復興の指針等を踏まえた教育委員会としての取組について
平成24年2月14日
千葉県教育委員会
- 平成23年3月11日に発生した東日本大震災に関して、県が5月10日に策定した「千葉県震災復旧及び復興に係る指針(骨子)」を受け、千葉県教育委員会では5月24日に「震災対応に係る教育委員会としての当面の取組」(以下「当面の取組」という。)を作成公表し、これに基づいて、対応していくこととした。その後、9月9日に県が策定した「千葉県震災復旧及び復興に係る指針原案」及び「東京電力福島第一原子力発電所事故に係る対処方針」、また、11月25日に策定された「東京電力福島第一原子力発電所事故に係る対処方針(改訂版)」(以下「原発事故に係る対処方針(改訂版)という。」)及び「放射性物質により環境汚染された土壌等の除染等の措置に関する千葉県としての対処方針」(以下「除染等対処方針」という。)を十分踏まえ、「当面の取組」に基づき取組を推進し、2月1日現在で、41事業のうち、26事業は既に完了し、6事業については年度内完了が見込まれるほか、残り9事業については、放射線に関する情報提供や大地震発生時における職員、保護者等との連絡体制の見直しと整備など、復興に向けて引き続き実施していくことが必要なものであるなど、「当面の取組」については着実に進捗してきた。
- その後、県では、2月7日に「千葉県震災復旧及び復興に係る指針」(以下「復旧復興指針」という。)が策定され、復旧については、おおむね2~3年後を目途とした具体的事業が提示された。また、復興については、中長期的な施策の方向性が提示され、具体的な施策に関しては、県の各種個別計画で対応することとされた。
- これを受け、「復旧復興指針」、「原発事故に係る対処方針(改訂版)」及び「除染等対処方針」を踏まえ、将来の地域の担い手となる子どもたちを災害から守るため、教育施設の耐震化など施設面での整備を進める。また、防災教育の充実など子どもが自ら身を守れるような環境を作るため、中長期的な対応を見据えた教育委員会としての新たな取組について定めることとした。
1東日本大震災からの復旧復興に向けた取組
【復興】
(1)早期耐震化等の推進
学校の校舎等は児童生徒にとって1日の大半を過ごす学習の場であり、また、社会教育施設や体育施設は不特定多数の県民が日常的に活動の場として利用している。それらの施設は災害時の地域住民の応急避難場所となるなど地域の防災拠点としても重要な役割を担っており、その安全性の確保は極めて重要である。従って、教育施設の耐震化は、最優先に取り組む必要がある。
(1)県立学校の耐震化
- 県立学校等の教育施設は、千葉県耐震改修促進計画により耐震化を推進し、平成27年度までに耐震化を完了させていく。また、屋内運動場などの非構造部材の耐震化も進めていく。(財務施設課)
- 市町村に対しても、これまでも早期耐震化が図れるよう働きかけてきたが、非構造部材の耐震化も含め、今後も積極的な取組を促していく。(財務施設課)
(2)社会教育施設・体育施設の耐震化
- 図書館、美術館、博物館及び総合スポーツセンターの耐震化を、必要性に応じ順次実施する。(生涯学習課・文化財課・体育課)
(3)被災文化財への支援
- 被災文化財支援事業
東日本大震災により被害を受けた文化財について、復旧に必要な経費を助成する。(文化財課)
- 被災史跡等購入助成事業
東日本大震災により危険となった史跡内の民有地の公有化事業へ助成する。(文化財課)
(2)防災教育の一層の充実
震災の教訓を生かし、自然環境や社会環境とのかかわりを視点に据えた防災教育を通して、児童生徒だけでなく、教職員、保護者と地域住民にも、災害の知識と対応の技能、災害発生前・発生時・発生後になすべきこと、自助・共助の必要性、学校と地域の連携の重要性等に係る認識を促し、災害時にも適切な対応ができるようにする必要がある。
(1)独自教材の活用
- 「備えあれば憂いなし」を活用した防災教育の充実(学校安全保健課)
東日本大震災の課題を活かして、学校で使用できる教材や、安全管理運営に活用できるマニュアルを始めとした資料を作成し、その活用を推進する。
- 「ちば・ふるさとの学び」を活用した防災教育の充実(教育政策課)
児童生徒が、「ちば・ふるさとの学び」を活用し、元禄地震、関東大震災、阪神・淡路大震災、東日本大震災など、過去の災害から災害についての知識を学び、津波への対応を含めた「自助・共助」の心を培う防災教育を行う。
- 東日本大震災に学ぶ道徳教育の推進
防災教育の礎となる「命の大切さ」について考える授業を、道徳の時間やロングホームルームを活用して実施する。
(2)研修会や公開事業等の実施
- 大震災の記録「東日本大震災を振り返って」を活用した研修会の実施(学校安全保健課)
県内公立小中学校管理運営研修会や高等学校地区教頭会の研修において本記録を活用し、今後の対応策、自校の防災マニュアル等の見直しの視点等について協議することにより、各学校の防災体制や防災教育の充実を図る。
- 防災授業実践研修会の実施(学校安全保健課)
小・中・高・特別支援学校の管理職や教職員を対象として課題別研修、授業で活用できる指導案づくりや模擬授業研修等を行う。
(3)地域等との連携
- 家庭、地域社会及び市町村関係部局と連携した、災害に強い学校づくり(学校安全保健課)
津波や液状化からの避難対応や引き渡しなどの課題毎に研究校を指定し、いのちの大切さを考える防災教育公開事業を実施するなど、研究成果を各学校に広めることにより、自助・共助の意識の下、的確に行動できる人材を育成する。
〈課題〉津波、液状化、帰宅困難・引き渡し(連絡体制)、避難所対応・備蓄
- 避難訓練の実施(学校安全保健課)
全ての学校で防災訓練を実施するとともに、地域と連携した防災訓練・体験的な防災訓練を取り入れることにより、児童生徒の主体的な避難行動の定着を図る。
(4)魅力ある学校づくり
- 防災の学びの導入(県立学校改革推進課)
「県立学校改革推進プラン(最終案)」及び「第1次実施プログラム(案)」において、県立銚子高等学校に、防災の学びを導入することとしており、防災教育のセンター的機能を果たすとともに、災害時にボランティアリーダーとして活躍できる人材の育成を図る。
- 大学や研究機関等と連携した授業等の展開(県立学校改革推進課・学校安全保健課)
防災や危機管理に関する学部等を設置する大学や研究機関等と、積極的な連携を図り、外部講師による講義や校外学習など、実践的・体験的な授業等を展開する。また、防災危機管理課と連携し、高校生等を対象にした外部講師による講座を実施する。
(3)学校における災害発生時の児童生徒に対する支援の充実
今回のような甚大な被害をもたらす災害時に、自治体、地域、学校が相互に連携して児童生徒を守る体制を作ることが必要であり、全ての学校が作成することとなっている「学校安全計画」や「危機管理マニュアル」について、実践的な視点からの見直し。
また、震災により不安を感じたり、学習や生活に対して意欲をなくしてしまう児童生徒への専門家による継続的な「心のケア」や、障害のある児童生徒に対応するため、障害の特性を踏まえたケアや指導を実践していくための教員の専門性の向上が求められる。
(1)児童生徒の保護
- 「学校安全計画」や「危機管理マニュアル」の見直し等(学校安全保健課)
23年度末までに、モデルとなる防災マニュアルを県教育委員会で作成・周知する。更にこれを踏まえた、各学校での「学校安全計画」や「危機管理マニュアル」の見直し状況を、「学校安全教育調査」及び「防災教育調査」により確認・指導する。
- 確実に職員や保護者等と連絡が取れる体制の見直しと整備(学校安全保健課)
平成23年度中に各学校に対し、「連絡体制の複数化」を要請するとともに、「防災教育調査」により、整備状況を確認・指導する。
- 県立高校及び公立小・中学校における備蓄体制の確立(学校安全保健課)
年2回定期的に実施している防災教育調査により防災備蓄体制の整備状況を確認・指導する。
(2)地域と連携した児童生徒支援
- 地域とともに歩む学校づくり推進事業(生涯学習課)
学校の余裕教室等を活用して「地域ルーム」を設置し、コーディネ-ターを配置して、学校と地域との連携を図り、地域ぐるみで学校教育を支援する体制づくりを推進する。
(3)障害のある児童生徒への対応
- 障害のある児童生徒の安全な避難体制の確立(特別支援教育課)
自力歩行できない重度の障害のある児童生徒や視覚や聴覚の障害のある児童生徒など、障害の状態に応じた避難ができる体制を確立する。
- スクールバス運行中の災害発生への対応(特別支援教育課)
スクールバス運行中に災害が発生した場合に、地域とも連携して児童生徒の安全確保を図り、学校との連絡が取れる体制を構築する。
- 非常用電源の確保と安全で確実な医療的ケアの実施(特別支援教育課)
人工呼吸器やたん吸引器などを使用する重度の障害のある児童生徒のために停電時の非常用電源を確保するとともに、医療的ケアを必要とする児童生徒への確実な支援を行う。
- 障害に配慮した備蓄体制の確立(特別支援教育課)
児童生徒が帰宅困難となった場合に備え、飲料・食料品、常備薬や医療用品、毛布や紙おむつなどを備蓄する。
- 医療機関との連携体制の確立(特別支援教育課)
重度の障害のある児童生徒の健康状況に応じた支援を行うため、医療機関と連携した支援体制を確立する。
- 障害の特性を踏まえたケアや指導の実施(特別支援教育課)
児童生徒一人ひとりの障害の状態や特性に応じた心のケアや教育的支援、指導を実施する。
- 県立高校における障害のある生徒への支援(特別支援教育課)
平成24年度から新たに配置する支援員は、生活全般の介助を必要とする生徒に対して、障害の状態に応じた避難などの支援を実施する。
【復旧】
(1)被災者の生活支援
(1)被災した幼児児童生徒への支援
- 被災した生徒の入学料の免除(財務施設課)
県立高校に入学・転入学する被災地の避難者の入学料を免除する。
- 市町村が実施する就園・就学支援事業への支援(財務施設課)
被災により就学が困難となった幼児児童生徒の学費等に対して助成するため、国が創設した被災児童生徒就学支援等臨時特例交付金を活用し、市町村が実施する就園・就学支援事業に助成する。
(2)被災者等の心のケア
- 中長期的視野に立ったスクールカウンセラースーパーバイザーやスクールソーシャルワーカーの派遣(指導課)
震災発生後、各学校からの要望に応じて、各教育事務所と県立高校2校に配置しているスクールカウンセラースーパーバイザーと各教育事務所に配置しているスクールソーシャルワーカーを中長期的な視野に立って緊急派遣し、児童生徒の心のケアや学校の教育相談体制への支援を行う。
- スクールカウンセラーの近隣未配置校への派遣等(指導課)
今後も中長期的な対応として、スクールカウンセラーによる児童生徒の心のケアを実施し、未配置校については、近隣の配置校を拠点として児童生徒の心のケアにあたる。また、重篤な事例が発生した場合は、スクールカウンセラースーパーバイザーを緊急派遣し、心のケアや教育相談体制への支援を行う。
(2)施設の復旧
(1)県立学校施設の復旧(財務施設課)
- 応急復旧を含め、早期に改修を進めてきたところであり、軽微な被害のあった学校については、概ね改修工事を終了した。また、大きな被害のあった学校(検見川高校、磯辺高校、幕張総合高校、千葉西高校、八千代東高校、行徳高校、浦安高校、小金高校、銚子商業高校、匝瑳高校、我孫子特別支援学校、香取特別支援学校)については、現在、復旧を進めており、年度内の完了予定とする。
(2)社会教育施設の復旧(文化財課)
- 房総のむらについては、被災した土蔵等伝統的建造物の土壁の修復に期間を要しているが、平成24年度末までの完了予定とする。
2原発事故に係る取組
(1)学校の校庭等における線量低減策等の実施
県立学校等の校庭等の放射線量測定を継続的に実施するとともに、今回の原発事故由来の追加被ばく量が年間1ミリシーベルト以下になることを目指し、市町村と連携して、線量低減策を実施する。
また市町村が安全かつ効率的・効果的に除染を行えるよう、情報提供等を行う。
(1)県立学校等の校庭等の放射線量測定を継続的に実施(学校安全保健課)
(2)放射線量低減に向けた除染等の実施(学校安全保健課)
- 毎時0.23マイクロシーベルト以上を対象とし、特別支援学校を優先しながら、特別支援学校などの県立学校及び教
育施設の放射線量低減を進める。なお、24年2月中に、サンプリング調査を行い、順次、除染に着手する。
(優先順位)
・関係9市内に所在する子どもの生活環境に当たる個所を優先する。
・関係9市以外についても、利用状況や汚染状況を勘案しながら対応する。
(3)市町村への情報提供や県立学校への測定機器の貸出(学校安全保健課)
- 国から出される各種通知等の各市町村教委への提供や、簡易型の放射線量測定器を数台確保し、学校独自に局所
等の測定ができるよう、県立学校に測定器の貸出を行う。
(2)学校給食用食材の安全・安心の確保
食品の放射能汚染に関しては、各所で食品中の放射性物質の検査が進んでおり、その結果が公表され、必要に応じ出荷制限等が行われているが、保護者の給食用食材への不安は強いものがある。
このため、給食現場における放射性物質の検査体制が維持できるよう、研修会等での指導や関係情報の提供に努めるとともに、食品用放射能検査装置による検査体制を整える必要がある。
(1)調理場等における納入時の産地の確認(学校安全保健課)
- 各調理場において、納入業者と連携し、食材の産地を確認し、検査や出荷制限情報に基づき、安全性を確認する。
(2)学校栄養職員、栄養教諭、市町村教育委員会職員に対する研修会の実施(学校安全保健課)
(3)給食用食材の放射性物質の検査(学校安全保健課)
- 食品用放射能検査装置を各教育事務所に配置し、市町村からの利用要望にも応え、給食への安全・安心を一層高める。なお、24年4月から各市町村教育委員会対象の説明や、担当者への研修を行い、試行を経て、早期に本格的運用を実施する。併せて、学校給食モニタリング事業の先行実施について検討する。
(3)放射線教育の実施
23年度から、新しい学習指導要領の移行措置に基づき、中学校の理科の授業で放射線の性質や利用について学習することとなった。
文部科学省は、今回の福島第一原子力発電所の事故を受けて、放射線についての国民の関心が高くなっており、学校教育の場でも放射線を正しく理解する必要があると考え、放射線に関する副読本を作成した。
今後は、この副読本の活用方法を各種研修会等において適切に指導し、児童生徒が放射線に関する基礎的な知識・理解が得られるよう努めていく。
(1)放射線の正しい理解や副読本の活用指導(指導課)
- 指導主事会議等において、放射線の正しい理解や副読本の活用について取り上げ、学校訪問等で適切に指導できるようにする。
(2)放射線の指導に関する研修の実施(指導課)
- 県総合教育センターで行われている理科の観察・実験の研修講座(「理科実験土曜塾」、「サイエンス・クリスマス」等)において、放射線の指導に関する内容を加えた研修を実施する。
※進行管理と教育委員会の点検・評価(教育政策課)
取組の進行管理については、毎年度実施する「教育員会の点検・評価」を活用し、進捗状況を確認、検討しながら取組の推進を図る。
また、評価に当たっては、政策評価におけるPDCAサイクルを基に、実施状況を取りまとめ、教育委員会会議で協議を行い、結果を公表する。
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