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更新日:令和2(2020)年2月27日

「理想の世界への第一歩」(2019年度心の輪を広げる体験作文入賞作品)

「理想の世界への第一歩」

高校生区分

千葉県知事優秀賞

筑波大学附属聴覚特別支援学校2年
中尾 騎士(なかお のりと)

 

「三浦海岸共同生活」昨年度から始まったこの企画は筑波大学附属11校の中から希望者が集まり、一緒に共同生活を送るというものである。附属学校のうち、6校は健常の人、残り5校は障害のある人が通う学校である。私は後者に入る。同世代の健常の人、自分とは別の障がいを持った人と共同生活を送ることはとても貴重な経験であり、学ぶことが多くなりそうだと思い、迷わず参加を希望した。今年度参加した人数は計98名。そのうち障がいのある人は31名。視覚、聴覚、知的、肢体不自由、自閉症それぞれの障がいを持つ人が集まった。どんな生活が待っているのか楽しみな気持ちがある一方、たくさんの友達ができるのかという不安な気持ちもあった。二つの思いが入り混じっている中、当日の朝を迎えた。

私は自分に二つの課題を課した。一つ目は他の障がいを持つ人と関わること、二つ目はコミュニケーション力を磨くことである。私は生まれつき聴覚に重い障がいがあり、口話だけで会話するのが困難である。健常の人とは筆談もできるが、筆談で話すのは相手にとって大きな負担をかけることになるので、なるべく使わないように挑戦する。一方、視覚に障がいがある人とは筆談という方法は難しい。どのように会話すればいいのか考えるというものだ。

一つ目の課題についてはとてもよい経験ができた。障がいのある人に自分から積極的に関われたという点ではクリアできたと思う。例えば、自閉症をもつ人と関わった時のことである。彼らが急に別のところへ行ってしまったり、座るのが難しくなったりしたことが幾度もあった。自閉症の学校の先生から「突然出た大きな音が苦手なので、出さないように気をつける」「話す時、目線を合わせる」など、接し方に関する注意の説明があった。それに従いつつ、どうすれば上手くやっていけるのかを考えながら、先生の接し方を見習った。別の方向へ行ってしまった時は、回り込んで、前から迎え入れるような姿勢を作ったり、先に私が座り、身振りで座ろうと目線を合わせて言ってみたり。様々な試行錯誤を重ねた結果、分かったことが二つ出来た。手をつなげば自分に合わせてくれることが多くなること、自分を椅子にして座らせれば、座ってくれることだ。かなりうまくいった気がする。担当の先生から

「ありがとう。」

という言葉を頂いた。少し嬉しく、学びたい意欲はますます強くなった。今回はその二つしか分からなかったが、それでも得られたものは大きいと思う。また機会があれば積極的に関わり、もっと理解を深めたい。

次に車椅子に乗っている人を手伝おうとした時のことだ。食堂へ向かう際、上りのスロープがあり、その先に更に段差があった。車椅子の人にとって自力では難しいところだった。そこで私は自分から動き、車椅子を押すことにした。スロープを上るまではよかったが、段差のところで思わぬ失敗をしてしまった。車椅子を後ろ向きにして後ろから段差を越えようとしたのだ。車椅子の人が振り返り、

「前から入るんだよ。」

と教えてくれたが、コミュニケーションがうまくとれず、その時の私は分からなかった。結局、近くにいた健常の人が代わりにやってくれた。あとでよく考えてみると、後ろからだと、車椅子に乗っている人が前のめりになり、落ちてしまう。普通に考えたら分かることだ。車椅子を押すことは車椅子に乗っている人の命を預かっていることなので、ミスは決して許されない。車椅子に乗っている人を不安にさせてはいけないのだ。まずは安全を第一に考え、安心して車椅子に乗ってもらえることが大切だと実感した。

二つ目の課題についてだが、健常の人とは相手のわかろうとしてくれる気持ちもあったおかげでたくさん楽しくお話できた。挨拶などの短い会話は筆談なしでできた。そして、耳の不自由な自分を気にかけてくれるみんなの存在はとてもありがたかった。中には小学生もいた。全体で行動している時、その子はいつも

「行くよ。」

と指を差して教えてくれたのだ。すごく助かった。係の仕事で就寝時間を過ぎても部屋に帰ることができなかった時のことだ。部屋に帰ると真っ暗になっていた。その時、その子は私を待っていてくれて、

「大丈夫?布団引ける?」

と声をかけてくれたのだ。自分を気づかってくれる人がいることはすごく幸せなことだと改めて思った。

一方、とても後悔していることがある。それは視覚障がいの人とほとんど会話できなかったこと。私の発音を聞き取ってもらうことは難しいのではないかという不安な気持ちに負けてしまい、逃げてしまったのだ。視覚障がいの人とのコミュニケーション方法が全く思いつかず、悩まされ続けた。「健聴の人に間が入ってもらい、コミュニケーションを取る」、「点字を打って、コミュニケーションを取る」など考えているうちに、どんどん時間が過ぎていき、結局何も実行できなかった。何とか自分の力でやってみたかったのだが、最良の方法が見つからなかったので、最終日に班のメンバーに聞いてみた。すると、答えは案外簡単なところにあった。

「スマホに読み上げ機能があるから、それを使ってコミュニケーションを取ってみたらどう?」

とスマホを指して教えてくれた。それを聞いた私はものすごく後悔した。もっと早く相談すれば、視覚障がいの人ともたくさんコミュニケーションを取れていたかもしれない。私は共同生活でのせっかくのチャンスを逃してしまったことに悔いが残り、自分を情けなく思った。それと同時にこのことは来年度の新たな課題にしたいと考えた。

三浦海岸共同生活を通して、学んだことは実に多く、どれも新しい発見ばかりであった。かけがえのない財産になったと思う。障がいの有無に関わらず、お互いが相手を理解しようとすることでより充実した時間を過ごせた。まだまだ自分に足りないところもはっきりと自覚でき、課題も見つかった。参加してよかったと思う。今の時代は昔に比べれば障がいを理解してくれる人が増えてきているが、まだ改善の余地はあると思う。いつか障がいの枠にとらわれず、共存できる日がやってくることを願う。

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