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~ 千葉県にオリンピック・パラリンピックがやってくる ~

更新日:令和6(2024)年2月16日

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「東京2020に向けたボランティアシンポジウム」(2018年7月17日開催)レポート

掲載日:2018年7月31日

講演(報告):国際スポーツ大会におけるボランティアの意義~平昌冬季オリンピックボランティアの成果と見えた課題を中心に~

【講師】朴ジョンヨン氏(神田外語大学体育・スポーツセンター専任講師、ボランティアセンター・スポーツ通訳ボランティア推進室長)

朴氏による説明の様子東京2020に向けて、全国にある外国語大学の連合による「全国外大連携プログラム通訳ボランティア育成セミナー」という大学生向けの人材育成の取組みを、毎年、神田外語大学が幹事校として運営し、これまで数々の国際大会などで学生がボランティアとして活躍する機会を作って参りました。

そのようななか、2018年に平昌(ピョンチャン)にて冬季オリンピックが開催されることになり、大会組織委員会に掛け合ったところ、全国からおよそ100名の学生を大会ボランティアとして送り出すことを実現できました。北朝鮮の政治的問題や極寒の環境等、大会組織委員会も運営面で混乱をきたしていたなか、26日間、ボランティアとして本当にやり切れるのかといった懸案はありましが、有志の学生たちは誰一人としてあきらめることはありませんでした。言語は英語のみならず、多言語に対応し、活動地域はピョンチャン、カンヌン、チョンソンという3つの会場で約30名ずつのユニットで活躍しました。

ところで、17世紀初頭、「自由意志にもとづいて、自発的に奉仕する人」とされたのが、イギリスで誕生したボランティアの語源です。「自発性」、というものには一方で、自分の責任で状況を判断し、自分の責任で行動するということが求められます。社会や他人の為に率先して行う人道的な活動、そこには他者との関係があり責任を伴う、ということです。

われわれ1人ひとりの小さな力を合わせると大きな力になり、社会そして様々な人々の役に立てるというところから、ボランティアは「協力者」であるとも定義できます。

ボランティアの教育的な意味を問われたとき、アメリカの哲学者・教育学者のジョン・デューイは、人は「社会に生まれ、死ぬのである」とし、他人を認める心がボランティア活動を通して養われると説いています。教育は英語でeducationといいますが、語源であるeduceというラテン語にはその人の持っている能力を引き出すという意味があります。ボランティア活動を通して、自分とは違う考え方を持っている人たちとたくさんふれ合い、自分の強みが見えてくるのではないでしょうか。

 

朴氏による説明の様子また、ボランティア活動は学習定着という観点から見ても有効と考えられます。アメリカの国立研究所によると、学習定着率は受動的か能動的かによって異なるとし、一方的な授業は受動的なものとして50%の学習定着率である一方、能動的に自分の持っている知識を教え、説明する形式による学習は90%までその率を上昇させるという研究結果が出ています。語学力や人間力を高める意欲が、ボランティア活動を通して培われると言えるのではないでしょうか。今回の平昌オリンピックでのボランティア活動においても、学生のアンケート結果からもわかるように、異文化への関心やグローバルマインドを持って海外で働きたいと思うようになったなど、大きな変化が確認できます。

平昌オリンピックでの成果をあらためて振り返ると、世界に平和のメッセージをアピールしたことが特徴であったと思います。日本から多くの学生がボランティアとして参加し、大会を盛り上げたことについては、「最も低い気温の中で心を温めてくれた」と、IOC会長からもお礼の言葉をいただきました。こうしたボランティアの活動は、大会組織委員会による防寒対策や運営上の各種対応の努力にも支えられました。

平昌オリンピックでの経験を経て得られた視点として、東京2020大会に向けて、ぜひ研修をしっかり行っていただきたいと思います。日本の「おもてなし」は間違いなく日本の良い部分であり、世界にアピールできるよう研修で整えていただきたいと考えます。また、マイナス20度を超えた平昌の極寒とは反対に、東京の場合は気温の上昇がトラブルへの対策が求められると思います。大地震やゲリラ豪雨などの自然災害へのリスクマネジメントも必要です。また、複数日に渡り活動できる人材をどう確保していけるかも気になるところです。前回の東京大会以降、56年ぶりの歴史的大会が千葉にやってきます。ぜひ皆さんのお力で大会を成功に導いていきたいと思います。

※最後に、平昌オリンピックに大会ボランティアとして参加した学生さんたちの様子を収めた動画を紹介。

 

パネルディスカッション「みんなで参加!東京2020に向けたボランティア」

 

パネルディスカッション会場の様子東京2020にボランティアで参加するためのイメージを膨らめ、これから活動に向けた準備をしようとする方々に向けたメッセージをお届けするためのシンポジウムを行いました。スポーツボランティアのマネジメントの第一線で活躍する森村さんをコーディネーターに、千葉県ゆかりのパラアスリートや、平昌オリンピックでボランティア初参加という大学生、長野オリンピックからボランティア活動に取り組むベテラン経験者を交えて、様々な観点での意見やアイデアを参加者の皆さんと共有することができました。

【コーディネーター】

森村ゆき氏(東京マラソンVOLUNTAINERアドバイザー、ちばアクアラインマラソン2012大会・2014大会ボランティアコーディネーター。RunforSmile株式会社代表)

【パネリスト】

  • 村山 浩氏(日本障がい者バドミントン連盟強化指定選手、SMBCグリーンサービス株式会社、千葉飛翔ウェーブ所属)
  • 蛇沼香野氏(平昌冬季オリンピックでのボランティア活動経験者、神田外語大学英米語学科3年)
  • 荒井洋子氏(成田空港案内ボランティア、NPO法人成田空港ボランティア・スカイレッツ 会長)

 

登壇者活動紹介

森村さん活動紹介

森村さん写真

千葉県出身。2012年と2014年の「ちばアクアラインマラソン」にはボランティアコーディネーターとして携わった。

2007年の東京マラソン第1回の立ち上げ時からの財団職員としてボランティアの運営に携わり、自身でも会社を立上げ、スポーツ行事等でのボランティアマネジメントや人材育成、ボランティア組織のマネジメント等に取り組んでいる。チャリティランニング大会も主催し、ボランティアとして運営を行っている。

現在、東京マラソン財団のVOLUNTAINERアドバイザーも務め、スポーツボランティアの活動の促進や文化を広げ、誰でもどこでも支える誇りを持って活躍できる場所づくりに取り組むとともに、東京2020公認プログラムとしての人材育成事業にも携わっている。

森村さん自己紹介の様子

村山選手活動紹介

村山さん写真日本障害者バドミントン連盟強化指定選手として競技生活を送りつつ、千葉県で活動している障害者バドミントンチーム「千葉飛翔ウェーブ」に所属。2020年、東京パラリンピックから正式種目となるパラバドミントン(車いすカテゴリ)に出場することを目指すとともに、競技の普及活動にも取り組んでいる。

元々車いすに乗っていたわけではなく、10年前に病気になったことにより、車いす生活となった。障害を負ってからバドミントンを始め、世界ランクでは現在11位。元々バドミントンをしていたわけではなく、家族と一緒にできるスポーツを始めたいと思っていたところ、妻の知人から「千葉飛翔ウェーブ」の紹介を受けたのが、パラバドミントンを始めたきっかけ。

パラバドミントンを支えるボランティアの様子

 

「千葉飛翔ウェーブ」は「サンアビバドの会」というボランティア団体が一緒になって運営等を行っている。普及活動の一環として、選手の発掘イベント等を行っているが、こうしたボランティア団体の方々に加え、千葉大生や近隣の学生にもサポートをしてもらっている。

 

蛇沼さん活動紹介

蛇沼さん写真神田外語大学外国語学部英米語学科3年生で英語を専攻している。平昌オリンピックにボランティアとして参加した。専攻している英語と第2言語として学んでいる韓国語の両方が学べるいい機会だと思ったのが参加の動機。

カンヌンにあるスピードスケート競技場内でボランティアとして活動した。観客席に座り、選手の練習を見ながら、会場内で研修を受けた。インフォメーションセンターで案内をするほか、会場内での観客の案内や、遺失物センターや荷物預かりセンターの中でも活動した。

カンヌンにはオリンピックパークがあり、その中には東京2020のジャパンハウスがあった。最新技術を使用した体験や、日本の文化を紹介しているものがあり、東京2020大会への期待の高まりを感じた。

 

 

荒井さん活動紹介

荒井さん写真

NPO法人成田空港ボランティア・スカイレッツは1998年、長野冬季オリンピック・パラリンピックの際に集まったボランティア同士が自主的に大会後も活動を継続し、2010年にNPO法人化に至った団体である。

活動内容は、成田空港を拠点とした海外から訪れる方々の出迎えに加え、国際的なスポーツ大会や会議、文化交流イベント等でのアシストも行っており、おもてなしの心をもって安心を提供することを目指している。

スカイレッツとは別に、成田空港が主催する「成田空港案内ボランティア」も行っている。2004年12月から空港OBにより試行的に運用し、2010年7月からプロジェクトとして本格的に活動を開始したボランティア制度である。定点の案内カウンターに加え、ターミナルのあらゆる場面においてエスコートを要するお客様にボランティアスタッフが案内を実施している。

 

<ディスカッション>

活動紹介に続いて、森村コーディネーターから、ボランティアにまつわる問いかけに、パネリストの皆さんからコメントをいただきました。

Q:ボランティアをやっていて、一番やりがいを感じたことはどんな時でしょうか?

A:蛇沼さん
インフォメーションセンターで活動しているときに、大会選手の関係者をどのように案内するかを韓国人スタッフと相談して対応し、お客様が笑顔でお帰りになったのを見て、ボランティアとしてのやりがいを実感できました。

A:荒井さん
年齢を問わず、老若男女一緒に同じ気持ちでボランティアできることに意義を感じます。また、外国の方々とのふれ合いを通して、国を知る、文化を知るという経験も貴重なものであり、自分自身の向上につながると思って、日々、活動に努めています。

 

Q:ボランティアに必要なスキルや求められるものは何でしょうか?

A:荒井さん
先ほど知事もおっしゃっていましたが、笑顔が一番の活動のもと。また、目配り、心配り、気配りができるようになること。また、ボランティアを「させてくれてありがとう」という思い、それを仲間と語り合えるようになることが大事だと思います。

パネルディスカッションで語る蛇沼さんの様子A:蛇沼さん
困っている外国人の方がいたら積極的に自分からアクションを起こしていくことが大事だと考えています。日本人は話しかけたくても話しかけられないというような不安な気持ちを持っている方が多いと思いますが、簡単な単語でもいい、単語がわからなければボディランゲージでもいい。積極的に話しかけてみることがよいと思います。問題が生じたときに自分だけで対処するのではなく、ボランティア同士のチームワークを介して解決することも大切ではないかと感じました。

森村さん
語学ができなくても、何か手伝いたいという気持ちを積極的に伝えることが大事であるのでしょうね。

Q:(村山さんからは)障害をお持ちのアスリートとして、サポートされる側の目線として、サポートする側に気をつけてほしいことはありますか?

A:村山さん
・自分が車いす利用者なので、その目線で事例を紹介させていただきます。車いすに乗っている人を見かけると、とっさに押したくなる方がいらっしゃると思います。以前、道を走っている人が突然自分に近づいてきて押されたことがありますが、正直、その時はありがた迷惑な印象を受けました。突然押されたりすると、体幹機能が維持できない方は後ろにひっくり返ってしまうこともあり、危険です。何かしてあげたいという気持ちはぜひ大事にしてほしいのですが、「何かお手伝いしましょうか?」という軽い声掛けから接していただけると助かると思います。

パネルディスカッションで語る村山さんの様子・選手目線でいうと、大会ボランティアと選手が触れ合う機会があると思います。障害者スポーツは障害の程度によってカテゴリが分かれたり、ルールが変わったりします。サポートする対象の方がどんな障害を持っているのか、そのスポーツはどんなスポーツで、どのようなルールがあるのかなどを理解しておくと、より良いサポートができると思います。

森村さん
この間、駅で視覚障害の方がいらっしゃったときに「何かお手伝いできることはありますか?」と聞いたところ、「じゃあこれをお願いします」とお返しがありました。ここでも、積極的に声をかけてみることは大切だということがわかりますね。

Q2020年に向けてボランティアとして準備できることについて、ご意見やアイデアはありますか?

A:村山さん
ボランティア活動に関してアンテナを高く張っていただきたいと思っています。また、ボランティアをやったことがないという方は、何かアクションを起こす前に、日常生活において少し視点を変えて周囲を見てみることから始めてはいかがでしょうか。たとえば、道を歩いているときに目の前に階段が3段あって、車いすだったら通れないなとか、ここには点字ブロックがないから視覚障害の方は歩こうとしても難しいなとか。こうしたことが、実はボランティア活動に大いに参考になるのではないかと思います。

森村さん
都市ボランティアで活動される方にとっても、障害のある方を案内するときに必要な視点ですね。

A:荒井さん
・まずはご自身の健康管理に取り組んでいただくことは大事ですね。
外国人の方と接する機会を自分でつかむことも大切だと思います。たとえば、成田空港という場所にはいろんな国の方々がいて、いろんな国の言葉が入ってきます。そんな言葉を聞いていると、自然と自分がわくわくしてきます。そんな気持ちを感じられると良いと思います。

A:蛇沼さん
ボランティア活動にはどんなものがあるのかよく知っておくと、2020年、スムーズに自分の中に活動がしみこんでくるのではないかと思います。私は平昌オリンピックでのボランティアが初めてでしたが、慣れない環境で戸惑ったり、他の学生たちはボランティア経験が豊富な人たちがたくさんいたので、そういう人と比べると行動が一歩遅れてしまったり、自分から行動できなかったりということがありました。本日参加された皆様は、これを機会にボランティアに参加していただけると、2020に向けてしっかりと準備できるのではないかと思います。

Q:語学ができなければいけないという印象がありますが、そんなことはないですよね?

A:荒井さん
外国人の方をサポートする際、2人1組で行動しています。1人は語学が得意なボランティア、もう1人は語学が不得意であったり、まったくできないというボランティアです。この、語学ができない方が実はとても重要なポストです。両替やトイレなど、サポートを求める内容をキャッチしてさしあげるのは語学が得意なボランティアですが、情報を元に実際にサポートする行動をとる上で、語学のできない方がペアで力を発揮します。

Q:先ほど太田会長もおっしゃられていましたが、2020年、ここ千葉県は私たちのホームとして、いろいろとできることがあると思います。実際に海外で受けたおもてなしで、参考となるようなこと、印象に残っていることはありますか?

A:村山さん
先日トルコでの国際大会に参加した際、移動中に坂道がありました。目の前にいた女性が何か言葉を発しながら手を差し出してくれて、つかまってと言っているんだろうなと思い、つかませていただいて、坂道を引っ張ってくださいました。その後その方は自分の進む方向へさっと切り替えて立ち去って行かれましたが、言葉は通じなくとも、とても自然に入ってきてすっと手助けをしてくれるというさりげない「おもてなし」が印象的でした。

A:蛇沼さん
活動のない日、ソウルに向かうために乗ったバスの中で、韓国人のおじ様と2人きりで同乗することがありました。異国で知らない方とどう会話したらいいのかわからずにいましたが、その方から単語で話しかけてくださったのです。私が日本からボランティアとして来ているという話をしたところ、「日本はいいところだよね」とおっしゃいました。韓国の方は日本に対して悪い印象を持っているのではないかと不安に感じていましたが、気さくに話しかけてくださったことで緊張も解け、元気づけられました

A:荒井さん
ボストンで観光しているとき、青年に道を尋ねたところ、「あなたのために一番素敵な道を教えてあげましょう。この先に橋があります。その橋を渡るときに素敵な音色が聞こえるはずです」との返しがあり、とても心に響いた思い出があります。千葉には良いところがたくさんありますが、地図上の案内をするだけではなくて、皆さんが知っている特別なエピソードを紹介できるような場所、そうしたところを見つけておくと良いのではないかと思います。

最後に、2020に向けてこれから参加したいという方々に向けたメッセージをお願いします。

参加者へのメッセージを語る登壇者村山さん
ボランティアでどんなことがしたいかという具体的なイメージをつかんで、ぜひ行動に移していっていただければと思います。

蛇沼さん
参加したほうが絶対に楽しいということを、平昌オリンピックでのボランティアを通して実感してきました。東京2020に興味のある方はぜひためらわずにボランティアで参加していただきたいと思います。

荒井さん
大会ボランティアにしても、都市ボランティアにしても、まず応募しないと始まりません。応募して研鑽を積み、いろいろな方と接しながら活動していくこと、また、2020年の後もどんどん活動を続けていくことで、さらに楽しい人生を送れるのではないかと思います。

森村さん
10年近くスポーツボランティアのみなさんと携わらせていただき、日本のボランティアが本気を出したら世界一になれると信じています。いろんな勉強の機会に足を運んだり、いろんなスポーツイベントに行ってみたり、障害のある方のことやいろんな国の文化を知ってみたり、それぞれ視野を広げて行ったその先に、皆さんがもともと持っているホスピタリティの精神や「おもてなし」の力が発揮できるのではと思います。2020年まであと2年。いろんな経験を積み、たくさんの人と出会いながら、人生自体も豊かになっていくと良いと思います。

お問い合わせ

所属課室:環境生活部県民生活課県民活動推進班

電話番号:043-223-4147

ファックス番号:043-221-5858

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