ここから本文です。

更新日:令和7(2025)年12月3日

ページ番号:808932

誰もが安心して共に生きられる社会を目指して(令和7年度心の輪を広げる体験作文入賞作品)

誰もが安心して共に生きられる社会を目指して

高校生区分

千葉県知事最優秀賞

日出学園高等学校1年
久川 晴葉(くがわ はるは)

 

 私は、今の社会に求められているのは「誰もが安心して共に生きられる社会」、つまり「共生社会」だと考えています。「共生」や「多様性」という言葉は、学校やニュースなどでよく耳にするようになりましたが、日常生活では、それが十分に実現されていない場面も多いと感じています。

 私が初めて「共生」という言葉を深く考えたのは、聴覚障害のある方の講演を聞いたときでした。その方はかつて聾学校ではなく地域の学校に通っており、在学中は授業や部活動で情報を得ることが難しく、友人との会話も十分に通じなかったと話していました。孤独や不安を抱えながらも、自分の進む道を諦めず、海外で新たな一歩を踏み出し、夢に向かって歩み続けた姿に、私は強く心を動かされました。そこでは周囲の理解があり、自分らしく過ごすことができたと話していたことが、特に印象に残っています。障害があっても、適切な環境と周囲の配慮があれば、自分の力を発揮し、自由に生きることができるのだと気づき、「共生」の意味について考えるようになりました。

 以前から地域の子ども会の活動に関わっていた私は、地域の共生について深く考えたいと思い、聴覚障害者との交流会を企画し、自らも参加しました。交流会では、地域で暮らす聴覚障害者と子どもたちが笑顔で触れ合い、自然なかたちで交流している様子が心に残りました。実際に顔を合わせてやりとりをすることで、お互いの違いを知り、理解が深まっていくのを感じました。交流会を通して、地域には様々な背景をもつ人々が暮らしていること、そして「相手を知ろうとすること」や「伝えようとする姿勢」が、共に生きる社会の第一歩になるのだと実感しました。この経験をきっかけに、共生社会への関心がさらに高まり、より多くの人と心を通わせるためのコミュニケーション力を身につけたいと考えるようになりました。

 その後、将来の進路を考える中で、大学のオープンキャンパスに参加する機会がありました。見学の際に立ち寄った大学図書館で、ある違和感を覚えました。大学には、留学生や障害のある方など、様々な背景をもつ人が在籍しているはずなのに、図書館には十分な配慮がなされていない点がいくつも見受けられたからです。例えば、スロープが急で、エレベーターも建物の裏側にしかなく、移動しやすい構造にはなっていませんでした。さらに、館内の案内には点字ブロックがなく、掲示物にも多言語表記は見当たりませんでした。また、聴覚に障害のある方への配慮として必要な筆談用ツールも設置されていませんでした。このような状況から、情報やサービスへのアクセスに大きな差がある現実を実感しました。この経験を通して、誰もが安心して利用できる、すべての人にとって使いやすい空間を目指す「ユニバーサルデザイン」の視点の重要性を強く意識するようになりました。「人との関わり」が共生の原点だとすれば、「環境の整備」はそれを支える土台だと感じたからです。

 現在、私は学校の図書委員として活動しています。図書室をより多くの人にとって使いやすく、親しみやすい場所にしたいと考え、多様性に関する本の紹介カードを見やすいデザインで作成したり、文化祭では図書室をより身近に感じてもらえるよう、しおり作りのワークショップを企画したりしています。また、探究活動では「誰にとっても使いやすい図書館とは何か」をテーマに、公立図書館や大学図書館の見学や調査を進めています。点字資料の整備状況、筆談での対応、対面朗読の実施などを調べることで、図書館における情報保障の現状と課題を探究しています。図書館は、すべての人に開かれた学びの場であるべきだと考えています。その環境が整えば、障害の有無や年齢、国籍に関係なく、誰もが平等に知識にアクセスできるようになるはずです。

 こうした経験を通じて、私は地元の公立図書館でボランティア活動も始めました。現在は主に配架作業を担当していますが、利用者の方々とのコミュニケーションを通して不便に感じている点を把握し、誰もが利用しやすい図書館となるよう、改善策を提案していきたいと考えています。将来、図書館司書としてユニバーサルデザインを活かした図書館づくりに携わりたいです。障害の有無、年齢、言語、国籍、文化の違いにかかわらず、誰もが安心して学び、過ごせる図書館をつくりたい。そのためには、設備だけでなく人と人との関わりを大切にした心地よい空間づくりが必要だと考えています。

 違いがあっても自然に暮らせる社会。その実現には、まず「知ること」、そして「考えること」、さらに「行動すること」が大切です。日常の中で見過ごされがちな小さな壁に気づき、一歩ずつそれを取り除いていくことが、共生社会への確かな一歩になると信じています。私はこれからも、自分にできることを見つけ、行動を積み重ねていきたいと思います。そして、誰もが安心して共に生きられる社会の実現に、少しでも貢献していきたいです。

 

お問い合わせ

所属課室:健康福祉部障害者福祉推進課共生社会推進室

電話番号:043-223-2338

ファックス番号:043-221-3977

より良いウェブサイトにするためにみなさまのご意見をお聞かせください

このページの情報は役に立ちましたか?

このページの情報は見つけやすかったですか?