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診療科・部門紹介

口唇口蓋裂とは

口唇口蓋裂の裂の形態はいろいろなタイプがあります

口唇裂イラスト
口蓋裂イラスト

口唇口蓋裂には、いろいろなタイプがあります。イラスト上段は、口唇裂を示し、下段は口蓋裂です。


上口唇(うわくちびる)がわれている、状態を口唇裂と呼びます。そして口腔内上部(口蓋、口の天井部分)がわれているのが口蓋裂です。
また、口唇と口蓋の裂が合併する口唇口蓋裂があります。

唇裂には、左、右と両側があります。口蓋裂は、中央部に割れがあります。

上くちびるで、割れ目が赤唇から白唇へ続き、鼻の孔までが裂となる“完全唇裂”、赤唇から白唇の下側のみ割れている“不全唇裂”のように症状はさまざまです。
口蓋裂がなくて唇裂だけなら、当然ですが口蓋裂手術は必要ありません。

このように、赤ちゃんの裂の形態によって、治療内容も異なるのです。

口唇口蓋裂の発生

胎児の顔ができるのは、口唇と鼻が妊娠4~7週、口蓋は妊娠7~12週頃です。
顔の元となる組織が左右に対で発生して、それが中央に進展して癒合することで顔の中央部にある口唇と鼻が形成されます。この癒合がうまくいかずに、中央部に裂として残ってしまうことが、口唇裂、口蓋裂の原因とされています。

この病気は日本人では500~600人に1人発生すると報告されており、稀な病気ではありません。その原因には様々な要因が報告されており、複合的な要素が絡んでいるのです。

口蓋裂の赤ちゃんの哺乳

口蓋裂であるために、口の中を陰圧にして母乳を吸いこむ力が弱いです。なので、うまく哺乳できません。お母さんのおっぱいや、通常の人工乳首ではうまく飲めないのです。

口蓋裂の赤ちゃん用に開発された人工乳首や哺乳ビンがいくつかありますので、それらを使うとよいでしょう。

ピジョン社のP型乳首(普通サイズ、口蓋床を使用するときのスモールサイズ)は、かなり一般的です。こども病院の売店にもおいてあります。ほかにもチュチュベビーから口蓋裂用のメディカルタイプ乳首が発売されております。コンビ社、ほかにハーバーマンなどの輸入製品も利用できます。

なお、ピジョンやチュチュの口蓋裂用乳首には、口に入れるときの上下の向きがあります。間違えるとうまく飲めません。
また、その哺乳瓶・乳首になれるために、ある程度の時間、経験が赤ちゃんにも必要です。


哺乳にかかる時間は、15分から30分以内です。

あまり短時間に飲み終わる場合は、ミルクの量が少ないか、哺乳瓶からミルクが出すぎていることもあります。調整すると適切な出方になるでしょう。

乳首で柔らかな鼻中隔に傷ができることがあります

正常な上あごでは、歯茎と口蓋(口の天井部分)は、硬い食べ物にも耐えられる粘膜でできているのですが、口唇口蓋裂の口内を見ると、図のようになっています。
真ん中の赤みが強い部分は、本来は、鼻の中にある「鼻中隔」で丈夫ではないのです。

口腔内

普通に哺乳瓶を口の真ん中から真っすぐに入れたら、どうでしょう。乳首の先が鼻中隔に当たってしまいます。哺乳するときに赤ちゃんはベロで乳首を押し上げます。鼻中隔粘膜は弱いので、こすれて傷ついてしまうのです。そこで、左右の歯茎に近い本来の硬口蓋で乳首を支えるように斜めに哺乳瓶を入れるとよいでしょう。なお、ホッツ床(口蓋床)という装具を歯科で作ると、鼻中隔をカバーできますので、保護にもなり、また、哺乳しやすくなります。

げっぷさせることは重要です

口蓋裂はお口の天井=鼻の底が割れている状態です。喉の奥が鼻から外部へとつながっています。

飲み込むときに、空気を一緒に飲みやすいです。そのため、哺乳の途中でも”立てだっこ”にして、背中をとんとんして、げっぷをさせるとよいでしょう。

ミルクが胃に入った量が少ないのに、空気で膨らむとお腹がいっぱいになったと勘違いしたりします。すぐにお腹が減って、泣き出すことでしょう。

哺乳量の目安

生後1週間くらいで、赤ちゃんの胃袋は60mlくらいになります。その後も1回に飲める量は増えて、生後2週間くらいだと100ml、1か月で110~150mlと言われます。

個人差もありますし、あくまで目安です。正常乳児よりも、哺乳量は少な目となるようです。

新生児期に120mlくらいのミルクを作って、全部飲まないんですが、心配するお母さんもおられますが、この哺乳量の目安からすると、胃袋より多い量だったかもしれません。

重症の哺乳障害がある場合には、生まれた病院の産科からこども病院の新生児・未熟児科に連絡が入り、転院してNICUに入院することもあります。

ただし、心臓病などの合併症がなければ、そうした赤ちゃんも数日練習すると、口から飲めるようになることも多いです。

口唇口蓋裂の手術治療

口唇裂の手術

生後3~5か月ごろに口唇裂に対して初回の口唇鼻形成術を行います。一般的に、生後3か月すぎ、体重6キロを手術時期の目安にすることが多いです。

口蓋裂もあり、歯科にてホッツ床を作成した場合には、口蓋裂が縮小(術前矯正)するのを待機するので、生後4-5か月で手術することもあります。

下図は、こども病院形成外科で実施している術式の一例です。

裂の幅、鼻の変形の程度を見て個別に微調整します。白唇部の縫合ラインは、裂幅の小さな不全唇裂では、もっと真っすぐとなります。

赤唇直上に見られる隆起がしっかりした形態の場合には、そこを三角弁内に取り込んだデザインを採用することもあります。

唇裂手術

口蓋裂の手術

口唇裂と口蓋裂を合併する「唇顎口蓋裂」の場合、唇裂の初回手術時に軟口蓋を縫い寄せる軟口蓋癒着術を実施していることが多いです。

ファーロー法と2弁法を組み合わせた術式を施行しています。ファーロー法とは、口蓋の後方でジグザグになるように、筋層と粘膜を縫い合わせる術式です。軟口蓋裂ではファーロー法だけを行います。

2弁法とは、左右の口蓋前方部をいったん持ち上げて、真ん中の裂を閉鎖します。斜めになった口蓋骨から持ち上げた粘膜は、いったん平坦な状態に縫合するので、中央の口蓋裂を閉じても、ほぼ元の位置に戻せます。

口蓋裂手術

なお、治療の詳細はページ下方にリンクを掲載した電脳形成外科サイト(形成外科鈴木部長作成サイトです)を参照してください。

裂形態別の診療スケジュール

  • 唇裂と唇顎裂(口蓋裂がない)
  • 口唇口蓋裂
  • 口蓋裂単独(口唇裂がない)

という3つのタイプそれぞれでの診療スケジュールです。下記の画像をクリックすると、大きめのPDFにリンクします。