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更新日:令和5(2023)年9月1日

ページ番号:603655

繋ぎ飼い牛舎におけるICT機器を活用した発情監視の検証

近年、活動量をセンサーで計測し、家畜の行動を監視するICT機器(以下、システム)が開発、市販化されており、フリーバーン牛舎等放し飼い牛舎で利用され、約7割の発情を検知できることから、発情監視の省力化や発情見逃しを減らし、繁殖成績を高めることが可能となっています。しかし、千葉県の飼養形態でも多い、活動が制約される繋ぎ飼い牛舎では、システムが活動量を捉え、発情などを検知できるか不明です。
そこで、繋ぎ飼い牛舎におけるICT機器による発情や異常などの監視を、人による観察(以下、目視観察)と比較しました。

1.システム及び試験の概要

牛の首に取り付けたセンサー(図1)により、牛の動きから活動、休息、反芻の比率が記録され、3つの活動量の増減から、発情兆候、疾病および異常として活動低下、反芻低下通知が発信されます(図2)。なお、システムが通知を発信するためには、装着後7日間の学習期間が必要となります。

首にシステムのセンサーを装着した搾乳牛

図1 首にシステムを装着した搾乳牛

図2システムから送られる発情通知画面

図2 発情通知画面

試験では、チェーンで繋ぐタイストール牛舎で飼養している搾乳牛にシステムを装着し、発情兆候、疾病および異常の検知精度を目視観察と比較しました。なお、発情の真偽は、直腸検査や血液中のプロジェステロン値の測定により判断しました。

2.結果

(1)発情発見

搾乳牛36頭から延べ88回発情を確認しました。このうちシステムの発情発見数は67回、目視観察は40回となり、システムの発情発見数は目視観察に比べ約1.7倍多い結果となりました(表1)。
目視観察に比べ24時間監視が可能であるシステムの発見数は多く、発情監視の労力を省力化できます。しかし、活動に変化がなく陰部の腫れや粘液などから目視観察だけで発見した発情が6回あり、より発情発見効率を高める場合は、システム利用時に目視観察を補う必要があると考えます(図3)。また、システムは活動量の増加により発情を検知するため15回の誤報があり、その多くは、隣接している発情牛の影響によるものでした。
分娩後の発情発見に要した平均日数においては、目視観察に比べシステムが17.6日早く発見しました(表1)。
なお、システムと目視観察により発見した発情に人工授精を実施したところ、受胎率に差はありませんでした。

表1 発情発見数及び分娩後の発情発見に要した平均日数

区分 発情発見数 分娩後の発情発見に要した平均日数
目視観察 40回 90.4±9.3日
システム 67回 72.8±6.5日

図3 発情発見数の内訳

図3 発情発見数の内訳

(2)疾病発見

疾病治療件数は31件であり、そのうち11件をシステムで検知しました。
システムの検知数が目視観察に比べ少ない原因については、目視観察の方が繋ぎ飼い牛舎の特徴である個体ごとの採食量の変化などに気づきやすいことや、システムは急激な活動低下がないと疾病や異常を検知しないためと考えられます。

3.費用対効果

本システムを経産牛30頭規模へ導入した場合、導入費用は1,918,180円、1年間のランニングコストは158,400円となります。システムでは分娩後の発情発見に要した平均日数が目視観察に比べ17.6日早く、この差を空胎日数の短縮とした増収効果は1頭当たり21,120円となり、システムによる1年間あたりの増収効果は482,170円と試算されます。このため、システムの導入費用は約5年で回収できる見込みです。

4.まとめ

今回の検証結果から、発情発見において放し飼い牛舎と同程度であることから、本システムは活動が制約される繋ぎ飼い牛舎における繁殖管理に活用でき、生産性の向上及び省力化に寄与できることがわかりました。
発情見逃しの減少や省力化等を考えている方は導入を検討してみてはいかがでしょうか。

初掲載:令和5年8月
畜産総合研究センター
嶺岡乳牛研究所
研究員 齋藤 孝太郎
電話番号:0470-46-3011

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