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更新日:平成22(2010)年7月29日
健康福祉部健康福祉政策課
043-223-2348
県民一人ひとりが人間として尊重され,いきいきと暮らせる地域社会の創造に向けて
私たちのまわりには,児童虐待や配偶者への暴力,ストーカー行為等の身体的,精神的な暴力,ハンセン病元患者やHIV感染者,被差別部落出身者への差別,偏見など様々な人権問題が存在し,また,国際化,少子・高齢化,情報化の進展などの社会経済状況の変化を背景として,新たな人権問題も生じております。
そのため,県では,千葉県人権問題懇話会の皆様や広く県民の皆様の御意見を伺いながら,従来の人権施策の手法や体制の枠組みを越えた,人権に関する総合的・計画的な取組を推進するための「千葉県人権施策基本指針」を策定いたしました。
この基本指針では,「県民一人ひとりが人間として尊重され,いきいきと暮らせる地域社会の創造」を基本理念とし,幼児期からの人権意識の醸成等により600万県民の心のバリアフリーの実現を目指すこととしています。
今後,この基本方針に基づき,行政はもちろん,県民,企業,関係団体など社会の構成員全ての参画と協働により,すべての人の人権が尊重される社会を実現できるよう,全庁をあげて取り組んでまいります。
最後に、今回の指針策定に当たりましては,多くの皆様から貴重な御意見や御提言をいただきましたことに,深く感謝申し上げます。
平成16年2月 千葉県知事 堂本 暁子
千葉県人権施策基本指針 全文ダウンロード(PDF:648KB)
(注) 本文の中で(*)を付した言葉は,本文の末尾に用語解説を掲載しています。
20世紀前半の2つの世界大戦の教訓から,人類共通の課題としての世界平和を実現するため,昭和20(1945)年,国際連合が創設されました。
昭和23(1948)年,第3回国連総会で採択された「世界人権宣言」は,その第1条において,「すべての人間は,生まれながらにして自由であり,かつ,尊厳と権利とについて平等である。人間は,理性と良心とを授けられており,互いに同胞の精神をもって行動しなければならない」とうたわれています。
この「世界人権宣言」の精神を実現するために,国連では,これまでに「難民の地位に関する条約」(昭和26(1951)年,以下「難民条約」),「あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約」(昭和40(1965)年,以下「人種差別撤廃条約」),「国際人権規約(*)」(昭和41(1966)年),「女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約」(昭和54(1979)年,以下「女性差別撤廃条約」),「児童の権利に関する条約」(平成元(1989)年)など,様々な人権(*)保障のための26の条約等が採択されています。
こうした条約等の採択による取組だけでなく,「国際婦人年」(昭和50(1975)年),「国際児童年」(昭和54(1979)年),「国際障害者年」(昭和56(1981)年),「家のない人々のための国際居住年」(昭和62(1987)年),「世界の先住民の国際年」(平成5(1993)年),「国際高齢者年」(平成11(1999)年)といったテーマ別の国際年を定めるなど,人権の尊重とあらゆる差別の撤廃に向けて,様々な取組が行われてきました。
しかし,これらの取組にもかかわらず,世界各地において人種や民族,宗教などの違い,あるいは政治的対立や経済的利害に起因する地域紛争が発生し,飢餓や難民問題,テロなどの深刻な人権問題が後を絶たない状態が続いています。
このような国際社会の深刻な現実を前にして,「国連憲章」や「世界人権宣言」に掲げられた人権の尊重と遵守という理念の実現に向けて各国が行動することを目標に,世界人権宣言45周年となる平成5(1993)年に,ウィーンにおいて「世界人権会議」が開催されました。
この会議ではこれまでの人権教育(*)の潮流を再認識し,今後進めるべき課題として,女性や子ども,高齢者,少数民族,難民,先住民,極貧層など社会的弱者に対する人権の強化や人権教育の重視と普及,国連の人権への取組を強化するため,人権問題を総合的に調整する国連人権高等弁務官の創設などが合意されました。
こうした経過を踏まえ,平成6(1994)年の第49回国連総会では,平成7(1995)年から平成16(2004)年までの10年間を「人権教育のための国連10年」と定め,人権尊重の文化が普遍的に確立されることを求めて,世界各国の政府に人権教育に積極的に取り組むための「人権教育のための国連10年行動計画」が示されました。
昭和21(1946)年に制定された「日本国憲法」は,基本的人権の尊重を大きな柱とし,第13条では「すべての国民は,個人として尊重される。生命,自由及び幸福追求に対する国民の権利については,公共の福祉に反しない限り,立法その他の国政の上で,最大の尊重を必要とする」とうたっています。
しかし,憲法施行後においても,社会的身分や門地,人種,信条,性別などによる不当な差別やその他の人権侵害が存在することから,同和対策に関する一連の特別措置法(昭和44(1969)年~平成14(2002)年),「高齢社会対策基本法」(平成7(1995)年),「男女共同参画社会基本法」(平成11(1999)年),「児童虐待の防止等に関する法律」(平成12(2000)年),「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」(平成13(2001)年)をはじめ,各種の人権問題に関する国内法が施行されるなど,多くの取組が進められました。
また,「国際人権規約(*)」をはじめとする関連条約を批准するとともに,平成7(1995)年12月に内閣総理大臣を本部長とする「人権教育のための国連10年推進本部」が設置され,平成9(1997)年7月「『人権教育のための国連10年』国内行動計画」が策定されました。
この国内行動計画は,人権教育は国際社会が協力して進めるべき基本的課題であることを踏まえ,人権の重要性の理解を浸透させ,人権尊重の文化を普遍的に確立することを目指したものです。家庭,学校,地域社会,企業などあらゆる場を通じて人権教育を展開すること,そして,あらゆる人をその対象とすること,特に公務員,教員,警察官などの「特定職業従事者」に対する取組を強化する旨が明記されました。さらに,女性,子ども,高齢者,障害者,同和問題,外国人等の人権にかかわる重要課題に積極的に取り組むこと,そして,地方公共団体や公的団体,民間団体などがそれぞれの分野で,この計画の趣旨を踏まえ,様々な取組を展開していくことを呼びかけています。
さらに,平成8(1996)年12月には「人権擁護施策推進法」が制定され,人権教育・啓発の推進が国の責務であると明記されるとともに,その推進方策について調査・審議するための「人権擁護推進審議会」が設置されました。
人権擁護推進審議会は,平成11(1999)年7月には「人権尊重の理念に関する国民相互の理解を深めるための教育及び啓発に関する施策の総合的な推進に関する基本的事項について」,平成13(2001)年5月には「人権救済制度の在り方について」,さらに同年12月には「人権擁護委員制度の改革について」の答申を行い,国においては,今後これらの答申に基づき,人権教育・啓発に関する施策の総合的な推進と人権侵害による被害を救済するための組織体制の整備に取り組んでいくこととしています。
また,平成12(2000)年12月には,「人権教育及び人権啓発の推進に関する法律」が施行され,人権教育・啓発の推進に関する国や地方公共団体,国民の責務が明らかにされるなど,人権施策への地方公共団体の積極的な関与が求められています。
この法律を受け,国は人権教育・啓発に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るために,平成14(2002)年3月「人権教育・啓発に関する基本計画」を策定しました。
さらに,人権侵害による被害を救済するための組織体制の整備については,国において検討されています。
本県は,この34年間に人口が約2倍に増加しましたが,東京と隣接する地域では過密化の問題が生じている一方,他の地域では顕著な形で過疎化や高齢化問題を抱えています。
この地域差が人権に対する住民の意識格差や行政の対応についても表れています。
また,成田空港や貨物取扱量日本一を誇る千葉港を擁することで,本県は国際化の波を直接受けていますが,日本人による偏見や差別を感じている在住外国人が4割以上いるなど,外国人をめぐる問題に十分対応しきれていないことも指摘されています。
このような状況のなか,県は,同和問題をはじめとして,女性,子ども,高齢者,障害者,外国人など,様々な分野について人権問題を解決するための施策を課題ごとに講じてきました。
しかしながら,国際化,少子高齢化,技術革新など時代環境の急速な進展に伴い,人権問題は多様化・複雑化するとともに,新たな人権問題が生じ,これまでの施策・手法では対応しきれなくなっています。
また,所管がはっきりしない課題や複数の人権問題がからみあっている課題については,縦割り的な枠組みゆえに問題解決に必ずしも有効に機能していない状況も見られます。
このような課題に対応するためには,従来の人権施策の手法や体制の枠組みを越えた,人権問題を解決するための総合的な仕組みをつくっていくことが求められています。
そこで,県が取り組むべき人権施策や施策展開の方向性などを明らかにした人権施策の基本的な指針を策定することとし,平成14(2002)年10月に学識経験者等からなる「千葉県人権問題懇話会」を設置し,平成15(2003)年9月に提言をいただきました。
県では,この提言を受け,県民誰もが地域社会を創るパートナーとして,互いの個性や人格を尊重し合い,真に人権が尊重される地域づくりに取り組むため「千葉県人権施策基本指針」を策定しました。
人権施策の推進に当たっての基本理念を 《県民一人ひとりが人間として尊重され,安心していきいきと暮らせる社会の創造》としました。
人権は,人としての尊厳に基づいて,だれもが生まれながらにして持っている固有の権利であり,社会を構成するすべての人々が,かけがえのない存在としての生存と自由を確保し,だれもが幸福に生きるために,欠かすことのできない権利です。
「人権の世紀」といわれる21世紀を迎えても,今なお,世界各地において地域紛争が発生し,飢餓や難民問題,テロなど深刻な人権問題が後を絶ちません。私たちの周りでも,子どもへの虐待,配偶者への身体的・精神的な暴力による人権侵害事例が認められ,また,被差別部落の住民や,ハンセン病元患者,HIV(*)感染者などに対する偏見や差別意識も完全には解消されているとは言い難く,「人権が尊重される社会」を実現することが大きな課題となっています。
女性,子ども,高齢者や障害者など,すべての人が自分らしい生き方のできる社会を実現するためには,人々がお互いに尊重し合い,他の人の身になって考え,行動することが必要であり,差別意識や偏見をもたない「心のバリアフリー」を達成することが重要です。
そのため次の3つの社会づくりを推進します。
以上の3つをすべて実現することにより基本理念である《県民一人ひとりが人間として尊重され,安心していきいきと暮らせる社会の創造》を目指していきます。
この基本理念を今後の人権施策に反映させるとともに,市町村やNPO(*)等の民間団体,地域住民,企業等と協力・連携を深めていきます。
基本理念の実現に向けた人権施策については,《自尊感情を尊重する》《自己決定を尊重する》《自立精神を尊重する》《共同参画を保障する》,そして《共生社会を目指す》の5つを基本的な視点としながら推進します。
《自尊感情を尊重する》
誰もが,自分を肯定的に受け止め,誇りと自信を持って生きていける地域社会の創造
自尊感情(self-esteem)とは,「自分がかけがえのない大事な存在だ」という気持ちのことです。自分を否定するのではなく,肯定的に認め,自分らしさに自信を持ち,自分を価値あるものとして思え,誇りと自信をもって生きていけるようになることです。
偏見や差別によって抑圧され続けたら,自分に否定的になったり,他人を信じられなくなってしまいます。自尊感情が持てれば,他の人の存在をも尊重することにつながるのです。そのため,自尊感情は,すべての人の人権を尊重する人権意識の基本と考えられています。
《自己決定を尊重する》
誰もが,適切な情報をもとに,自分のことは自分で決定して生きていける地域社会の創造
人は,自分の生き方を,自分で選び取る権利をもっていると言えます。誰も人の生き方を命令することはできないのです。
しかしながら,思いやりの気持ちから,身近な人の生き方を決定してきたこともありました。障害をもつ子どもの場合には,親が保護する気持ちから,その生き方を代わりに決めてしまうというようなことがあるとの指摘もあります。社会的に優位にある親や健常者などが,思いやりなどから意思決定を代行していけば,本人の自己決定能力を失わせていくという問題もあります。
さらに,人が自分の生き方を自分で選び取るためには,自分なりの生き方が選択できる情報が提供されていることが不可欠です。とくに,社会的マイノリティ(*)に置かれている人たちにとって,情報により自らの社会的立場を認識でき,自分自身のアイデンティティ(*)を自覚的に選び取っていくことも可能になるのです。
《自立精神を尊重する》
誰もが,自立しようとする気持ちを尊重しあって生きていける地域社会の創造
自立精神とは,他者に従属することなく,独立性を保って生きていこうとする志向性のことです。そして,自立には,精神的自立,経済的自立,社会的自立など様々な側面があります。すべて自分のことは自分ひとりですることが自立とは言っていません。身近な人たちとの間に助け合い,支え合う関係が確立されていることにより自立が保障される場合もあります。例えば,障害者が日常生活を送るうえで様々な支援を受けたとしても,日々の生活をどう過ごしたいかを自分で選択し,決定し,生きていくとき,自立の生活が展開していると言えます。
《共同参画を保障する》
誰もが,対等な構成員としてあらゆる分野の活動に参画できる地域社会の創造
性別や年齢,障害の有無などによって制約を受けず,その個性と能力を十分に発揮することが保障されている社会が求められています。このためには,様々な生き方の可能性を制約することのない機会の平等が保障されていることが重要です。さらに,政策決定・意思決定の場へ当事者が参加し,意見を表明できることが保障されている必要があります。このため,全ての県民があらゆる施策の企画立案段階から参加できる条件をつくることが求められています。
《共生社会を目指す》
それぞれが持つ文化や価値観,個性の違いを認め合って,共に生きていく地域社会の創造
人権の基本は,人間の存在の多様性を前提としてお互いの異なる考え方や生き方を認め合うことです。すべての人は,人間としてみな同じ人権を有しており,一人ひとりがかけがえのない存在であるということを認識し,それぞれの文化や価値観,個性の違いを認め合い,多様性を尊重しながら共に生きる社会の実現が求められています。
以上の5つの視点は相互に深く関連させながら様々な施策に生かしていくことが重要です。
人権が尊重される社会の実現には,教育と啓発の果たす役割が大変重要です。
幼児期から,生命の尊さや基本的に守らなければならない社会ルールに気付かせ,他人の痛みが理解できる心,違いを認め合いお互いを大切にする心など,豊かな情操や思いやりなどを育むことは,その後の成長に応じた人権教育を実効的なものとする上で,大きな役割を果たすと考えられます。
このため,従来の知識習得型の学習から,人権に関する知識が態度や行動に結び付くような体験的・実践的学習へと,人権教育・啓発の重点を移し,家庭,学校,地域社会,職場などあらゆる場や機会をとらえて,新たなスタイルの人権教育・啓発を体系的・総合的に進めていきます。
さらに,新聞やテレビ等のマスメディアは社会意識の形成に大きな影響力があることから,啓発を進めるためにその有効活用を図るとともに,主体的・積極的に人権問題の報道に取り組んでもらうよう協力を求めていきます。
家庭はすべての教育の出発点であり,家族とのふれあいを通じ,幼児期から豊かな情操や思いやり,生命を大切にする心,善悪の判断,生活習慣やマナーを身につけるなど,人間形成の基礎を育む上で重要な役割を担っています。
しかし,近年,核家族化や少子高齢化が進む中で,家庭における人間的かかわりが希薄になってきています。子どもや高齢者に対する人権侵害の事例は後を絶ちません。子どもへの過干渉や放任・虐待,高齢者への介護放棄などの現状が見られます。さらに,配偶者等によるドメスティック・バイオレンス(*)など様々な問題も生じており,人間形成における家庭の機能が十分に発揮されているとは言い難い状況にあります。
子どもの人権尊重の意識形成には親のかかわりが大きく,親自身が,偏見を持たず,差別をしない,暴力を振るわない,人権を大切にする生き方を子どもに身を持って示すことが大切です。
また,学校,地域社会,NPO(*)等の民間団体が連携し,家庭の教育機能の向上を図るためのサポート体制を確立していく必要があります。
このため,次の施策を推進していきます。
学校教育では,様々な人権問題について,関係法令や学習指導要領等に基づき,発達段階に応じて,授業で学習したり,クラスで話し合ったりするなど,学校教育活動全体を通じて人権尊重意識を高め,人権尊重の精神を育むための教育が行われています。
しかし,いじめなど見られるように,相手の立場に立った考え方や人権感覚が単なる知的理解にとどまり,十分身に付いていないなどの問題があります。
人権教育を単なる知識の伝達にとどめるのではなく,生命の大切さや他人への思いやり,お互いの人格を尊重し個性を認めあう心,正義感や公平さを重んじる心など,豊かな人間性を培うことが必要です。
さらに,一部の教員による体罰やセクシュアル・ハラスメント(*)に見られるように,教職員にも,人権尊重の理念について十分な認識が必ずしもいきわたっていないなどの問題が指摘されています。人権教育の推進に当たっては,人権教育の担い手となる教職員の自覚と資質の向上が重要となります。
このため,次の施策を推進していきます。
地域社会には,家庭とともに,お互いの人権を尊重する意識や他人に対する思いやりの心を育む役割があります。地域で日常出会う人々とのふれあいを通じて豊かな情操や思いやりが形成されるなど,人権教育の原点が家庭,学校とともに地域社会にあることを再認識する必要があります。家庭と学校,地域社会が連携して,子どもをはじめとした地域で暮らす人々への学習の場の提供や機会の充実を図っていくことが大切です。
また,今日,校内暴力,いじめ,不登校など,学校教育の病理的現象が深刻化する中で,これら人権問題に対する学校・家庭・地域社会の緊密な連携の必要性が叫ばれています。地域社会の持つ資源(人材や自然,学習の場など)を学校教育に取り入れ活用するとともに,地域社会に学校の持つ教育機能を提供するなどの必要性も言われております。
そのためには,NPO(*)等の民間団体と連携・協働を図りながら,地域の活動や学校などあらゆる場を活用し,生涯学習の観点から各世代に応じた人権教育・啓発の取組を推進していく必要があります。
その際,単に人権問題を知識として学ぶだけではなく,日常生活において態度や行動に表れるような人権感覚の涵養が求められています。
このため,次の施策を推進していきます。
「人権の世紀」の21世紀を迎え,人権を無視すると企業も組織も国家さえも存続しえないと言われていますが,企業等は,社会生活や文化に大きな影響力を持っており,その社会的責任を自覚し,人権が尊重される職場づくりや人権尊重の視点に根ざした企業活動を進めることが必要です。
そのため,企業等には,積極的に従業員への人権問題の研修に努めるとともに,地域における人権啓発活動,各種イベントなどへの積極的な参加・協力が期待されています。
しかし,多様な人々で構成される企業等では,出身地や国籍等による不公正な採用選考,採用や業務内容における男女差別,賃金や昇進等における男女格差,また,高齢者の継続雇用の問題,障害者の雇用問題,さらにセクシュアル・ハラスメント(*),いじめといった人権問題が重要な課題となっています。
このため,次の施策を推進していきます。
特定職業に従事する者(行政職員,教職員,警察職員,消防職員,医療・保健関係者,福祉関係者等)はすべて人権に深いかかわりを持つことから,一人ひとりが人権について正しい理解と認識を深め,それぞれの職務において人権の視点に立ち,誠実かつ公平に職務を遂行することが求められています。
特に,県民の身体や生命の安全に直接かかわる部署においては,人権に配慮した適正な職務遂行がなされることが強く求められています。
そのためには,職員一人ひとりが担当する事務・事業等について,常に人権尊重の視点から企画・推進していく必要があります。
このため,次の施策を推進していきます。
すべての県民のあらゆる人権問題に対応できるためには,人権にかかわるより実効性のある相談・支援・救済・保護の体制の整備が不可欠です。
様々な人権問題の発生や,県民の人権意識の高まりから,今後,相談窓口の役割はますます重要となってくると予想されます。
これまで,人権問題にかかわる相談・支援などは,国においては,法務局と県内各市町村に配置された人権擁護委員により実施されてきました。
県においても,女性や子どもに関する相談をはじめ,障害者や高齢者,外国人のための相談など,個別的課題ごとに相談機関を設置して対応してきています。また,各市町村や社会福祉団体などの各種団体も相談窓口を設け,それぞれ相談を行っています。
しかしながら,人権にかかわる相談は,その要因が輻輳(ふくそう)して発生する場合が多く,相談者がどこに相談していいのか戸惑うこともあり,これまでの個別的な相談機関や支援機関での対応だけでは,多様化・複雑化する人権問題に,迅速かつ総合的に十分対応できているとはいえません。
そこで,人権擁護に関する様々な支援情報の提供や第一次的に適切なアドバイスを行える住民へのワンストップ・サービスを提供できる総合相談体制の整備を進めていきます。
また,複雑化する人権問題に対処するため,総合相談窓口を核として,民間も含めた各個別的相談機関のネットワーク化を図ります。
さらに,子どもや認知症高齢者,知的障害者など,権利が侵害されていてもそのことを自覚できない,あるいは適切に表現できないなどの困難さを抱えている人々の人権を守るための,人権オンブズパーソン(*)を設置し,相談体制の充実を図ります。
人権侵害を受けた被害者の救済・保護については,法務省の人権擁護機関(法務局及び人権擁護委員)や,最終的な紛争解決手段としての裁判制度のほか,労働問題,公害,児童虐待等の分野においては,裁判制度を補完する特別な制度が設けられています。さらに,様々な分野で行政機関や民間団体等による被害者保護の取組が行われています。
例えば,子どもの権利擁護に関する現行制度としては,国,県,市町村の行政において,福祉,保健,教育,警察等の分野に,法務省子どもの人権専門委員,児童相談所,学校,子どもと親のサポートセンター等の相談機関又は相談員の制度があり,それぞれ専門的な助言を行っています。中でも,児童相談所は,虐待を行っている親から子どもを保護する措置など,子どもの人権を守る業務を行っています。
また,配偶者等からの暴力を受けている女性を支援するために,女性サポートセンターや警察の相談窓口などがあり,相談又は保護を行っています
これらの個々の機関がうまく機能し,それぞれが十分役割を果たしていくためには,現状における問題点を把握し,そのための方策を検討し,実行していくことが大切ですが,人権にかかわる問題は,その要因が輻輳(ふくそう)して発生する場合が多く,これまでの個別的な救済機関や保護機関での対応だけでは,多様化・複雑化する人権問題に,迅速かつ総合的に十分対応できているとはいえません。
このため,従来くみ上げられなかった問題なども含め,今日の幅広い人権擁護に応え,簡易で利用しやすく,柔軟な救済を可能とするための総合的,実効的な機関の設置が求められています。
そこで,すべての県民のあらゆる人権問題に対応できるような権利擁護機関の設置に向けて,擁護すべき人権基準や調査権限等の明確化,さらに具体的な救済のすすめ方や他機関との関係の在り方などについて検討していきます。
人権侵害につながる問題に直面した県民が,主体的な判断に基づいて課題の解決ができるよう,各種の相談機関や公的支援制度など,人権擁護に関する様々な支援情報の提供などの充実に努めます。
また,主体的な判断をするためには,その前提となる情報へのアクセスが保障されていなければなりません。必要な情報が,誰にでもきちんと提供されることが大切です。
子ども,視覚障害や聴覚障害のある人,知的障害のある人,視覚や聴覚の衰えた高齢者,外国人など,様々な人々の権利の行使や具体的な生活支援にかかわる情報提供の充実に十分配慮するとともに情報のバリアフリー化を進めていきます。
複雑化する人権問題の相談・支援・救済・保護に効果的に対処していくためには,相談機関と保護機関の密接な連携,またNPO(*)等の民間団体と公的機関との連携・協働が必要であり,そのために権利擁護機関を核として,NPO(*)等の民間団体も含めた,各個別的相談機関・救済機関のネットワークの構築を図ります。
この指針に示す「基本理念」の実現を目指した人権施策を推進していくに際しては,第2部に述べた人権教育・啓発と人権擁護体制の充実を総合的に推進していくほか,個別課題に応じた施策を推進していくことが必要です。
このことから,女性,子ども,高齢者,障害のある人,被差別部落出身者,外国人,ハンセン病元患者等,HIV(*)感染者等,性同一性障害(*)のある人,同性愛者,ホームレス,中国残留孤児(*),犯罪被害者とその家族,被拘禁者,刑を終えて出所した人などの様々な人権問題について,「基本理念」の方向に基づきながら以下のように施策を推進していきます。
1 現状と課題
人間は,生まれるときに,「性」を選択できません。また,「性」には生物学的な性別だけでなく,「女らしさ/男らしさ」や「男は仕事/女は家事育児」といった社会的・文化的に人々の意識の中に形成される性別(ジェンダー(*))があり,男女の生き方に大きな影響を与えるとともに,男性を中心にした社会システムの中で,「女性」であることで社会的に不当な扱いを受けたり,能力を十分に発揮する機会が与えられないなど,女性の人権が阻害される要因にもなっています。
この現状を打開すべく,国連では,昭和50(1975)年以降,5回にわたり世界女性会議を開催してきました。特に昭和55(1980)年,コペンハーゲンで開催された「国連婦人の10年世界会議」で,日本は「女性差別撤廃条約」に署名し,昭和60(1985)年に批准しました。この条約の前文には,「女性に対する差別は,権利の平等の原則及び人間の尊厳の尊重原則に反するもの」と書かれています。また,平成7(1995)年に北京で開催された「第4回世界女性会議」で採択された「北京宣言」には,「女性の権利は人権である」とうたっています。
これらの世界的な動きを受けて,日本国内でも男女平等を目指し,行動計画の策定や,草の根的な運動が起こりました。そして,「女性差別撤廃条約」や「日本国憲法」の精神を受けて,平成11(1999)年「男女共同参画社会基本法」が公布・施行されました。
この「男女共同参画社会基本法」は,「男女が,互いにその人権を尊重しつつ責任も分かち合い,性別にかかわりなく,その個性と能力を十分に発揮することができる社会の実現」を課題とし,「対等な構成員としてあらゆる分野の活動に参画する機会」が実質的に確保されることを規定しています。そして,少子高齢社会の諸問題を乗り越えていくためにも,男女共同参画社会の実現こそが21世紀の我が国社会を決定する最重要課題であることが明記されています。
県では,国際的な動きや国内の進展を受けて,昭和52(1977)年「千葉県婦人問題行政連絡協議会」を設置,その後,県庁内や各支庁に婦人問題窓口を設置するなどの施策を進めてきました。また,昭和60(1985)年には「千葉県婦人問題懇話会」を設置し,「女性プラン」の策定や数々の事業を実施し,県民への男女平等の意識の浸透を図るための施策を展開してきました。平成8(1996)年「千葉県女性センター」を開設,平成12(2000)年「青少年女性課女性政策室」を「男女共同参画課」へ改組,平成13(2001)年「千葉県男女共同参画計画」を策定しました。
しかし,広い県内の現状を見てみると,農村部,漁村部,都市部と生活環境が異なることにより,女性にかかわる社会通念や慣習は,様々な違いが見られます。その背景には,根強い性別役割分担意識が影響していることも多く,女性としての固定的な生き方を強いられ,自立した生き方を選択することが困難な状況に置かれている女性も少なくありません。
それは,県が平成10(1998)年に実施した「男女共同参画社会の実現に向けての県民意識調査」(以下「意識調査」)からも分かります。「男女の地位の平等感」を尋ねた設問で,「社会全体で男性が優遇されている」と回答した女性が85.6パーセント,男性が72.3パーセントでした。逆に,「社会通念・慣習で男女の地位が平等になっている」と回答した女性はわずか5.9パーセント,男性は10.7パーセントでしかありませんでした。これらの数字から見ても,男女が平等になるには,かなりの努力を要すると言えます。
これらの状況を打開し,男女が共にあらゆる分野に参画する千葉県となるためには,男女共同参画に関する条例を制定することが重要であり,県内でも千葉市,市川市,佐倉市が条例を制定しています。また,県内の市町村に専管組織を設置し,基本計画等を策定することが期待されていますが,平成15(2003)年現在,24市町で男女共同参画に関する基本計画が策定されているに過ぎず,それは県全体の30パーセントでしかありません。
また,意思決定の場における女性の参画の状況は,平成15(2003)年の県議会での女性議員は98名中8名であり,その割合はわずか8.2パーセントに過ぎません。市町村においても議員の数は低い率に止まっています。そして,県の審議会等における女性の登用率は24.1パーセント,約4分の1です。この数字は,様々な分野で,未だ女性の参画が進んでいるとは言い難い現状とも重なります。
教育の場では男女平等が確立されていると言われますが,ジェンダー(*)にかかわる隠れたカリキュラム(*)があって,男女が異なる扱いを受けていたり,性による排除や性別役割分担の再生産が見られるとの指摘があります。しかし,「千葉県男女共同参画計画」で「学校において男女別の名簿を必要以上に使用するなどの男女を分ける慣習や環境の見直しを進めます」との施策の方向が示されたことを踏まえ,男女混合名簿の使用は,平成15(2003)年6月現在において,公立の小学校86.7パーセント,中学校65.3パーセント,高校91.1パーセント(千葉市内の小中学校,県内の女子高等学校を除く)となり,着実に推進されてきています。
一方,労働の場においては,県民意識調査で女性の78.6パーセント,男性の67.8パーセントが「女性が働きにくい状況にある」と回答しています。また,内閣府の賃金構造基本統計調査によると,千葉県における賃金の男女間格差は,男性100に対し,女性が67.9であるなど,依然として男女間の格差が解消されておらず,女性の社会進出が進む中で,女性が能力を発揮できる職場環境づくりや男女の職業生活と家庭生活の両立支援が急務となっています。
さらに,女性が生涯を通じて,自らが健康でいきいきと生活できるよう支援するため,県では,県立病院等における女性の専用外来の設置や,保健所での女性医師等による相談事業などを積極的に進めています。
なお,女性への人権侵害として,ドメスティック・バイオレンス(*),セクシュアル・ハラスメント,ストーカー行為等女性への暴力の問題があります。
特に,ドメスティック・バイオレンス(*)は近年大きな社会問題となり,平成13(2001)年4月には「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」が制定されました。ドメスティック・バイオレンス(*)は,ほとんどが男性から女性に対してなされるものであり,身体的な暴力のみならず,精神的な暴力,性的な暴力,経済的な暴力など,個人の尊厳を脅かし,その個人が本来持っている力を発揮することができない状況に追い込むものです。
さらに,ドメスティック・バイオレンス(*)の深刻な問題として,子どもへの影響があります。子どもも暴力の対象となったり,子ども自身は直接暴力を受けない場合であっても,暴力的な環境の中で育つことが,人格形成に深刻な影響を及ぼす場合があると言われています。
県では,平成13(2001)年7月に警察や裁判所,弁護士会,医師会等の関係機関・団体の長で構成する「家庭等における暴力対策ネットワーク会議」を立ち上げるとともに,「DV関係機関対応マニュアル」を作成し,平成14(2002)年4月には「千葉県女性サポートセンター」を開設しました。
民間においても,平成14(2002)年に,「DVサポートネットちば」や「DV被害者支援活動促進のための基金」が設立され,被害者支援に向けた取組の一層の推進が図られています。
女性への暴力は,女性の経済的自立の困難さや固定的な役割分担意識等の社会構造を背景とした女性への人権侵害であり,その根絶に向け,女性の人権擁護に対する意識を社会に浸透させていくことが必要です。
さらに,千葉県の女性の平均寿命は,平成12(2000)年現在,84.51歳であり,男性より6歳以上長く,全国で32位,合計特殊出生率は,平成14(2002)年に1.24であり,全国平均の1.32より下回っています。高齢女性と高齢男性の年間所得の不均衡や,労働力不足などの少子高齢社会の様々な問題点が,将来,一層深刻化していくことが予想されます。
2 施策の基本的方向
男女がお互いにその人権を尊重しつつ責任も分かち合い,性別にかかわりなく,その個性と能力を十分に発揮することができる男女共同参画社会の実現に取り組みます。
このため,性別役割分担意識の変革を図り,男女平等の意識の浸透を図るための教育・啓発を進めます。そして,雇用や育児・介護等の環境整備を進め,男女が対等な社会の構成員としてあらゆる分野の活動に参画する機会を確保し,女性の自立を支援する施策を推進します。
また,ドメスティック・バイオレンス(*)など女性に対するあらゆる暴力は人権侵害であるとの社会認識を広め,被害女性に対する相談・援助・救済保護に関する施策を充実させていきます。
(1)男女共同参画社会の実現に向けた推進体制の整備
1 現状と課題
21世紀を担う子どもが心身ともに健やかに育つことは,県民すべての願いです。そのためには,家庭や地域,学校,職場などが一体となって,子どもの立場に立った施策を進めていく必要があります。
国連は,昭和34(1959)年の国連総会で子どもが必要な権利や自由を享有することができるよう「児童の権利に関する宣言」を採択しました。
この宣言の20周年に当たる昭和54(1979)年を「国際児童年」としたほか,平成元(1989)年の国連総会で「児童の権利に関する条約」を採択し,子どもは特別な保護を受ける存在であるとともに,自ら権利を行使する主体者として位置付け,子どもの尊厳や生存,保護,発達や自由を保障するため,親をはじめ社会全体で取り組むよう呼びかけています。
我が国では,憲法の精神に従って,昭和26(1951)年に「児童憲章」が制定され,「児童は人として尊ばれ,社会の一員として重んじられ,よい環境の中で育てられる」ことが宣言され,その理念に沿って関係諸施策が進められてきました。さらに,平成6(1994)年に「児童の権利に関する条約」が批准され,この条約が子どもの最善の利益を考慮して子どもの権利を保護し促進することを目的として,子どもの基本的人権を尊重するとともに,我が国の児童福祉の向上にも資するものであるとの考え方から,条約の周知徹底を図るとともに,条約の趣旨を踏まえ,子どもの権利を尊重した施策を一層充実することとされています。
また,平成11(1999)年「児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律」が施行され,平成12(2000)年「児童虐待の防止に関する法律」が施行されました。さらに「児童福祉法」が平成13(2001)年に改正されました。
県においても,「青少年健全育成条例」(昭和39(1964)年制定,平成14(2002)年改正)をはじめとして,多様な保育サービスの充実,地域における子育て支援体制の拡充,児童虐待防止施策の実施,ひとり親家庭への各種の支援など,子どものための様々な施策が実施されてきました。
しかしながら,近年,少子化や核家族化が進み,家庭の教育力の低下や地域社会のつながりの希薄化など,子どもが育まれる家庭や地域環境が大きく変化し,子どもをめぐる問題も複雑・多様化しています。
このような状況において児童虐待,家庭内暴力や学校でのいじめ・体罰,少年非行などの問題行動や不登校,覚醒剤などの薬物乱用の低年齢化,いわゆる「援助交際」や児童ポルノなどの性の商品化など子どもの人権をめぐる問題が深刻化しています。
こういった問題の背景には,家庭・社会環境の変化といった要因のほか,大人が子どもを未熟な存在として支配的な意識をもったり,保護や教育の対象としてのみ見ることによって子どもの主体性や社会性の欠如を招いているというようなことも要因として考えられます。
そのため様々な施策の中で,子どもを保護の対象としてだけでなく,権利の主体として認め,その人権尊重や権利擁護に向けて取り組んでいく必要があります。
様々な問題の中で特に,本県のいじめの発生件数は漸減傾向にあるとはいえ,全国平均の発生率をはるかに上回っています。また,平成14(2002)年度に県内の児童相談所への虐待に関する通報件数は815件にのぼり,児童虐待防止法により,発見者の通告が義務付けられたこと等もあり,最近7年間で10倍以上に増加しています。
このような状況の中で,親からの身体的・心理的・性的虐待やネグレクト(*)を防止する施策やいじめ,スクール・セクシュアル・ハラスメント(*)の防止,不登校やひきこもりの子どもへの支援,学校や施設内で体罰やいじめを受けた子どもが声をあげられるようにするなどの施策を充実することが求められています。
さらに,児童買春,児童ポルノ等の子どもを対象とした商業的搾取や犯罪の防止が求められています。また,児童養護施設等の退所者で,児童福祉法の対象年齢である18歳を過ぎて20歳までの子どもの自立を支援する施策も求められています。
障害のある子については,近隣他県と比較して本県は,保育所,私立幼稚園,学童保育施設への入所割合は低い状況にあります。そこでは,障害のある子が,ほかの子どもと同じように成長していける環境をつくる必要があります。
虐待を原因とする施設入所児童が増加していることなどにより,施設における処遇には従来にも増して高い知識・経験が求められています。
また,県内ではかつて施設職員による入所児童に対する体罰があり,再発防止の措置を講じましたが,今後とも児童への適切な処遇が確保されるための体制整備や職員への研修の充実などが求められています。
一方,少子化傾向は年を追ってますます激しくなり,平成14(2002)年の本県における合計特殊出生率は1.24であって,これも逐年の低下に加えて全国平均を常に下回っています(同年の全国平均1.32)。これに対して,県では「児童環境づくり推進協議会」を設置し,平成12(2000)年に同協議会の出した提言を受けて,平成13(2001)年には「千葉県子どもプラン」を策定し,少子化対策を実施に移してきましたが,少子化傾向は依然として改善されないままです。このため,少子化現象に歯止めをかけ,子どもを生み育てやすい環境をつくるために,生産体制,労務管理体制を根本的に見直す必要があります。また,家族の多様性を尊重し,非婚の母から生まれた子どもなどに対する偏見や差別意識をなくすことも必要です。
さらに,本県は成田空港,千葉港を有しており,首都圏に位置する関係から外国人も多く,そうした外国人の子どもへの対応に保育所側が苦慮するという実態も見られます。急激に変化する環境の中で新しく生ずる事態への取組が急務となっています。
2 施策の基本的方向
子どもが一人の人間として人権が最大限に尊重され,自分の意見を表明することができ,自己実現が図ることができるよう,子どもの人権が保障される社会の実現に取り組みます。
このため,家庭における子育てを通じた人権教育の大切さを啓発するとともに,家庭への支援と学校教育等の充実を図ります。そして,子どもに対する暴力・虐待の防止や子どもの社会的自立に向けて児童福祉機関,家庭,学校,地域社会が連携して子どもを保護・支援していく取組を推進します。
また,障害のある子ども,外国人の子ども,被差別部落の子どもなど,多様な子どもの人権問題に包括的に取り組む仕組みづくりを進めていきます。
1 現状と課題
今や,高齢社会の問題は先進国だけではありません。開発途上国でも高齢化が進展し,国際社会の重要な課題となっています。
とりわけ,我が国は,出生率の低下や平均寿命の伸びに伴い,世界に類のない速さで高齢化が進んでおり,超高齢社会の到来も目前です。
平成3(1991)年,国連総会は「高齢者のための国連原則」を採択し,高齢者の「自立」「参加」「ケア」「自己実現」「尊厳」の5原則を,各国政府が実施する社会対策に組み入れることを要請しました。また,平成4(1992)年の国連総会では「高齢化に関する宣言」が採択され,平成11(1999)年を「国際高齢者年」と定める決議をしました。
ここでの高齢者像は,長年社会に貢献してきたことを評価するとともに,今後も市民として社会参加し,権利と義務を担っていくことに積極的な意義を認め,単なる「社会のお荷物」であるかのような消極的な考え方の転換を迫るものです。
我が国でも平成7(1995)年に「高齢社会対策基本法」が制定され,単に社会福祉の問題に止まらず,到来しつつある高齢社会にふさわしい社会システムを構築するよう諸施策を進めてきました。雇用・社会保障・住宅・社会参加・生涯学習などについて,全省庁をあげて取り組むこととなっています。
県では,高齢社会の諸問題を解決していくために,平成6(1994)年3月に,就労,健康,福祉,生きがい,生活環境など各般にわたる施策の方向を定めた「千葉県老人保健福祉計画」を策定しました。
その後,平成12(2000)年からは「千葉県介護保険事業支援計画」と一体のものとして見直し,平成15(2003)年3月には再度の見直しを行いました。
この間,高齢者の保健医療福祉サービスの一層の充実に努めてきましたが,解決されなければならない課題は多く残されています。
本県は,平成14(2002)年に高齢化率が15.6パーセントとなり,全国の都道府県の中では低い方で,下から4番目に位置していますが,平成27(2015)年には25.7パーセントになると見込まれています。
また,平成15(2003)年4月1日現在の高齢化率は,東葛飾支庁管内13.8パーセントに対し,安房支庁管内は29.5パーセントと,人口構成に大きな地域差が見られます。そして,急激な社会的人口増をしてきた都市部は,各地区ごとに高齢化が進み,単純に平均化してとらえることができません。この都市における「島状高齢化」とも言える状態は,コミュニティ機能が未発達なために生活しにくく,高齢者が地域社会で自立して生活していこうとするときには,大きな障害となっています。特に本県は,早くから住宅公団の開発が進められ,昭和35(1960)年頃から大規模団地の建設が東葛飾地域から千葉地域にかけて進められてきました。今日では子どもたちが巣立ち,高齢者が取り残されている状況が生まれています。また,高齢者が民間賃貸住宅に入居する場合,火災や病死,家賃の滞納などが心配され,容易には借りることができない現状も見受けられます。誰もが高齢になっていくわけですが,健康に普通の社会生活を送っていても,年齢差別による社会的排除につながっています。
さらに,長年社会に貢献してきた高齢者にふさわしい呼び名も定着していません。高齢者にとってみれば,自分が社会の中でどのような呼び名が与えられるかは,その社会における自らの位置付けとも関連し,象徴的な意味を持ちます。EU(ヨーロッパ連合)では,権利と義務を果たす「高齢市民」(senior citizens)と呼ばれることを好むと言われています。
我が国では,これまで,65歳以上を一くくりに「高齢者」としてきましたが,高齢者の中でも年齢によって大きな違いがあります。特に75歳以上の「後期高齢期」,さらに85歳以上の「オールド・オールド」と言われる人々に,様々な問題が集約的に現れています。
また,雇用の場において,高齢であることを理由に排除することは,社会にとって損失であり,人生80年時代の働き方を積極的に提示していく必要があります。そのためには,高齢者にふさわしい就労の場を確保し,労働の意欲と能力がある高齢者を就労の場から排除しない社会にしなければなりません。
さらに,「世界人権宣言」第25条は,人間としての尊厳と人格の自由な発達が保障され,人間らしく生きていくことができるために,いかなる人にも社会保障を受ける権利が認められなければならないとしています。このような権利が,我が国でも着実に実現できるようにする必要があります。
多くの高齢者は健康で社会参加も活発に行っていますが,病気や障害のため長期にわたって介護を受けなければならない人々にとって,自分の意思が尊重される,自己決定によるサービスの選択ができるよう,支援されなければなりません。長期ケアを必要としている人々に対しては,適正な介護保険サービスの利用が行われなければなりませんが,どの施設の入所を選択するのか,あるいは,住み慣れた地域社会や自分の家でケアを受けたいのか,その選択は尊重されなければなりません。
また,最近高齢者に対する深刻な人権侵害として,家庭の中でも,施設の中でも,様々な高齢者虐待の実例が報告されています。
長寿社会開発センターの分類によると,高齢者が適正な介護を受けられず,暴力を加えられることさえあるのが,「暴力による身体的虐待」です。家庭でも,施設でも,起きています。「心理的障害を与える虐待」は,言葉による暴力などによって,高齢者が心理的・精神的に追い詰められるものです。「経済的虐待」は,高齢者本人の財産が侵害されることです。預貯金を勝手に使われる,不動産などを処分されてしまう,年金を取り上げられてしまう,などです。家族が高齢者の扶養・介護をしない,また適切な介護をしないのは,「介護等の日常生活上の世話の放棄,拒否,怠慢による虐待」に当たります。中には,介護サービスを利用させない場合もあり,適正な介護が行われず,不衛生な状態の中で放置されている状態も見られます。また,高齢者の場合でも「性的虐待」の危険もないわけではありません。
高齢者虐待の中でも,最も悲劇的な問題は「介護殺人」です。県下でも,「介護殺人」が起きています。家族介護者を犯罪者としてしまう悲劇を,現在の社会福祉,介護保険制度の中で,なぜ防ぐことができなかったのか,問われなければならない問題です。このような家庭内における高齢者の虐待の問題については,家庭内の問題として虐待の実態がなかなか明確にならないこともあり,有効な対策が確立されてこなかったため,早急に対応する必要があります。
さらには,老人福祉施設や病院などにおいては,入所者のプライバシーの侵害や身体的拘束などの問題が生じているため,今後は,有効な方策等の検討を進めるとともに,高齢者の人権問題として啓発していくことが必要です。
また,高齢者の人権問題として,認知症高齢者の問題に対して目を向けていかなければなりません。
「脳血管障害による認知」や「アルツハイマー病」に対する理解がないために,本人も,また介護する家族にも過酷な負担をしいています。アルツハイマー病は40歳代で発病することもあり,これまで立派な社会人として仕事をしていた人が次第に人格を崩壊していくことに対して,なによりも家族の者がそれを認めたがらない,ということがあります。そのために,その事実を隠そうとしたり,また経済的な問題が生じたりするなど,介護者の極度のストレスを招いています。
認知症高齢者への理解と適切な支援によって,いわゆる「問題行動」とされていた認知症高齢者が穏やかに生活していけることが,すでに実証されています。そうした研究成果を,施設で介護に携わる職員は当然のこと,在宅における介護の従事者や家族介護者,さらには地域住民も学べ,認知に対する偏見や無理解を取り除き,地域全体で支援体制を築いていくことが必要になっています。
また,高齢社会として最期を迎える場所や尊厳の確保についても目を向ける必要があるとの指摘もあります。
2 施策の基本的方向
高齢社会を迎える中で,高齢者が,どのようなときにも,また,どのような状態に置かれても,できるだけ自立した生活を尊厳を持って暮らしていけるよう,高齢者の権利が擁護される社会の実現に取り組みます。
このため,高齢者自身がそれまでの生き方を継続しながら,社会参加をすることで権利と義務を果たしつつ地域で生活していくための支援を推進します。そして,高齢者問題に対する理解を深め,世代間の相互理解を深めるための教育・啓発を推進します。
また,高齢者虐待の防止に向けて家庭における介護への支援のほか,福祉・保健・医療機関や地域社会が連携して高齢者の権利を擁護し支援していく取組を推進します。
1 現状と課題
障害のあるなしにかかわらず,自身の能力を十分に活かして住み慣れた地域で自分らしく安心して暮らしていけることは,全ての県民の願いです。
しかしながら,現実には,歩道における段差など物理的な障壁,文化・情報面での障壁,偏見や差別意識等取り除かなければならない多くの障壁があります。
障害のある人々の人権問題への取組は,昭和56(1981)年の「国際障害者年」を契機として,ノーマライゼーション(*)の理念のもとで様々な施策が行われてきました。それにより,社会福祉制度の変革をも呼び起こし,また,狭義の社会福祉分野に収まらない,生活にかかわる様々な権利の問題を浮かび上がらせることになりました。
国においては,平成5(1993)年に改正された「障害者基本法」において,これまでの「身体障害」「知的障害」に,新たに「精神障害」が加えられ,3障害とされることになりました。平成7(1995)年には「障害者プラン~ノーマライゼーション(*)7か年戦略~」が策定され,障害のある人の生活全般にわたる施策が総合的に行われており,平成14(2002)年12月には,平成15(2003)年度を初年度とする「新障害者プラン」が策定されたところです。
施策の大きな流れとしては,《施設から地域での生活へ》という方向で動いています。しかしながら,現状においては,多くの障害のある人が今も施設で暮らしており,施設サービスがより良くなっていくことは,地域移行が進められていくさなかにあっても,大切な課題だと考えられます。
身体障害の施設利用者からは,長い施設利用の中で,以前と比べれば改善されてきているが,職員から「ことばや態度による暴力」を受けてきたと報告されています。また,利用者の安全のためでなく,職員の安全のために利用者の日常行動が制限されてきたという事例も少なくありません。こうした問題は,利用者がサービスを自ら評価できる環境にあるのかという課題となり,また,施設の生活の中で当たり前になっていることに対して疑問の呈示,異議申し立てを可能にするためにも,第三者機関による評価の必要性を示しています。
知的障害の施設利用においては,入所からその後の生活の中で利用者本人の意思が軽んじられてきた歴史と,知的障害者本人よりもむしろ家族の安心のための制度となってしまっている現状があります。そうした事情から,全国で18歳以上の知的障害者のうち推計で35.4パーセントの人々が施設に入所しており,身体障害者の推計入所率5.3パーセント,精神障害者の推計入所率16.7パーセントと比較した場合,極めて高い比率を占めています(「障害者白書」平成14年版)。したがって,当事者の意思に耳を傾け,自己決定を尊重する取組をしていくことで,地域での生活を含めた当事者による生活の選択を保障していくことが課題となってきます。
精神障害は,昭和25(1950)年に制定された「精神衛生法」が昭和62(1987)年に「精神保健法」に改題され,さらに,平成7(1995)年に「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」へと名称変更がされるまでは,医療及び保護の対象としかされてきませんでした。そのため,社会復帰施設からは遠ざけられ,入院の必要のない人も精神病院などへの入院となっていました。長期入院による管理された生活は,二次障害とも呼ばれる生活障害を引き起こしてきたのが現実です。また,入院患者のための権利擁護の上では,既存の精神医療審査会だけでは機能的に不十分であり,専門的に取り扱える第三者機関を設置し,訪問調査に基づく評価をしていくことも必要となります。退院後の社会復帰施設や地域での生活をしていく上でも,こうした入院生活における権利保障が出発点になっていくのです。
施設や病院への入所・入院という歴史においては,障害者は社会から排除され,そこで権利を侵害され,保護的な対応によって当事者の意思や主体性を容易に発揮できない立場に置かれてきたと言えます。このように,施設や病院の生活においては当事者の意思を確認することなく,施設や病院に勤務する人々の視点に基づいてものごとが進められがちであり,それが当たり前になっているという現状があります。また,選択的利用を可能にしていくためには,利用者や家族に対する情報公開が極めて少ないという問題があります。福祉サービスは評価されることにより向上するものです。評価されるためにどんなことを情報公開すべきかを,施設や病院に働く人々が利用者から学ぶという姿勢が,特に大切です。
地域や在宅での生活の現状と課題は,身体障害の例では,誰の目にも見える障害ということから,あえて障害のある人のことを配慮した対応が差別を引き起こすことにもなります。本人が決めるべきことを他者が勝手に決めてしまうことは,「相手のために」という思い込みの中で,一方的に健常者の価値観を障害のある人に押しつけているということにほかなりません。そうしたことは,日常生活の中で健常者が,気付かずに,様々な場面で取っている態度でもあります。
地域で生活する障害のある人が自立した生活をするための大きな課題は就労です。知的障害者を合わせた法定雇用率では,一般の民間企業は,全従業員のうち1.8パーセントは障害のある人を雇用しなければならないことになっています。平成14(2002)年6月1日現在,本県は1.42パーセントとなっており,全国平均1.47パーセントを下回っています。
知的障害の場合では,地域での生活を可能にしてくため,本人の主体性を尊重しながらサービスへとつなげていくことが課題です。そのためには,本人の話を聴ける,受け止める人が必要となります。また同時に,利用可能な福祉サービスを増やしていく基盤整備だけでなく,家族にとっても,地域社会の一人ひとりにとっても,社会的障壁(バリア)を取り除いていくことが,地域社会で共生していくための不可欠の基盤整備を意味します。
偏見や差別意識という意味では,身体障害,知的障害よりも根強いものを感じられるのが,精神障害の場合です。制度的な取組が他の障害よりも遅かったということとも関連しますが,障害者といった場合に,関係者の中では精神障害者を含めることは当然となっていますが,一般の人の共通の理解とはなっていないのが現状です。精神障害のある人への処遇の歴史は,私宅監置から精神病院に措置などをする時代,さらに「入院医療から地域生活中心へ」という大きな流れに沿って体制整備が図られてきていますが,現状でもアパートへの入居拒否や一般診療の拒否,共同作業所やグループホーム等の社会復帰施設の設置に対する住民の反対運動など強い偏見や差別が認められます。また,議会等の傍聴における精神障害者の入場制限等について,以前より改善されているものの,依然として制限を課している市町村もあります。
近年,地域で生活する精神障害者が急速に増えています。県内の精神障害者の通院医療費公費負担者数でも,平成9(1997)年は23,491人だったのが,平成14(2002)年には41,566人に増えています。精神障害者は,地域社会を共に構成する住民なのです。精神障害者を受け入れる地域の在り方が問われています。
ノーマライゼーション(*)を実現していくためには,《障害のあるなしにかかわらず,共に暮らせる地域社会をつくる》ことが必要です。そのためには,まず障害のある人の家族をはじめとして,身近な地域社会が変わっていくことが求められています。
また,生活の場となるグループホーム(*),デイサービス(*)や作業所など,地域社会における居場所を確保すること,就労を福祉的就労から正規就労へとしていくことが共通の課題となっています。つまり,障害のある人に適応を求めるのではなく,地域社会の在り方が問われています。仕事,教育,社会的活動など,いつでも,どこでも障害のある人々がいて,一緒に生活していけることが,まさしく健全な社会になるための試金石なのです。
さらに,障害のある子どもの問題については,障害が重度であればあるほど,親の負担,特に母親の負担が大きなものになっています。子どもが社会と接点を持つこと,ほかの子どもとかかわる機会を保障していくことは,その子の成長にとって大きな意味を持ちます。しかし,保育所,私立幼稚園,学童保育における障害のある子の受け入れ状況は,千葉市を除いて,県内は厳しい状況にあります。
障害児が統合された環境で教育を受ける権利は,「児童の権利に関する条約」で明確に述べられています。また,「サラマンカ宣言」(平成6(1994)年)では,障害児を含めたすべての子どもを包み込み,一人ひとりのニーズに対応しうる「包括教育」(インクルージョン)の構築こそが,差別をなくし平和を確立するために必要であると宣言されています。しかし,現状では,障害児が通常学級で学びたいと希望した場合,教育行政や学校現場にはさまざまなバリアがあり,「通常学級で共に学ぶ権利」が十分に保障されていません。このバリアを取り除き,世界的に認められている「共に学ぶ権利」を保障する教育改革の実現が急務です。
現状と課題として3つの障害を別個にとらえてきましたが,それは,歴史的な経緯と現在の制度を視野に入れたためです。現在の制度では,それぞれの障害を別なものとして考えている側面が濃く,実際の問題へと取り組む中でも原則として別個の対応が進められています。しかし,そのことがむしろ個々の問題への取組を遅らせたり,気付かないままで済ませる状況をつくりだしてもいるとも言えます。ある障害への取組が,他の領域ではどうなのだろうか,障害のある人同士ではどのように思うのだろうかといった発想がないため,個別の取組が,なかなか全体の質の向上となっていかないとの指摘もなされています。
2 施策の基本的方向
ノーマライゼーション(*)の理念のもと,障害のあるなしにかかわらず,共に暮らせる地域社会の実現に取り組みます。
このため,障害に対する正しい理解と障害者の人権に対する認識を深めるための教育・啓発を推進します。
さらに,障害のある人が住み慣れた地域社会の中で生活していけるよう支援します。
また,障害のある人の主体性と権利の擁護を図り,身体拘束などの虐待の防止に向けて,福祉・保健・医療機関や地域社会が連携して障害者の権利を擁護し支援していく取組を推進します。
1 現状と課題
昭和40(1965)年の同和対策審議会答申では,「同和問題は人類普遍の原理である人間の自由と平等に関する問題であり,日本国憲法によって保障された基本的人権にかかわる課題」と位置付け,その早期解決を図ることは「国の責務であり,同時に国民的課題である」との基本認識が示されました。
このため,同和問題の解決に向けて,昭和44(1969)年の「同和対策事業特別措置法」の施行以来,33年間に3度にわたり制定された特別措置法に基づき,国,県及び関係市町において同和地区・同和関係者を対象とした特別対策を実施してきました。
県では,これらの動向を踏まえ,昭和44年に「千葉県同和対策事業連絡協議会」を設置し,同和対策の推進体制を整備するとともに,昭和50(1975)年に「千葉県同和総合計画」,昭和57(1982)年には「第2次総合計画」を策定するなど,各種施策を総合的に推進してきました。これらの取組により,同和地区の劣悪な生活環境の改善を始めとする物的な基盤整備は概ね完了するなど様々な面で存在していた格差は大幅に改善されました。
このような状況の中で,平成14(2002)年2月「県同和問題協議会」から「『地域改善対策特定事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律』の期限後における本県の同和行政のあり方について」の提言がなされ,それを踏まえて県では,平成14(2002)年3月「同和問題解決のための施策に関する基本方針」を策定し,今後の施策需要に対しては,これまでの成果が損なわれないように留意しつつ,各般の一般対策により対応することを基本とし,同和問題に対する県民の人権意識の普及高揚を目指した啓発を引き続き積極的に推進するとともに,同和関係者の自立促進という観点から,一般対策を適切に活用したソフト面における施策を推進することとしています。
しかし,長期にわたる同和対策事業により,様々な面で存在していた格差は大幅に改善されましたが,未だ残る課題も多くあります。
まず第1に,住宅環境の改善により,学習のためのスペースが確保され,学力の向上,進学率の上昇という波及効果を生みましたが,「進学率の上昇」とは,高校進学率での較差が縮まったことを意味するに過ぎず,大学進学率等での較差の存在が指摘されています。
第2として,同和対策開始以前と比べれば,被差別部落の経済生活は飛躍的に向上しましたが,平成13(2001)年度に県が実施した「同和地区実態調査」(以下,「実態調査」)においては,「同和関係者」と「市町全体」との生活格差は未だ残存しています。例えば,住民税の課税標準額別階層でみると,「60万円以下」が市町全体では21.1パーセントであるのに対して,「同和関係者」では49.8パーセントです。この原因については,被差別部落における「就労構造のゆがみ」にあること,被差別部落の経済生活の急上昇は,建設業関連に被差別部落の労働力が吸収されたことによるもので,今日の建設業関連の公共事業の縮小は被差別部落の失業者の増大を招いていることが指摘されています。
第3として,同和問題が社会的に認知されるようになり,一部で,という限定付きながら,真に差別の壁をのりこえた営みが出てきたことも,改善点の一つと言えます。被差別部落出身者と部落外の者が,部落という問題を隠さずに,それに向き合いながら共に部落問題に取組むという実践が,一部で出てきたのです。しかし,未だ全体的には,「同和」「部落」にはマイナスのイメージが付与されています。例えば,「えせ同和行為(*)」も依然として横行し,同和問題に対する誤った意識を植え付けています。また,被差別部落出身者との結婚を忌避しようとする意識も,未だに払拭されてはいません。
「実態調査」によれば,「同和関係者」の世帯類型では,「母子世帯」「寡婦世帯」「高齢者単身世帯」の比率が県全体の平均と比べて高率となっています。その理由について,「子どもの数が少なすぎます。なぜ子どもの数が少なすぎるか。婚姻していないという形態の家族が多すぎるのです。なぜか。結婚差別という現象が解消しない限り,結婚できる比率は増えません」との指摘があります。差別ゆえの世帯構成のゆがみが,ここに見られます。
また,「実態調査」の同和地区住民アンケート調査結果によれば,「この5年間に部落差別だと感じる体験があった」と答えた人の割合は27パーセントでした。このことは,被差別の側の被害感情というものが未だ癒されていないということを示していると言えます。
第4に,同和問題の理解を進めるための教育の問題です。平成13(2001)年7月の「県同和教育推進協議会」からの提言「地域改善対策特定事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律期限後における人権・同和教育の在り方について」では,「差別意識解消のために教育及び啓発の果たす役割は極めて大きい」との基本的認識を示し,これまで,様々な方法で同和教育及び同和問題に関する啓発が進められた結果,県民の差別意識は着実に解消に向かっているとの認識を示しています。しかしながら,結婚問題を中心に依然として根深く残っている差別意識などの課題が存在することから,引き続き差別意識の完全な解消に向けて人権教育を推進していかなければならないとしています。これまでの同和教育の取組の成果と手法への評価を十分に踏まえ,今後とも同和問題に対する正しい理解と豊かな人権感覚を育む教育を推進していくことが求められています。その際に教育の手法については,市町村が実施している「人権問題に関する意識調査」の結果では,学校で「同和教育を受けた」ことで,被差別部落の人との「結婚問題への態度」がプラスの方向に変わるという効果はみられませんでした。今までの手法を見直す必要があります。大事なのは,同和問題の「知識」だけではなく,被差別部落に対する「マイナスイメージの払拭」であること,また,行政や企業などによる社会啓発の場合では,啓発への頻繁な参加が効果的であること,何よりも被差別の当事者の話が最も効果的であると言えます。
2 施策の基本的方向
依然として根深く存在している被差別部落出身者への偏見や差別意識の解消を図るため,被差別部落に対するマイナスイメージの払拭など効果的な教育・啓発を推進します。
また,同和問題については,生活環境の改善が進み,法に基づく特別対策が終了したことを踏まえ,今後は一般施策の中で各種支援を推進していきます。
その際,子どもの人権,女性の人権,高齢者の人権,障害者の人権等を擁護する施策の推進に当たっては,被差別部落の子どもや女性,高齢者,障害者などが抱える様々な課題に,適切かつ有効に対処できるような配慮を行いながら推進していきます。
1 現状と課題
経済,社会,文化など県民生活の広範な分野でグローバル化(*),ボーダーレス化(*)が加速度的に進んでおり,また,交通手段やITの急速な浸透により,国境や時間の壁を超えて本県が直接世界とつながるなど,あらゆる面で国際社会の相互依存関係が深まっています。
本県における外国人登録者数は,平成14(2002)年12月末現在,90,093人,10年前と比べて約1.8倍に増加するなど,国際化・多民族化は今後ますます進展していきます。地域社会,職場,学校など様々なところで,外国人と接触する機会が日常化していきます。様々な外国人と共生する地域社会づくりが求められています。
我が国は,昭和54(1979)年に「国際人権規約(*)」を批准し,昭和56(1981)年には「難民条約」に加入しました。「難民条約」への加入に伴い,社会保障制度における内外人平等原則が確認され,外国人への差別待遇が徐々に改善され始めました。
県では,本県の国際化の推進を図るため,平成8(1996)年3月「千葉県国際化推進プラン」を策定し,市町村,民間団体などと連携を図りながら,国際化へ向けた体制づくりや友好交流,さらには外国人が暮らしやすい環境づくりなどの施策の推進を図っています。
このような取組にもかかわらず,外国人の人権保障に関しては,なお多くの問題があります。
外国人労働者の受け入れについては,法的整備が未だ十分とは言えません。「出入国管理及び難民認定法」の平成元(1989)年の改正では,日系人には就労の制限を課さず,「非熟練労働者」であっても優先的に受け入れる道を開いたものの,ほかの多くの国々の労働者には単純肉体労働への就労を禁じたままです。しかし,実際には,数多くの外国人労働者が単純肉体労働に従事している現実があります。
国連は,平成2(1990)年,「全ての移住労働者及びその家族の権利保護に関する条約」(以下,「移住労働者権利条約」)を採択し,「資格外就労」や「オーバーステイ」の人々も含めたすべての移住労働者とその家族の人権(自由権・社会権・政治的権利)が保障されなければならないことを明記しました。在留資格の有無に関係なく,労働の報酬や条件,あるいは子どもの教育などの権利において,内外人平等原則が改めて確認されたのです。
この条約は平成15(2003)年に発効しましたが,我が国は未だ署名していません。
しかし,我が国においても,こうした国際的な枠組みの中で,外国人労働者の問題に対応していくことが求められています。
「外国人」の人権問題と言ったとき,上述のいわゆるニューカマー(*)の問題のみならず,我が国には,旧植民地出身者である在日韓国・朝鮮人を中心としたオールドカマー(*)の人々が数多く生活しています。
本県の平成14(2002)年12月末現在の外国人登録者の内,国籍の上位5ヵ国は,中国25,360人,韓国・朝鮮17,970人,フィリピン14,708人,ブラジル6,878人,タイ4,802人となっています。
一方,県内の登録者のうち「特別永住者」の総数は,平成13(2001)年12月末現在で,10,384人であり,そのうち10,258人が韓国・朝鮮籍の人々です。この「特別永住」資格を認められている人々が,オールドカマー(*)の人々に当たります。我が国の「国際人権規約(*)」の批准や「難民条約」への加入を契機に,在日韓国人など特別永住資格者への指紋押捺義務の免除などを内容とした「外国人登録法」の改正が行われました。
しかし,参政権や地方公務員への採用に当たっての制約のほか,外国人登録証の常時携帯義務についての見直しが求められています。
また,帰化によって日本国籍を取得している人々は,法制度的には差別の対象とはなりませんが,自分は何者であるのかといったアイデンティティ(*)の葛藤など,目に見えにくい形での問題を抱えていることがしばしばあります。
外国人の人権については,法制度の問題だけでなく,外国人の住居探しや職探しが困難であるなど,外国人への社会的偏見が根強くあるという問題もあります。
難民認定された人々の多くは,恵まれた就労機会を得ておらず,出身国において専門職に携わっていた人でも,3K労働や単純労働への従事を強いられています。同じ外国人であっても,欧米系/アジア系/アフリカ系などを区分し,その国の発展度によって差別する意識があることも指摘されています。
平成15年に行われた国の「人権擁護に関する世論調査」によれば,「日本国籍を持たない人でも,日本人と同じように人権を守るべきだ」と答えた人は,平成5(1993)年に68.3パーセントであったものが,平成15(2003)年には54.0パーセントに低下しています。先の見えないグローバル化(*)・ボーダーレス化(*)の波が,人々を不安に駆り立て,外国人差別を助長している状況がうかがえます。
平成13(2001)年に実施した「県国際政策基礎調査」によれば,「外国人とともに暮らしやすい社会を形成すること」が重要であると回答した人は,74.8パーセントにも達していますが,一方,在住外国人の側は日本人による差別や偏見を感じていると回答した人が42.2パーセントいます。また,日本人と親しく付き合っていると回答した外国人は22.5パーセントに過ぎません。外国人との共生の重要性が認識されながらも,実際には実現していないことがうかがわれます。
言葉や宗教,文化,あるいは生活習慣や価値観などの違いから,相互不信やトラブルが発生することがありますが,異文化理解を深めることによって,開かれた地域社会を築く必要があります。
2 施策の基本的方向
県民が外国人の持つ文化や生活習慣,価値観を認め,誰もが一人の人間として尊重され,多様な個性を受け入れることのできる共生社会の実現に取り組みます。
このため,国際交流をはじめ異文化理解を深めるための教育・啓発を推進します。
また,外国人も一人の県民として地域社会で共に働き,生活し,多様なサービスを享受できるよう各種支援を推進します。
1 現状と課題
ハンセン病は,らい菌によって体の抹消神経が侵される感染症ですが,感染力は極めて弱く,現在,仮に発病しても特効薬の発見などで効果的な治療法があり,治すことができるようになっています。また,遺伝する病気ではありません。しかし,平成8(1996)年に「らい予防法」が廃止されるまでは,患者を国立療養所に一律に隔離する政策が取られるなど患者の人権を制限し,偏見や差別意識を生む原因となり,患者や家族は多大な精神的苦痛を強いられてきました。
平成13(2001)年5月11日,熊本地方裁判所は,「『らい予防法』違憲国家賠償請求事件」で,原告勝訴の判決を下しました。国はハンセン病問題の早期解決のため控訴を断念し,ハンセン病の患者・元患者の名誉回復及び福祉増進等を図ることを目的とした「ハンセン病療養所入所者等に対する補償金の支給に関する法律」を制定しました。
裁判の原告となった人々をはじめ,ハンセン病療養所に入所しているハンセン病元患者,あるいは退所者は,すでに平均年齢75歳を超えています。また,平成14(2002)年9月現在の,厚生労働省の「退所者給与金都道府県別支給人数」によれば,ハンセン病療養所からの「退所者」は,全国で1,160人,そのうち県内に居住する者が18名です。「らい予防法」の廃止により自らの意思で退所することができることから,今後,県内で社会復帰後に地域で生活を送る「退所者」が増える可能性がありますが,社会復帰の円滑化を含む早急な支援が不可欠です。
一方,現在でも残る社会の偏見のために,隔離施策廃止後も療養所から出ることができず,また長年の隔離施策のためにもはや療養所以外に知り合いがいないことや,後遺症である目や手の障害などが,療養所を出てふるさとに帰ることを難しくしている現状もあります。
社会復帰を促進するためには,入所者の意見を聞きながら,感染症に関する正しい知識の普及等により,県民のハンセン病に対する偏見や差別意識の解消に向けて啓発活動に一層取り組むなど,入所者が安心して社会復帰,帰郷ができる環境を整備していくことが重要です。
2 施策の基本的方向
ハンセン病に対する理解の不足に基づく偏見や差別意識を解消し,元患者が地域社会の構成員として安心して暮らしていくことのできる社会の実現に取り組みます。
このため,ハンセン病に対する正しい理解とハンセン病元患者等の人権尊重に対する理解を深めるための教育・啓発を推進します。
また,日常生活に関する相談や適切な医療・介護等の環境の整備を進め,社会復帰への各種支援を推進します。
1 現状と課題
HIV(*)感染者とは,エイズウイルスに感染している状態にあるものの,エイズを発症していない人を言います。
エイズ患者やHIV(*)感染者に対しては,正しい知識や理解の不足から,これまで多くの偏見や差別意識を生み出してきました。
しかし,エイズウイルスの感染力は弱く,正しい知識に基づいて行動することにより,比較的容易に予防できるものであり,また,近年の医療技術が進展する中,未だ完治するには至っていないものの,エイズの発症を遅らせたり,症状を緩和させたりすることが可能になってきています。
世界保健機関(WHO)は,昭和63(1988)年にエイズのまん延防止と患者や感染者に対する偏見や差別意識の解消を図るため12月1日を「世界エイズデー」と定め,エイズに関する啓発活動の実施を呼びかけました。
また,UNAIDS(国連合同エイズ計画)がエイズ対策を継承した現在,世界中でエイズに関する各種キャンペーンが行われています。
我が国においては,平成元(1989)年に「後天性免疫不全症候群の予防に関する法律」が制定され,平成10(1998)年には,同法に代わって,感染者等の人権に配慮した施策を進めることを基本理念とした「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」が制定されました。
本県においても,HIV(*)感染予防とエイズ等についての正しい知識を普及啓発するため,キャンペーンの実施や,啓発資料の作成配布,様々なメディアを利用しての広報等を実施しています。
しかしながら,本県におけるエイズ患者・HIV(*)感染者数は,依然として増加傾向が続いており,血液凝固因子製剤による感染を除いて,平成15(2003)年6月末現在において597名に上り,全国の都道府県別では東京都,神奈川県に次いで3番目に多い県となっています。また,誤った知識の流布や,感染の恐怖を必要以上に強調した情報の影響が完全に払拭されていないこともあり,HIV(*)感染者等に対する人権侵害は現在においても続いています。
HIV(*)感染者等に対する人権侵害事例としては,経済的権利,教育を受ける権利,居住の権利,医療を受ける権利,福祉を受ける権利等が侵害されるケースが見られます。
例えば,HIV(*)感染者であることが知られることによって,勤め先から退職を勧告され,就職を拒否される事例も見られます。また,入園・入学を拒否されるケースや,退学を勧められたケースもあります。
職場等においても本人の承諾を得ないHIV(*)検査は禁止されています。感染者であるというだけでは,通常,業務を遂行したり学業を継続することに支障はないことは明らかになっています。にもかかわらず,このような事態が生じているのです。このことは,知識があっても,それに基づいて冷静かつ的確な対応をすることはなかなかできないということを意味しています。
また,周辺住民の総意として,アパートを退去し,病院に入院するよう,エイズ患者が強く求められたといった事例や,医療機関においても,HIV(*)感染自体の診療ではなく,風邪や軽い疾患の治療であっても,近隣の医院で受け入れられず,とにかく拠点病院に行くように言われたという事例もあります。さらに,外国人の場合,アフリカや東南アジアのエイズ流行国などとマスメディアで報じられている国からの観光客が,日本のホテルで宿泊を拒否されたという事例もあります。
あるいは,握手や日常会話,食事を共にするといったことで感染する可能性はないにもかかわらず,「運悪く,もしもうつったら……」という過剰防衛から,感染者とのかかわりを拒否する人々もいます。知識としては理解していても,それが行動にはつながらずに,HIV(*)感染者に対して忌避的態度を取ってしまっているわけです。これらも,知識と実際の対応の間に齟齬(そご)が見られる例と言えます。
また,プライバシーの侵害と見られる事例も後を絶ちません。カミングアウト(*)もしていないのに,HIV(*)感染者であることが,周囲の住民に知られているということもあります。
HIV(*)に感染していること自体は,プライバシーである,ということは以前から強調されているにもかかわらず,その情報が十分に届いていないか,知識としては知っていても,そのこととプライバシーの保護とが行動において結び付くべきものとしての認識が十分でないために,このような事態が起こっていると思われます。
地域社会で本来は知られるはずのないところに情報が伝わるという不安が大きくなれば,HIV(*)感染者等の生活権自体が脅かされることにもなります。
外国人については,言語的な障壁もあり,日本における医療制度の十分な情報が得られないといった事例があります。
今後も,基本的人権尊重の観点から,県民に全ての人の生命の尊さや生存することの大切さを伝えるとともに,エイズ患者やHIV(*)感染者との共生・共存に関する理解を深めていく必要があります。
2 施策の基本的方向
HIV(*)感染症やエイズに対する理解不足に基づく偏見や差別意識を解消し,感染者等のプライバシーが確保され,安心して働き,暮らしていくことのできる地域社会の実現に取り組みます。
このため,HIV(*)感染症等に関する正しい知識だけでなく,知識と実際の行動の齟齬(そご)を解消するような効果的な教育・啓発を推進します。
また,プライバシーに十分配慮した相談・医療体制の整備など,地域で安心して暮らしていくための環境の整備を推進します。
1 現状と課題
性同一性障害(*)は,世界保健機関(WHO)の国際疾病分類で位置付けられており,「自分の身体的な性に不快感や不適当という意識をもち,ホルモン療法や外科的治療を受けて,自分の身体を自分の好む性と可能な限り一致させようとする願望を持っている」ととらえられています。生物学的な性(身体的な性)と心理的な性(性自認)とが一致していない,性の同一性を欠いた状態を言います。
この障害を抱えた人々が,性別を越境した生き方,つまり,男性として生まれた者が心の性(女性)に基づいて女性として,女性として生まれた者が心の性(男性)に基づいて男性として生きたいと思っても,まだ,十分実現できる社会ではありません。
性同一性障害(*)があり,特に性別適合手術を受けた人々が,直面してきた最大の問題が,「戸籍」の問題でした。名前に関しては,家庭裁判所に申し立てることで,自認の性に見合った名前への変更が認められてきましたが,「性別」の訂正が認められなかったのです。「戸籍」には「続柄」欄に,「長男」「長女」などと記載されることで,「男/女」の性別が定められています。そして,それに基づいて,住民票でも,健康保険証でも,パスポートでも,性別欄に男女の別が記載されます。しかし,平成15(2003)年7月10日,「性同一性障害(*)者の性別の取扱いの特例に関する法律」が成立し,いくつかの条件付きですが,性別適合手術を受けた人々の戸籍の性別記載の変更が認められるようになりました。
性同一性障害(*)のある人が地域社会の中で生活していく上で,様々なバリアにより生きやすい社会とは言えない現状があります。
外見や名前と「性別」欄の記載とが食い違った保険証を持って医療機関で受診するのには,非常に勇気が必要です。
賃貸住宅等の契約の際には,住民票の提出が求められます。また,正社員として就職するときには,住民票記載事項証明書や年金手帳の提出を求められます。こうして,外見・名前と「性別」記載が食い違っていることで,契約が不成立に終わったり,雇用されないこともあります。
また,選挙の際の投票所の入場券にも「性別」欄がある場合が多く,そのことにより投票所でトラブルになれば,地元の人々に知られることになります。それを恐れて,選挙権の行使を諦めている人もいます。
民間においても,男性として働いている人が「女装」を理由に解雇された事件がありました。あるいは,性同一性障害(*)のある人が,会社に勤めたまま,治療によって望む性別へ移行していくのを,受け入れる環境はまだ整っていない現実があります。
また,あらゆる公文書から不必要な性別欄の削除も求められています。
性(セクシュアリティ)にかかわる問題には,性自認にかかわる「性同一性障害(*)のある人」の人権問題もあれば,半陰陽者といわれる「インターセックス」にかかわる人権問題もあれば,性的指向にかかわる「同性愛者」の人権問題もあります。残念ながら,一般に,いずれの問題も社会の理解が不十分な状態にありますが,大切なことは,これらの問題は等しく解決されなければならない人権問題であるという認識のもとに問題解決にあたる必要があります。
県民一人ひとり,自分の生きたい人生を選択できる,自分らしく生きることができる社会を実現していくことが大切です。性の有り様を自分の意思で選択できる社会,多様な性が共存しそれによって差別されることのない社会,つまり,多様な性の存在と生き方を尊重し,共生できる社会が求められています。
2 施策の基本的方向
性同一性障害(*)に対する理解不足に基づく偏見や差別意識を解消し,自分の生きたい人生を選択でき,多様な性の存在と生き方を尊重し,共生できる地域社会の実現に取り組みます。
このため,性同一性障害(*)に関する正しい理解を深め,性同一性障害(*)のある人が自己肯定感を持てるような教育・啓発を推進します。
また,安心して医療を受けられる体制の整備や公文書上の不必要な「性別」欄の解消など,地域で安心して暮らしていくための環境の整備を推進します。
1 現状と課題
同性愛は,かつては「性的異常」と誤って受け止められていた時代もありましたが,今日の正しい理解では,性的指向の一つとして受け止めるべきものです。
性的指向とは,性的意識や恋愛感情が同性に向くのか異性に向くのかという,人間の性に係わる意識や感覚の問題です。これは,本人の意思や選択によって変更可能なものではないのです。また,本人のアイデンティティ(*)やそれに基づくライフスタイルの選択の上でかけがえのない意味を持つものであり,変更を強要すべきものではありません。
現在,性的指向自体は,いかなる意味でも治療の対象ではないことが確認されています。
一方,性的指向の理解が広まるにつれて,カナダ,アメリカ合州国,EU(ヨーロッパ連合)諸国,オーストラリアやニュージーランドなどで,同性愛者に対する差別の解消,同性愛者として生活する権利の保障が,人権保障上の重要な問題の一つとして取り組まれるようになっています。
我が国においては,同性愛者に対する差別や人権侵害が存在すること,また,それが解決されなければならない問題であるという認識は,未だ,先述の国々ほどには定着していません。
この社会の中には,同性愛者が一定の割合でおりますが,にもかかわらず,多くの人々が同性愛者に会ったことがないと言います。同性愛者が自らの立場を表明することが困難な現実があるからです。私たちの社会は,「異性愛者しかいない」という前提で成り立っているのです。
我が国における同性愛者の人権に対する理解はまだ不十分ではありますが,それでも,近年,少しずつ,問題解決のために取り組むべきであるという認識が強まりつつあります。国会で審議されていた人権擁護法案においては,性的指向による差別を禁止し,それに基づく差別事案を積極的救済の対象とすることが盛り込まれていました。
同性愛者の人権問題は,大きく分けて3つの問題があります。
第1に,同性愛者自身が自分の性的指向やそれに基づくアイデンティティ(*)を大事にし,生き方の自己選択・自己決定ができるような社会環境が十分に整っていないという問題があります。そのため,同性愛者自身のカミングアウト(*)が抑制され,同性愛者に関する人権問題の存在が見えにくくなっています。
第2に,同性愛に対する誤解や偏見,差別意識が払拭されておらず,そこから,同性愛者に対する人権侵害が生じているという問題があります。例えば,学校や職場におけるいじめ,同性愛者であることを理由とした解雇,同性愛者を対象とした犯罪が引き起こされています。
第3に,同性愛者が同性愛者として生活していく上での十分な法的保障や環境が整っていないという問題があります。この中には,同性同士の結婚が認められていないという法改正が必要な問題もあります。同性愛者に対する差別事件や人権侵害が起こったときに,同性愛者が行政機関等に問題解決を求めても,これらの機関の職員が,同性愛についての正確な理解を欠いていたり,誤解や偏見から自由でなかったり,また,性的指向にかかわる問題に対処するための手法を持たないということから,実質的に問題解決がなされない,あるいは,そうした事情を予想して,同性愛者自身が問題解決を諦めてしまうという問題が指摘されています。
2 施策の基本的方向
同性愛に対する理解不足に基づく偏見や差別意識を解消し,性的指向やそれに基づくアイデンティティ(*)が尊重され,自らの生き方の自己選択・自己決定ができるような地域社会の実現に取り組みます。
このため,性的指向や同性愛者の人権について理解を深め,同性愛者が自己肯定感を持てるような教育・啓発を推進します。
また,情報提供や相談体制の充実,問題解決への援助など各種支援を推進します。
1 現状と課題
近年,日雇い労働者が集まる「寄せ場」のある大都市に限らず,県下でも,道路,公園,河川敷などで野宿生活を余儀なくされている,いわゆる「ホームレス」が急増しています。
ホームレスの問題は,世界共通の問題であり,国連では,昭和62(1987)年「家のない人々のための国際居住年」を定めるなど,この問題に取り組んでいます。
我が国では,ホームレスの自立の支援等に関する施策を総合的に推進するため,平成14(2002)年8月に「ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法」が施行されました。この法においては,ホームレスの自立の支援等に関する施策の目標を明示するとともに,こうした目標に関する総合的又は地方の実情に応じた施策の策定及び実施を国又は地方公共団体の責務としました。
国においては,ホームレスの実態に関する全国調査を踏まえ,ホームレスの自立に関する基本方針を策定し,また,地方公共団体は,必要に応じ,基本方針に即し,実施計画を策定するものとしています。
県では,県内のホームレスの実態把握に努め,ホームレスの自立支援のための実施計画策定に向け,市町村や関係機関と連携して取り組んでいくこととしています。
このホームレス問題を考える場合は,実態や背景を客観的にとらえていく必要があります。
平成15(2003)年1月から2月にかけて実施された厚生労働省の「ホームレスの実態に関する全国調査」(以下「全国調査」)では,全国で25,296人のホームレスの存在が確認されています。県内でも668人の存在が確認され,年々増加傾向にあることが報告されています。
このようなホームレスの増加は,特に「バブル経済」崩壊後において顕著になっており,経済・雇用情勢の悪化がその最大の原因であると考えられます。長期化する不況の中で,ホームレスの若年齢化という現象も生じています。
「全国調査」から生活実態を見ると,面接による調査に応じた2,163人のホームレスのうち,「路上(野宿)生活の期間」としては,「1年未満」が30.7パーセント,「1年以上3年未満」が25.6パーセント,「3年以上5年未満」が19.7パーセントでした。
「路上(野宿)生活直前に就いていた仕事」としては,「建設関係」が55.2パーセント,「製造業関係」が10.5パーセントとなっています。その「雇用形態」は,「常勤職員・従業員(正社員)」が39.8パーセント,「日雇」が36.1パーセントでした。
この調査結果からも,かつては,我が国の高度経済成長を支えた日雇い労働者の失業を中心に生まれたホームレスが,今や,安定的と考えられていたあらゆる常勤形態の職種からもホームレスが生まれていることが明らかになっています。そして,これらの経済的要因に加え,個人的要因が複合的にからみあってホームレスとなった者が,徐々に増えつつあることが指摘されています。また,ホームレス自身の家族関係が引き裂かれるだけでなく,様々な人間関係の破綻を招いている場合があり,ホームレスの「自立」意欲を減退させる要因にもなっていることも指摘されています。
「全国調査」で生活実態調査の「仕事と収入の状況」によると,ホームレスの64.7パーセントが仕事をしており,そのうちの73.3パーセントが「廃品回収」に従事していると回答しています。そして,収入を得ている者の月収は,「1万円未満」が25.1パーセント,「1万円以上3万円未満」が35.2パーセント,「3万円以上5万円未満」が18.9パーセント,「5万円以上10万円未満」が13.5パーセント,「10万円以上」は5.3パーセントとなっています。
「健康状態」では,「現在,どこか身体に具合の悪いところがある」と回答した者が47.4パーセントであり,そのうち,「通院」「売薬」などで対処している者は31.6パーセントに過ぎず,「何もしていない」者が68.4パーセントとなっています。
「自立」に向けての「今後の希望」としては,「きちんと就職して働きたい」と答えた者が49.7パーセント,「アルミ缶回収など都市雑業的な仕事」が6.7パーセント,「行政から支援を受けながらの軽い仕事」が8.6パーセントなどとなっており,「今のままでいい」と回答した者は13.1パーセントに過ぎません。
この調査結果からも,ホームレスの多くが勤労意欲を持ち,何らかの形で自ら生活努力をしていることは明らかです。しかし,一方で,ホームレス状態が長期化するにしたがい,健康を損い,さらには人間関係の喪失も加わり,勤労意欲を失っていく現実があります。そして,健康に不安を抱いているホームレスが少なくありません。
また,ホームレスの増加に伴い,公園などの公共施設での野宿生活者が増え,一部の地域では住民とのあつれきが生じています。その背景となっているのは,ホームレスの無秩序・社会性の欠如からくるものと,住民たちの「ホームレスは,好きでやっている」「怠け者である」「汚い,恐い」といった先入観との両面があります。
さらには,地域住民のホームレスに対する偏った認識が子どもたちにも伝達され,若者によるホームレス襲撃,殺傷事件まで引き起こす原因の一つとなっています。
こうしたホームレスの増加の陰には,「生活保護」の運用の実際において,居住地(住居)を持たない者からは,生活保護の申請を受け付けないという現実があったことも指摘されています。これに加え,住居がありながら生活困窮状態に陥った人が,「生活保護」自体を知らずに住居を放棄し,ホームレスとなっているケースも後を絶ちません。一度,居住地を失った者は,再び住居を持つことは極めて困難です。ひいては,居住地を持たないために,ハローワークへの登録も不可能となり,ホームレスの自立を阻む要因となっています。また,たとえ居宅資金をホームレス自身で用意したとしても,先に述べた人間関係の破綻から,賃貸住宅への入居のための保証人確保が困難であることも,同様に自立を阻む要因となっています。
厚生労働省が国庫補助事業として「自立支援センター」を開設していますが,これも東京,大阪といった大都市に限られています。ホームレス支援の民間団体の存在も,首都圏の他都県に比べて圧倒的に少ない状況です。
2 施策の基本的方向
ホームレスに対する偏見,差別意識を解消し,ホームレスが地域社会の一員として自らの意思で自立して生活できる社会の実現に取り組みます。
このため,ホームレスの人権に対する理解を深めるための教育・啓発を推進するとともに,県民の理解と協力のもとにホームレスの社会的自立に向けた環境整備や様々な支援を推進します。
1 現状と課題
「中国残留孤児(*)」問題は,過去70年にさかのぼる問題です。
この問題の歴史を見ると,昭和7(1932)年の「満州国」建国に端を発し,開拓移民として渡った人々のうち,多くの女性と子どもが,日本の敗戦後も帰国できず,中国現地に在留を余儀なくされたのです。
昭和20(1945)年8月に敗戦となり,昭和24(1949)年,中国との国交が断絶となりました。昭和34(1959)年,「未帰還者特別措置法」が制定され,親族からの申請により中国残留者の戸籍が抹消されることになりました。これによって13,600余名が戸籍を抹消されました。
中国と国交回復したのが昭和47(1972)年ですが,それまで行ってきた未帰還者調査の一部としてではなく,中国残留孤児(*)の肉親捜しという新たな課題に取り組むための訪日調査が始まったのが,昭和56(1981)年のことです。
日中国交正常化以降,平成15(2003)年3月末現在までに,中国からの永住帰国者は,「残留孤児」が2,460人,その家族も含めると8,981人,「残留婦人等」が3,752人,その家族も含めると10,917人,計6,212世帯,19,898人に達しています。
県内では,平成15(2003)年3月末現在,中国からの永住帰国者は,「残留孤児」が131人,その家族も含めると487人,「残留婦人等」が53人,その家族も含めると180人,計184世帯,667人となっています。
しかし,日本に帰国したからといって,問題が解決したわけではないのです。まず,戸籍のない人々がいます。新しく戸籍をつくることが,第一の課題となります。
中国からの帰国者の受入れ体制,支援体制を充実することが求められています。中国からの帰国者は,埼玉県所沢市の「中国帰国者定着促進センター」に入所して,4ヵ月間の日本語・日本事情の研修を受けます。その後,県内の「中国帰国者自立研修センター」に通いながら8ヵ月間,日本語の学習を続けます。しかし,「中国残留孤児(*)」で帰国した人のうちおよそ9割の人が,日本語に不自由していると指摘されています。
日本語に不自由していることは,求職活動にも差し障りが出てきます。中国での職業経験が生かせないなど,仕事上の問題を抱えている人が大多数です。このため,中国残留孤児(*)として帰国した人のうち約7割の人が生活保護を受けています。また,年金は,日本での加入期間が短いため少額であり,老後の生活を困難にしています。
また,中には,中国に,養父母だけでなく,配偶者や子どもを残したまま帰国している人もおり,問題は複雑です。
さらに,中国残留孤児(*)は,昭和40年に始まった中国国内の文化革命時代には,日本人ということで様々な受難を経ています。また,日本に帰国しても反対に中国人と扱われるなどの体験をしています。その意味で,自分は何者であるかという安定したアイデンティティ(*)を持ちにくいという問題があることも指摘されています。
そもそも「中国残留孤児(*)」がなぜ生まれたのか,どのように暮らしてきたのか,現在どのように暮らしているのかについて,まず県民の理解を深めることが求められています。
2 施策の基本的方向
中国残留孤児(*)に関する歴史的経緯や現在の状況に関する理解不足に基づく偏見や差別意識を解消し,中国残留孤児(*)の権利が尊重され,安心して働き,暮らしていくことのできる地域社会の実現に取り組みます。
このため,中国残留孤児(*)問題について理解を深め,中国残留孤児(*)の人権尊重意識の普及高揚を図るための教育・啓発を推進します。
また,国の施策と連携しながら地域で安心して暮らせるよう各種支援を推進します。
1 現状と課題
我が国における平成13(2001)年の犯罪被害者数は約240万人であり,男女ともそれぞれ増加傾向にあります。
ストーカー犯罪の多発や地下鉄サリン事件などの無差別殺人事件を背景にして,被害者やその家族らの心情に配慮し,被害回復を支援するため「刑事訴訟法」等の一部改正や,平成12(2000)年に「犯罪被害者等の保護を図るための刑事手続きに付随する措置に関する法律」の制定,平成13(2001)年に「犯罪被害者等給付金の支給等に関する法律」の一部改正などの法整備が進められました。
国際的にも,近年の人権意識の高まりを背景に,犯罪により身体的・精神的被害を受けた被害者に対して,国による救済・支援がなされるべきとの主張が高まり,昭和60(1985)年に開催された「犯罪防止及び犯罪者の処遇に関する第7回国際連合会議」では,「被害者は,その尊厳に対し同情と敬意をもって扱われるべきであること」「被害者が必要な物質的,医療的,精神的,社会的援助を受けられるようにし,その情報を被害者に提供すべきこと」などを内容とした「犯罪及び権力濫用の被害者のための司法の基本原則宣言」が採択されました。
また,欧米諸国等では,被害者支援のための様々なシステム整備が進められており,被害者支援は国際的な潮流となっています。
犯罪被害者及びその家族(以下「犯罪被害者等」)は,生命,身体,財産上の被害はいうまでもなく,事件に遭ったことによる精神的・経済的被害や事件をめぐる捜査や裁判を通じて被る精神的・肉体的な打撃,あるいは,周囲の人の無責任な噂話や,マスメディアによる行き過ぎた取材などによる二次的被害に苦しんでいるのが実情です。
暴力的犯罪による殺人や傷害事件の犯罪被害者等は,本来,不法行為に基づく民事上の損害賠償の請求を行うことができるのですが,実際には,加害者に経済力がないなどにより,その賠償を得ることは非常に難しいのが現実です。そのため,凶悪犯罪の被害者等は,満足な救済もされないまま,精神的・物質的に極めて悲惨な状態に置かれてきました。特に暴力犯罪の被害者等であれば,損害賠償について相手と直接交渉すること自体に不安を抱き,できるだけ早く事件から遠のきたいという気持ちもはたらきます。
そのため,犯罪被害者等と身近にかかわる警察においては,事件や事故の被害者等の支援のために,電話や面接による相談や援助・救済制度の情報提供を行っています。
今後とも,犯罪被害者等の立場やニーズを踏まえた支援対策をさらに推進していくとともに,県民に対しても,犯罪被害者等に十分な配慮ある言動が行われるよう啓発を行い,社会全体で支え合うことのできる体制を構築していく必要があります。
2 施策の基本的方向
県民が犯罪被害者等の置かれている状況を理解し,その平穏な生活が確保され,精神的な立ち直りと社会的自立に対して地域全体で支え合うことのできる社会の実現に取り組みます。
このため,プライバシーの保護など犯罪被害者等の置かれている立場に対する理解を深めるための教育・啓発を推進します。
また,県民や行政・司法・民間の支援団体等の協力・連携のもとに,犯罪被害者等が地域で安心して暮らしていくための環境の整備とともに,社会的自立の支援を推進します。
1 現状と課題
「拘禁」という言葉は日常的には使われない法律用語ですが,被疑者,被告人,受刑者を,留置場・拘置所・刑務所などに拘束することを意味します。
被疑者又は被告人として勾留されている人のことを,「未決拘禁者」とも言います。「受刑者」とは,犯した罪の審理を受けた裁判所の有罪判決の結果,自由刑が確定し,刑務所に拘置されている人のことです。
罪を犯したとはいえ,「被拘禁者」にも人権は認められなければなりません。
昭和23(1948)年国連で採択された「世界人権宣言」第5条で,「何人も,拷問又は残虐な,非人道的な若しくは屈辱的な取扱若しくは刑罰を受けることはない」と規定しています。この精神は,「市民的及び政治的権利に関する国際規約」(昭和51(1976)年。以下「自由人権規約」という。)に受け継がれ,この規約に世界人権宣言とほぼ同文の「非人道的な刑罰の禁止」(第7条)が規定されています。10条では「自由を奪われたすべての者は,人道的にかつ人間の固有の尊厳を尊重して,取り扱われる」と規定しています。この自由人権規約を,我が国は昭和54(1979)年に批准しています。
まず,「未決拘禁者」である被疑者又は被告人は,未だ,裁判で有罪だという判決を受けたわけではありません。「世界人権宣言」第11条には,「無罪推定の原則」を規定し,何人も裁判で有罪の判決を受けるまでは無罪の推定を受けることとしています。逮捕され,マスメディアによる報道がなされた瞬間に,「犯人にちがいない」と決めつけてはいけないのです。私たち一人ひとりが,「無罪推定の原則」を理解することが大切です。
「未決拘禁者」は,拘禁中であっても,受刑者ではないのですから,「無罪の推定」を受けている者にふさわしい処遇を受ける権利があります。国連の「被拘禁者処遇最低基準規則」(昭和32(1957)年)でも,第3章において,未決拘禁者は無罪と推定されている者にふさわしく処遇されなければならないと規定されています。
次に,「受刑者」の人権問題ですが,どんな立場の人でも,虐待されてはならないのです。
平成13(2001)年から平成14(2002)年にかけて,名古屋刑務所で,複数の刑務官が受刑者に「革手錠」を使用し,「保護房」に収容することで,受刑者を死傷させた事件が3件起きていたことが明らかとなりました。
本県には千葉刑務所があります。平成10(1998)年から平成14(2002)年までに千葉刑務所在監者から千葉県弁護士会へ「人権救済申立」があったのは14件でした。千葉刑務所でも,「革手錠の使用」「保護房への収容」が行われていたとの報告があります。
この問題は,犯罪被害者とその家族の心情に十分配慮する必要がありますが,「受刑者」にも人間としての尊厳は尊重されなければならないことについて,県民の理解を深めていく必要があります。
2 施策の基本的方向
裁判で有罪の判決を受けるまでは「無罪推定の原則」の処遇を受ける権利があります。被疑者の段階でマスメディアの報道がされた瞬間,「犯人に違いない」と決めつけられたり,受刑者が虐待されることのないよう,被拘禁者の人権問題について県民の理解を得るための教育・啓発等を推進します。
1 現状と課題
裁判で有罪判決を受け,刑務所に収容されると,刑の執行を終えたとしても,俗に「前科者」などと呼ばれ,過去に罪を犯したという事実のみならず,前科を持つ人は怖いとか,信用できないといったようなレッテルを貼られ,就職や結婚など社会生活の様々な場面において,社会参加や社会復帰する際の深刻な障害となっています。
罪を犯した人が罪を償い,社会の一員として立ち直ろうとしていることに対し,誤った認識や偏見が更生を妨げ,人権の侵害につながる場合があります。また,刑を終えて出所した人の家族への偏見や差別により人権が侵害される場合があります。
現在,犯罪や非行に陥った人を,その被害者の立場にも十分配慮しながら,再び同じ地域の仲間として受け入れ,その社会復帰を支援していくことによって,本人の更正と犯罪からの予防を図る制度として「更正保護制度」があります。この制度は「いったん罪を犯した人も周囲の条件と本人の自覚によって立派に立ち直ることができる」という人間に対する信頼感に根ざしており,国家公務員である保護観察官をはじめ,民間の篤志家である保護司,女性の立場から活動している更正保護婦人会員,兄や姉の立場に立って非行に陥った少年の立ち直りを支援しているBBS会員,犯罪や非行歴のある人たちを差別しないで積極的に雇用してくれる協力雇用主,社会を明るくする運動の関係者,刑務所から出所し新たな人生に賭けようと誓いながら行き場所のない人を世話する更正保護施設など数多くの民間ボランティアとそのネットワークにより支えられています。
近年頻発する凶悪な重大事件や被害者救済への世論の高まりなど,犯罪者や犯罪前歴者に対する厳しい見方があるのも十分理解できます。
しかし,犯罪者も,いずれその大部分はそれぞれの地域に戻り,地域社会の構成員として生活をしていかなければならないのです。そして,彼らの社会復帰が円滑になされるためには,本人の被害者や遺族等への謝罪や被害回復に向けた努力と強い更正意思とともに,差別的な対応をしない社会全体の支援と県民一人ひとりの正しい理解と協力,さらに就職などへの支援が必要です。
2 施策の基本的方向
刑を終えた出所者も社会の一員として,円滑な社会復帰を支えていく地域社会の実現に取り組みます。このため,刑を終え出所した人やその家族の人権が侵害されないよう教育・啓発を推進するとともに,社会的自立のための支援を推進します。
1 現状と課題
今まで取り上げてきた分野別の人権課題のほかにも,アイヌの人たちの人権問題をはじめ,多くの様々な人権問題が存在します。また,情報化や国際化などの社会の急激な変化に伴い,新たに生じる種々の人権問題もあります。
今,犯罪被害者やその家族,少年事件などの加害者本人への行き過ぎた取材や報道については,国民の間で問題視されています。プライバシーをめぐる問題は,基本的人権にかかわる重要な問題であり,マスメディア側の人権への配慮が求められますが,一方,国民側にあるワイドショー的な事件報道に対する関心の持ち方の問題もあります。また,近年インターネットの普及に伴い,インターネット上の掲示板などでの差別的情報の掲示などの人権侵害が問題となっています。さらに,患者の納得と同意のもとに医療を行うインフォームドコンセントの確立など,様々な人権にかかわる課題があります。
2 施策の基本的方向
インターネットやマスメディア等におけるプライバシー保護や医療における患者の権利擁護などをはじめ,社会の変化に伴い新たに生じる様々な人権問題の解決には,個人の尊厳を確保し,一人ひとりの人権を尊重し保障していくという人権尊重の意識を社会全体で共有し高めていくことが重要です。
このため,すべての人の人権を尊重し保障していくという視点に立って,啓発・教育活動を推進するとともに,県民やNPO,関係機関等の幅広い理解と協力のもとに相談・支援活動を積極的に推進します。
また,新たに生じた人権問題については解決に向けた施策の在り方を検討していきます。
人権尊重の基本理念が,あらゆる施策の基礎に据えられ,人権施策を着実に推進するため,全庁的な取組を進めるとともに,国,市町村,NPO(*)等の民間団体との連携・協働のもと,人権施策を積極的に推進します。
また,推進に当たっては,具体的な実施計画を策定し,適切な進捗管理を行い,人権施策を積極的に推進します。
従来,人権にかかわる施策は,個別分野ごとに推進されてきました。しかし,現在の人権問題は,複数の要因が絡み合ったり,新しい問題が生じたり,複雑化多様化してきています。このため,複雑な人権問題に対し,ともすれば総合的な視点が欠落し,効果的な対応がなされていないといった状況も見られました。
県民の人権意識の醸成のための人権教育・啓発の効果的な推進や,人権にかかる様々な課題に的確に対応していくためには,総合的な取組を展開していくことが求められています。
そこで,基本方針に基づき,人権尊重を基本に据えた県政の推進と,総合的見地から個別施策や個別人権の枠組みを超えた総合性のある施策を推進するために,知事を本部長とする人権施策の推進本部体制を確立します。
人権尊重社会の実現のためには,社会全体の取組が必要であり,国,県,市町村,民間団体等がそれぞれの役割に応じて協力し合い,連携を図り,相互の協力体制を強化した幅広い取組を積極的に展開していくことが求められています。
このため,今後の人権施策の推進については,以下のような各人権施策の実施主体の役割を踏まえつつ,連携した取組を推進するとともに,市町村や企業,NPO等民間団体の取組に対して支援していきます。
県は,人権に関連する各部署が中心となって,県の関係機関や千葉地方法務局等の国の関係機関,市町村,社団法人千葉県人権啓発センター,千葉県人権擁護委員連合会,千葉県弁護士会,NPO(*)等の民間団体,個人等とネットワークを構築し,情報の共有化,人材や施設の相互活用を図り,今までの枠組みにとらわれない相談や支援,また有効な救済や保護,さらに効果的な教育・啓発や研修を推進していきます。また,個人や家庭に対する相談・支援を行うNPO(*)等の民間団体の育成を推進していきます。
市町村は,地域住民に最も身近な行政機関としての機能を活かし,地域の実情に即して住民に対する積極的な人権意識の普及高揚のための教育・啓発に取り組むことが求められています。また,地域住民や民間団体と連携して,社会的自立に向けて支援が求められている住民一人ひとりや家庭に対する様々な支援について,積極的な取組が求められています。
このため,人権問題を専掌する窓口の設置など,市町村における人権施策推進体制の整備が求められています。
様々な人権問題の解決を目指していく上で,被差別当事者の経済的自立を支援していくことが重要な課題となっています。このため,当事者の就業について企業は,公正な採用等に努めるとともに,職場研修等を通じて企業内における人権擁護に関する取組を推進していくことが求められています。
また,NPO(*)等の民間団体は,支援を必要としている個人や家庭の状況に応じたきめ細やかな相談・支援の実施主体としてますますその役割の重要性が高まっています。
この基本指針及び人権施策の推進については,社会情勢の変化等に的確に応えるため,定期的,継続的に点検や見直しを行います。そのため,人権施策の見直しや点検のほか,推進効果を評価する機能や,新たな人権問題について調査する機能などを併せ持つものとして有識者で構成する委員会等を設置します。
すべての人間は,生まれながらにして自由であり,かつ,尊厳と権利について平等であると世界人権宣言にもうたわれています。
この理念のもとに,県民一人ひとりの尊厳や権利を尊重し,あらゆる人権侵害や不当な差別が行われることなく,安心していきいきと暮らせる社会をつくることは,私たちみんなの願いであります。
そこで,私たち一人ひとりが人権尊重の社会づくりに向けた県としての強い意志を示すとともに,県及び県民が一体となって人権尊重の社会づくりに取り組むことを決意表明するための「(仮称)千葉県人権宣言」の制定・公表を進めます。
原語は Identity であり,「自己同一性」「自己の存在証明」などと訳されます。分かりやすく言えば,自分は何者であるかという主体的な感覚のことを指します。
特に青年期にアイデンティティの危機にみまわれることが多いと言われます。
女性や障害者やマイノリティ(*)などの権利擁護のために活動する個人やグループを支持,代弁,擁護したり,当事者に代わって具体的な施策を提案する活動を言います。
ヒト免疫不全ウィルス(Human Immunodeficiency Virus)の略語。
HIVは感染力の弱いウィルスであり,HIV感染者の唾液や汗や尿を媒介としては感染せず,「血液・精液・膣分泌液・母乳」が体内に侵入することでのみ感染しうる。HIV感染による免疫力の低下は緩慢に進行し,いわゆるエイズ(後天性免疫不全症候群,AIDS: Acquired Immunodeficiency Syndrome)の発症までには10年以上かかると言われます。しかも,近年,医学の進歩により,エイズの発症を遅らせたりする治療法が確立されてきています。
「えせ」とは「似非」と書き,似てはいるが実は本物でないという意味です。従って,「えせ同和行為」とは,「同和問題はこわい問題である」という人々の誤った意識に乗じ,同和問題を口実にして,会社・個人や官公署などに不当な利益や義務のないことを求める行為を指します。
非営利組織(Non-Profit Organization)の略語。
平成10(1998)年に,「特定非営利活動促進法」(通称「NPO法」)が施行して以降,この法に基づいて法人格を得た団体は,特定非営利活動法人(NPO法人)と呼ばれるようになりました。企業などの組織が営利を目的とするのに対して,NPOは営利を目的としない様々な活動を行います。
なお,政府機関との対比が強調されるときには,NGO(非政府組織,Non-Governmental Organization)と呼ばれることもあります。
昭和20(1945)年の日本の敗戦まで続いた朝鮮半島や台湾などの植民地支配下で,生活に困窮して日本に移住してきた人たちや強制連行された人々の中で,終戦後も日本に残留した人々とその子孫を言います。今日,1世は少なくなり,4世,5世の子ども達もいますが,日本は血統主義の国籍法を採用しているので,韓国籍・朝鮮籍などのままの人も多く存在します。一方で,帰化により日本国籍を取得した人,いわゆる国際結婚で生まれた子どもで日本国籍になっている人も数多く存在します。
かつては「オンブズマン」といったが,固定的な性別の役割分担意識の影響がある表現ということで,最近では「オンブズパーソン」という言い方が一般的です。
任命権者から独立して,市民に対する役所や公務員の違法行為などを調査し,市民による苦情を処理する権限をもった人を言います。この制度は,スウェーデンに始まりました。「オンブズマン」はスウェーデン語で「代理人」を意味します。
日本では民間団体によって任命される「市民オンブズパーソン」が活躍しています。
学校教育には,いわゆるカリキュラムとして明文化された学習すべき内容があります。しかし,同時に,明文化されない「隠れたカリキュラム」(Hidden Curriculum)があると言われています。
教師の言葉や教え方,学校内での日常的な習慣や課外活動を通じて,「女らしさ/男らしさ」や性役割,男子優先の学習習慣などが,潜在的なレベルで伝達されることを指しています。これらは,幼児教育から高等教育の各場面において存在すると言われています。
もともとは,同性愛者が,クローゼットから現れ出ること(coming-out of the closet)という意味,つまり,自分の性的指向が同性愛であることを表明するという意味で使われました。現在では,同性愛者のカミングアウトだけでなく,インビジブル(invisible)な被差別者が自らの立場を表明することで,あるがままの自分を隠さない新たな人間関係の構築を目指す,という意味で使われるようになっています。
もともとは,スウェーデンで,認知症高齢者や障害者にとって,少人数で,自宅に近い環境で暮らすことが介護によいとされたことから始まり,欧米に広く定着した制度です。日本でも認知症対応型老人共同生活援助事業として取り入れられました。障害のある人にとっては,各自が居室を持つと同時に,共同の居間や食堂で家庭的な雰囲気を味わうことができ,かつ,できるだけ家事作業に参加することによって,本人の能力を維持・発揮することにも効果があると言われています。
情報と交通手段の急速な発達により,ヒト・モノ・カネ・情報が国境を越えて行き交い,経済・政治・文化など様々な分野で世界が一体化しつつある現象を言います。
国際人権規約(International Covenants on Human Rights)
世界人権宣言が理想とする「自由な人間」であるためには,市民的及び政治的権利が保障されるだけでなく,経済的・社会的及び文化的権利の確保が必要であるとの観点から,昭和41(1966)年の国連総会で,「経済的,社会的及び文化的権利に関する国際規約」(A規約)と「市民的及び政治的権利に関する国際規約」(B規約)が採択され,この2つの規約を総称して国際人権規約と言います。日本は,昭和54(1979)年に両規約を批准しましたが,付随する選択議定書はまだ批准していません。
性別には生物学的な性別だけではなく,社会的・文化的につくられた性別があります。男女の日常生活の中に示される,色・言葉・服装・仕事・生き方など,固定的な性別の役割分担は,様々な分野に存在し,それらは「あたりまえ」だと思いこまされてしまっているものも多いです。これらのジェンダー意識により,男女の生き方そのものが固定化され,個人としての,個性と能力が発揮できなくなっている状態があります。
すべての人間が生まれながらにして持っている権利で,人間が人間らしく生きていくための,誰からも侵されない基本的な権利。誰もの人権が尊重されるには,自分の人権だけでなく,お互いの人権を尊重し,自分の権利と同じように他人の権利も認めあうことが必要です。
人権が尊重される社会を創造することを目指す教育のこと。我が国でこれまで取り組まれてきた,同和教育や,在日韓国・朝鮮人のための民族教育や,異文化理解教育なども,人権教育のひとつである。
なお,「人権教育のための国連10年行動計画」においては,「人権教育」とは「知識と技術の伝達及び態度の形成を通じ,人権という普遍的文化を構築するために行う研修,普及及び広報努力」と定義されています。
また,「人権教育及び人権啓発の推進に関する法律」においては,「人権教育」と「人権啓発」とに分け,「人権教育とは,人権尊重の精神の涵養を目的とする教育活動をいい,人権啓発とは,国民の間に人権尊重の理念を普及させ,及びそれに対する国民の理解を深めることを目的とする広報その他の啓発活動(人権教育を除く。)をいう。」と定義されています。
性染色体によって規定される生物学的・身体的性と,自身の性自認とが食い違っている状態。つまり,自分は女である,または,男であるという意識と,身体とが一致しない状態。現在では,性自認の方を尊重するかたちでの治療が進められています。精神科領域での治療やホルモン療法などでも患者の苦痛を除去できない場合,外科的手術として性別適合手術が行われます。
性別適合手術を受けても,生活上の性と戸籍上の性が違うため,就職や結婚,医療を受ける際などに不都合が生じていましたが,平成15(2003)年7月「性同一性障害者の性別取り扱い特例法」が制定され,性別適合手術を受けた者については,独身の成人であること,子どもがいないことという条件付きではあるが,戸籍上の性を変更することが可能になりました。
判断能力が不十分な認知症高齢者,知的障害者等は,財産管理や契約,遺産分割等の法律行為を自分で行うことが困難であったり,悪徳商法等の被害にあうおそれがあります。このような人々を保護し支援する目的で,民法を改正し,平成12(2000)年4月にスタートした制度で,本人やその配偶者等が家庭裁判所に申し立てることにより,財産管理等に関する契約等の法律行為全般にかかわる後見人・補佐人・補助人が選任される制度を言います。
セクシュアル・ハラスメント(Sexual Harassment)
性的嫌がらせ。相手の意に反した,性にかかわる言動。身体への不必要な接触,性的関係の強要,性的な噂の流布,人目にふれる場所へのわいせつな写真の掲示など,様々な態様のものが含まれます。会社であれ,官公庁であれ,上司と部下といった権力的な上下関係を利用したセクシュアル・ハラスメントは,被害者にとって,就業環境を著しく悪化させることになります。また,学校でも,教師と学生・生徒との間の特別権力関係を利用したセクシュアル・ハラスメントも社会問題となっています。
福祉サービスにおける第三者評価とは,事業者の提供するサービスの質を当事者(事業者および利用者)以外の公正・中立な第三者機関が,専門的かつ客観的な立場から評価することを言います。
社会福祉法上の制度で,判断能力は一定程度あるが,自己の判断で福祉サービス等を適切に利用することが困難な認知症高齢者等に対し,自立した地域生活が送れるように,日常的な金銭管理や福祉サービス等の利用援助を生活支援員が行う制度。
昭和7(1932)年の「満州国」建国に端を発し,開拓移民として渡った人々のうち,多くの女性と子どもが昭和20(1945)年8月9日のソ連の対日参戦,そして,8月15日の敗戦によって,多くの日本人が中国に残留することを余儀なくされました。
この時点でおおむね13歳以下であり,中国人の養父母によって育てられた人たちは「中国残留孤児」と呼ばれます。
この時点でおおむね13歳以上であった人たちは「中国残留婦人等」と呼ばれます。当時,壮年男子の大多数は軍隊に召集されていたため,「中国残留婦人等」の大部分は女性であり,中国人と結婚することで,戦後を生き抜いてきました。
「中国残留婦人等」や「中国残留孤児」の子どもたちで日本に「帰国」してきた人たちは,「中国帰国者2世」と呼ばれます。「中国残留婦人等」や「中国残留孤児」の孫たちで日本に「帰国」してきた人たちは,「中国帰国者3世」と呼ばれます。「中国帰国者2世3世」は,中国文化の中で生まれ育ち,中国人としてのアイデンティティを持っているので,日本社会で生活して行くには,いわゆる異文化社会への適応が一つの課題となります。
平日の昼間を中心に,日帰りで,介護を要する人や認知症高齢者に対して,入浴,食事,機能訓練などのサービスを提供すること。
ドメスティック・バイオレンス(Domestic Violence)の略語。
夫婦や恋人など親密な関係において行われる暴力。暴力には,身体的な暴力のみならず,精神的,性的,経済的暴力等あらゆる形態のものが含まれる。かつては親密な間柄で起きる暴力は社会問題として取上げられることはありませんでしたが,ドメスティック・バイオレンスという概念が成立し,多くの人々によって共有されることで,女性に対する明確な人権侵害として認識されるようになりました。
日本の高度経済成長期,特に昭和50年代後半以降,アジア各地や中南米からたくさんの外国人労働者が来日しました。これらの人々を,在日韓国・朝鮮人や在日中国人などの定住外国人(オールドカマー)と区別して呼ぶ表現です。
心的外傷後ストレス障害(Post-Traumatic Stress Disorder)の略語。
本人もしくは近親者の生命や身体が危機にさらされるというトラウマ(心的外傷)体験をすることで,以後も繰り返されるストレス障害。地震,火災,交通事故などでも起きますが,児童虐待やドメスティック・バイオレンス,レイプなどによっても引き起こされます。
無視すること。無関心,放置,怠慢などによる,養育・保護の拒否。
障害がある人を特別視するのではなく,障害のある人が一般社会の中で普通の生活が送れる条件を整えるべきであり,健常者と障害者が共に生きる社会こそノーマルな社会であるという考え方。
境界が薄れた状態。特に,世界経済・情報通信・メディア・環境問題などの分野で,ヒト・モノ・カネ・情報の動きが,国境,つまり国家の枠を越えてしまっている状態。
社会的少数派。人権問題・差別問題で,被差別の立場に置かれている人たちのグループを指します。対語はマジョリティ(Majority)。ただし,大事なのは,必ずしも人数の多い少ないではなく,社会生活上の権力をより多く保持しているかどうかです。その意味では,マジョリティ対マイノリティという言葉の使い方ではなくて,ドミナント・グループ(支配的集団)対マイノリティ・グループという言い方をすることもあります。
1 人権関係年表 人権関係年表ダウンロード(PDF:16KB)
(目的)
第1条 県民一人一人の人権が尊重される、差別のない千葉県の実現を目指して、千葉県の人権施策のあり方について広く意見を求めるため、千葉県人権問題懇話会(以下「懇話会」という。)を設置する。
(所掌事務)
第2条 この懇話会の所掌事務は、次に掲げるとおりとする。
(委員)
第3条 懇話会委員は、知事が委嘱する次の委員30人以内で組織する。
(組織)
第4条 懇話会に座長及び副座長を置き、座長は委員の互選により定める。
2 副座長は座長の指名により定める。
3 副座長は座長を補佐し、座長に事故あるときはその職務を代理する。
4 座長は必要があると認めるときは、委員の一部で構成する小委員会を設置することができる。
(会議)
第5条 懇話会は必要に応じ座長が招集し、座長が議長となる。
2 懇話会及び会議録は公開とする。ただし、公開することにより、公平かつ中立な審議等に著しい支障を及ぼす恐れがある等、相当な理由があると座長が認めるときは、これを非公開とすることができる。
3 座長は会議の公開に当たり、会議の円滑かつ静穏な進行を確保するため、傍聴者の制限その他必要な制限を課すことができる。
4 座長は必要に応じて、委員以外の者を懇話会に出席させ、意見を聴くことができる。
(任期)
第6条 委員の任期は委嘱の日から1年以内とし、再任を妨げない。ただし、補欠の任期は前任者の残任期間とする。
(庶務)
第7条 懇話会の庶務は、千葉県健康福祉部健康福祉政策課が行う。
(補則)
第8条 この要綱に定めるもののほか、懇話会の運営に関し必要な事項は座長が定める。
附則
(施行期間)
1 この要綱は平成14年10月1日から施行し、平成16年3月31日をもって廃止する。
(敬称略・50音順)
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氏名 |
所属 ・ 職業等 |
備考 |
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あつみ まさこ |
弁護士 |
副座長及び小委員会委員 |
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いもと よしたか |
特定非営利活動法人市原エヌ・ピ-・オ-・サポ-トセンタ-理事長 |
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かんばやし やすお神林 保夫 |
社会福祉法人千葉県身体障害者福祉協会常務理事 |
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さいとう よしゆき |
弁護士 |
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さとう あつこ |
千葉敬愛短期大学教授 |
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さとう しゅんいち |
淑徳大学教授 |
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しいな ひでお |
千葉県保育協議会副会長 |
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しらい たかこ |
千葉県立衛生短期大学教授 |
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たけだ としお |
エイズ・サポート千葉(NGO)代表 |
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ちょ ぎょんだる |
千葉大学教授 |
小委員会委員 |
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てづか かずあき |
千葉大学教授 |
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とみざわ まさあき |
市原メンタルクリニック所長 |
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なりた ひさえ |
法務省人権擁護委員 |
小委員会委員 |
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ねもと ひさこ |
千葉県連合婦人会副会長 |
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のうち やすお |
千葉県精神障害者家族会連合会会長 |
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はしもと たすな |
日本ユネスコ協会成田支部婦人部長 |
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ふくおか やすのり |
埼玉大学教授 |
座長及び |
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ふじしま たかし |
社団法人千葉県人権啓発センター理事長 |
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まつざき やすこ |
淑徳大学教授 |
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まつだ としこ |
千葉県立衛生短期大学講師 |
小委員会委員 |
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みやはら ふみよ |
社団法人ぼけ老人を抱える家族の会千葉県支部代表 |
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もりもと みよじ |
IDEA(共生・尊厳・経済自立を目指すハンセン病患者・元患者国際ネットワーク)ジャパンコーディネーター |
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やまもと しげき |
弁護士 |
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よしかわ あい |
部落解放同盟千葉県連合会委員長< |
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ラビンダー・マリク |
浦安在住外国人会会長 |
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りゅうえん かこ |
千葉県手をつなぐ育成会権利擁護委員会代表 |
小委員会委員 |
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開催月日 |
検討の概要 |
|---|---|
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(平成14年度) |
人権教育のための国連10年千葉県連絡協議会開催 「千葉県人権施策基本指針(仮称)」の策定について |
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平成14年8月30日 |
千葉県人権施策基本指針(仮称)策定に対するパブリックコメント募集(~9月30日) |
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平成14年11月5日 |
平成14年度第1回千葉県人権問題懇話会開催
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平成14年11月5日~15年2月28日 |
小委員会6回開催 |
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平成15年3月17日 |
平成14年度第2回千葉県人権問題懇話会開催 人権問題についての小委員会における分野別の検討結果の報告 |
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(平成15年度) |
小委員会6回開催 |
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平成15年5月16日 |
千葉県人権問題懇話会で報告された課題等に対するパブリックコメント募集(~6月10日) |
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平成15年9月5日 |
人権教育のための国連10年千葉県連絡協議会幹事会開催
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平成15年9月19日 |
平成15年度第1回千葉県人権問題懇話会開催 「千葉県の人権施策のあり方について(提言)」(案)について |
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平成15年9月30日 |
千葉県人権問題懇話会から知事へ提言「千葉県の人権施策のあり方について(提言)」 |
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平成15年11月10日 |
千葉県人権施策基本指針(素案)に対するパブリックコメント募集(~12月10日) |
|
平成16年2月4日 |
平成15年度第2回千葉県人権問題懇話会開催 「千葉県人権施策基本指針」(案)について |
関連リンク
よくある質問