「サチユタカ」、「里のほほえみ」、「タチナガハ」の4品種が採用されています。

今回は、種子の確保が困難であった「タチナガハ」の代替品種として、優れた機械化適性を有することから、令和3年3月に奨励品種に採用された「里のほほえみ」について紹介します。「里のほほえみ」は「タチナガハ」と比べて栽培しやすく、県内採種も含めて安定的な種子の確保が見込まれています(写真1)。

2.「里のほほえみ」について

里のほほえみ」は、東北農業研究センター(岩手県)において、ダイズモザイクウイルス抵抗性で大粒良質を目標に平成21年に育成が完了し、同年に山形県で認定品種(注)に採用されました。本品種は東北南部向けに育成された品種ですが、粗蛋白質含有率が高く、豆腐の加工適性は高く評価され、令和3年2月現在、北関東各県を含む9県で奨励品種等に採用されています。

(注)特定用途又での栽培要件にあった品種であり、需要は限られているが重要な位置づけを持つもの。

千葉県では、「タチナガハ」同様に早生に分類され、 中生の「サチユタカ」及び晩生の「フクユタカ」と組み合わせることで、収穫作業の分散が可能となることから、大豆作付面積の拡大に貢献できるものと思われます。

令和2年度現地試験における「里のほほえみ」の草姿(JPG:143.1KB)
「里のほほえみ」

令和2年度現地試験における「タチナガハ」の草姿(JPG:159.7KB)
「タチナガハ」

写真1.令和2年度現地試験の草姿

3.「里のほほえみ」の特性

育成地及び野田市の水田転換畑における調査結果を踏まえて、千葉県における「里のほほえみ」の特性について、「タチナガハ」と比較して整理しました。

(1)形態的特性

葉が鋭先卵形、花が白色であるのが特徴的で、「タチナガハ」と比べて、主茎長はやや長く、最下着莢節位高は同等からやや高いです。また、分枝数及び主茎節数はいずれも同等です。子実は大粒で、へそは黄色です。

(2)生態的特性

「タチナガハ」と比べて、開花期は2日、成熟期は5日遅くなります。収穫時期の作業について、「タチナガハ」と比べて、やや倒伏しやすいですが、裂莢しにくいため、コンバイン収穫による減収は少なくなります。

(3)青立ち性

青立ちとは、収穫期に莢が成熟しているものの、茎葉部が青々として水分量が多い状態のことを示します。この状態の株をコンバインで収穫することで、茎の汁が豆に付着し、汚粒の原因となります。青立ちの発生は施肥や播種期等の栽培条件及び土壌、温度、天候等の環境条件により左右され、とくに早生の「タチナガハ」は青立ちしやすい品種です。「里のほほえみ」は「タチナガハ」と比べて基部が太いですが、青立ちしにくく、収穫作業が遅れるリスクは低減されます(写真2)。

肥沃な畑圃場で早播きしたときの青立ちの様子(令和2年11月6日)(JPG:230.8KB)
左が「里のほほえみ」 右が「タチナガハ」
写真2.肥沃な畑圃場で早播きしたときの青立ちの様子(令和2年11月6日)

(4)収量性

「タチナガハ」と比べて、莢数は同等で、10アール当たりの子実重は同等からやや多くなります。また、百粒重は1から2割大きいです。しかし、開花期から子実肥大期に強風や高温に遭遇することで莢数が減少しやすく、子実重が低下することがあります。麦類の後作における「里のほほえみ」の播種時期は7月上中旬から下旬であり、このときの収穫時期は10月下旬から11月中旬になります。

(5)病害虫抵抗性

ダイズモザイクウイルスのAからD病原系統に抵抗性を有しますが、ダイズシストセンチュウ及びラッカセイわい化ウイルス抵抗性は“弱”です。また、紫斑病抵抗性は“強”です(菊地ら、平成23年)。

(6)品質及び子実成分

子実の外観品質は“上の下”であり、「タチナガハ」と比べてやや優れます。粗蛋白質含有率は“高”、粗脂肪含有率は“中”です。また、裂皮粒率は低く、裂皮性は“難”です(菊地ら、平成23年)。

(7)加工適性

豆腐加工適性は、豆乳抽出率、豆腐の破断強度、豆腐の食味が“適”です。味噌加工適性は、蒸煮大豆の重量増加比や硬さは適正範囲内であり、淡色系味噌において“好適”です。実際に、野田市で栽培された「里のほほえみ」を既存の製法で味噌加工したところ、蒸煮大豆は膨らみやすく、形状の崩れは少なく、食味は甘さが強く好評でした。煮豆加工適性は、色調が明るく見栄えが良く、テクスチャーや食味も良好なことから、“適”です(菊地ら、平成23年)。

(8)栽培上の肥培管理等

窒素施用量が多いと、青立ち及び倒伏の発生が多くなる恐れがあることから、水田転換畑における10アール当たりの窒素施用量は1から3キログラムが適正であると考えられます。なお、他の奨励品種と比べて大粒なため、播種作業時は10アール当たりの播種量を1から2割程度増やす必要があります。また、収穫が遅くなることで、しわ粒の増加による外観品質の低下がみられることから、成熟期後は圃場内に長期間置かずに収穫します。

4.最後に

「里のほほえみ」は、県北地域における栽培において、「タチナガハ」と比べて成熟期が遅いものの、青立ちが少なく難裂莢性であることから、コンバインによる収穫作業に適性があります。7月上中旬から下旬に播種できれば、概ね「タチナガハ」と同等以上の収量を確保できることが見込まれます。

 

初掲載:令和5年4月
農林総合研究センター
水稲・畑地園芸研究所
畑地利用研究室
研究員:奥畑 徹之
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所属課室:農林水産部担い手支援課専門普及指導室

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