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更新日:令和3(2021)年7月7日

ページ番号:447376

正しく対策すれば獣害は減少します!

イノシシやシカ、サル、ハクビシン、アライグマなどの野生獣による農作物被害が大きな問題になっています。各種の対策が推進されていますが、うまく被害を防止できていない現場も少なくありません。そこで、野生獣による被害を効果的に防止するためのポイントを整理していきます。

1.なぜ被害が起こるのか?

野生獣は臆病であり、本来は天敵である人間の目につかない場所で生活しています。それでも被害が起こるのは、人里が一年を通して美味しい豊富な食べ物が確実に得られる場所だと認識しているからです。その大きな原因となっているのが、人間が意識せずに行っている餌付けです。農作物、誰も収穫しないカキやクリ、売れ残ったクズ野菜などを安易に放置しておくと、人里に行けば簡単に豊富な餌が得られることを野生獣が学習してしまい、人里の食べ物に依存した生活を送ることに繋がります。

2.野生獣に餌を食べられないようにする

野生獣が人里の食べ物に依存しないよう、なくせる餌はなくし、なくせない餌は守る必要があります。すなわち収穫しない果樹は伐採し、作物残渣やクズ野菜はコンポストを利用するもしくは地中に埋めます。農作物はなくせない餌なので、野生獣が利用できないように防護柵で守ります。

3.農作物は防護柵で守る

防護柵は最も直接的に被害を防げる方法です。獣種に応じた適切な資材、材質でないと効果が得られないので購入の際によく確認してください。また、適切な資材、材質であっても、設置後の管理や設置方法の違いが被害発生率に影響を及ぼします(図1)。野生獣は物理的な防護柵では地際部をくぐり抜けて侵入することが多いため、地際部に隙間がないか、地際部を思い切り押し引きして隙間が生じないか注意してください。また電気柵においては、雑草が電線に接触し漏電していないか、4,000ボルト以上の電圧が保たれているか、適切な電線の高さ(イノシシの場合では地上から20センチメートルと40センチメートルの2段)で設置できているか注意してください。

図1 水田圃場における電気柵の下草管理または電線の高さとイノシシ被害発生率との関係(PNG:86.6KB)

図1 水田圃場における電気柵の下草管理または電線の高さとイノシシ被害発生率との関係

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注1)平成27年:521圃場、平成28年:509圃場における調査結果

2)電線下草管理は電線の下草が概ね30センチメートル以上の場合に不適切とし、電線の高さは一段目の電線が地上高15から25センチメートルの範囲にない場合に不適切とした。

4.新技術:集落全体を防護柵で守る

防護柵は、圃場の周りに設置されたものを「圃場柵」、山際に設置し、圃場以外に道路や家屋等も含めて集落全体を包囲するものを「集落柵」と言います。集落柵を設置すればイノシシは集落内に侵入できなくなります(図2)。また、集落柵のイノシシの被害軽減効果は圃場柵と同等かそれ以上でした(データ省略)。集落柵は、集落全体での定期的な維持管理を行わないと高い効果は続かないので、管理体制に関して集落で合意形成を図った上で導入することが望ましいです。

図2 集落柵設置前後の柵内部でのイノシシ痕跡地点の比較(PNG:1,860KB)

図2 集落柵設置前後の柵内部でのイノシシ痕跡地点の比較

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注)背景に「地理院タイル(電子国土基本図(オルソ画像))」を使用

5.野生獣が潜む場所を除去する

野生獣は臆病で警戒心が強く、人間の目が届かない茂みに身を潜めて移動します。圃場の近くに雑草や灌木が繁茂した場所があると、野生獣が圃場に接近しやすく被害に繋がりやすいです。圃場の近辺に存在する荒廃地や畦畔雑草を管理するようにしましょう。

6.加害個体を捕獲する

捕獲は箱わな、くくりわな、銃器を用いて行われます。野生獣の中には繁殖力が高く個体数の減少に多大な労力を要するものもあるため、被害対策においては捕獲数ではなく、被害を引き起こしている個体を狙った捕獲を意識してください。加害個体を捕獲するには、侵入経路や対象獣種の行動特性を踏まえて、わなの設置場所や誘引餌の散布方法等を調整することが重要であり、知識と技術を要します。未経験者の方には、まずは夜間に野生獣を撮影できる赤外線センサーカメラを設置し、加害個体の動きを映像で把握することから始めることをおすすめします(図3)。

図3 赤外線センサーカメラの特徴(PNG:394.3KB)

図3 赤外線センサーカメラの特徴

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7.音、光、匂い等を発する忌避剤は効果があるのか?

音、光、匂い等を発し、野生動物の被害を抑えようとする資材があります。これらの忌避剤により野生獣が来なくなったように感じることもまれにありますが、これは環境の変化に警戒しただけであり、そのうち慣れてしまいます。忌避剤に対し野生獣は継続した忌避行動を起こさないため、被害防止効果は期待できません。

 

初掲載:令和3年7月

農林総合研究センター

暖地園芸研究所生産環境研究室

研究員 松村広貴

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お問い合わせ

所属課室:農林水産部担い手支援課専門普及指導室

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