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更新日:令和6(2024)年3月6日

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秋冬ねぎ栽培(11月中旬から3月中旬出荷)のポイント

1.はじめに

千葉県内の主要作型である秋冬ねぎは、東葛飾地域、九十九里地域を中心に、県内全域で栽培されていますが、近年は夏の天候不順や台風の影響等により、品質の低下や収穫量の減少が問題となっています。
ここでは、九十九里地域における一般的な栽培方法を紹介しますので、栽培する地域、ほ場条件、品種、出荷形態等により応用していただき、安定出荷を目指してください。

2.栽培のポイント

(1)ほ場選定、準備

  • 多年生雑草はもちろん、一年生雑草の発生が少ないほ場を選びます。
  • 水はけが良く地力のある畑を選びます。
  • 秋冬ねぎは畑で夏を越します。ねぎは酸素要求度が高い作物で、高温時に雨が多いと土壌が過湿になると同時に酸素が不足し、結果、株が弱り病害虫等による欠株が発生しやすくなります。
  • 逆に、梅雨の適度な降雨により地上部の生育が進むと、その後の高温・乾燥により、十分な水分を確保できず、株が傷み、欠株が発生する年もあります。

いずれの場合も、堆肥等による土づくりや排水対策等のほ場準備、夏前に株を大きくしすぎない肥培管理が重要です。
定植してからでは実施できる対策は限られるので、定植前に以下の対策を行い、生育に適した畑を作りましょう。

  1. 作土層を膨軟にするため、牛ふんたい肥や緑肥等を施用し土づくりを行います。なお、定植直前に未熟なたい肥を利用すると土壌病害(特に白絹病)が発生し、逆に収量減につながるので注意してください。
  2. 表面排水が円滑に図られるよう、ほ場の傾斜を意識し、ほ場内に水がたまる場所をなくします。畝の長さが短い方がほ場の傾斜を容易つけられます。
  3. 定植溝の底面(植付位置)を、枕地より高くすることも有効です。(図1参照)
  4. ほ場内への地下浸透を少なくするため、ほ場周辺部に明渠を掘ります。また、ほ場外に速やかに排水するため、明渠と排水路をつなぎます。
  5. 地下浸透した水の排水を促すため、耕盤層を破砕し、暗渠、補助暗渠等を施工します。

排水対策の事例とイメージ
図1排水対策のイメージ

明渠とほ場外排水路の設置例の写真
写真1明渠とほ場外排水路の設置例

水が溜まったほ場
写真2水が溜まったほ場

(2)品種選定

栽培しやすい品種は、土壌、出荷時期、栽培管理、その年の天候等によって異なります。地域で多く栽培されている品種を中心に試作を行い、ほ場にあった品種を選びます。
近年は夏期の天候が不安定なため、品種を複数入れることで、危険分散を図ります。

(3)播種

播種は3月上旬から5月下旬にかけて行います。チェーンポット(CP-303)を使用する際の播種粒数は、年内収穫の場合は2粒播き(1mあたり約40株)を基本とし、年明収穫は2粒・3粒交互播き(1mあたり約50株)を基本とします。

  • セルトレイ(200穴又は220穴)の場合は3粒播種とし、定植時に植付け間隔で栽植本数を調整します。
  • 育苗期間は、チェーンポットの場合40日~60日が一般的です。これより長く育苗する場合は、根がらみがしないよう、専用の資材等を利用します。
  • 220穴セルトレイで固化剤の入っていない培土を利用する場合は、根鉢が回ってから定植を行うので育苗日数を80日程度と長くします。
  • 培土は窒素成分、リン酸成分を多く含むねぎ専用培土を利用し、長期間の育苗は途中で追肥をするなど、肥料切れしないように管理します。

チェーンポット育苗の写真
写真3チェーンポット育苗

220穴セルトレイ育苗
写真4 220穴セルトレイ育苗

(4)育苗

育苗はハウスで行いますが、4月以降は露地の気温でも十分に苗が育つ気温です。

  • 苗をかわいがりすぎないようにするのがポイントで、ハウスの中は風をなるべく通し、温度の上がりすぎ、水のやりすぎに注意し、ガッチリした健全な苗を育てます。
  • 灌水量は、使用する培土、その日の天気等により異なるため、床土の乾き具合により調整します。基本は早朝にたっぷり灌水し、日没前に葉先が垂れる程度とします。
  • 前日が曇天の日は灌水を控えるなど、床土が過湿にならないように注意してください。白いクモの巣状のカビや、緑やオレンジの藻が発生した場合は、灌水量が多い状態です。
  • 6月以降は、朝だけの灌水では足りず、正午には葉が垂れる日があります。乾きすぎると生育が停滞するので、必要に応じて日中にも灌水を行います。
  • 灌水を多くすると肥料成分は流失しやすくなるので、必要に応じ液肥等で追肥します。

ネギのハウス育苗の写真
写真5ハウス育苗

露地育苗の写真
写真6露地育苗

(5)基肥

  • 基肥は緩効性肥料の使用を基本とします。
  • 近年は梅雨時期の雨が多く、夏前に生育が進みすぎる年もあるので、贅沢吸収を防止するため基肥を少なくし(窒素で2~4kg/10a)、生育に合わせて追肥で調整します。

(6)定植

  • 定植は5月上旬から7月上旬にかけて行います。
  • 畝幅は90~100cmが基本ですが、使用する管理機により畝幅を調整してください。
  • 定植溝の深さは10~15cmとします。定植溝が浅いほど生育は強くなりますが、軟白を確保するために必要な土寄せの土を確保しにくくなります。
  • どの高さまで土寄せすればよいかの目印とするため、目安棒を設置してください。
  • 定植前は、殺虫剤と必要に応じて殺菌剤も灌注してください。なお、定植時に床土の水分が多いと、根鉢が崩れて定植しにくくなるので、定植直前の灌注処理は避けてください。
  • 定植後は、一年生雑草の発生を抑えるため、全面に抑草剤を利用します。抑草剤は粒剤と乳剤がありますが、その効果の持続性は両剤共に施用時の土壌水分が大きく関係します。特に、粒剤は土壌表面が乾燥していると十分な効果が期待できず、また、砂質土壌では植付溝の側面の処理がしにくい傾向にあります。できれば乳剤を利用し、特に植付溝内に十分処理層を作るイメージで薬剤散布をしてください。
  • 近年は定植時期のゲリラ豪雨が多くなっています。土が崩れて分岐部分まで埋まってしまうと欠株の発生が多くなります。急激な雨が予想される場合は、定植を避けてください。

(7)病害虫防除

秋冬ねぎは病気、害虫ともに発生します。時期により以下の病害虫が発生するので注意してください。なお、発生消長は年や地域により異なるため、目安として活用してください。

  • 土壌病害の発生は収量の低下に直結します。発生してからでは実施できる対策が限られるので、適切なほ場づくりと、適期の予防を行います。
  • 土壌病害の予防は、萎凋病は定植時に、白絹病、軟腐病は6~9月の土寄せ時に、小菌核腐敗病は9~10月の土寄せ時に予防剤を利用します。黒腐菌核病は、年内収穫は定植時に灌注処理を行い、年明収穫は定植時の灌注処理に加えて10月上旬の土寄せ時に予防剤を利用します。
  • 近年は8~9月にかけてハモグリバエB系統の被害が増加しています。被害葉は葉先が白く枯れ、従来のハモグリバエの被害とは異なります。一見すると疫病の症状に見えますが、近づいて観察するとハモグリバエの食害痕が見られます。なお、薬剤はハモグリバエに登録のある薬剤が効果を示します。
  • 従来は12月以降の厳寒期は虫、病気ともにあまり発生しませんでしたが、最近では厳寒期でも葉枯病やアザミウマ類の食害が発生します。秋以降も油断せず、菌密度や個体密度を増やさないことが重要です。

表1九十九里地域における主なねぎの病害虫発生例

時期 地上部の病害 土壌病害 虫害
5月 べと病   アザミウマ類、ネギコガ
6月 べと病、さび病 萎凋病 アザミウマ類
7月 葉枯病、黒斑病 萎凋病、白絹病 アザミウマ類、ハモグリバエ類
8月 黒斑病、疫病 白絹病、軟腐病 アザミウマ類、ハモグリバエ類、シロイチモジヨトウ
9月 葉枯病、黒斑病、さび病 白絹病、軟腐病 アザミウマ類、ハモグリバエ類、シロイチモジヨトウ
10月 葉枯病、べと病、さび病 白絹病、軟腐病 アザミウマ類、ハモグリバエ類、シロイチモジヨトウ
11月 葉枯病   アザミウマ類
12月 葉枯病

小菌核腐敗病

黒腐菌核病

アザミウマ類
1月 葉枯病

小菌核腐敗病

黒腐菌核病

アザミウマ類

ハモグリバエB系統の初発生ほ場の写真
写真7ハモグリバエB系統の初発生ほ場

ハモグリバエB系統の被害
写真8ハモグリバエB系統の被害

(8)追肥・土寄せ

  • 秋冬ねぎの生育が旺盛な時期は、7月中旬頃までと、9月下旬から11月下旬頃までです。栽培を行う上ではこの時期をいかに利用するかが重要で、出荷時期に応じて、追肥、土寄せによりこの時期の生育をコントロールします。一方、7月下旬から8月下旬頃は温度が高すぎるため、ねぎの生育は止まります。暑い時期に根を切るような管理は生育を極端に弱めるため、猛暑時の土寄せは避けてください。
  • 年内収穫は、基本は7月下旬までに3回程度削り込みを行い少し太らせて夏を迎えます。夏越し後は、9月上旬頃から追肥を開始し、9月下旬には生育が旺盛になるよう管理します。
  • 年明収穫では、7月下旬までに1~2回削り込みを行う程度とし、生育は弱めにします。夏越しの後は、9月中旬頃から追肥を行い、10月上旬頃から生育を旺盛にし、12月中旬までには十分な長さを確保します。
  • 夏越し以降の土寄せは、1回目は土壌表面を動かす程度で、軽めに行います。2回目以降は土寄せの量、追肥の量を増やします。追肥は窒素量で3~5kgを4回程度に分けて行います。
  • 土寄せの位置は、襟の下までとし、次の土を乗せる土台を作るように、M字に土寄せを行っていきます。

ネギ土寄せのイメージ図
図2土寄せのイメージ(出典:「千葉県ネギ栽培マニュアル」平成29年3月)

(9)止め土・収穫

止め土は、軟白部をきれいに仕上げるため襟が埋まるまで土をかぶせます。

  • 止め土の時期は、止め土した位置まで白く仕上げる時間を考慮し、収穫予定時期から逆算して、表2を目安に行います。急に霜が強く降りた年は、葉が垂れて止め土ができない状態になる場合がありますので注意してください。
  • 砂地では止めた土が乾燥や風により崩れます。そのような畑ではねぎパンチャー等を利用するかレーキ等で叩き、止めた土を崩れにくくしてください。
  • 厳寒期の収穫は、葉が凍っている朝方は避け、葉が解凍されてから行ってください。

表2収穫時期別の止め土の目安

収穫時期 止め土時期
11月 30日前
12月 40日前
1~2月 50日前
3月 30日前

ネギの止め土のイメージ
図3止め土のイメージ(出典:「千葉県ネギ栽培マニュアル」平成29年3月)

ねぎパンチャーによる止め土の写真
写真9ねぎパンチャーによる止め土

ネギの霜による葉折れの写真
写真10霜による葉折れ

初掲載:令和6年2月
担い手支援課
専門普及指導室
上席普及指導員
小林 良旭
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お問い合わせ

所属課室:農林水産部担い手支援課専門普及指導室

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