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更新日:令和6(2024)年2月28日

ページ番号:8460

生物工学研究室 Biotechnology Laboratory

研究室の基本方向 

各種農作物を対象に組織培養、突然変異、DNA鑑定技術などの生物工学的手法を利用して、新品種の育成や品種の権利保護を支援する技術を開発しています。例えば、DNA鑑定技術を用いて、病害虫に強い品種を選び出したり、新品種とこれまでの品種を区別するための品種識別技術の開発に取り組んでいます。

 

病害虫を適切に防除するためには、その種類ごとに最適な防除方法を選択することが必要です。しかし、病原菌や微小な害虫は肉眼では見分けられないほど小さく、その種類を明らかにするには時間がかかります。そこで、遺伝子診断技術等を利用して短時間で病害虫を診断する技術の開発に取り組んでいます。

 

農業生産が環境に与える影響を最小限にするため、熱処理や有用微生物を活性化させるなどの方法で、環境への負荷が少ない病害虫防除法の開発を行っています。

現在の主な取組

DNAマーカー技術を用いた病害抵抗性イネの選抜技術の開発

従来は、病気に強いイネ(病害抵抗性イネ)を選抜するためには、実際に田んぼで育てたイネに病気を発生させて強いものを選ぶしか方法がありませんでした。しかし、この方法では気象の影響等により選抜の精度が低くなることもあり、多くの時間と労力が必要となります。

一方、近年開発が進んでいるDNAマーカー技術を用いれば、遺伝子診断によって苗の段階で病害抵抗性の有無を調査することができ、選抜精度の向上と時間や労力の短縮を実現できます。そこで、現在、病気に強く栽培しやすいイネを効率的に選抜するために、DNAマーカー技術の開発や改良に取り組んでいます。

DNAマーカー技術によるDNA鑑定の結果

[写真]DNAマーカー技術によるDNA鑑定の結果

 DNAマーカー技術により検出されたDNAの長さ(bp)によって病気対する抵抗性の有無を判別します

水稲の選抜ほ場の様子

[写真]水稲の選抜ほ場の様子

   

植物病害の遺伝子診断技術の開発

農業の生産現場では、新たな病気が毎年のように発生し、問題となっています。研究室ではこれらの病原菌を迅速・正確に検出できる遺伝子診断技術の開発を行っています。この技術を使うことにより、病気の症状が現れる前の植物や土壌等から、目には見えない病原菌を検出できるようになるため、早期防除が可能となり、被害の拡大を防ぐことができます。また、病原菌の感染メカニズムも明らかになるため、有効な防除対策を立てることができます。

現在は、県内で問題となっているサンダーソニア乾腐病、トルコギキョウ斑点病等の病原菌についてPCR法やLAMP法による遺伝子診断技術の開発に取り組んでいます。

LAMP法を用いた遺伝子診断結果の様子

[写真]LAMP法を用いた遺伝子診断結果の様子

熱処理後、反応液が変色することで(左側3本のチューブ)、病原菌の遺伝子が検出されたことがわかります。

 

農薬を使わない白紋羽病防除技術の研究開発

白紋羽病は、ナシやビワの根に病原菌が寄生し、樹を枯らしてしまう恐ろしい病気であり、県内の果樹産地では大きな問題となっています。

農薬に頼らない白紋羽病対策技術として、温水を病気になった樹の株元に点滴する温水治療技術が実用化されています。これまでに、温水治療では、温水に加えて土壌の善玉菌も重要な働きをしていることを明らかにし(Takahashi and Nakamura, 2020)、市販の善玉菌資材を施用することにより治療効果が高められる方法を新たに開発しました(Takahashi et.al, 2020)。現在は、土着の善玉菌を活性化させることで、白紋羽病の発生を抑制する手法の開発に取り組んでいます。

現地ナシ園にて白紋羽病温水治療をおこなっているところ

[写真]現地ナシ園にて白紋羽病温水治療をおこなっているところ

同時に4本のナシ樹に対して50℃の温水を点滴しています。

 

 

参考文献

Takahashi, M., Nakamura, H. Toothpick method to evaluate soil antagonism against the white root rot fungus, Rosellinia necatrix. J Gen Plant Pathol 86, 55-59 (2020). 外部サイトへのリンク

Takahashi, M., Tsutaki, Y. & Nakamura, H. Selection of Trichoderma products to enhance the control of loquat white root rot by hot water drip irrigation. J Gen Plant Pathol 86, 419-422 (2020). 外部サイトへのリンク

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お問い合わせ

所属課室:農林水産部農林総合研究センター生物工学研究室

電話番号:043-291-0151

ファックス番号:043-291-5319

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