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更新日:令和5(2023)年2月8日

ページ番号:7207

堆肥に残留した除草剤による生育障害について

ここ数年、日本では登録のない除草剤(成分名:クロピラリド)が残留した輸入飼料(乾草等)を給与された、家畜のふん尿堆肥の施用による農作物の生育障害の事例が全国各地で報告されています。
千葉県でも平成22年以降クロピラリドが原因と思われる生育障害の事例が数件あり、堆肥を販売・譲渡する際、あるいは使用する際に注意が必要です。

1.クロピラリドとは

クロピラリドは日本での登録はないので国内では使用されていません。クロピラリド残留の原因は、その除草剤を使用している外国から入ってくる飼料です。
クロピラリドを含む除草剤が散布された畑で栽培された干し草(乾草)や穀物は、クロピラリドで汚染されている可能性が高く、それを食べた家畜(牛、馬)のふん尿から検出されることがあります(図1)。24時間以内にほぼ全量が排泄されるため、家畜の健康や畜産物の品質および安全性にほとんど影響はありません。
クロピラリドは、分解が非常に遅いという特徴があり、堆肥に残留することになります。そして、クロピラリドが残留した堆肥を過剰に畑にまくと、植物の異常生育(生育障害)が起きることがあります。
人間の健康に影響する危険性はほとんどありません。
図1:クロピラリドの流れ
図1クロピラリドの流れ(出典「飼料及び堆肥に残留する除草剤の簡易判定法と被害軽減対策マニュアル」独立行政法人農業・食品産業技術研究機構平成21年3月発行)

2.クロピラリドによる植物の異常生育について

クロピラリドによる植物の異常生育の現れ方は品目によって違います。非常に低い濃度でトマト、ピーマン、ダイズ、エンドウ、インゲン、ニンジン、ヒマワリ、キク、コスモス、アスターのような敏感な植物を異常生育させます(表1)。成長点が異常生育したり、葉や果実の変形等の症状が見られます(写真1,2,3)。

表1クロピラリドに対する耐性(注1)

極弱 トマト、ダイズ、エダマメ、サヤエンドウ、ソラマメ、ヒマワリ、コスモス、アスター、スイートピー、クリムゾンクローバー
ニンジン、エンダイブ、トレビス、シュンギク、フキ、サヤインゲン、ピーマン、シシトウ、キク、ヒャクニチソウ
レタス類(注2)、セルリー、パセリ、イタリアンパセリ、キュウリ、メロン、トウガン、ニガウリ、スイカ、ナス、バレイショ、ラッカセイ、アズキ、ササゲ、ソバ、オクラ、ゴボウ、モロヘイヤ、ツルムラサキ、ヒユナ、ミツバ、タバコ、ペチュニア、マリーゴールド、ベニバナ、ルピナス、オステオスペルマム
アブラナ科、ユリ科、アカザ科、シソ科、ナデシコ科、ヒルガオ科、バラ科
極強 イネ科

注1品種により耐性評価のランクが変動する場合があります。
注2レタス類:結球レタス、サニーレタス、グリーンリーフ、ロメインレタス、チマサンチュ、サラダ菜、ステムレタス
(出典「飼料及び堆肥に残留する除草剤の簡易判定法と被害軽減対策マニュアル」独立行政法人農業・食品産業技術研究機構平成21年3月発行)


図1クロピラリドが原因と思われるミニトマトの生育障害


図2クロピラリドが原因と思われるシシトウ苗の生育障害


図3クロピラリドが原因と思われるサヤエンドウの生育障害
(図3のみ出典「飼料及び堆肥に残留する除草剤の簡易判定法と被害軽減対策マニュアル」独立行政法人農業・食品産業技術研究機構平成21年3月発行)

3.被害の防止法

生物検定について

クロピラリドが植物に影響を及ぼすほど堆肥に残留しているかを調べる方法として、クロピラリドに対して耐性が弱い植物を用いて、その反応を見る方法があります。生物検定といいますが、独立行政法人農業・食品産業技術研究機構のマニュアルに詳細が載っています。

「飼料及び堆肥に残留する除草剤の簡易判定法と被害軽減対策マニュアル」外部サイトへのリンクこちらからダウンロードできます

サヤエンドウを用いて行う方法が一般的です。比較的簡単に行うことができます。
結果がわかるまで気温にもよりますが25日前後かかります。

堆肥を販売・譲渡する人が行う対策

  • 購入した飼料及び堆肥にクロピラリドが残留している可能性がある場合は、飼料、堆肥を用いて生物検定を行います。
  • 堆肥の利用者に対し、適正施肥量を呼びかけます。畑に使用するなら10アール当たり2トン以下(1平方メートル当たり2キログラム以下)、培土に使用するなら容量で20パーセント以下が目安です。

堆肥を使用する人が行う対策

  • 可能であればクロピラリドが残留しているかどうかを生物検定で確認します。
  • 残留している濃度によりますが適正量を守れば、障害の発生の危険は少なくなります。過剰に堆肥を施用しないようにします。
  • クロピラリドが原因と思われる生育障害が発生した場合、障害が発生した植物は必ず畑から持ち出し、鋤き込んだりしないようにします。
  • 発生した畑では、しばらくマメ科、ナス科、キク科、セリ科等、耐性が弱い植物を栽培しないようにします。

4.おわりに

クロピラリドによる異常生育(生育障害)の被害を未然に防ぐには、まず、堆肥を供給する側、使用する側両者がクロピラリドについて認識することです。
堆肥は土作りにかかせない資材ですが、過剰に施用すればクロピラリドが残留していなくても環境に負荷をかけることなります。適正な施肥量を守るようにしましょう。

初掲載:平成26年

担い手支援課専門普及指導室
主任上席普及指導員
山本晃弘
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所属課室:農林水産部担い手支援課専門普及指導室

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