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更新日:令和3(2021)年5月1日

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異常気象でも着果安定!ハウス抑制トマト栽培

1.はじめに

東京都中央卸売市場における千葉県産トマトの9月から11月の月別出荷量は全国1位から3位(市場統計情報、平成30年)と長年トップクラスのシェアを維持しています。しかし、この時期の栽培では、近年、夏の猛暑日の増加や長雨などにより生育不良や着果不良の発生が問題となっています。そこで、ハウス抑制栽培において、これらの対策技術を確立しましたので紹介します。

2.遮光資材は8月中に撤去しましょう

抑制栽培ではハウス内の気温を下げるため、定植時から遮光を行いますが、遮光を9月まで続けると、光合成不足によって中段(第4花房から第6花房)の着果数が低下します。これを防ぐには、暑くても8月中に遮光資材を撤去する必要があります(図1)。このように早めに遮光資材を撤去しても、群落が完成しているため、果実に直射日光は当たりません。そのため、高温障害の発生は少なく、収量が増加しても、裂果などの規格外果も増えません(図2)。

遮光資材の撤去時期の違いがトマトの着果数に及ぼす影響(PNG:19.2KB)

※画像をクリックすると、大きい画像が表示されます。

図1.遮光資材の撤去時期の違いがトマトの着果数に及ぼす影響(左:平成29年、右:平成30年)

注1)*は、t検定において5パーセント水準で有意差あり、n.s.は有意差なしを示す(n=6)

2)エラーバーは標準誤差を示す

3)品種「桃太郎グランデ」、定植は、平成29年は7月10日、平成30年は7月9日に行った栽植密度10アール当たり1,778株、遮光資材は遮光率35から40パーセントの「クールホワイト520SW」(ダイオ化成(株))を使用し、定植前の7月上旬からハウス屋根部フィルム上面に直に展張した

遮光資材の撤去時期の違いがトマトの収量に及ぼす影響

図2.遮光資材の撤去時期の違いがトマトの収量に及ぼす影響

注1)**は、t検定において1パーセント水準で有意差あり、n.s.は有意差なしを示す

2)エラーバーは標準誤差を示す

3.pFメーターを設置し、こまめにかん水しましょう

pFメーターの指示値2.3を目安に週1回にまとめてかん水する区(週1回区)と、週3回程度にかん水する区(高頻度区)を比べたところ、合計かん水量は同じにもかかわらず高頻度区で12.7パーセント増収しました(図3)。このように夏期の栽培では水分ストレスがかからないよう、1回5~10ミリメートルのかん水をこまめに行うことが着果安定に有効です。土壌の水分状態は目視ではわかりにくいので、pFメーターを圃場(地下15センチメートルに感受部を埋設)に設置しましょう。

なおpF値とは、土が水を引き付ける力を示す値で、数値が大きいほど乾燥していることを示します。たっぷりかん水した後、余分な水分が下に抜けた時(24時間後)はpF1.5から1.8、かなり乾燥して植物が水を吸いにくい状況はpF2.7程度となります。

かん水回数の違いが可販収量に及ぼす影響

図3かん水回数の違いが可販収量に及ぼす影響(令和元年)

注1)高頻度区は深さ15cmのpF値が2.3に達したら株当たり4リットルかん水、週1回区は、高頻度区のかん水量を週1回にまとめてかん水した

2)*は、第3から6花房において、t検定において5パーセント水準で有意差ありを示す

3)エラーバーは合計収量に対する標準誤差(n=4)

4)品種「桃太郎グランデ」、定植7月18日、栽植密度10アール当たり1,778株、遮光資材は遮光率35から40パーセントの「ダイオクールホワイト520SW」(ダイオ化成(株))を使用し、定植前の7月上旬からハウス屋根部フィルム上面に直に展張した

4.上位側枝を残しましょう

肥大が良すぎるために起こる上段果実の裂果は、主枝摘心後に上位の側枝を残すことで減らすことができます(図4)。上位の側枝を2本残した側枝残し区は、摘心後全ての側枝を切除した側枝除去区と比べ、裂果率が11.8パーセント減少し、第3から6花房で増収しました(図5)。

側枝残し区

図4側枝残し区

側枝除去区及び側枝残し区における第3から6花房の裂果率

図5側枝除去区及び側枝残し区における第3から6花房の裂果率(令和元年)

注1)*は、t検定において5パーセント水準で有意差ありを示す(n=6)

なお、裂果発生率は検定前に逆正弦変換した

2)品種「桃太郎グランデ」、定植7月18日、栽植密度10アール当たり1,778株、遮光資材は遮光率35から40パーセントの「クールホワイト520SW」(ダイオ化成(株))を使用し、定植前の7月上旬からハウス屋根部フィルム上面に直に展張した

3)裂果発生率(パーセント)=(可販裂果収量+規格外裂果収量)/総収量×100

5.終わりに

ハウス内気温を下げる装置として、細霧冷房やパッドアンドファン等がありますが、これらは電源が必要で設置可能な場所が限られることや、経費が高いことから、抑制栽培では導入が進んでいません。しかし、ここで紹介した技術は、いずれも低コストであり、パイプハウス等での栽培でも手軽に取り組むことができます。本技術が、高温や長雨等の異常気象にも負けない抑制トマト栽培の安定生産に資するものと期待しています。

 

初掲載:令和3年5月

農林総合研究センター 野菜研究室

研究員 橋本奈都希

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お問い合わせ

所属課室:農林水産部担い手支援課専門普及指導室

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