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更新日:令和4(2022)年12月12日

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全国和牛能力共進会出品への取組-第8区出品に向けて-

1.はじめに

令和4年10月に、第12回全国和牛能力共進会鹿児島大会(全共)が開催されました。本大会は5年に1度開催される全国規模の和牛品評会で、和牛のオリンピックとも呼ばれます。千葉県は平成9年の岩手大会に参加して以来25年ぶりの参加で、第8区(去勢肥育牛)2頭、特別区(高校及び農業大学校)1頭を出品しました。そこで、第8区出品に挑戦した、6農家、29頭の技術的取組をご紹介します。

2.早期肥育技術

第8区は効率的でおいしい和牛肉生産を目指し、改良と肥育技術により和牛の能力を最大限に引き出した牛肉生産を競います。出品月齢に制限があり、通常29.5ヵ月齢前後で出荷するところ、24ヵ月齢未満で屠畜し評価されます。

通常よりも短い期間で肥育することを早期肥育と呼びますが、技術が統一されていない難しい肥育方法であり、各農家が工夫して早期肥育に取り組みました。

例えば、配合飼料給与量ではグラフのとおり各農家に違いが見られました。早期から配合飼料の増給を試みたA農家やD農家では、飼料摂取が低下する牛が見られたため、肥育前期における配合飼料の急激な増給は注意が必要と考えられました。

配合飼料給与量(PNG:43.7KB)
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図1.配合飼料給与量

3.巡回指導

候補牛の発育状況を確認するため、2から3ヵ月ごとに農業事務所、家畜保健衛生所および畜産総合研究センターが各農家を巡回し、飼養方法の聞き取り調査や牛体測定、血液検査を行いました。また、候補牛肥育農家も参加する一斉巡回を行い、お互いの牛の肥育状況や飼養方法の情報交換を行いました。18ヵ月齢と20ヵ月齢時には超音波画像診断装置を用いた肉質診断を実施し、格付の推定を実施しました。

(1)体重・牛体測定

候補牛はいずれの牛も日本飼養標準の発育曲線通りかそれ以上の良好な発育となりました。代表に選定されたA農家の出品牛(出品牛A)は、全体を通して発育曲線を大きく上回る発育となりました。B農家の出品牛(出品牛B)は、肥育前期に粗飼料を多給しており増体は低めでしたが、中期以降は大幅に増体し、発育曲線を上回る体重となりました。

体重推移(PNG:45.5KB)
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図2.体重推移

(2)血液検査

肥育期間中に5回ビタミンと血液一般成分を測定し、結果をもとに管理方法の見直しを行いました。グラフに示したとおり、候補牛は血統の影響か全体的にビタミンAがうまく下がりませんでした。出品牛AもビタミンAが十分下がるのに時間を要し、18ヵ月齢時点で65.5IU/dlと高かったため、最終血液検査後もビタミンAの補給をしばらく行わないこととしました。また、肝機能障害の指標であるASTおよびGGTで異常値が出た候補牛については、注意喚起と治療を勧めました。

血中ビタミンA濃度(PNG:32.4KB)
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図3.血中ビタミンA濃度

(3)超音波画像診断装置を用いた肉質診断

18ヵ月齢と20ヵ月齢の2回、枝肉格付時に評価する第6肋骨と第7肋骨間付近の超音波画像を撮影し、ロース芯面積、バラ厚、皮下脂肪厚、脂肪交雑を予測しました。

肉質の超音波診断写真(JPG:95KB)
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写真1.肉質の超音波診断写真

4.出品牛の選定

全共本番の約3ヵ月前に県代表牛の選定を行いました。全国和牛登録協会と、県の出品委員で、牛の外貌・発育・ゲノミック育種価・血液検査・超音波画像診断装置を用いた肉質診断結果を総合的に評価し、2頭が選出されました。

5.全共結果~歩留、肉質で健闘!~

 第8区は58頭の出品があり、肉量(歩留)、肉質、脂肪の質に対しそれぞれ1対1対1の重みで序列化されました。千葉県出品牛は、2頭とも歩留及び肉質が優秀でした。歩留は歩留基準値で比較され、出品牛Aは79.2で4位、出品牛Bは80.4で1位となりました。さらに、ロース芯面積で100平方センチメートル以上となったのは千葉県の出品牛のみで、秀でた成績となりました。しかし、脂肪の質では一価不飽和脂肪酸割合が出品牛Aは48.5パーセントで56位、出品牛Bは53.8パーセントで40位と振るわず、また出品牛Bは瑕疵による減点もあり、総合評価で出品牛Aは優等賞20席と、出品牛Bは1等賞(※)となりました。

※優等賞:半分より上位のもの、1等賞:半分より下位のもののうち優秀なもの

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写真2.出品牛枝肉写真

6.次回出品に向けて

(1)脂肪酸組成

和牛改良において、肉の食味に関わる脂肪酸組成は注目されており、本大会の第8区審査でも歩留・肉質と同等の重みづけをされていました。今回出品した2頭は、他の出品牛と比べて一価不飽和脂肪酸の割合が低く、歩留や肉質の成績が高かった割に順位が下がってしまった原因の一つと考えられます。脂肪酸割合は遺伝率が高いため、ゲノミック評価等を用いた改良を進めることが必要と考えられます。

(2)早期肥育技術の開発

第8区では24ヵ月齢肥育が条件となっており、早期肥育技術が求められました。今回は出品に向けて挑戦した6名がそれぞれの方法で肥育し、結果として優秀な成績となりましたが、今後は今回の結果も参考にし、早期肥育技術をマニュアル化して示すことができるよう、データを蓄積していきます。

 

初掲載:令和4年12月
畜産総合研究センター
乳牛肉牛研究室
研究員 三根 琴美
電話番号:043-445-4511

お問い合わせ

所属課室:農林水産部担い手支援課専門普及指導室

電話番号:043-223-2911

ファックス番号:043-201-2615

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