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更新日:令和3(2021)年11月11日

ページ番号:457146

サンダーソニア乾腐病の特徴と防除のポイント

1.はじめに

サンダーソニアは、全国第一位の産出額を誇る千葉県の主要な切り花の一つで、オレンジ色で提灯型の可憐な花が人気のイヌサフラン科の植物です(写真1)。二又状の球根が特徴で、二つに分かれた球根の先端組織から発芽し、花を咲かせます。近年産地では、発芽や生育の不良による生産量の減少が問題となっていました。原因を究明したところ、サンダーソニア乾腐病であることがわかりました(久保ら、2019)。そこで、乾腐病の特徴と防除のポイントについて紹介します。

サンダーソニア圃場

写真1.サンダーソニア圃場

2.サンダーソニア乾腐病の特徴

サンダーソニア乾腐病は、球根の先端組織の乾腐や、球根表面に生じるかさぶた状の傷が特徴の病害です(写真2)。病原菌はFusarium proliferatumで、球根に生じる障害の他、球根貯蔵中に生じる軟化腐敗や圃場での発芽不良、坪枯れといった症状を引き起こします。乾腐病は、土壌、種子、球根によって伝染することから、これら各段階で消毒が必要となります。

サンダーソニア球根かさぶた症状

サンダーソニア球根乾腐症状

写真2.サンダーソニア球根に認められる障害

左:かさぶた症状、右:乾腐症状

3.サンダーソニア乾腐病防除のポイント

(1)薬剤による土壌消毒

栽培前にクロルピクリンくん蒸剤を処理することで、圃場の菌密度低下が図れます(表1)。その後栽培期間を通じ、菌密度は高くならなかったことから、防除効果はあると考えられました。その他、キルパー液剤も菌密度の低下が図られ有効です。

(2)耕種的手法による土壌消毒

夏期の消毒であれば、土壌還元消毒法や太陽熱消毒法による消毒も有効です。消毒後の圃場の菌密度は、クロルピクリンくん蒸剤と同程度となることから、同等の高い防除効果があると考えられます(表1)。

(3)乾熱処理による種子消毒

播種前に40度で1日予備乾燥後、75度で10日間乾熱処理することで、種子から乾腐病菌は検出されなくなりました(表2)。なお、この条件であれば、発芽に悪影響を及ぼすことはありませんでした。

(4)健全な球根養成

球根消毒に使用できる薬剤がないことに加え、一度感染した球根は殺菌できません。このため、乾腐病菌に汚染されていない土壌と種子から健全な球根の養成に努める必要があります。

土壌消毒前後のサンダーソニア乾腐病菌密度の変化

サンダーソニア乾腐病菌汚染種子に対する乾熱処理の効果

 

4.おわりに

サンダーソニアは、採花に適した大きさの球根を得るには、播種から2年以上を必要とします。栽培期間が長いため、感染リスクは高くなります。このため、健全な球根を養成するには、クリーンな土壌にクリーンな種子を播種することが大前提となります。防除のポイントを参考に、初期防除を徹底しましょう。

5.参考文献

久保周子ら(2019)Fusarium proliferatumによるサンダーソニア乾腐病(病原追加)関東東山病虫研報66:32-35

 

初掲載:令和3年8月
農林総合研究センター暖地園芸研究所
生産環境研究室
主任上席研究員久保周子
電話:0470-22-2963

お問い合わせ

所属課室:農林水産部担い手支援課専門普及指導室

電話番号:043-223-2911

ファックス番号:043-201-2615

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