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更新日:令和3(2021)年12月1日
ページ番号:2650
中学生部門
社会福祉法人千葉県身体障害者福祉協会理事長賞
浦安市立浦安中学校1年
森山ひかる(もりやまひかる)
通学路の途中に橋がある。その橋を渡ると中学校はすぐそこだ。
吹奏楽部の朝練習がある日は、七時十分くらいにその橋を渡れれば先輩方より先に到着することが出来る。逆算して、六時五十分には家を出るようにしている。
この時間に出ると、必ず橋の上で会う人がいる。その日によってすれ違うポイントは違うが、橋の上のどこかで会えれば、時間に間に合う目印になっている。
橋の上で会う人は、白い杖をついている。毎日、見えない中できっと会社に行っているのだろう。えらいなあと思っている。
ある日、寝坊をしてしまい、七時に家を出ることになった、私はオーボエを幼稚園バッグのように肩からさげ、通学カバンをリュックサックのように背負い、制服をヒラヒラさせながらダッシュで学校に向かった。
朝練習に行く人は、どんなにあたりを見まわしても誰一人いなかった。心臓がバクバクしていた。
このような日に限って、どの信号にも引っかかる。止まってはイライラし、青になったとたんにダッシュするくり返しだった。
しかし、橋の上で会う人は、いつものように橋の上で会えた。ホッとしたが、周囲には相変わらず誰もいない。
まだ安心できないと思い、ダッシュで走り出した直後、車の急ブレーキの音と大きなクラクションがなり響いた。
ハッとふり返った。いろいろな心臓のバクバクが共鳴し、胸が苦しくなった。
橋の上で会う人が、赤信号で渡ろうとしていて、車の人に注意されていた。ぶつかってはいないようだった。
朝練習の開始時間も気になったが、橋の上の人のところまでかけよった。その時、ちょうど青信号に変わった。
何事もなかったかのように橋の上の人は、いつもより少し早歩きで駅の方に向かって歩いていった。そして私もさらにダッシュで学校に向かっていった。
何とか間に合ったが、心の中は複雑だ。もし事故にあっていたら…私は何か出来ることがあったのではないだろうか。
その話を、違う部活の友人に話したら、
「じゃあ、今度挨拶してみれば?」
と、ごく自然に話してくれた。どこかで分かっていた答えだが、その行動から逃げている自分がいる。“偏見”なのかもしれない。
明日、挨拶してみよう。挨拶できるかな。出来るといいな。
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